2023.09.01
ソーラーカーポート設置には「建築基準法」が関係する?建ぺい率や固定資産税は?
太陽光発電の一環として注目されているソーラーカーポートですが、その設置には「建築基準法」に基づく一連の手続きが必要です。
これらの手続きを正しく理解し、適切に対応することで、スムーズに導入できます。
本記事では、ソーラーカーポートの設置から売電までの一連の流れを「建築基準法」も踏まえて詳しく解説します。
目次
カーポートとガレージの違いは何?
カーポートとガレージは、どちらも車を雨や雪から守るためのものです。しかし、両者にはいくつかの違いがあります。
カーポートの特長
- 壁がなく、柱と屋根だけで構成されている
- 開放感があり、車の出入りがしやすい
- 設置費用がガレージより安い
- 雨や雪から車を守る
この他にも、4本以上の柱に屋根がついているものや、車体側面の右または左側だけに2~3本の柱があるものなど、様々なデザインが存在します。
ガレージの特長
- 壁で囲まれており、シャッターや扉がついている
- 車を盗難やいたずらから守る
- 冬は車を暖かく、夏は車を涼しく保つことができる
- カーポートより設置費用が高い
カーポートとガレージ、どちらも「車庫」という用途では共通しますが、最大の違いは「構造」、つまり「壁」の有無です。
ソーラーカーポートの特長
カーポートとガレージの違いを踏まえた上で、ソーラーカーポートの特長を簡単に言うと、太陽光発電パネルを屋根として活用したものが「ソーラーカーポート」です。
更に重要なポイントとして、ソーラーカーポートは「建築基準法」の規定に注意が必要です。
建築基準法は、建築物の安全性や生活環境を確保するための法律で、ソーラーカーポートの設置に当たってもその規定が適用されます。
例えば、建築基準法では、建築物の耐震性や耐風性、また建築物の設置場所に関する規定などが定められており、ソーラーカーポートの設置に際してはこれらの法規制を遵守する必要があります。
ソーラーカーポートの導入を検討する際には、このような法律面も踏まえ、適切な設計と施工が求められます。これは、カーポートやガレージと比べてソーラーカーポート独自の要素と言えるでしょう。
敷地に収まればどんなサイズのカーポートも設置可能?
カーポートは柱と屋根だけのシンプルな構造なので、一見すると自由な建てられたり、配置が可能だと思われがちです。しかし、実際にはソーラーカーポートは「建築物」に分類され、建築基準法の適用を受けるため、様々な制限があります。
建ぺい率(建蔽率)とは
建築基準法では、カーポートの面積も敷地面積に対する建築物の面積の割合を示す「建ぺい率(建蔽率)」に含まれます。つまり、ソーラーカーポートの規模を大きくしすぎると、新築時に住宅の規模を小さくしなければならないという事態になります。
既存の住宅にカーポートを追加する場合でも、建ぺい率を超過しないサイズに抑える必要があります。
建ぺい率は地域や自治体により定められ、一般的には「建築面積÷敷地面積×100」の計算式で求められます。なお、2階以上の建物の場合は最も広い階で計算します。
カーポートやガレージを設置する場合、建築物の「容積率」制限も考慮する必要があります。「容積率」については以下で解説します。
容積率とは
「容積率」とは、敷地面積に対する建物全体の延床面積(すべての階の面積の合計)の割合を指します。
容積率は、土地の用途地域や街の性格(商業地域、住宅地域等)により自治体が定めており、「延床面積÷敷地面積×100」の計算式で求められます。
つまり、一つの土地に建てられる建築物の規模は、その土地の建ぺい率と容積率によって決まります。そして、この制約はソーラーカーポートにも当てはまります。
一部自治体では、カーポートに対して建ぺい率の緩和措置を実施していることもあります。ソーラーカーポートを設置する前に、必ず地域の法規制や土地の条件を確認するようにしてください。
ソーラーカーポート設置に必要な手続き・建築確認申請とは
建築基準法によって定められた建築物、つまりソーラーカーポートのような構造物を建設する際には、あらかじめその建築物が建築基準法や関連法規に適合しているかどうかを確認する必要があります。この手続きを「建築確認申請」といいます。
建築確認申請は、すべての建築物に対して必須というわけではありません。その必要性は建築物の床面積によって決まります。具体的には、床面積が10㎡以上の建築物を設置する際には、この申請手続きが必要となります。
ソーラーカーポートの場合、面積の計算は屋根の大きさではなく、柱と柱の間の面積を基に行われることが一般的です。したがって、1台用のソーラーカーポートであれば、建築確認申請は不要なことが多いです。しかし、2台以上のソーラーカーポートであれば、建築確認申請が必要になります。
そのため、ソーラーカーポートの設置を計画する際には、そのサイズと建築確認申請の必要性を確認することも重要です。
将来の売却を見越すと、ソーラーカーポートの建築確認申請は不可欠
ソーラーカーポートを建設する際に、建築確認申請を省略するとどうなると思いますか?次はそれを見ていきましょう。
安全性と近隣関係の確保のためにも重要
ソーラーカーポートを敷地いっぱいに設置すると、規定の建ぺい率を超える可能性があります。
例えば、屋根から落ちる雨や雪が隣家の敷地に落ちたり、隣家の日照や通風を悪化させたりするリスクがあります。さらに、万が一火災が発生した場合、ソーラーカーポートが燃えると、自宅だけでなく隣家への延焼も可能性として存在します。これらのリスクを避けるため、建ぺい率を守ることが大切です。
建ぺい率を無視したソーラーカーポート設置は、安全保障だけでなく、近隣住民との関係悪化にもつながる可能性があります。
建築確認申請の重要性
建築確認申請を省略したソーラーカーポートは、違法建築物として指摘される恐れがあります。現実には、建築確認申請を省略したからといってすぐに撤去を指導されることは少ないですが、物件売却の際には不利となる可能性があります。
例えば、違法建築物であるとの理由で、ソーラーカーポート付きの不動産の評価額が低くなる可能性があります。「無料でソーラーカーポートがついてくるから得だろう」と思われるかもしれませんが、それは誤解です。
物件を売却する場合、違法建築物が存在すると「告知義務」が発生します。つまり、ソーラーカーポートが建ぺい率を超えている場合、その事実を正直に伝えなければなりません。
「告知義務」があると、買い手が出る可能性は低下し、また買い手が出ても売却価格を下げる交渉材料となってしまうことがあります。また、違法建築の事実を隠して売却した場合、後に発覚すれば損害賠償請求のリスクまであります。
したがって、建築確認申請は、建築主が行政機関または民間の指定確認検査機関に申請することで、将来のトラブルを避けることができます。設計図や素材に関する詳細な書類を提出する必要がありますので、この手続きは専門家に依頼することが望ましいでしょう。
基本的には不要、しかし例外のあるカーポートの固定資産税
固定資産税は、土地や建物の所有者に課される税金で、一般的には住宅以外の固定資産にはあまり関与しないものです。そのソーラーカーポートと固定資産税との関係について解説します。
固定資産税の対象となる資産とは?
固定資産税の課税対象は大きく二つに分かれます。
- 土地や建物といった不動産
- 「償却資産」と称される、事業に利用できる資産
償却資産には、機械、器具、船舶、航空機、車両、運搬具、備品、工具、構築物等が含まれます。
固定資産税は毎年1月1日現在の所有者に対して課され、その年の税金は4月1日から翌年3月31日までの期間で計算されます。納税は、おおむね6月頃までに発行される納付書を通じて行われます。
カーポートの固定資産税について
カーポートは建築基準法に基づいて建築物とみなされていますが、ガレージとは異なり、基本的には固定資産税が課されません。固定資産税が発生する条件は以下の通りです。
- 屋根がある
- 基礎が地面に固定されている
- 三方向以上が壁で囲まれ、作業や居住が可能な空間が存在する
以上から、ガレージには固定資産税が課されますが、カーポートには基本的に課されません。
しかし例外として、カーポートが家や塀などに近すぎて、壁面があるかのように見える場合、カーポートにも固定資産税が課される可能性があります。
固定資産税対策だけでなく、通路の確保や安全性の観点からも、土地や建物に適したサイズのソーラーカーポートを設置することが重要です。
ソーラーカーポートではソーラーパネルの出力によって固定資産税が変わる?
カーポートの屋根を有効活用して太陽光発電パネルを取り付けたソーラーカーポート。カーポートと太陽光発電の二つの機能が一つになったこの設備は、その便利さから人気が上昇しています。では、ソーラーカーポートの固定資産税はどうなるのでしょうか。
基本的には、カーポートの構造が柱と屋根だけであれば固定資産税はかからないのですが、ソーラーパネルが絡むと少し複雑になります。
太陽光発電装置が10kW以上の出力があれば、それは事業用の設備と見なされ、償却資産として固定資産税が課せられます。一方、出力が10kW未満の場合は、基本的には住宅用として扱われ、固定資産税はかかりません。
ただし、発電量が特に多い場合は、例外的に事業用と見なされ、固定資産税が課される可能性があるため注意が必要です。この点については、具体的な設置計画の際には専門家に相談することをおすすめします。
カーポートにソーラーパネルを設置するまでの流れ
カーポート設置を計画して、この時にソーラーカーポートを検討しているというところを想像してみてください。この時、何から手をつけるべきか?書類の準備?まずは見積もり?ここではソーラーカーポートの設置に必要な具体的な流れを紹介します。
ソーラーカーポート導入の手順
ソーラーカーポートの設置は一般的に以下の流れで進められます。最初のステップは、カーポート販売業者に問い合わせ、大まかな見積もりを取ることです。
そして、より詳細な見積もりを得るために、販売業者に実際の設置場所を確認してもらいます。この際、人の動きや使いやすさに関する要望や周囲の状況などを伝え、具体的な数値を算出します。
- 現地調査を元に販売業者は図面を作成。
- 最終的な見積もりや発電シミュレーションなどの資料に納得がいけば、契約締結。
- 建築確認申請や電力会社への申請手続きなど、各種書類手続きを進めます。
- 建築確認申請通過後、工事開始。
- 基礎工事にはコンクリートが必要で、硬化には時間が必要となるため、全体の工事期間は約1週間から10日ほどかかります。太陽光発電装置の屋内工事以外の日は、お客様が留守でも工事は可能です。
- カーポートの利用開始。太陽光発電装置による発電も開始。電力を売るためには、電力会社と経済産業省への申請が必要となります。
この流れを理解した上で、どのような販売会社を選ぶべきかという問題に移ります。販売業者を選ぶ際には、「施工実績が豊富か」「どのような製品を扱っているか」が基本的な判断基準かと思います。
また、自分の要望に合わせたサイズやデザインの選択が可能か、各種申請手続きを代行できるか、保証内容は十分かなども確認してください。
さらに付け加えるなら、上記内容を含む詳細な見積もりを快く提示してくれる販売業者が好ましいですね。
ソーラーカーポート設置に不可欠な申請手続き
ソーラーカーポートの設置には行政へのさまざまな申請が必要です。主な申請には「建築確認申請」「経済産業省、資源エネルギー庁への申請」「電力会社への申請」があります。
ソーラーカーポートを新設し、発電した電力の販売による収益を得るには、以下の2つの申請が主に必要となります。
- カーポート設置に必要な申請
- 発電した電力の販売(売電)に必要な申請
カーポート設置のために必要な「建築確認申請」
「建築確認申請」は、建築物の性能や安全性を建築基準法に照らして評価する制度です。
10㎡を超える屋根、柱、壁を持つ建築物に対して必要となるため、ソーラーカーポート設置もこれに該当します。
手続きとしては、まず市役所または県庁の建築指導課へ建築確認申請を行い、その後、建築確認済証が交付されると着工が許可。最終的には、建築主事による完了検査が行われて設置が完了します。
この申請手続きは、国家資格を持つ建築士に依頼するか、「確認申請対応」の既製品を選ぶことでスムーズに進行します。
発電した電力の販売(売電)に必要な申請
ソーラーカーポートで発電を行い、その電力を販売する場合、事業者として国から事業計画の認定を受けるとともに、電力会社との契約も必要となります。通常、国への申請、電力会社への申請、および設置準備は並行して進行します。
電力会社の送電線(電力系統)と接続し、発電した電力を売るための契約です。
事業計画策定ガイドラインに基づき、事業計画を立てて提出します。この際、電力会社の接続の同意が得られていること、設備メンテナンスの実施や事業の適切な運営保証の方法が明文化されていることが必要です。
上記の申請が経産省から認められた後、設置工事が開始され、完成後に試運転を行い、電力供給を開始します。
電力会社との特定契約や接続解除、経済産業省への事業計画書提出といった手続きは専門知識が必要で、素人には困難かもしれません。また、電力会社への申請から受理まで時間がかかることも多いです。
そのため、書類作成や申請代行に経験がある施工会社に依頼することで、手続きがスムーズに進行します。ソーラーカーポートの見積もりを取る際に、このような申請代行サービスについても相談してみることをおすすめします。
ソーラーカーポートの導入を検討するときは「建築基準法」もポイント
この記事では、ソーラーカーポートの設置プロセスとその際の必要な法的手続きについて詳しく解説しました。
初めに適切な販売会社を選定し、見積もりと地元の条件に基づいた設計案を作成することから始まります。その後、建築確認申請や電力会社への申請など、様々な申請手続きを進めていきます。
具体的には、まず建築確認申請を行う必要があります。これは、市役所や県庁の建築指導課へ提出するもので、建築物の性能や安全性を確認するものです。また、電力の販売を目指す場合は、電力会社との契約と、経済産業省、資源エネルギー庁への事業計画の提出が必要です。
ソーラーカーポートの設置に当たっては「建築基準法」も適用されるので、一緒に理解しておくことが望ましいでしょう。
これらの手続きは複雑に思えますが、経験豊富な施工会社に依頼すればスムーズに対応してもらえるので、確実に済ませたいのであれば業者に依頼することもおすすめです。
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