こんにちは、石橋です。
いよいよ今年も残すところ1か月と1日になりました。
何だかあまり寒くないので冬の到来を感じにくいですが、近々急に冷えるみたいなので、皆さま急激な温度変化にご自愛ください。
冬は暖房の需要が増大するので、日本だけでなく冬寒くなる国ではエネルギー消費量が増えます。今もなお戦禍にあるウクライナではロシア軍のインフラ攻撃によって電力不足が深刻で、日本より寒い冬を越せない人が大量に出るのではないかと言われています。自然災害なら仕方ない部分もありますが、これは完全に人災です。なんてひどいことをするのかと思ってしまいます。
日本はエネルギーのほとんどを海外からの輸入に頼っているので、この供給網に何か異変が起きると、ウクライナで起きていることが他人事ではなくなります。そのために原子力を含めた発電力の確保は急務ですが、今回のお話はそこではありません。なんと、資源のない日本が「産油国」になる可能性があるという面白い研究についてです。
この研究の主役は、藻です。水を入れたまま放置すると中が緑色なってしまいますが、これは藻類が増殖しているからです。藻は淀んだ水や汚い水に増殖するイメージがありますが、実はこの藻類はとても偉い植物なのです。汚い水に藻類が発生するのは、その水の中に藻類の栄養があるからです。その栄養を取り込んで藻類は増殖し、水を浄化します。まさに、自然の下水処理システムです。自然は藻類やバクテリアなどの働きによって浄化され、持続可能なシステムを維持しています。
話は変わって、石油は何でできているかご存じでしょうか。有機物といって、動植物由来の物質です。大昔に死んだ生き物の死骸や朽ちた植物などが、長い年月を経て原油となります。今私たちが使っている石油は何億年も前の自然からの恵みです。藻類はとても歴史の古い植物なので、石油には当時の藻類も含まれています。ここで重要なのは、藻類から石油が生まれるという事実です。
現代に、この藻類から石油を作り出そうとしている研究者がいます。藻類はとても繁殖力が強く、それでいて藻類は油分を多く含んでいるため、藻類から石油を作るのはとても効率がいいのだそうです。植物から石油に相当する燃料を作ることは、すでに世界各国で行われています。トウモロコシや大豆を使ったバイオ燃料は広く知られており、実用化もされています。しかしこうした陸上で作られる油脂植物と比べて、藻類は数百倍もの生産効率になるんだとか。藻類ってすごいですね。事実、欧米などでは藻類からバイオ燃料を作る研究は進められています。
しかし、藻類をバイオ燃料化するには課題があります。最大の課題は、石油を生産するためには膨大な「エサ」が必要であることと、広い面積の培養施設が必要になることです。藻類からバイオ燃料を作れることは分かっていたものの、このハードルを越えられないことでなかなか前に進んでいなかったわけです。
そんな課題に取り組み、日本には藻類バイオ燃料を大量生産しようとしている研究があります。
膨大な「エサ」は、下水から供給します。下水には多くの有機物が含まれているので、これを藻類に食べさせるわけです。藻類が食べることで下水は浄化されるので、一石二鳥です。
次に、広大な培養施設について。これについては日本全国に点在する休耕地を活用する案があります。私たち和上ホールディングスは営農モデルといって農業をしながら太陽光発電ができるモデルや、休耕地に野立ての太陽光発電施設を設置する案件などを取り扱っている関係上、日本全国にはあまりにも多くの休耕地があることを知っています。これが藻類バイオ燃料化の「資源」になるわけです。
すでに実験的な取り組みは始まっています。茨城県の下水処理施設で藻類を培養し、そこから石油を生産しています。
実用化するのに最も重要なのは、コスト優位性です。藻類バイオ燃料が素晴らしいエネルギー資源だと分かっていても、たとえば1リッター500円といわれて、クルマに給油しようとする人はなかなかいないでしょう。
現段階でボトリオコッカス(油分を蓄える藻類)による燃料のコストは1リットルあたり50円から100円程度になっているそうです。これなら石油が高騰している今、夢のような価格ではありませんか。
こうした事実により、藻類で日本が産油国になれるという言葉がキャッチコピーのように流布しました。まだまだ現実には越えなければならない壁が多くあるようですが、理論研究ではすでに確立している技術です。あとは商業ベースに乗せるための環境整備や資金的な手当てだと思います。
藻類で日本が産油国になるというのは、とても夢のある話です。ぜひ頑張ってほしいものです!