本日、6月27日にちょっと気になるニュースが舞い込んできました。
現在山口県上関町で中国電力が建設を計画している上関原発について、建設予定地埋め立て免許の延長を拒否するという決定が出ました。
決断をしたのは、山口県知事の二井関成氏です。
理由は、「国の政策が不透明だから」というもの。
この決定により、上関原発の建設計画は大幅な見直しを迫られる可能性が出てきました。
これだけではありません、原発に関してはここ最近だけでも以下のようなニュースがありました。
・玄海原発の説明会で批判が殺到
・志賀原発、再稼動に課題
・伊方原発3号機の再稼動が白紙に
いかがでしょう。
どれも既存の原発や建設計画中の原発に関わるものばかりで、これまでに事故を起こしたというわけではありません。
しかし、福島第一原発の事故を受けて、全国各地で原発を毛嫌いする風潮が支配的になっているのです。
これまで問題なく稼動してきた原発であっても、定期的な点検をしなければならないことになっています。これは技術的にももちろんのこと、法的にも義務付けられています。
理由は言うまでもなく、今後も安全に稼動させるためです。
しかし、現在の風潮を考えると、一旦止めた原発のメンテナンスを終えて再び稼動させようとしても、到底できそうにありません。
そうなると、どうなるか?
もし私が電力会社の関係者であれば、定期的なメンテナンスを理由に一度止めたものを動かせないのであれば、止めないでおこうという考えになるでしょう。
止めなければ、そのまま使えるのではないか?と思ってしまうからです。
しかし、これは法令違反になりますし、それ以前に原子炉の安全確保という意味合いでも論外なので、実際にそれをすることはできません。
しかし、今私が言ったようなことは現場の関係者であれば考えることがあるかも知れません。
それなら、原発再稼動のために少しでも有利なデータだけを公表しよう。
原発を再稼動できるような風潮になるよう、原発がなければ電力が足りないというように世論を操作しよう。
原発のある地元に、もっとお金をバラまいて賛同が得られるようにしよう。
…いかがでしょうか?
こうした考えのどれもが、アンフェアなものであり薄汚いものであるのは言うまでもありません。
現在、電力会社から根拠の薄い15%節電の呼びかけが行われています。原発が止まるから、節電しないとやっていけないという理由からです。これがもし、原発必要論を盛り上げるための世論操作だとしたら?
こう考えるように仕向けた勢力が存在しているのも事実です。
国策として原発による電力の供給を進めるのであれば、それなりの説明責任と安全性に対する明確な基準を示さなければなりません。
地元にお金をジャブジャブとバラまいているからOK、というのはあまりにも幼稚な政策です。
起こってしまった福島第一原発の事故は元には戻せません。
安全対策に甘さがあったことは結果が示しており、批判されても仕方がありません。
同じように東北地方の太平洋沿岸にあって、地震も津波も食らっている女川原発が放射能漏れを起こしていないという事実にも、東京電力は向き合う必要があるでしょう。
ここに来て、野党である自民党の谷垣総裁は興味深い発言をしています。
「定期点検で停止中の原発再稼動は必要」という見方を示しました。
これだけ原発に対する逆風が吹いている最中に、原発の再稼動を求める発言をしたのです。
矢面に立たされて集中砲火を浴びるのは目に見えているのですが、実際にはそうはなりませんでした。
これはなぜでしょうか?
私が思うに、おそらくほとんどの人が心の中でそう思っているからです。
一部の原発反対論者のことをとやかく言う気はありません。
原発が嫌いなのであれば、どれだけ嫌っても構いません。
しかし、日本が現在の先進国としての生活水準や経済、産業を維持するには原発から送られてくる豊富な電力が欠かせないのです。
それを実感しているからこそ、目だった非難もなくこのニュースはあっさりと報道されました。
先日、日本のスーパーコンピューター「京」が、処理能力世界一になったというグッドニュースがありました。
日本のお家芸とも言えるこの分野で、アメリカと中国、そして日本が激しいトップ争いをしてきたことは周知の通りです。
その予算を事業仕分けの対象にして「2位ではダメなんですか?」と聞いたトンチンカンな政治家がいました。現場で世界一のために努力している技術者に対して失礼極まりない発言ですが、現場の人たちはその逆風の中、大きな仕事をやってのけたのです。
話はそれましたが、この「京」のトップ奪還には、日本にしかないものが大きく関わっています。
それは、良質な電力の安定供給です。
日本の発電や送電の技術というのは世界一で、日本人は世界一質の高い電力を日常的に利用しています。
電圧や電流量などがほとんど誤差なく安定しているので、電気の状況変化に敏感な精密機器の能力を充分に発揮させることができます。スパコンの「京」は神戸にあるのですが、日本国内でなければ同じ機械を持って行ってもあれだけの結果にはならないのだそうです。
その良質な電力を作っているのは誰か?
それは、電力会社です。
もちろん、東京電力もそのひとつです。
そして、発電のエネルギー源は何か?
言うまでもなく、火力、水力、そして原子力です。
この事実を踏まえて、それでも原発に対して何の感謝もなく闇雲に「日本から出て行け」と言えるのでしょうか?
私は、そういう意味での問題提起をしたいと思うのです。