環境省は令和4年の5月、「省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム(EEGS)」を順次使用開始することを発表しました。事業者にとって省エネや温暖化対策の報告は負担が大きいもの。そもそもEEGSとは何でしょうか?また、システムを導入することでのメリットもしりたいところでしょう。今回はEEGSについて詳しく解説していきます。
EEGSとは「省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム」
経済産業省のホームページによると、EEGS(イーグス)とは、「省エネ法・温対法・フロン電子報告システム」の略称で、省エネ法・温対法・フロン法の同時報告と、温室効果ガス排出に関する情報の統合管理を目的とするシステムです。
令和4年度以降の省エネ法・温対法・フロン法に係る報告は、 原則としてEEGSを利用する事とされています。これにより、各制度の報告書の作成から提出までをこのシステムで完結することができます。
ここでは、EEGSの詳しい内容を解説していきます。
SHK制度に基づく事業者負担軽減システム
SHK制度とは、「地球温暖化対策の推進に関する法律」に基づく「温室効果ガス排出量算定・報告・公表制度」の事です。
わかりやすく言うと、温室効果ガスを一定量以上排出する事業者は、自らの排出量の算定と国への報告を義務付け、報告された情報を国が公表する制度の事です。
この制度の目的は、温室効果ガスを排出する事業者が自主的に排出量を算定するための基盤の確立と、情報を公表して可視化する事で、国民と事業者全般が自主的に取り組む流れを生み出す事です。
これまでの電子報告システムに変わり、2022年5月から「省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム」 EEGS(イーグス)が使用可能となりました。
EEGSの操作マニュアルはオンラインで視聴可能
EEGSは、省エネ法や温対法などの同時報告と温室効果ガス排出に関する情報をまとめて報告できるシステムです。しかし実際に利用しようとしても、どのような操作で取り扱えばよいのか分からない人がほとんどでしょう。
そこで事業者負担軽減システムとして機能するために、環境省ではEEGSのマニュアルをWeb上で公開しています。主に動画を中心とした内容になっており、操作の内容がわかりやすく説明されています。
参照:EEGSマニュアル
【EEGS】省エネ法・温対法・フロン法の違いとは?
ここまでEEGSについて解説してきました。システムを運用するためには報告のテーマとなる「省エネ法」「温対法」「フロン法」を理解しておく必要があります。
そのため、ここではEEGSに必要な3つの法律について解説していきます。
省エネ法
省エネ法とは、1979年に制定された「エネルギーの使用の合理化等に関する法律」(以下省エネ法)です。
オイルショックがきっかけとなり、工場や輸送機関などでエネルギーを効率的に利用していく目的で制定されました。
省エネ法におけるエネルギーとは、以下に示す燃料、熱、電気を対象としており、廃棄物からの回収エネルギーや風力、太陽光等の非化石エネルギーは対象となりません。
【燃料】
- 原油及び揮発油(ガソリン)、重油、その他石油製品(ナフサ、灯油、軽油、石油アスファルト、 石油コークス、石油ガス)
- 可燃性天然ガス
- 石炭及びコークス、その他石炭製品(コールター連ル、コークス炉ガス、高炉ガス、転炉ガス)
【熱】
上記に示す燃料を熱源とする熱(蒸気、温水、冷水等)対象とならないもの:太陽熱及び地熱など、上記の燃料を熱源としない熱のみであることが特定できる場合の熱
【電気 】
上記に示す燃料を起源とする電気。
対象とならないもの:太陽光発電、風力発電、廃棄物発電など、上記燃料を起源としない電気のみである事が特定できる場合の電気
省エネ法がエネルギー使用者へ直接規制する事業分野は、工場、事業場、運輸分野です。
工場等の設置者や輸送事業者に対し、省エネ取り組みを実施する際の目安となるべき判断基準を示すとともに、一定規模以上の事業者にはエネルギー使用状況等を報告させ、取り組みが不十分な場合には指導、助言、合理化計画の作成指示等を行うとしています。
温対法
「温対法」は正式名称を「地球温暖化対策推進法」といい、平成9年に採択された京都議定書を受け、平成10年に成立しました。
温室効果ガスの排出量に対する報告義務や排出量抑制等について規定しており 、地球温暖化対策の防止を目的として制定された法律です。
「省エネ法」も温室効果ガス排出量の報告義務があるため似ていますが、その違いは、省エネ法では燃料・熱・電気を対象とし、再生可能エネルギーなどの非化石エネルギーは含まれていません。
「温対法」の対象となる事業者は、事業で排出する温室効果ガスの種類が「エネルギー起源CO2」か「エネルギー起源のCO2以外の温室効果ガス」で分けられています。
【エネルギー起源CO2の事業者】
「特定事業所排出者」と「特定輸送排出者」に分けられます。「特定事業排出者」とは、全ての事業所のエネルギー使用量合計が1,500kl/年以上となる事業者です。
「特定輸送排出者」とは、省エネ法の特定旅客輸送事業者や特定荷主などにあたる事業者です。
【エネルギー起源のCO2以外の温室効果ガスの事業者】
①温室効果ガスの種類ごとに全ての事業所の排出量合計がCO2換算で3,000t以上
②事業者全体で常時使用する従業員の数が21人以上
①と②の両方を満たすと「特定事業所排出者」として認定されます。
温対法対象の温室効果ガスには大きく以下6つの種類があります。
- 二酸化炭素
- メタン
- 一酸化二窒素
- ハイドロフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
- パーフルオロカーボンのうち政令で定めるもの
- フッ化硫黄
【排出量の報告期限】
「特定事業所排出者」:毎年度7月末日まで
「特定輸送排出者」:毎年度6月末日まで
排出量の報告をしない、または虚偽の報告をした場合には、20万円以下の罰金が科せられます。
フロン法
「フロン法」は、正式名称を「フロン排出抑制法」といい、「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」で、平成27年4月に施行されました。
フロンはフルオロカーボン(フッ素と炭素の化合物)の総称で、CFC(クロロフルオロカーボン)、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)、HFC(ハイドロフルオロカーボン)を「フロン類」と呼んでいます。
化学的にきわめて安定した性質で扱いやすく、人体への毒性が低いといった性質を有していることから、エアコン、冷蔵・冷凍庫の冷媒や、建物の断熱材、スプレーの噴射剤など、身の回りのさまざまな用途に活用されいます。
しかし、フロン類はオゾン層を破壊する原因物質であるだけでなく、二酸化炭素の数百倍から1万倍程度の温室効果を持つ地球温暖化の原因物質でもあります。
そのため、フロン類を使用している業務用冷凍空調機器の適正な管理が必要であり、フロン類の製造から廃棄までを通した全体的な対策が求められてきました。
数回の法改正の結果、現在では、機器を廃棄する際にフロン類を回収しないと、即座に罰金が科せられるなどの直接罰の仕組みが導入されています。
EEGS導入の流れとは
「省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム」 EEGS(イーグス)が利用可能となりました。それでは、実際にEEGSを利用するにはどのような流れを踏めばいいでしょうか?
EEGS操作マニュアルを参考に、手順事に詳しく解説していきますので確認してみてください。
1.EEGSの利用申請
EEGSを使用するには、まず利用申請手続きを行います。利用の申請(ログインIDの申請)は、書面での郵送となります。指定の様式をダウンロードして、制度を管轄している省庁へ郵送にて提出してください。
※旧「省エネ法・温対法電子報告システム」「フロン法電子報告システム」を使用するためのアクセスキーを発行済みの場合は、そのアクセスキーを使う事ができます。
1:「電子情報処理組織使用届出書」に必要事項を記入して提出します。
対象事業者によって、届出様式、届出先が異なりますので、間違えないよう一覧で表記します。
【省エネ法(特定事業者、特定 連鎖化事業者、認定管理統 括事業者、特定荷主又は認 定管理統括荷主)の場合 】
届出様式:省エネ法様式代43
様式ダウンロードURL:様式ダウンロードページ | 工場・事業場の省エネ法規制 | 事業者向け省エネ関連情報 | 省エネポータルサイト (meti.go.jp)
届出先:経済産業局
【省エネ法(特定輸送事業者 又は認定管理統括貨客輸 送事業者)】
届出様式: 省エネ法様式第 27
様式ダウンロードURL:環境:輸送事業者の皆様へ(省エネ法) – 国土交通省 (mlit.go.jp)
届出先:国土交通本省又は地方運輸局
【フロン法(特定漏えい者】
届出様式:フロン法様式第4号
様式ダウンロードURL:環境省_漏えい量の算定・報告 – マニュアル・様式|「フロン排出抑制法」ポータルサイト (env.go.jp)
届出先:経済産業省又は環境省
【温対法(特定排出者) 】
届出様式:温対様式第 4
様式ダウンロードURL:環境省_マニュアル・様式 |「温室効果ガス排出量 算定・報告・公表制度」ウェブサイト (env.go.jp)
届出先:経済産業局または環境事務所
2.アクセスキーとログインIDの発行
【アクセスキーの受領】
省庁で「電子情報処理組織使用届出書」を確認後、1ヵ月程でアクセスキーが郵送、メール等により届きます。
【ログイン ID の発行】
利用申請情報を確認、入力しログイン ID の発行手続きを行います。
システム利用の届け出
ID番号・パスワードが入手できたらシステムにログインし、報告書をWeb上で入力(温対法報告書のみ)またはアップロードします。また必要に応じて、添付資料も併せてアップロードします。
報告書は一部システム内で入力チェックされ、必要な情報が記載されていることが確認されると、提出することができます。
【EEGS :ログイン画面の URL】
https://eegs.env.go.jp/eegs-report/login
【EEGS 稼働時間】
4 月~8 月 : 土日祝日を含む 24 時間 9月~3月 : 平日 7:00 ~23:00
EEGSに関する問い合わせ先
電子報告システム全般(操作方法等)については、以下の窓口に問い合わせる事ができます。
【電子報告システム(EEGS)ヘルプデスク】
株式会社セック
E-Mmail:g-eegs-support@sec.co.jp
電話番号:03-4446-6054
※お問合せはできるだけメールでお願いしますとの事です。
EEGS導入のメリットとは
EEGS導入の目的は、省エネ法・温対法・フロン法の報告書の作成から提出までをワンストップ化する事により、事業者の報告書作成や提出の負担を軽減することです。
以下に、EEGS導入のメリットをまとめて解説しましたので、参考にしてみてください。
インストール不要で利用できる
EEGSは報告書作成支援ツールと異なり、使用に際してインストールは不要であり、指定のURLにアクセスしてログインするだけで利用可能です。そのため、EEGSでの報告は従来のツールよりも効率よく行うことが可能です。
事業者の報告負担が軽減
システム上で報告書提出が完了するため、紙での提出が不要となり、省エネ法・温対法・フロン法における各種報告の一元管理が可能です。また、システム上で入力値の自動チェックが可能で、人為的なミスを無くす事ができます。
そのため、事業報告者の報告書提出に伴う負担が軽減します。
報告のためのデータ収集の簡易化
複数の事業所を持つ事業者でも、各事業所から同時にデータ入力が可能で、データの収集がシステム上で行われる事から、情報収集の負担が軽減します。
過去の報告データを確認できる
過去に提出した報告書の内容を確認でき、過年度の報告内容を参照しつつ今年度の報告書を作成可能になります。
EEGSに関するまとめ
今回は、環境省が令和4年の5月に発表した「省エネ法・温対法・フロン法電子報告システム(EEGS)」について説明しました。
EEGSを使用する事で、事業者にとって負担であった報告業務が一本化され、数値の自動入力などの人為的なミスを減らす事も可能となりました。
EEGSの利用には事業者ごとに異なる利用申請が必要ですが、環境省ホームページ上の利用マニュアルを参考に是非導入を検討してみて下さい。