系統用蓄電池の素材研究最前線!次世代電池の大本命「ナトリウムイオン電池」とは

石橋大右

2026.2.14 エネルギー問題石橋の考え

系統用蓄電池の素材研究最前線!次世代電池の大本命「ナトリウムイオン電池」とは

こんにちは、石橋です。
今回は系統用蓄電池について、少々アカデミックな話をしたいと思います。
中々ワクワクする話なので、ぜひ今回もお付き合いください。

系統用蓄電池は現在、リチウムイオン電池が主流です。リチウムイオン電池は系統用蓄電池のような大きな蓄電池だけでなく、家庭用の蓄電池やスマホのバッテリーなどに幅広く利用されており、私たちの身の回りにはリチウムイオン電池があふれています。
これだけリチウムイオン電池が普及しているのは、これまでにあった他の電池と比べると機能的に優れていてコスト優位性があるからです。

しかし、リチウムイオン電池にも弱点はあります。最大のリスクは、発火や発熱ですね。最近になって急にリチウムイオン電池の扱いが厳しくなったと感じませんか?飛行機に乗る時は預け手荷物に入れてはいけませんし、場所によっては持ち込みも禁止されていることすらあります。これは、リチウムイオン電池が衝撃を受けると発火したり発熱する性質があるからで、もし飛行機の貨物室で火事になったら大変なことになるので、目が届くところで管理して、というわけです。

これを系統用蓄電池に当てはめてみましょう。系統用蓄電池はおおむね、人里から離れた過疎地や山間部のようなところに設置します。人の目が届かない場所です。そこでもし電池が発火したら発見や対応が遅れるでしょうし、そのせいで被害が大きくなるリスクがあります。強い衝撃を受けないと発火する可能性はきわめて低いので、このリスクが現実になる可能性はかなり低いんですが。
さらに、リチウムイオン電池は今話題のレアメタルを使用します。リチウムはもちろん、コバルトやニッケル、グラファイトなどなど。資源価格の高騰が続く中、世界的に需要があるこれらのレアメタルは価格の高騰が深刻です。しかもレアアースの供給を中国に依存することがリスクであると言われている昨今、レアメタルの調達先が偏在していることも長い目で見ると脆弱ですよね。
そんなこんなの理由から、いつまでもリチウムイオン電池ばかりに頼るわけにはいかないということで、近年では蓄電池向け新素材の研究が驚くべきスピードで進んでいます。蓄電池の種類によって有望な素材技術は異なるので、今回は系統用蓄電池に向けて有望とされる次世代電池、ナトリウムイオン電池を紹介したいと思います。

ナトリウムイオン電池は、塩化ナトリウムを主原料とする蓄電池です。塩化ナトリウムというと難しいかもしれませんが、食塩の主成分が塩化ナトリウムというと分かりやすいと思います。ナトリウムイオン電池のすごいところは、塩化ナトリウムを海水から調達できるため、資源量がほぼ無限でめちゃくちゃ安いことです。リチウムやコバルトを使用しないため、蓄電池のコストダウンが期待されています。
また、ナトリウムイオン電池はリチウムのように発火や発熱のリスクが低く、遠隔地に設置する可能性が高い系統用蓄電池に使用しても安心感が高いです。こうしたリスクが低いと、保険に加入する際の保険料コストも下がるため、投資案件として考えた場合の採算性はより高くなります。

そしてもうひとつは、寿命の長さ。系統用蓄電池の寿命は20年とされており、この20年間で毎日1回もしくは2回程度の充放電をする計算になっています。ナトリウムイオンは低負荷稼働に適しており、「薄く長く」使えます。EVのように急激に高出力を発揮するとなるとリチウムイオン電池のほうが適しているんですが、系統用蓄電池のように電力の需給を調整するような役割を担うのであれば、むしろナトリウムイオンのほうが適していると考えられています。
最後にもうひとつ、これはナトリウムイオン電池の弱点なんですが、それがむしろ系統用蓄電池に向いているという点。ナトリウムイオン電池は低密度なので、同じ容量や出力を出そうと思うと図体が大きくなります。でもこれってスペースをあまり気にしなくてもいい系統用蓄電池の場合は、気にならないデメリットです。

いかがですか?ナトリウムイオン電池がいかに素晴らしい素材技術であるかがお分かりいただけると思います。これだけ素晴らしい素材なのですでに量産が始まっているんですが、ここで少々残念な現実があります。

ナトリウムイオン電池の素材研究は日本が先行していて、かなり早い時期から実用化の段階に到達しています。なんと1980年代から研究を進めてきて、1990年代には実証試験が行われています。なのに、です。現在のナトリウムイオン電池の生産量は、中国が世界トップ。何だかこの構図、太陽光パネルの時にもありましたよね。日本は技術で先行しているのに、大量生産や採算化において中国に追い越される構図です。またぞろ系統用蓄電でも似たような展開になっていることに、残念な気持ちと危機感を持ってしまいます。

しかしながら、研究が先行してきただけあって特許の件数は日本勢がトップクラスです。しかも日本は四方を海に囲まれた国で、ナトリウム資源を採取し放題です。外国への依存度が低い蓄電池技術、これをもっともっと高めて日本経済再生にも役立ててもらいたいですね。今はまだ世界各国が競争を始めて、よーいドン!となった直後です。今からでも十分戦えるので、ぜひ日本勢に頑張ってほしいと、系統用蓄電池の最前線にいる者として思います。

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