こんにちは、石橋です。
今回は、弊社・和上ホールディングスの本業にあたる分野の最新事情についてお話をしたいと思います。
今回取り上げるのは、系統用蓄電池の低圧分割についてです。何のことかも分からないという方もおられると思うので、簡単な用語解説も交えて私の意見を述べていきたいと思います。

低圧分割とは、本来は一体的な設備として扱うべき大規模な蓄電池設備を、土地や名義などを分割することで、複数の小規模な低圧設備として電力系統に接続しようとする手法のことです。
低圧で接続する場合と高圧で接続する場合では、必要な手続きや設備要件などが異なるため、分割によって接続に伴う負担を抑えようとする思惑から、低圧に分割するメリットが注目されています。
複数の蓄電池を設置すること自体に、特に問題はありません。ただし、実態としては一体の設備であるにもかかわらず、形式上の分割によって本来必要な接続手続きや保安規制を回避しようとしているのではないか、と疑惑の目を向けられることが問題になっています。
系統用蓄電池は、電力需要が少ない時間帯などに電気を蓄え、需要が多い時間帯や電力の価値が高いタイミングで放電する設備です。これにより、再生可能エネルギーの出力変動への対応や、需給調整市場での調整力の提供など、電力システムを支える役割が期待されています。事実、各地の系統用蓄電池は本来の能力を発揮し始めています。
経済産業省の資料を見てみると、2026年6月末時点で系統用蓄電池の系統連系済み容量は1.28GWです。その一方で、接続検討受付済み容量は、なんと211.29GWです。
開発計画が膨大に積み上がっている一方で、実際に稼働している設備はまだまだ一握りです。始めたくても始められない状況が続いているということですね。このことについては当コラムで過去に指摘した通りです。その状況は依然として続いています。
こうした背景から、2026年4月からは低圧リソースをアグリゲーターが束ねて需給調整市場に参加させる仕組みが広がりました。これを契機に、低圧系統用蓄電池への関心が高まることとなりました。
比較的小規模な設備でも、複数を束ねることで市場取引に活用できるようになれば、低圧蓄電池の事業化を目指す動きが活発になるからです。
このこと自体は企業努力の範疇だと思うので、私も当然の流れかなと思っています。
しかしこれ、自然な流れとはいえ、新たな問題が生じています。
1つは、接続手続きの公平性について。低圧と高圧とでは接続に必要な手続きが異なるため、低圧を束ねたほうがオトクと考える事業者が増えたわけですが、これだと正規の手続きで高圧の手続きをした事業者は面白くありませんよね。そんなことで手続きをしやすくなるのであれば、うちもそうしていたのに、となります。当然です。
また、手続きをしやすくなることで申し込みが殺到、これによって審査に遅延が生じていることも、事業者間の不公平感を生みます。
2つ目の問題は、想定していなかった事態によって電力系統に新たな影響が出るのではないかとする危惧です。同じ地域や同一の配電系統に多数の設備が集中すれば、電力の流れが大きく変化します。そのせいで配電線の電圧管理が難しくなったり、変圧器や配電線の容量が不足したりする可能性もあるわけです。
個々の設備が小規模であることだけを理由に接続の影響を判断すると、地域全体での負荷を十分に把握できないおそれがあり、最悪の場合は大規模停電などを引き起こしてしまいます。1つ目の問題を相まって、こちらもなかなか厄介です。
国もこうした問題を認識していて、対策を打ち出しています。
1つ目の対策は、一体の土地を複数の名義に分けて設備を分割していると判断される場合に、土地所有者の同一性を確認する期間を、申込み年度から遡って1年以内から5年以内に延長することです。
これにより、申し込み直前ではなく、数年前に名義を分けることで規制を回避しようとするケースにも対応しやすくなると思います。
2つ目は、異なる種類の発電等設備を隣接して設置する場合に適用される例外規定から、蓄電設備を除外することです。ただし、太陽光発電所などの再生可能エネルギー設備と同じ構内に蓄電池を付属設備として設置することまで否定するものではないということです。発電設備と蓄電設備との適切な併設は、出力変動への対応や再生可能エネルギーの有効活用に役立つため、これを規制するのは本筋ではないとの考え方ですね。
まだまだ普及・導入が始まったばかりの分野なので、どうしても実態が先行し、それに対する対応や対策が後手に回ってしまうのは仕方ないでしょう。今後、より有効な対策が打ち出されていくと思うので、それに伴って諸問題も解決されていくでしょう。
系統用蓄電池は、再生可能エネルギーの導入拡大や電力需給の安定化を支える重要な設備であることに変わりはなく、低圧分割への対策は、蓄電池の普及そのものを否定するものではありません。
むしろ、接続ルールの公平性と電力系統の安定性を確保するための取り組みです。今後は、形式的な規制回避を防ぐとともに、実現性の高い蓄電池事業が円滑に進められる制度設計が求められるようになるでしょう。