太陽光パネルの絶縁不良とは?原因と対処法をわかりやすく解説

太陽光パネルの絶縁不良とは?原因と対処法をわかりやすく解説

太陽光パネルで起こり得るトラブルのひとつが絶縁不良です。太陽光パネルのみならず、電気設備で絶縁不良は度々発生しています。設備トラブルは少しの対応の遅れが大きな事故へつながる可能性もあるため、原因や対処法を知っておきたいものです。今回は太陽光パネルの絶縁不良について解説していきます。

太陽光パネルの絶縁不良とは?

太陽光パネルの絶縁不良とは、漏電や感電を防止する役割を持つ絶縁体が、何らかの原因で機能せず電気を漏らしてしまう状態のことです。絶縁体とは電気を通さない物質のことで、電気コードの外側にあるゴムや、ビニール製のコーティング素材も絶縁体です。

絶縁不良をそのままにしておいた場合、電気機器の故障の原因になるだけでなく、感電事故や漏電による火災などの人命に関わる危険因子にもなり得ます。

太陽光発電では、パネル部分のほかにケーブルやコネクタなどの電気回線が通っており、経年劣化や雨水、台風などの自然災害などにより徐々に絶縁性能が低下していくため、絶縁不良が起こりやすくなります。

【太陽光パネル】絶縁不良の主な原因

太陽光パネルの導入を検討するにあたり、絶縁不良のトラブルはリスク管理のひとつとして頭におくべきです。太陽光パネルにおける絶縁不良の主な原因についてご紹介していきます。

雨水による漏電と地絡

太陽光パネルが絶縁不良を起こす原因のひとつが、雨水による漏電と地絡(ちらく)です。

漏電とは、電気が流れるべき道から外れてしまう状態を指します。地絡とは、地面に電気が流れてしまっている状態です。

リスクの大きさをケガで例えると、漏電が軽症で地絡は重症。通常、電気系統で地絡が発生することは稀で、漏電から地絡になってしまうケースが多いです。漏電も地絡も放置しておけば、停電や火災・感電などのおそれがあるため、早急な対応が必要となります。

太陽光パネルでの漏電や地絡の原因は「雨水」によるものが多いです。

雨水による漏電や地絡になるケースは以下が挙げられます。

  • 電気系統のケーブル劣化
  • 太陽光パネル自体の漏電
  • 雨水処理不足

電気系統のケーブル劣化は、主にパワーコンディショナーと電力系統の間で起こります。ケーブルの劣化が原因で外側に亀裂やキズがついた状態になり、そこから雨水が侵入すると、漏電につながります。ケーブルが地面に触れている状態では、漏電から地絡へ拡大することもあるのです。

太陽子パネル自体の漏電は、決して起きないものではありません。通常、太陽光パネルは数枚~十数枚での設置になるため、1枚だけの不良でも他のパネルに影響し、絶縁不良や漏電などにつながるケースが多いです。このほか雨水の処理不足とは、太陽光パネル設置の際に雨水の流れを考慮した設計がなされていない状態のことです。

地絡は感電の恐れがあるため大変危険

地絡での最も危険な事故は「感電」です。通常、電線などの電気系統は絶縁体に覆われているため、電線を掴んでも感電することはありません。地絡の場合、漏れた電気が地面に流れている状態であるため、その場所を通ると感電してしまいます。

感電は体内に流れた電流の大きさにより被害の程度が異なります。最悪の場合、命に関わることもあるでしょう。

電流の大きさによる身体への影響の目安は以下のとおりです。

  • 1mA(ミリアンペア):身体への影響はほぼ無し。ピリッとした軽い刺激
  • 10mA:激しい痛み
  • 20mA:感電の影響で筋肉がけいれんする。手にしている電線を放せない
  • 50mA以上:短時間で命を落とす可能性がある

感電防止のためにも、地絡が発生した場合の対応は早急に行ないましょう。

小動物によるケーブル損傷での短絡

短絡とは、損傷したケーブル同士が接触して「ショート状態」になる現象です。短絡事故の原因のひとつが、小動物によるケーブル損傷で、ネズミなどの野生小動物がケーブルなどをかじってしまうトラブルです。

事例は多くありませんが、ケーブルが損傷し、電線を覆う被膜が破れてむき出しになった状態の回線同士が接触・ショート状態になり、絶縁不良につながります。

葉っぱや鳥の糞付着によるホットスポット

屋外に設置する太陽光パネルでは、落ち葉や鳥の糞の処理をしないと、ホットスポットによるトラブルが発生する場合があります。ホットスポットとは、一部分に物やエネルギーなどが集中している状態です。

太陽光パネルの場合、落ち葉や鳥の糞が太陽光パネルの一部に付着すると、その部分だけが発電できません。付着のない他の部分は発電が継続するため、ホットスポット部分に電気が流れると熱で高温状態になります。これにより、パネルが焼けるなどのトラブルにつながり、発電がストップするなどの故障の原因となります。

太陽光パネルの絶縁抵抗測定方法

絶縁不良になった場合や予防のためには、「絶縁抵抗測定」の実施が必要です。次に絶縁抵抗測定について詳しくご紹介していきます。

絶縁抵抗測定とは?

絶縁抵抗測定とは、電流が規定値以上に流れてないかを点検する方法のことです。絶縁抵抗の数値単位を「Ω(オーム)」または「MΩ(メガオーム)」と呼びます。MΩはΩの100万倍の単位です。

絶縁抵抗の意味は、電流を断ち切るということで、抵抗値が低い場合、「電気が漏れている(漏電)可能性がある」と推測されます。

測定の目的は、漏電の確認です。漏電は施設火災や人への感電リスク起こす原因になるため、数字で確認することで事故を未然に防ぐことが可能になります。絶縁体はある意味消耗品であり、使用年月が長くなればなるほど劣化していきます。そのため、劣化したものを放置せずに対処することが大切です。

絶縁抵抗測定の流れ

絶縁測定には、専用の測定機を使います。使い方は以下のような流れです。

  • 測定機のバッテリーチェック
  • 電圧レンジの確認と設定
  • ゼロ確認(接地確認)
  • 設備の電気の停止と安全確認(停電させる)
  • 数値測定
  • 設備の電気を通電

測定機のバッテリー確認は事前に行なっておくと良いでしょう。電圧レンジとは、設備に流す圧力(電圧)の範囲を指します。例えば、電子レンジなら100〜200Vであり、測定してみて250Vと数値が出れば、電子レンジが「漏電している」と判断できます。

ゼロ確認は測定機が正しく作動するかを確認する作業です。測定機をつないだ状態で「0Ω」と表示されているかの確認をしましょう。作業中に感電するおそれが高いため、測定前には必ず対象設備の電流を遮断して停電させることが重要です。

対象の設備測定で、数値が高ければ漏電が起きていないとみられます。数値が低い、または0Ωだった場合、漏電している可能性が高いと判断できます。

測定時の注意点

絶縁抵抗測定で注意すべきことは「感電」です。測定時の細かな注意点を確認しておきましょう。注意点は以下の3つです。

  1. 1.測定作業前に必ず設備を停電状態にすること
  2. 2.測定機のメンテナンスと使用前の点検
  3. 3.作業者は、「絶縁保護具」を着用して作業に入ること

上記3つは、作業者の安全と設備故障を防ぐために必ず守るべき項目です。停電後、対象設備の電流がストップしているかを確認しましょう。機材のチェック漏れは適正な測定値を表示しない可能性があるので、普段のメンテナンスと使用前の確認を怠らないことが大切です。

万が一を考えて、作業者は感電を防ぐための防護服を着用しましょう。

太陽光パネルの絶縁不良に対する対処法

太陽光パネルは専門性が高い設備のため、絶縁不良に対する適切な対処法が必要です。最後に、絶縁不良に対する具体的な対処法を解説します。

専門業者(O&M)の定期的な点検が義務

太陽光パネルの運用には、O&M会社へ定期的な点検を依頼する必要があります。O&M会社とは「オペレーション&メンテナンス会社」の略語であり、太陽光発電設備の専門業者であり、設備主の代わりに適正なメンテナンスや運用するための運転管理を行ないます。

国内には数多くのO&M会社が存在します。太陽光発電の設置者は、数あるO&M会社の中から選ばなければなりません。

選定ポイントは以下のとおりです。

  • 費用
  • 実績
  • 対応地域

設置業者を選ぶ際には複数社を比較検討し、ご自身の要望にあったところを選びましょう

事前の保険加入

火災保険や利益保険に加入しておくのも有効です。保険加入は太陽光発電設置者の義務ではありませんが、もしもの場合に備えて保険で安心を購入するのはメンタルにも良いでしょう。また、近年多発している地震にも「地震保険」があるため、加入の検討もしておくと良いです。

保険内容は各保険会社によりさまざまです。O&M会社同様、複数を比較検討して加入しましょう。太陽光発電ではメーカー保証もついていますが、それだけで全てのリスク保証ができるとは限りません。雨などの災害による保証がない、あっても少ないことが多いからです。任意となりますが、保険加入は対処法のひとつとなります。

太陽光パネルの絶縁不良を防ぐために

太陽光発電は近年のエネルギー問題に対して、新しい発電設備として注目されてきました。実際に、日本における大小の需要家での導入は増加しています。それに伴い、管理やリスクに関する課題も増えています。太陽光パネルトラブルのひとつ、「絶縁不良」も然りです。

この記事では太陽光パネルの絶縁不良に関する原因や対処方法について解説しました。需要が増えてきたからこそ、リスクへの知識が必要になります。絶縁不良について理解し、普段からのメンテナンスや点検を行なっていきましょう。

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