こんにちは、石橋です。
今回は、トランプ政権と関わりを持ち、その後はトランプ大統領と喧嘩(?)を演じているお騒がせの人、イーロン・マスク氏に関する話題を紹介したいと思います。

イーロン・マスク氏の本業は、EV(電気自動車)の大手であるテスラ社の代表です。日本国内でもテスラのEVが走っているところを見かけることがありますが、そのテスラが日本でVPP事業に参入するというのです。
そもそもテスラは単なる自動車メーカーではなく、EVメーカーらしく電力事業にも力を入れています。その中でも太陽光発電に力を入れており、太陽光発電による電力でEVを走らせるという壮大なヴィジョンを持っています。そんなテスラですから、VPP事業に参入すると聞いてもそれほど意外ではありませんでした。
テスラはこの事業にあたって、Powerwall(パワーウォール)という製品を投入しています。これはテスラが設置する蓄電池で、各地に設置されたPowerwallが束になることでVPP(仮想発電所)となり、電力需要が高まった時間帯に各地のPowerwallから電力を供給する仕組みです。このPowerwallは太陽光発電による蓄電を想定しており、各地に設置された太陽光パネルから余剰電力をPowerwallに蓄電し、それを必要に応じて供給することで電気料金の削減を狙います。
面白いのは、VPPに参加する企業にはPowerwallを無償で提供していることです。提供するといっても提供先に譲渡するのではなく、日本においてはこのプロジェクトに参加している芙蓉総合リース株式会社が所有し、それを同じくプロジェクト参加企業である株式会社グローバルエンジニアリングがコントロールします。
つまり、Powerwallを設置する企業は初期投資ゼロでこの事業に参加することができ、太陽光発電による電気料金削減や、災害発生時の非常用電源としても活用できるわけです。
VPPは、再生可能エネルギーの普及を加速させる仕組みとして、以前から注目されてきました。順調に普及が進んでいるようにも思いますが、ここにきてあのイーロン・マスク氏が目を付けたところが興味深いですね。何せ世界一の大富豪であり、EV界のトップランナーなのですから。
一時期はトランプ政権の中枢に入って政府の無駄を削減する業務に就いていましたが、その後、政権から離脱。おそらくトランプ大統領とのそりが合わなかったものと思いますが、そもそもトランプ大統領は環境保護なんてくそくらえ、石油を掘って掘って掘りまくると宣言しているような人物です。VPPで環境ビジネスを推進しようとしているイーロン・マスク氏とは根本的に考え方が異なるようにも思えます。
イーロン・マスク氏は過去に、テスラ車の購入にビットコインを使えるようにしたことで、ビットコインの価格を高騰させたことがあります。しかしその後、ビットコインの大量電力消費が環境負荷を高めているという理由で撤回。環境問題や環境ビジネスには一定の知見があることを感じさせます。何をおいても環境を守れ!という環境原理主義のような考え方というよりは、環境ビジネスを創出していくビジネスマンというイメージが強いように思います。
そんなイーロン・マスク氏が目を付けたのが、VPPというわけです。日本にはすでにVPPの市場がありますが、「黒船」かのようにテスラが日本市場に参入したことで競争が刺激され、技術革新や普及が一気に進むかもしれません。それだけの資金力やインパクトのある人物がやってきたことを、興味深く歓迎したいと思います。