トヨタのプリウスはハイブリッドカーの先駆者として、世界の自動車市場に衝撃を与えました。これまでは石油という燃料で走るという発想しかなかった自動車において、はじめてそれ以外の動力を採用し、実用化したのです。
最初の頃は価格が高くなってしまうことや技術的なハードルが高いことから、世界の自動車メーカーはあまり関心を示していませんでした。
しかし、CO2排出削減や石油価格の高騰などの社会情勢が後押しする形でハイブリッドカーは一躍注目の的になり、今では世界中の自動車メーカーが開発を競うようになりました。
しかし、やはりトヨタをはじめとする日本のメーカーには一日の長があるようで、この分野で日本の技術力は世界を圧倒し続けています。
さて、ここまでは自動車の話です。
ここから先は、目を海に向けてみましょう。
これは最近知ったことなのですが、何と船の世界にもハイブリッド技術が急速に普及しているというのです。これはいったいどういうものなのでしょうか?
船というのは、基本的にディーゼル燃料で航行します。
ディーゼル燃料というのは言うまでもなく石油燃料なので、CO2排出や燃料高騰の問題をもろに受けます。また、いつかは枯渇してしまう資源を使い続けることに対するリスクもあります。
そこで考案されたのが、エコシップと呼ばれる環境性能に優れた船です。現在では貨物船への導入が主ですが、やがて客船などにも応用されていくでしょう。
そんなエコシップの分野で大きな注目を集めているのが、日本のメーカーである川崎重工業が開発した「ハイブリッド給電システム」というものです。
ハイブリッド?
遂にその言葉が登場しました。ハイブリッドというのは異なるものを織り交ぜて使うという意味合いの言葉なので、ハイブリッドカーではガソリンと電気が使われています。
船の場合はどうなのかと言いますと、従来の動力源であるディーゼル燃料と、太陽光発電です。
具体的な仕組みを簡単に説明しますと、こんな感じです。
太陽が照っている時間は船の甲板などに敷き詰められている太陽電池で発電をして、その電力で船を航行させます。海の上というのは太陽光を遮るものがないので、発電効率は非常に高くなるそうで、船を航行させても電力が余るので、それを船内に設置した大規模な蓄電池(ギガセルと言います)に貯めておきます。
太陽が出ていない夜間や、天候の良くない日は、このギガセルに貯めておいた電力を使って船を航行。それだけでは足りないこともあるので、その場合に初めてディーゼル燃料が登場するというわけです。
いかがでしょうか。
これは船という特性を存分に活かした画期的なものだと思います。こうしたエコシップは燃料消費を大幅に抑えることができるので、運賃を下げるという効果も将来的には期待できるとのことで、国際間の物流に大きな変化をもたらすかも知れません。
これだけを見ると、何だ簡単なことにこれまで気づかなかっただけか、と思ってしまいます。
私もそうだったのですが、ここにあるようなことを実現するのは容易ではなかったそうです。一番難しいのは、蓄電池から電力と、ディーゼル発電機からの電力という、素性のことなる電気を同じところで使うために安定供給する部分だったそうです。
この部分だけでも1年半という歳月を使ってじっくりと研究をした結果、現在のような安定的な電源供給システムを完成させたとのことです。
スゴいですね!
この川崎重工業の技術を導入したエコシップは、すでに実用化、販売の段階に入っています。
現在ではアジア諸国の低価格路線におされ気味になっている日本の造船産業。
もう日本の造船、ひいては日本のものづくりはダメかと思っていた部分もあったのですが、実はこんなスゴい進化を遂げていたんですね。