こんにちは、石橋です。
連日のようにニュースの主役となっているのは、トランプ大統領か、お米(どっちも「米」です)。それに絡んで小泉農林水産大臣もニュースの人になっていますね。
さて、このブログではアメリカのトランプ政権について何度か言及してきましたが、どうも化けの皮が剝がれてきたといいますか、本来の姿に落ち着いてきたといいますか、就任当初の勢いがどこかに行ってしまった感があるので、それについて論じてみたいと思います。

まずは、トランプ関税とも呼ばれる「相互関税」について。事前に大々的な予告をして、記者の前で自信たっぷりに発表したわけですが、6月6日の時点で貿易交渉が妥結したのはイギリスだけ。日本は5回も交渉をしていますが、いまだ合意には至っていません。
このことについて、アメリカ国内では「日本の偉大な抵抗」と評したメディアもあります。単に日本側は主張を変えず一本鎗の交渉をしているだけに見えますが、それが先方では「粘り強い」「しっかり抵抗している」と見えるのかもしれません。実はどうしようもなくてグダグダになっているだけかもしれませんが。
いずれにしても、アメリカから見てくみしやすいと思っていた日本ですら、5回も交渉をして合意に至っていないのですから、他の交渉相手国も推して知るべし、でしょう。一部の国は交渉決裂を見越して報復関税を示唆していますから、トランプ政権の思っていた展開とはまるで違う現実があります。
この件について、交渉相手国に対して「最善策を提出せよ」なんて言っていますが、これだけを見ても交渉が一向にまとまらないことに対する焦りが垣間見えます。このまま時間切れになったらドルやアメリカ株は暴落、経済大国としてのアメリカの地位を失墜させるリスクが現実になるかもしれません。
実は、マーケットについては面白い現象が起きています。直近の相場を見ていると、ドルやアメリカ株は上昇する局面が何度がありました。アメリカの景気先行きを示す指標には弱いものもチラホラあるのですが、それでもマーケットでは一部が「アメリカ買い」をしているわけです。これは私の憶測ですが、もしかするとマーケットはすでにトランプ政権のレームダック化を織り込み始めているのでは?とすら思います。アメリカのトップがトランプ政権でなくなったら、マーケットは間違いなくアメリカ買いに走ります。トランプショックで暴落したドルや株のバーゲンセールであるかのごとく、世界中の投資家が一斉に買うでしょう。
「マーケットはすべての事象を織り込む」という言葉があるように、自分の大切なお金を運用している世界の投資家たちは、本気で世界情勢の先を分析しています。そんな投資家たちは、すでにトランプ政権の「次」を見通しているのかもしれません。
トランプ政権が大々的にぶち上げたものの、できていないことは他にもたくさんあります。分かりやすいのは、ウクライナの停戦でしょうか。選挙運動中には「私なら1日で戦争を終わらせる」と豪語していましたが、終わるどころか泥沼化の一途をたどっています。挙句の果てには先日、「もうしばらく戦争をさせる」なんて言っていましたね。そもそも戦争を止める力がなかったのに首を突っ込んで、できなかったら「知らん」というわけです。
もうひとつ、目を引くのがテスラの社長であるイーロン・マスク氏との関係悪化です。選挙期間中や就任直後はあれだけ蜜月をアピールしていたのに、今や「失望した」「恩知らず」とののしる関係です。実にアメリカ人らしいといえばそれまでかもしれませんが、日本では考えられない手のひら返しです。しかもこの関係悪化は口喧嘩だけでは終わらず、アメリカの宇宙戦略で重要な位置を占めているイーロン・マスク氏の宇宙開発会社「スペースX」が、アメリカ政府に協力しないと言い出しました。それに対抗するように、トランプ政権もスペースX社に対する補助金などを止めるんだとか。これでアメリカの宇宙開発は大幅に後退することになるでしょう。アメリカ・ファーストを掲げている大統領が、アメリカの国益を損ねまくっていますね。どこからの国の高笑いが聞こえてきそうです。
あれだけ世界を揺るがせた「恐怖の大魔王」のような存在ですら、すでに世界が慣れたといいますか、あまり気に留めなくなってきています。それも、マーケットを見ていると分かります。
今、マーケットの世界にはTACOという言葉があるそうです。「Trump Always Chickens Out」の略で、直訳すると「トランプはいつもビビってやめる」となります。確かに、トランプ関税をぶち上げた直後に株が大暴落、アメリカ国債まで暴落すると、「90日間延期する」と言いました。その他にも中国との関税引き上げ合戦によってマーケットが動揺すると、今度は「115%下げる」となったわけです。重要政策が思い付きや感情で決められているのが丸わかりで、そのことをマーケットは見透かしているのでしょうか。それが、TACOです。
トランプ大統領自身は、このTACOという言葉に激怒しているそうです。「二度と言うな」と恫喝したそうなので、今後彼がぶち上げた政策でマーケットが暴落しても中々引っ込めないかもしれません。それすらマーケットに見透かされて、「もうTACOはできないだろう」ということでドル売り、株の空売りが起きると観測されています。
いやはや、あれだけ世界を振り回して満足気だったトランプ大統領ですら、マーケットという怪物には勝てず。それどころか、プーチンにもハーバード大学にも、イーロン・マスク氏にも勝てそうにありません。それを見透かし始めたマーケットや、世界。
私自身、もう少しマトモな大統領で期待できる部分もあると思っていましたが、今世界中の人たちが思っているのと似た感情になっています。