私たちが子供の頃、宇宙というのはファンタジーの世界でした。
宇宙人やUFO、宇宙船など、SFの世界で描かれるものばかりで、まだまだ実際の科学技術とは全く別次元のものだったように思います。
だからこそ多くの人が各々の想像力を働かせて“宇宙人”の姿を思い描いたのです。
私が知っている限り、火星に住んでいる火星人というのは、2足で立つタコのようなものでした。絵本や漫画の中に時折登場するので、いつかはそんな火星人と遭遇する時が来るのかも知れないと子供心に思ったものです。
その後、火星探査に対する技術が飛躍的に向上し、実際に火星にまで赴いて現地の写真を撮るということが可能になってくると、子供の頃に見たタコのような火星人という幻想は見事に打ち砕かれ、誰もいない荒野の映像をひたすら見ることとなりました。
ある意味、これは文明の進歩による成果なので興奮しましたが、もう一方では誰もいない殺伐とした風景にガッカリもしたものです。
そんな火星について、最近ではかなり色々なことが分かってきました。
多くの研究者にとって最大の関心事は生命体の有無ですが、そのために必要なものがあるかどうか、これも重要な要素です。
大気や水など、地球にあるものと同じようなものがあればいつかは生命が宿る可能性があるわけで、かつての地球もそうでした。
これも最近の研究成果で分かったことですが、地球には生命が宿る条件が整っていたものの、まだ何もいない期間が長らく続いていたそうです。そこに宇宙のどこからか巨大隕石が衝突し、そこに付着していた微生物のようなものが地球にそのまま住み着いたという説が有力になりつつあります。
私たちの祖先が宇宙から来たということは、私たちと同じような生命を宿している星がどこかにあるわけで、これは興奮ものですね!
さて、話を火星に戻しましょう。
火星の表面写真を見ていると、かつてそこには水があって水が流れた際に出来る模様のようなものがあちこちにあることが分かりました。
今では表面に水を確認することはできません。大半は蒸発してしまったという説が有力ですが、残存している水分が地中深くに眠っており、そこに生命がいるのではないかという説もあります。
その生命体というのは微生物で、メタンを発生させるような特性の菌ではないかとされています。
ここまで研究が進んでくると、誰もが同じことを考えるでしょう。
実際に行ってみて、そこで確かめるのが一番早いのでは?
その通りです。
地球上でアレコレ言っていても始まりません。こうなったら見に行って確かめるのが一番です。
火星探査の宇宙船を飛ばし、そこで現地の物質などを採集したり、写真を撮るなどして調査をするのです。しかし、そんな技術がいったいどこにあるのか?まだそれに成功した研究チームはいないのです。
ここで、ひとつ思い出してみてください。
少し前に、「はやぶさ」という宇宙船が長い長い宇宙旅行を経て地球に戻ってきたという話がありましたね。これは日本の研究チームが開発して打ち上げ、イトカワという小惑星から現地のサンプルを採集して戻ってきたという世界初の大成果です。
このイトカワというのは、火星の軌道上を回っている小惑星です。この技術を応用すれば、火星まで宇宙船を飛ばして、現地のサンプルを持ち帰ることができるのではないか?
そんな研究プロジェクトが立ち上がったのです。
宇宙航空研究開発機構と東京薬科大学などの研究者がチームを組み、火星の生命体調査をするというのです。このプロジェクトは「JAMP」という名称がつけられており、火星探査機を火星の赤道付近に着陸させてメタンを含む土を採集、顕微鏡で調べるというのです。
もし、これで生命体が発見されたとしたら、当然ながら世界初となる地球外生命体の発見となります。
日本の研究チームによる初の本格的な“火星人調査”。
はやぶさのように、大きな成果を収めて欲しいと今からワクワクして見守っています。