1994年5月に当時の郵政省が、高速増殖原型炉「もんじゅ」臨界記念の記念切手を発行しています。
もんじゅは、福井県敦賀市に立地する日本原子力研究開発機構管轄の高速増殖炉で、商用ではなく、研究用原子炉という位置付けなので、所管は経済産業省ではなく、文部科学省です。
もんじゅは核燃料サイクルの計画の一環で、高速炉開発は国家プロジェクトの位置付けですが、従来たびたび深刻な事故を起こしていることで知られています。
本来のもんじゅの目的は、高速増殖炉の商用化ですが、その見通しは立っていません。
この種の施設・設備は一朝一夕にはことが進まないほど複雑で不確定要素が多すぎるからです。しかも膨大な費用を必要としますから、従来からこの種の事業は廃止すべきという声がありました。
直近の新聞報道によりますと、ついに、もんじゅを廃炉すべきという方向性が打ち出されたようです。
2016年9月14日の新聞で、この記事がトップに出ましたが、その理由は、今までに多額の費用をつぎ込んだもんじゅが再運転するには原発の新規制基準に適合する必要がある、そのためには、数千億円という莫大な予算が必要になる、の2点から、それほどまでもんじゅの存続にこだわるのは到底国民の理解を得られないから、とのことです。
ところが、もんじゅ廃炉に対する反対の声もあるようです。
そうなると、誰が廃炉推進で、誰が存続推進かはともかく、外から見えてくるのは、不可解な省庁間の綱引きです。
また、廃炉にする方向になっても莫大な費用を必要としますから、最終的には国民の目が届かないところで、間接的に国民がその費用を支払うことになります。
さらに不可解なのは、文部科学省がもんじゅの廃炉に難色を示しているとのことです。
一体誰のための文部科学省なのでしょうか。
そして、誰のための産業経済省なのでしょうか。
もう一点あるのは、現在もんじゅ関連でメシを食べている人たちです。
学者や技術者もその他の人たちも霞を食べているわけではないのですから、規模はそれほど大きくはないにしても、雇用問題が絡んできます。
そうなると、今度は厚生労働省がこの問題に巻き込まれるでしょう。
そこで望ましいのは、省庁間の綱引きや駆け引きがないことで、民間も含めたもんじゅプロジェクト関係者の全員が納得できる方向性です。
さて、どのような決着になるかはこれからのことですが、たまたまもんじゅ廃炉案は国政に関与する人たちの国民のことをどこまで真剣に考えているかが問われることでしょう。そして、反原発派の人たちの考えかたも聞いてみたいと思います。