東電は福島第一原子力発電所の事故で一躍話題になった東京電力ですが、東電は日本にある10の電力会社のうちでの最大手と言えるでしょう。
東電は原発事故を起こした当事者として多大な賠償金や補償金を支払わなければなりませんが、現在進行形の補償金の金額などは現段階では未定です。
そのため、現在政府の第三者委員会である経営・財務調査委員会が東電の資産や経営状況を調査中ですが、その最終案がまとまったようです。
この最終報告で指摘された点はいくつかありますが、その一つが東電の地域独占的な要因で経営の効率化が遅れていたことです。
そうです。東電では電気を作るための発電費用に総括原価方式が採用されていて、この方式があるために経営効率化が遅れていたのです。
ここで、総括原価方式とはどのようなものかを見てみますと、この電気料金を決める方式は、人件費、燃料費、発電・送電設備投資費用などの発電費用に一定の利益(不明)を上乗せし計算した「総原価」をもとにしたものです。
ここに電気料金を決めるカラクリがあるのですが、電気料金は事前に原価を国に届け出る必要があります。
そして、今回の調査によると過去10年間ではこの原価が6186億円も上回っている点が指摘されました。
つまり、きちんと効率化を図れば東電の発電原価は6186億円減らすことが出来ると言う訳です。
今回、東電が第三者委員会に報告した経費削減額は1兆1853億円でしたが、この額は第三者委員会の試算によれば倍近くの2兆4120億円になるそうです。
この東電と第三者委員会との差額が問題になっているのです。
端的にこの差額が生じた理由は、東電が関連会社の経営を保護しているためと、資材調達先と東電の間に代理店が介在するケースが多々あるためだそうです。
ここで、この差額について東電の説明によれば、関連会社との取引形態を見直すと経営が苦しくなる会社が増えるので、ひいてはそれらの会社の雇用問題になりかねないというものです。
ところで、東電は第三者委員会に約15パーセントの電気料金値上げを打診していましたが、これは巨額の賠償金・補償金と原子炉の廃炉費用が大きいので東電の財務体質が悪化しかねないのを防ぐ目的とのことです。
しかし、第三者委員会ではそもそも電気料金の決め方自体がおかしいとしている訳です。
そこで、先ほど述べた総括原価方式のカラクリが指摘されているのです。
この東電の発電原価には、オール電化関連広告費、寄付金、図書費、福利厚生費、各種団体への拠出金などまでが含まれているようですが、これらは発電事態とは関係がないでしょう。
そうすると、東電はいろいろな経費をまるごと発電のための原価に含めていることになりますから、どう考えてもおかしいということになりますね。
東電は過去10年間に4回ほど電気料金の引き下げをしていますが、ここに上回っていた原価である6186億円があれば、電気料金はさらに引き下げることができたことになります。
東電は関東一円に電気を供給する唯一の企業ですから、まさに独占企業的な性格を持っています。
いわば、殿様商法ができる訳ですから、発電原価に図書費や福利厚生費までも組み込めるのでしょうが、これでは消費者であるユーザーは納得しかねるのではないでしょうか。
政府の第三者委員会には東電に総括原価方式の見直しを強制する力はないようです。
しかし、東電が自主的に電気料金の決め方を根本的に見直すことになれば、ほかの9電力会社にも経営改革の波が押し寄せるでしょう。
そうなると、日本全体の電気料金は引き下げることはあっても値上げにはならないと思われます。
つまり、東電の甘い経営体質は他の電力会社にも多かれ少なかれあるものと考えても間違いはないでしょう。
原発の再稼働問題もありますが、その前に電力会社は基本的な経営の在り方を見直す必要があることを、今回の第三者委員会は指摘していますから、今後の東電を含む10電力会社の経営方針を私たちは見守る必要があるでしょう。