太陽光発電というエネルギーに直接関係する仕事をしている私にとって、日本とエネルギーの関係というのはとても関心の高い分野です。
この分野において、一種の常識のようになっていることがあります。それは、日本には資源がないという“常識”です。現実に石油や天然ガス、原子力燃料であるウランやプルトニウムなどについてはほとんどが輸入でまかなわれています。
こうした状況が安全保障上よくないことは、誰でも分かることです。実際に、第1次と第2次に分けて2回も訪れた石油の輸入危機、いわゆるオイルショックというのは日本経済だけでなく、日本の文化や日本人の物の考え方にまで多大な影響を与えました。産油国が集中している中東地域で何か戦争など供給不安に直結するようなことがあれば、たちまち日本は経済の血液とも言われる石油を輸入することができなくなるのです。
このことは、先日から続いている中東の民主化デモでも再認識させられました。リビアの内戦は特に顕著で、原油価格が跳ね上がったまま現在でもガソリンスタンドではレギュラーガソリンが140円近い価格になっていることでも実感されている方が多いのではないでしょうか。
こんなことをいつまでも続けていては、日本は安定してエネルギーを使うことができません。経済の屋台骨を支えているエネルギーに不安がある状態では一流の経済を維持することはできません。
それでは、どうするか?
このことは以前から議論され続けていて、その結論のひとつが原子力発電です。少ない燃料で多くの電力を生み出すことができる原子力は日本だけでなくフランスなど資源の乏しい先進国にとってはとても有効なエネルギーとして機能してきました。
しかし、そこへ来て先日の原発事故。
今後、原発に頼りすぎるのはやめようという機運になっています。いきなりそれを達成するのは無理がありますが、少しずつなら。それなら私も賛成です。
しかし、それなら何でエネルギーをまかなうのか?
太陽光発電?風力発電?地熱発電?
確かにどれも再生可能エネルギーとして有効なのですが、いかんせん大規模にやるとなるとコストが高すぎる。
そこで、注目されているエネルギー資源があります。
それは、メタンハイドレートです。
聞いたことがあるという方も多いのではないでしょうか、最近になって急に注目を集めている地下資源です。メタンが固体になったもので、これを気化させるとメタンガスとなり、天然ガスのように使用することができます。
実はこのメタンハイドレートというのは、日本周辺の海底に大量の埋蔵されていることが分かってきました。その資源量、今確認されている分だけでも天然ガスに換算して90年分!
まだ確認されていないだけで、推定埋蔵量はその何倍にもなると言われています。
それだけの膨大な地下資源が、日本近海に眠っているのです。
これまで、メタンハイドレートの採掘や抽出、そして実用化には色々なハードルがありました。特に技術的な問題が大きく、将来使えるかも知れないエネルギーという認識で学者の間でしか存在が認識されていなかったのですが、ここに来てその事情が大きく変わりつつあります。
脱原発を掲げる国、経済発展によってエネルギーの需要が大きくなってきた国、将来の資源枯渇を危惧する国…次世代のエネルギーに強い関心を持っている国は、日本以外にもたくさんあるのです。
そんな国々が、日本のメタンハイドレートに熱い視線を注いでいます。
日本国内でも世界トップクラスの採掘技術があるのですが、石油採掘などで豊富なノウハウを持つ海外の企業なども日本のメタンハイドレート開発に名乗りを上げ始めています。
いかがですか?
日本が資源大国になろうとしているのです。
もちろん、メタンハイドレートはいわゆる化石燃料なので、使えばCO2は排出されます。それは天然ガスと同じです。
しかし、石油や天然ガスの枯渇が現実味を帯びてくるこれからの時代に、日本だけでなく世界を救うエネルギーになる可能性が非常に大きくなっているのです。
太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギー、そしてメタンハイドレート。
今の子供たちの世代は、こうしたエネルギーをうまく使って今よりも文明を発展させているかも知れませんね。