積雪の多い地域で太陽光発電を設置する場合は、雪をどう溶かすかという点で悩む方も多いです。近年ではヒーター付き太陽光パネルも販売されており、比較的導入しやすい積雪対策のひとつでもあります。
今回は、太陽光発電に積もった雪を溶かす方法や対策、注意点について詳しくご紹介します。積雪の多い地域で太陽光発電事業を実施している方などは、ぜひ参考にしてみてください。
太陽光発電に積もった雪を溶かすには
太陽光発電に積もった雪を溶かしたい場合は、さまざまなメーカーから販売されている融雪装置や、融雪機能付きパネルの導入を検討してみるのがおすすめです。太陽光発電設備の周辺に近づかなくとも雪を溶かせるため、安全で簡単なメンテナンスが可能になります。
それでは、太陽光発電に積もった雪を溶かす方法について詳しく解説します。
融雪装置を設置する
既存の太陽光パネルを使用したい場合は、後付け式の融雪装置を検討してみましょう。
太陽光発電関連の設備機器には、融雪装置に関する製品も開発・販売されています。融雪装置は大きく分けて、電気式・ボイラー式・散水式があります。
種類 | 仕組み |
---|---|
電気式 | ヒーターを太陽光パネルの裏に取り付けて、パネル表面に積もった雪を溶かす |
ボイラー方式 | パイプを太陽光発電に設置して、ガスなどで熱した温水をパイプ内へ循環させることで、雪を溶かす |
散水式 | スプリンクラーなどを使用して水を撒き、雪を溶かす |
また一般的ではありませんが、パネルの上から被せられるメッシュタイプのヒーターも存在しています。
このような後付け方式の融雪装置は、既存の太陽光パネルを使用できる反面、設備の購入費用や・設置工事費用がかかります。そのため、自作によって費用を抑えようと考える方もいるかもしれません。しかし、融雪装置の自作についてはおすすめできません。
屋根など高所での作業は事故を引き起こす危険性があり、野立ての太陽光発電だったとしても故障につながる可能性もあります。自己流で部品を付けるとメーカー保証の対象外にもなるため、なにかあったときにスムーズに対処できないこともあります。
さらに部材調達などで数十万円以上の費用がかかるため、手間や時間を考慮するとそれほど大きなコストカットにはなりません。融雪装置の導入を行う際は、メーカーから販売されている製品を検討しましょう。
融雪機能付き太陽光パネルを導入する
既存の太陽光パネルを交換しても問題ない、もしくはこれから太陽光発電を導入する場合は、融雪機能付き太陽光パネルを検討してみるのがおすすめです。
融雪機能付き太陽光パネルは、太陽光パネル本体にヒーターが搭載された寒冷地仕様の製品です。逆電流(電流を逆方向に流す)で発生する熱を活用することで、太陽光パネル表面に積もった雪が溶けていきます。
融雪機能付き太陽光パネルは、さまざまなメーカーから販売されています。
たとえば、長州産業の太陽電池一体型ヒーターパネルは、住宅用太陽光発電向けに製造された太陽光パネルです。雪が積もってきた場合は、パネル内部の降雪センサーが反応し、自動でヒーターを起動させます。さらに、5,400Paもの強度に耐えられるため、積雪量の多い地域でも設置しやすいです。
他にも環境システムヤマノの融雪太陽光発電システムは、独自開発の降雪センサーによって、積雪を自動で感知します。また、太陽光パネルを半分ずつ発熱させる構造で、電気料金の負担を抑えられるのがメリットです。
発電量が落ちてきて、リプレースを検討しているタイミングなら、こうした機能の付いているパネルにしてみてもよいでしょう。
太陽光パネルへ融雪装置を後付けする場合の費用
太陽光発電へ融雪装置を取り付けるためには、一般的に50~100万円程度の費用がかかります。ただし、規模の大きな太陽光発電所へ融雪装置を設置する場合は、300万円を超える費用がかかる可能性もあります。
融雪装置を後付けする場合は、融雪機能付き太陽光パネルの施工費用やその他対策でかかる費用を比較した上で検討することが大切です。
融雪機能付き太陽光パネルの価格に関しては、メーカーHPなどで公開されていないケースが多いです。そのため、施工販売店へ見積もりを依頼する必要があります。
太陽光発電に積もった雪で懸念されること
太陽光発電に積もった雪を放置してしまうと、発電量の低下をはじめ、さまざまなデメリットやリスクを招いてしまいます。とくに積雪量の多い地域で太陽光発電事業を始めた方、これから始める方は、雪の影響を理解しておくことが重要です。
ここからは、太陽光発電に雪が積もることで起こりうるリスクや問題を紹介します。
発電量の低下
太陽光パネルの表面に雪が積もってしまうと、発電量の低下につながります。
太陽光発電は、太陽光パネルから吸収した光を太陽電池で電気へ変換する発電設備です。太陽光パネル表面に雪が積もると日光の吸収率を下げてしまい、発電量が大幅に低下するだけでなく、発電量0に陥る可能性もあります。
発電量の低下は、太陽光発電の売電収入や電気料金削減効果などに直接的な影響を与えます。雪が積もりやすい地域で太陽光発電事業を始める場合は、雪を溶かす方法や対策を立てておく必要があります。
落雪による影響
積雪量の多い場所で太陽光発電を設置する場合は、落雪による事故リスクなどに気を付ける必要があります。屋根設置型の太陽光発電を導入しているなら、落雪事故の対策に力を入れましょう。
太陽光パネルの表面には、滑らかなカバーガラスが取り付けられています。パネルには角度が付けられているため、自然に雪が滑り落ちることも多いです。
落雪によって社用車や自社の設備などが破損するばかりか、通行人に雪が直撃する事故が起きる可能性もあります。また、落雪による騒音で苦情が入る恐れもあります。
落雪事故を避けるためにも、太陽光発電に積もった雪を溶かしたり雪止めネットを取り付けたりといった対策は必須です。
雪の重みで太陽光パネルや架台が破損する可能性
太陽光パネルに積もった雪を放置してしまうと、落雪事故の危険性を高めるだけでなく、太陽光発電設備の破損を招く可能性があります。
太陽光パネルの耐荷重は、比較的高いもので5,400Paのケースもあります。雪の高さに換算した場合、約2.5mの積雪まで耐えられる計算です。
しかし豪雪地帯では、2.5mを超える積雪量を記録する可能性もあり、太陽光発電や建物の屋根などに大きな負荷を与えてしまいます。太陽光パネル表面のひび割れや、パネル全体の変形、架台や屋根の破損といったリスクが懸念されます。
地上設置型の太陽光発電でも、太陽光パネルや架台の破損を招くリスクはあるため、融雪機能付き太陽光パネルの導入などで対応を検討してみるのもおすすめです。
太陽光パネルの雪下ろし・融雪剤の使用は危険
太陽光発電に積もった雪を溶かすのが面倒に感じる方の中には、「雪下ろしで問題ない」「屋根に登って融雪剤を撒けばいい」と考える方もいるのではないでしょうか。雪下ろし作業や融雪剤の使用は、事故を招く危険な行為です。
ここからは、太陽光パネルの雪下ろしや融雪剤を撒く行為が危険な理由を解説します。
落下による怪我のリスク
規模が大きくなればなるほど小まめに雪下ろしをすることは難しくなります。積りに積もった雪は固くかたまっていて、重たく、非常に危険です。また太陽光パネルや架台に登って作業すると足が滑って転倒したり、落下したりする恐れがあります。自分で雪下ろしをすることや、融雪剤の使用することは、控えるようにしましょう。
太陽光パネルを破損させてしまう可能性
太陽光パネルや架台に登って作業をしていると、設備を破損させてしまう可能性があるため、雪下ろしや融雪剤による対策は避けましょう。
たとえば、雪下ろしで使用しているスコップを誤ってパネル表面にぶつけてしまった場合、カバーガラスが割れたり内部の回路に影響を与えたりしてしまう恐れもあります。
また、太陽光パネルの上を歩いてしまうと、荷重によってパネルや接続部分が変形したりカバーガラスを割ったりしてしまう可能性もあるほか、怪我につながり危険です。
感電などの事故リスク
太陽光パネルの上で雪下ろしや融雪剤を使用していると、感電や火災事故を引き起こしてしまう可能性があります。
太陽光パネルに荷重がかかり内部の太陽電池や配線ケーブルなどを破損させてしまうと、漏電につながります。漏電している状態で太陽光パネルの上を歩くと感電してしまう可能性があるため、危険な行動のひとつです。
また、太陽光発電が破損していなくとも、設備に近づくことで感電してしまうリスクはあります。重大な事故を引き起こさないためにも、太陽光発電設備へ近づかず、保守点検サービスへ任せたり融雪機能付き太陽光パネルを導入したりしましょう。
雪を溶かすだけでなく太陽光発電の架台強化も重要
太陽光発電に雪が積もりやすい場合は、架台の耐久性も必要です。
架台の耐久性は、メーカーや型番によって異なり、寒冷地仕様ではないタイプも存在しています。そのため、雪が1m単位で積もる地域で太陽光発電事業を始める場合は、耐荷重性能の高い架台を導入するよう気を付ける必要があります。
たとえば、三協マテリアルから販売されているサンステージは、産業用太陽光発電向けに開発された架台で、最大積雪量1.5mに対応しています。さらに特殊なアルミ材が使用されており、軽量ながら高い強度を持っているのが強みです。
他にもXSOL(エクソル)の耐雪アタッチメントは、太陽光パネルと屋根の間に専用のアタッチメントを取り付ける仕組みで、積雪荷重による変形や破損リスクを低減できます。
積雪地域での太陽光発電はデメリットばかりではない
雪は、発電量低下や積雪荷重による破損リスクを招く原因のひとつです。
しかし、積雪地域での太陽光発電事業は、デメリットばかりではありません。夏季の発電効率を高めやすいため、年間の発電量を一定に保つことが可能です。
それでは、積雪地域で太陽光発電事業を始めることがデメリットばかりではない理由を解説します。
年間発電量は一定程度確保できる
年間発電量については、積雪地域でも一定程度確保できます。
積雪量の多い地域では、冬季の発電量が減少してしまいます。とくに12月~2月の間は、他の季節と比較して50%程度の発電量に留まる傾向にあります。
そのため冬季の発電量だけを見ると、太陽光発電事業を始めるメリットが少ないように感じることでしょう。しかし年間の発電量は、積雪の少ない地域と同程度、あるいは多いケースもあります。
台風による影響の少ない地域が多い傾向
台風による破損リスクを避けやすいのが、積雪地域で太陽光発電事業を始めるメリットのひとつです。
太陽光発電は屋外に設置しなければいけないため、雨・風などの影響を受けてしまいます。とくに台風の影響が大きな地域で太陽光発電を設置してしまうと、太陽光パネルの変形やひび割れ、ケーブルの切断といった被害に遭うことも少なくありません。
台風の勢力によっては太陽光パネルが吹き飛び、周辺の家屋や人に直撃してしまうリスクもあります。第三者へ損害を与えないためにも、台風対策についても力を入れる必要があります。
一方、積雪量の多い寒冷地では台風の影響が少なく、台風を考慮した特別な施工が必要がありません。
積雪地域では夏季の発電効率を高めやすい
積雪量の多い地域で太陽光発電を設置した場合、夏季の発電量を伸ばしやすいのがメリットのひとつです。
太陽光パネルの内部には、光を電気へ変換する太陽電池が搭載されています。太陽光パネルの表面温度が上昇し続けると、太陽電池の発電効率は低下するため、高温になると発電量が下がってしまいます。
太陽光パネルの性能は、気温25℃を基準として設計されています。晴れの日が多い地域でも気温30℃や40℃に近い日が続くと、効率的に発電を行うことが難しいです。
結晶系シリコンの太陽電池は、気温1℃の上昇・低下で約0.4%も発電効率が変化します。気温が10℃上昇した場合、発電効率は3%前後低下してしまいます。
したがって、夏季の気温上昇が比較的少ない寒冷地では、7~9月頃も効率的に発電を行うことが可能で、他の地域よりも有利になるのです。
太陽光発電の雪を溶かしたいときはO&Mサービスがおすすめ
太陽光パネルにおける融雪の重要性はわかったけれど、融雪機能付き太陽光パネルを探す時間がない、雪下ろしで対処したいという方もいるのではないでしょうか。そこで注目すべきサービスが、O&Mサービスです。
太陽光発電専門のO&Mサービスは、太陽光発電所の運用管理、保守点検に特化したサービスで、雪下ろしを含む雪対策に関しても対応しています。ここからは、太陽光発電の雪対策に合ったO&Mサービスの導入メリットをわかりやすく解説します。
従業者の負担をなくせる
O&Mサービスに太陽光発電の運用管理を任せれば、従業者の怪我リスクを抑え、管理にかかる負担を軽減できます。先述の通り、太陽光発電は発電設備であるがゆえに、破損による漏電リスクがあります。
たとえ雪下ろししやすい位置に設置している太陽光パネルでも、セルフで行うのは危険です。またこうした作業は、時間も労力も必要です。
O&Mサービスへ相談すれば、除雪作業を含めた運用管理について一括サポートしてもらうことが可能です。また発電量が低下した際には、駆けつけサービスにて緊急点検、修理交換にも対応してくれるため、積雪による故障もすぐにカバーできます。
雪下ろしを含めたさまざまなメンテナンス作業に対応してくれる
O&Mサービスでは、雪下ろしを含めた発電量低下防止に関するさまざまなサポートが行われています。
たとえば、定期的な除草作業は、多くのO&Mサービスで対応しているサポートのひとつです。太陽光発電周辺の雑草を放置してしまうと、パワーコンディショナやその他機器類を覆ってしまい、発火につながる可能性もあります。また、太陽光パネルが雑草に覆われてしまうと発電量の大幅な低下を招くため、定期的に除草しなくてはなりません。
また水道水を使用した散水式融雪設備を導入しているなら、カルキ跡が表面に蓄積していくこともあり、定期的にパネルを清掃する必要もあります。配線ケーブルや太陽光パネルの盗難被害も起きており、盗難対策なども欠かせません。
O&Mサービスでは、太陽光発電所の遠隔監視から修理交換だけでなく、敷地内のチェックや除草作業、防犯の提案から対応まで行ってくれます。
災害対策や定期点検サポートも受けられる
O&Mサービスのプランには、定期点検サービスなども含まれており、総合的にサポートしてもらえます。
以下に一般的な点検サービスの項目を紹介します。
- 電圧、抵抗などの電気点検
- ケーブルや太陽光パネル、架台接続部の目視点検
- ホットスポットの有無を確認する点検
電気点検は、太陽光発電内部の設備に異常が起きていないかチェックする上で重要な点検項目です。目視点検は、ケーブルのちぎれ・たわみ、太陽光パネルの変形やひび割れといった破損や不具合を見つけるための作業です。
ホットスポットは、太陽光パネルの一部が長時間発電できないために発熱・不具合を起こしてしまう現象です。近年では、ドローンと赤外線カメラを使用したホットスポットの点検も行われており、短時間で調査可能です。
O&Mサービスによっては、災害対策や復旧作業もサポートしてくれます。自社のリソースだけで災害に備えきれない場合は、災害対策などに対応したO&Mサービスを探してみましょう。
太陽光発電の雪を溶かすには融雪機能の導入が必要!
太陽光発電の雪を溶かすためには、融雪装置を後付けするか融雪機能付き太陽光パネルを導入する必要があります。融雪装置の設置が困難な場合は、O&Mサービスの利用がおすすめです。O&Mサービスで、災害対策を含めた運用管理・保守点検などのプランが提供されています。
寒冷地で太陽光発電所を導入する方や災害対策についても対応してもらえるO&Mサービスを探している方は、今回の記事を参考にしながらO&Mサービスの利用や切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。
O&Mサービスのとくとくサービスでは、産業用太陽光発電向けに遠隔監視から緊急時の駆けつけ対応、定期点検などさまざまなサポートを行っております。災害対策のほか、雪の重みで破損した太陽光パネルの撤去・復旧といった、復旧作業にも対応しているのが強みのひとつです。
まずはお電話やメールより、お気軽にご相談ください。