電力の需給管理システムとは何?太陽光発電との関連性についてわかりやすく紹介

電力の需給管理システムとは何?太陽光発電との関連性についてわかりやすく紹介

近年、再生可能エネルギーの発展と共に電力の需給管理システムに関する技術やサービスも進化しています。電力需給管理サービスは、文字どおり需要と供給を常時調整するサービスで、発電事業者や小売電気事業者、需要家にとってメリットの多いシステムです。しかし、一般的に認知度の高いサービスではないため、自社にとってメリットのあるサービスかどうかわからないかと思います。

そこで今回は、電力の需給管理システムやサービスの仕組みや特徴、太陽光発電との相性について詳しくご紹介します。自社の電気料金負担について悩んでいる方や非FIT型太陽光発電で売電を行う方などは、参考にしてみてください。

電力の需給管理とは

電力の需給管理とは、電力の安定供給に必要な需要と供給のバランス、計画書作成、発電状況の監視に関する業務やシステム全般などを管理することです。

電力を供給および販売している小売電気事業者は、事前に電力の需要を予測したり電力広域的運営推進機関へ電力供給量に関する計画書を提出したりといった業務を行います。また、FIP制度を利用して太陽光発電の売電事業を進める時は、小売電気事業者と同じく電力需給計画書の提出を行わなければいけません。

そのため、小売電気事業者やFIP制度を活用して電力を売電する時は、電力需給管理に関するシステムの整備やノウハウを自社で準備しておく必要があるのです。

電力の需給管理が必要な理由

電力の需給管理に関する概要を理解したあとは、具体的な必要性について確認していきましょう。

一見すると需給管理は面倒に感じますが、社会インフラの維持に大きな影響を与えます。そのため、太陽光発電で売電を行う企業も、需給管理の重要性と必要性について理解しておくことが大切です。

電力の安定供給には需給バランスの調整が必要

私たちがいつでも安定した電気を使用できているのは、電力需給管理によってバランス調整されているためです。

電力には特殊な性質があります。それは、蓄電池がなければ貯められないことと、電気の供給量と需要が同じタイミングでかつ同じ量、つまり「同時同量」でなければ安定しないということです。

近年、NASといった大容量の蓄電池設備が開発されているものの、日本全国の発電所から発電されている電気を貯める十分な容量はありません。発電量が多すぎる・少なすぎる、電力需要が増える・減るといった電力需給の偏りが生じると、大規模停電(ブラックアウト)につながる可能性があります。

そのため小売電気事業者や発電事業者側は、「同時同量」を守りながら、継続的に発電と供給の調整を行わなければいけません。

電力市場での取り引きにはインバランスリスクが存在

適切な電力需給管理を行わなければ、インバランスコストの負担が生じます。インバランスとは、電力広域的運営推進機関へ事前に提出した電力供給量と需要値の予測と実際の需給量で生じたズレ(差分)のことです。

もしインバランスが発生したまま電力を供給してしまうと、停電リスクにつながります。そこで一般送配電事業者(大手電力会社10社)は、インバランス分の電力を調整しながら安定供給に努めています。

インバランスが発生した場合、一般送配電事業者へインバランスコストを支払う4必要があります。電力の需給管理は、インバランスコストを少しでも抑えるために欠かせない考え方およびシステムなのです。

電力需給管理サービスを利用するメリット

電力需給管理を検討している方は、「FIP制度を活用して売電したいけど、電力需給管理のリソースに限りがある…」など、自社で需給管理業務に対応できず悩んでいるのではないでしょうか。

近年、電力関連サービスの中には、電力需給管理に関するサポートサービスも誕生しています。次は、電力需給管理サービスの導入メリットについてわかりやすく紹介していきます。

自社単体で需給管理を維持できなくとも事業を継続できる

自社単体で電力需給管理を維持できなかったとしても、電力需給管理サービスを活用することで電力事業を継続することが可能です。

前半でも少し触れましたが、電力の需給管理業務は多岐にわたります。気象情報などから電力の需要値を予測分析したり、分析結果からインバランスリスクを抑えた発電計画の策定を行ったりするなど、さまざまな業務を進めていく必要があります。

しかしノウハウや人材、設備投資の資金などの不足といったさまざまな理由から、電力の需給管理を進められないケースも出てくるでしょう。

電力需給管理サービスに依頼すれば、自社に不足している部分をカバーしてくれますし、発電や電力の小売り事業をスムーズに進めることが可能です。

高精度な需給予測や計画作成サポート

電力需給管理サービスへ管理を委託した場合は、高精度な電力需要の予測、スピーディな発電計画作成など、専門業者ならではの高品質なサービスを受けられます。

インバランスリスクを抑えるには、正確な気象予測データの収集と分析ツールの取得、電力需要に合わせたスピーディな発電もしくは電力取引が必要です。

電力需給管理サービスを提供している企業は、単に電力の供給量を調整するだけでなく、気象予報士による気象予測、電力需要の予測と調査、事業リスクのシミュレーション、発電量の遠隔監視、卸電力市場の取引価格に関する情報共有など、効率的かつ高精度な管理システムを備えています。

FIP制度へ移行した太陽光発電事業者や小売電気事業者として太陽光発電設備を活用していきたい方は、電力需給管理サービスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。

再エネ電源の仲介や紹介サービスもある

電力需給管理サービスによっては、再エネ電源の仲介や紹介サービスを提供してもらえます。電力関連サービスのエナリスでは、再生可能エネルギー電源設備の購入へ向けたサポートや再エネ発電事業者との取引仲介や入札サポートを行っています。

自社で発電設備を所有していない小売電気事業者は、卸電力市場から電力を購入しなければならず、電力価格が高騰した場合、大きな影響を受けてしまいます。再エネ電源を購入すれば、電力供給コストを抑えることが可能です。

電力需給管理サービスなら、再エネ電源の導入方法に関するサポートを受けられますし、再エネ発電事業者の選定や電力調達に関する契約手続きなども代行してくれます。

非FIT型太陽光発電の売電事業をスムーズに展開できる

非FIT型太陽光発電による小売電気事業や、FIP制度を活用した太陽光発電で売電を行う際、スムーズに事業を展開できます。

非FIT型太陽光発電は、FIT制度の認定を受けていない太陽光発電所を指しています。発電した電気は、自家消費や卸電力市場での取り引き、個別に契約した上で電力供給することが可能です。

一方、FIP制度は、卸電力市場の市場価格に連動した単価で売電を進められる新しい制度で、インバランスなども導入されています。

非FIT型太陽光発電とFIP型太陽光発電はどちらも発電量が不安定なので、インバランスリスクの大きい設備です。電力需給管理サービスを活用すれば、需要に合わせた発電量の調整を行ってもらえます。

電力需給管理システム例

ここからは、電力需給管理システムを提供しているサービス例を3つ紹介していきます。

NEC電力需給管理クラウドサービス

大手電機メーカーのNECでは、NEC電力需給管理クラウドサービスを提供しています。

主なサービス内容は、以下のとおりです。

  • 電力の需要予測
  • 電力需要の計画値と計画書作成
  • 電力の調達(スポット入札や時間前市場取引)
  • 電力需要と供給バランスの管理
  • 収支の計算と記録

インターネットを通じて各種サービスの利用やデータ連携、発電状況や電力需要を進められるのが、NEC電力需給管理クラウドサービスの強みです。

また、バランシンググループのサービスがあるので、電力調整業務の手間を省略しながら営業活動に注力できます。(バランシンググループ:複数の小売電気事業者がまとまり、一般送配電事業者と送供給契約を結ぶ)

他には、自動化に関するオプションを利用することで、週末のスポット入札手続きを自動で進めることが可能です。

三菱電機の需給管理サービス

三菱電機では、独自製品による電力需給管理サービスやサポートを提供しています。電力需給管理ソフトのBLEnDerは、複数のソフトウェアで構成されています。以下に機能の一部を紹介します。

  • 気象情報や需要家(電力を使用する)の実績から需要の予測と計画書作成
  • さまざまな条件から収益を伸ばすための発電計画を策定
  • 電力の発電や販売計画を電力広域的運営推進機関へ提出
  • 電力需給実績を監視し、同時同量かどうかチェック
  • 発電データの管理
  • 顧客情報や料金などに関するデータ管理
  • 卸電力市場での電力取り引き

ソフトウェアによるサポートの他、三菱電機による中長期の経営計画に関するプランニングやサポート、インバランスリスクの最小化へ向けた支援などを受けられるのが、同サービスの特長です。

エナリスの需給管理サービス

エナリスの需給管理サービスは、予測技術と再エネ電源のサポート、実績という点でメリットがあります。

需給管理サービスを利用した場合は、以下のような流れで需要値の予測や電力取り引きに関する支援を受けられます。

  1. 気象情報や事業者の状況から2日後の発電量を計算
  2. 電力需要と予想される発電量を計算し、余剰電力や不足分の分析
  3. 余剰電力や不足分を卸電力市場で取り引きし、カバー
  4. 電力広域的運営推進機関へ計画書を提出
  5. 発電量や需要値を常時監視し、過不足分のカバー
  6. 定期的に損益に関する詳細な資料を作成

電力需要の詳細な分析は、天候情報に基づいてエナリスの社内気象予報士が行います。そのため、より正確な電力需要値を計算してくれますし、インバランスリスクの回避につながります。

さらに再エネ電源や事業リスク低減につながる発電設備の導入サポートがあるので、自社設備を導入したい企業にとってもメリットの多いサービスです。

電力需給管理以外で太陽光発電を運用する方法

非FIT型太陽光発電を導入する方の中には、「電力需給管理について把握したものの、需給管理サービスの利用コストや売電事業のリスクなどの問題があるので、別の方法で設備を活用したい」と考えている方も多いのではないでしょうか。

そのような時は、全量自家消費型太陽光発電へ移行してみるのがおすすめです。

全量自家消費型太陽光発電を導入すれば、自社の電気料金削減効果を伸ばせますし、コスト面でも売電事業よりメリットの多い運用方法といえます。

最後は、全量自家消費型太陽光発電の強みや特徴について確認していきましょう。

電力需給管理サービス不要で効率的に運用可能

全量自家消費型太陽光発電の場合は、電力需給管理システムの導入やサポートサービス不要で運用を継続できます。

太陽光発電で発電した電気は、全て自社の建物や設備へ供給される仕組みです。そのため、卸電力市場への売電や取り引き、同時同量の原則に沿った発電量の調整など、さまざまな負担から解放されます。

また、発電した電気は、自社の倉庫や工場、事務所のコンセントや照明設備、自動ドア、生産設備などさまざまなところで利用できます。

電力需給管理サービスの利用コストを抑えられるのは、全量自家消費型太陽光発電の大きなメリットです。

インバランスリスクを回避できる

全量自家消費型太陽光発電へ移行する場合、インバランスリスクを含むさまざまな負担を回避することが可能です。非FIT型太陽光発電やFIP型太陽光発電の場合は、売電収入を得られる代わりにインバランス分の負担もかかります。

一方、全量自家消費型太陽光発電は、送配電事業者への電力需給計画の提出が不要です。また、売電を行わないため、インバランスリスクも発生しません。

さらに発電した電気を直接自社の設備へ供給できるので、効率よく電気料金を削減できます。電気料金は2022年頃から高騰しており、メリットの多い運用方法といえます。

電力需給管理は太陽光発電事業者にとっても必要不可欠な管理業務!

電力の需給管理は、小売電気事業者として電力を供給する際に必要とされる管理業務です。また電力需給管理サービスは、発電計画の作成や発電量の監視、経営計画のサポートなど総合的な支援をしてくれます。

しかし電力需給管理サービスには利用料金がかかりますし、自社で対応しようとするとインバランスコストや管理業務といった負担がかかってきます。

太陽光発電所の運用方法に悩んでいる方や太陽光発電を活用した小売電気事業より自家消費を行うべきか検討している方は、和上ホールディングスの全量自家消費型太陽光発電サービスを検討してみてはいかがでしょうか。

全量自家消費型太陽光発電サービスは、太陽光発電所の設置場所に関する選定から設置計画、設備の設計図面作成、部材調達と設置工事、施工後の保守管理まで一括対応しています。

さらに3つのサービスを用意しているので、自社敷地内への設置や遠隔地からの自己託送、PPA方式による初期費用0円など、ご要望に合わせたプランを検討いただけます。

少しでも自家消費型太陽光発電に関心を持ち始めたら、この機会にぜひご相談ください。

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