こんにちは、石橋です。
ちょっと過激なタイトルをつけましたが、今回は資源の話をしたいと思います。
先日、東京大学の研究チームが沖縄の海底からレアアースの採取に成功したというニュースが報じられました。
さすが東大、という程度であまり大きく報じられなかったので違和感を持ったのですが、実はこれはとても大きなニュースです。
現在、世界中で産出されるレアアースのうち、ある一国が95%のシェアを占めています。
その95%というのは、中国です。
この中国についても、本来では中国ではなかったチベットの近辺で産出しているものが多いので、中国産と言って良いのかどうか疑問ではありますが、政治的には現在チベットは中国の中のチベット自治区なので一応中国産ということになるのでしょう。
それはさておき、レアアースというのは資源の中でもハイテク産業に欠かせない資源なので、日本にも大きな関わりがあります。
去年、尖閣諸島沖で中国の漁船が海上保安船に体当たりするという事件がありました。
この時、日本は中国漁船の船長を逮捕し、日本国内に勾留しました。これに怒った中国はさまざまな対抗手段に出ましたが、その時に切られたカードが「レアアースの輸出差し止め」です。
日本のハイテク産業に欠かせない貴重な資源の輸出を止めることによって、日本から政治的な譲歩を引き出そうとしたのは明らかです。結果としてこの措置はすぐに終わりましたが、その後も中国はレアアースの輸出制限をしており、つい最近に日本、米国、EUが共同でその件についてWTOに提訴したのも記憶に新しいところです。
現在、レアアースは中国の輸出制限によって高値が続いています。
そのためにハイテク製品やハイブリッド車などがもろに影響を受け、価格が高くなっていることはよく知られています。
自国の資源を使って外交を有利に働かせようとすることを、「資源ナショナリズム」と言います。
ウクライナの民主勢力を支援したとして、ロシアがEUに向けての天然ガス供給をストップしたことがありましたが、これも資源ナショナリズムの一環です。
今回、東大の研究チームが沖縄で採掘に成功したレアアースというのは、現在中国からしか手に入らないものがほとんどで、それが中国以外でも手に入るとなると、そこには非常に大きな政治的意味があるのです。
イギリスの「ザ・デイリー・テレグラフ」という新聞に「中国のレアアース優位性が永遠ではないことが示された」という記事が掲載され、日本が今後レアアースにおいて資源大国になる可能性が高くなっているとしました。
もっとも、これはまだまだ試験採掘の段階で商業ベースに乗せるための実用化にはまだまだ時間が掛かります。それでも、その可能性が示されただけでも、それが世界に与えたインパクトは計り知れません。
日本ではほとんど報じられなかったイギリスの新聞報道でしたが、当の中国では環球時報という有名紙がこの記事を大々的に報じています。つまり、中国自身が自分の優位性が崩れるのではないかという危機感を持っているのです。
ちなみに、日本にとってレアアースというのは産業の生命線でもあるので、活発な資源外交が行われています。中国に次いでレアアース埋蔵量の多いアメリカとオーストラリアにおいて、日本は現地での採掘プロジェクトに参加しており、日本の高い採掘技術を提供する見返りに資源の優先的な権益を得るという、日本が本来得意としている手法で中国依存からの脱却を模索しています。
国は何もしていないというのは、国を批判する人の常套句です。しかし、少なくとも私はこの分野においては日本政府は機動的に行動し、しっかり結果を出していると思います。
そこにきて、今回の研究成果です。
日本が自国内でレアアースを大量生産できるようになれば、21世紀の日本が資源大国になることを意味しているのです。