日本では、燃料価格上昇による電気料金高騰、火力発電所の老朽化による運転停止と電力不足など、電力に関する問題が増えています。スマートグリッドは、電力ネットワークをIT技術でカバーし、安定した電力需給を目指すという考え方で、企業にとっても押さえておくべきポイントです。しかし、具体的な仕組みや企業の導入メリットについてよく分からない方も多いかと思います。
そこで今回は、スマートグリッドの特徴と仕組み、企業の導入メリットやデメリットについて詳しくご紹介します。BCP対策の一環として電力の供給方法を検討している方や太陽光発電事業を検討している方は、参考にしてみてください。
スマートグリッドとは何?
スマートグリッド(smart grid)は、電力供給に関する新しいシステムに関する専門用語および考え方を指しています。太陽光発電事業を行う企業にも関わる内容なので、特徴を理解しておくことをおすすめします。
それでは、スマートグリッドの意味や特徴について紹介していきます。
IT技術を用いた新しい電力ネットワーク
スマートグリッドとは、IT技術を用いて双方向による電力コントロールを行う次世代型送電網のことです。
元々はアメリカで導入された考え方およびシステムです。アメリカ全土に敷かれている送電網は老朽化していて、なおかつ地域ごとの電力需要に合わせて柔軟に対応できない状況だったため、2003年に大規模停電が発生してしまいました。そこで、双方向・リアルタイムな電力管理を行えるようスマートグリッドという考え方が生まれました。
スマートグリッドを用いた送電システムは、情報通信技術(ICT)が組み込まれているので、スピーディなデータ測定と記録を実現しています。さらに個人や企業もICTを取り入れることができるようになり、施設内や家庭内で効率的な電力の供給や蓄電を行えるのが特長です。
リアルタイムで電力需要を把握
主な特徴の1つは、リアルタイムなデータ測定と記録です。
従来の電力測定システムはアナログ形式なので、各設備の電力需要をリアルタイムで測定できない状態でした。そのため、各家庭やビル、工場の電力需要に合わせて電力供給量の調整を進められません。
一方、スマートグリッドの場合は、スマートメーターによってリアルタイムな消費電力量や供給量を測定および確認が可能です。スマートメーターは、インターネット経由で消費電力量を測定したり遠隔で電力供給料を調整したりできるシステムを指します。
電力会社にとっては、スマートメーターから送信されるデータをもとに電力の供給料を調整できますし、発送電にかかるコストを抑えながら効率よく事業運営できます。
双方向で電力供給可能なシステム
一方向ではなく双方向で電力の流れを構築できるのが、スマートグリッドの大きな特徴です。
従来の送電システムは、電力会社所有の火力発電所や原子力発電所、太陽光発電所などの発電所から、工場や各家庭へ電力を流す「一方向」の仕組みでした。
しかし、太陽光発電などの再生可能エネルギーを自社で活用する場合は、双方向で電力をコントロールできるシステムがなければ、効率よく運用できません。
そこでHEMSやBEMSといった自動制御可能システムを導入すれば、太陽光発電で発電した電気を蓄電池へ貯めたり社内の空調設備や照明へ供給したりできます。また、発電量が少ない場合は、HEMSやBEMSによって社内設備の電源を切ったり消費電力量を抑えたりしてもらえます。
このような電力の自動制御や双方向による電力の流れを実現できるシステムは、スマートグリッドの1つであり、脱炭素経営において欠かせない技術です。
スマートグリッドに欠かせない技術
ここからは、スマートグリッドの仕組みに欠かせない技術や装置を紹介します。
スマートメーター
スマートメーターには、内部に通信機器やマイクロコンピュータなどが搭載されています。
主な機能は、以下の通りです。
- 消費電力量の測定
- 自動検針
- インターネットを通じて消費電力量のデータを電力会社のサーバへ送信
従来のアナログ式メーターは、1ヶ月単位の消費電力量しか測定できませんでした。スマートメーターの場合は、1時間や30分単位の消費電力量を測定してもらえます。さらにアンペア数を遠隔で変更できるため、アンペアの変更手続きを簡単に進められます。
再生可能エネルギーの制御に必要なHEMS
HEMSやBEMS、FEMSといったコントロールシステムは、スマートグリッドの構築および維持に欠かせません。
システム名 | 概要 |
---|---|
HEMS(Home Energy Management System) | 住宅内の消費電力量を見える化、最適な運用を行うためのシステム |
BEMS(Building and Energy Management System) | ビル内の電力をコントロールしてくれるシステム 温度センサーなどで空調設備や照明設備の自動制御も可能 |
FEMS(Factory Energy Management System) | BEMSの工場版、工場内の空調設備や照明設備など、各種設備の自動制御が可能 |
共通しているのは、施設内の電力を自動制御してくれる点です。HEMSやBEMSなどは、空調設備など各機器の消費電力量を計測するだけでなく、温度や湿度の測定によって現在の環境に適しているか判断し、人に負担のかからない範囲で設備の稼働を抑えます。また、太陽光発電システムや蓄電池と連携した場合は、発電した電気を効率よく照明や空調設備などへ供給してくれます。
このようにスマートグリッドに欠かせないBEMSなどは、太陽光発電の効率的な運用にも重要なシステムです。
スマートグリッドの導入によるメリット
ここからは、スマートグリッド導入によるメリットについて確認していきましょう。
自社の消費電力量を見える化できる
スマートグリッドの考え方を自社に取り入れた場合は、電力の見える化を実現できます。
脱炭素経営や電気料金の削減を目指すには、まず各時間帯の消費電力量を確認する必要があります。スマートメーターは30分ごとの消費電力量を計測してくれますし、BEMSなどのコントロールシステムであれば各機器の消費電力量まで記録してもらえます。
なお、スマートメーターの交換工事は無料です。さらに電力会社が住宅やビルなどの電力量計を交換しているので、既に切り替えられている場合もあります。
スマートメーターの交換状況を確認したい時は、電力会社へ問い合わせてみましょう。
双方向の電力コントロールでロスを軽減
スマートグリッドの導入は、電力のコントロールにつながります。
自社の固定費を削減するには、各種設備の稼働状況を調整する必要があります。しかし、手動で各種設備の設定を常時調整・監視するのは、容易ではありません。
たとえば、時間帯に応じて照明の明るさを調節したり温度や湿度に合わせて空調の温度設定を常時調整したりなどの作業は、従業員にとって負担がかかります。
そこでBEMSといった自動制御システムを設置すれば、人の動きやフロアの温度に合わせて照明や空調設備の細かな調整を行ってくれます。また、各設備の消費電力量をパソコンやスマートフォンから確認することが可能です。
太陽光発電などの再エネを効率よく活用できる
BEMSなどのシステムと太陽光発電の連携を行うことで、自社の電力を少しでも安定化させることが可能です。
従来の送電網は、電力会社から各家庭や企業へ送電する一方向の仕組みでした。しかし、このような仕組みでは、電力不足や停電時に各個人や企業で対処できません。
太陽光発電などの再生可能エネルギー設備や制御システムを組み合わせた場合は、効率よく自家消費できます。また、蓄電池と併用すれば、消費電力の少ない時間帯に電気を貯めて、消費電力の多い時間帯に自家消費といった活用も行えます。
さらに災害時は、地域の建物や自社の生産設備へ送電することで、自社や地域の被害軽減および早期復旧につなげることが可能です。
スマートグリッド導入によるデメリット
続いては、スマートグリッド導入によって懸念されるポイントやデメリットを確認していきます。
再エネなどへの投資で費用負担が増える
BEMSや太陽光発電設備のへの投資で費用負担がかかるため、慎重に検討するのも大切です。
BEMSやFEMSは、導入費用数100万円~、維持管理費用で年間数万円~程度かかります。さらに事業用太陽光発電の設置費用は、規模の小さな設備でも数100万円程度、出力500kWなどの中規模以上であれば数1,000万円以上の資金が必要です。
そのため、スマートグリッドを導入する時は、融資を受けられる状態の確認や、自己資金で修繕費用などをカバーできるかシミュレーションしておくのが大切です。
サイバー攻撃のリスクに注意
自社の設備をインターネットで接続する場合は、サイバー攻撃や情報管理に気を付ける必要があります。
たとえば、クラウド型の電力監視サービスを利用する場合、クラウドサービスにハッキングされると、社内の設備の使用状況などの情報を盗まれてしまう可能性があります。また、空調設備や自動ドア、照明設備など連携済みの設備が、ウイルスによって誤動作してしまうリスクも考えられます。
そのため、セキュリティソフトの導入はもちろん、セキュリティに強い担当者の育成と配置、ハッキングを受けた際の対処方法を決めておく必要があります。
他にもBEMSなどで取得したデータをUSBへ一時保管する場合は、外部へ持ち出して紛失しないよう、社内の管理方法について定めておくのも大切です。
スマートグリッドへ向けてまずは太陽光発電を検討!
企業がスマートグリッドの仕組みを導入する場合は、まず太陽光発電の導入を検討してみるのがおすすめです。
そこで最後は、スマートグリッドという観点から太陽光発電を導入するメリットや運用方法について紹介します。
電気料金負担を直接削減できる
太陽光発電の大きなメリットは、電気料金負担を大幅に削減できるという点です。
省エネ機器の導入や節電といった対策は、電気料金の削減につながります。しかし、再エネ賦課金や燃料費調整額など、消費電力量にかかわらず値上がりしているコストを抑えることはできません。また、節電にも限界があるので、電気料金削減額を伸ばすことは難しいといえます。
太陽光発電を導入した場合は、発電した電気を自社で消費できます。ということは、電力の購入量を直接減らせますし、自社の消費電力量を無理やり抑えなくとも一定の電気料金削減効果を見込めます。さらに再エネ賦課金や燃料費調整額の負担を大幅に削減できるため、昨今の燃料価格高騰や再エネ賦課金高騰といった状況の中でも固定費の負担を抑えることが可能です。
脱炭素経営をアピールしやすい
脱炭素経営や環境経営をアピールしやすいという点は、太陽光発電の強みといえます。
太陽光発電は広く普及していますし、一目で環境経営を実施していると認識されやすい設備です。BEMSやFEMSも環境経営のアピールに活用できますが、再生可能エネルギーと比較すると一目で対策していると分かりにくいシステムといえます。
太陽光発電は、スマートグリッドにつながる設備ですし、なおかつ環境経営の第一歩として役立ちます。また、BCP対策としても活用できるため、災害時の電源確保について考えている企業におすすめです。
スマートグリッドは新しい電力ネットワークのこと!
スマートグリッドは次世代型の送電網という意味で、スマートメーターによる電力の見える化やBEMSによるエネルギーの統合的な制御、太陽光発電などによる双方向の電力供給といったシステムが求められています。また、企業もスマートグリッドの考え方を導入することは可能で、特に太陽光発電は比較的設置運用しやすい設備です。
電力の自立を目指している企業や脱炭素経営としてスマートグリッドにも関心を持っている方は、今回の記事を参考に自家消費型太陽光発電投資を検討してみてはいかがでしょうか?
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