いよいよ夏も本番となり、暑さも本番になってきました。
ここまで暑いとエアコンが手放せませんが、いかんせん今年の夏は節電の夏です。
原発事故の影響がこれほどまでに全国的なものになるとは思ってもみなかったという人がほとんどだと思いますが、これは避けようのない現実です。
しかし、地球温暖化の影響もあって夏の暑さは以前とは比べ物にならないほど殺人的なものになっています。私が子供の頃、熱中症なんていう言葉はなかったように思います。
熱中症が怖いから外で遊ばないように…夏休みを迎えた今、子供たちはそんな指示を受けているので、公園などで姿を見ることはほとんどありません。
しかし、日本の夏が暑いというのは今に始まったことではありません。
今ほどではないにしても、暑くて過ごしにくいということは昔も変わりません。
そのため、日本には古くからの暑さ対策という知恵があります。厳しい自然環境でたくましく生きてきた日本人の知恵というのは、今でも使える技がいっぱいです。
例えば、打ち水。
これは水が蒸発する際に熱を奪う気化熱という現象によって地面を冷やし、涼をとるという方法です。夕方になると下町の道路が濡れていたのは、そのあたりの家が自宅の前に打ち水をしていたからです。そのお蔭で真夏の太陽に照り付けられた道路はひんやりとしていたものです。
時は流れて、現在この打ち水をするという活動が全国的に行われています。水道水を使うともったいないので、貯めておいた雨水を使うというのも、昔ながらの方法です。昔は甕(かめ)などに雨水を貯めるという習慣があり、打ち水にはそういった飲み水に適さない水が使われていました。
雨水すら無駄にせず、涼をとるのに使ってきた素晴らしい知恵ですね。
他にもたくさんあります。
風鈴というのは、直接気温を下げる効果は全くありません。チリンチリンという涼しげな音が、何となく涼しい気にさせてくれるというだけの代物です。
しかし、日本を訪れる外国人観光客はこの風鈴に強い関心を示すそうです。日本以外にも暑い国はたくさんありますので、彼らは国に帰って使ってみたいというのです。音を使って涼をとるという発想は、日本人独特のものかも知れませんね。
最近多くなっているのが、緑のカーテン。
南側の直射日光が多く降り注ぐ窓に、ゴーヤー(ニガウリ)などの植物を植えて、それによって日光をさえぎって部屋の中を涼しくするというものです。
直射日光が当たると暑くなるばかりか、カーテンや床、家具などを劣化させてしまうので、それをさえぎるのは暑さ対策以外にもメリットがあります。その一方、南国の植物は直射日光が大好きです。そんな植物に思う存分日光を吸収してもらって、最後には美味しいゴーヤーが実るというのは、一石二鳥ならぬ一石三鳥です。
ここでも自然とうまく調和して生活を快適にするという日本人の知恵が存分に発揮されていると思います。
実際に、こうした緑のカーテンという取り組みは日本だけでなく欧米諸国でも活発にとりいれられているそうです。
最後に、これも日本人のユニークな知恵が世界を駆け巡った例を紹介しましょう。
クルマに乗る方であれば、夏の暑い車内がどんなことになっているか、良くご存知でしょう。なんでも真夏の炎天下にクルマを停めておくと、ダッシュボード付近は400度にも達することがあるそうです。
未開封の缶ジュースが熱で爆発していたことがありますが、さすがに400度にもなったらそんなことがあっても不思議ではありませんね。
日本では、暑くなったクルマに戻ってきた時に助手席の窓を開けて、運転席のドアを数回開け閉めするということが普通に行われています。運転席のドアが巨大なうちわになり、閉めた時には助手席か暑い空気が排出され、開けた時には助手席から外の涼しい空気が入るというワケです。
本当にちょっとしたテクニックなのですが、これがアメリカのライフハッカーにまで届きました。ライフハッカーというのは知恵袋サイトのようなもので、アメリカをはじめ世界的な人気を博しているサイトです。
ここで瞬時に車内を冷やす方法として紹介されるや、一気に大人気となり全世界で数百万回というアクセスとなりました。コメントを見ても大絶賛ばかりで、「さすが技術の国、日本だ」というものや、「日本人にできない工夫はない」というものも見受けられました。
こんなことくらいで褒められては日本人として照れますが、少しでも生活を快適にしようとする日本人の知恵が、世界で大いに役立っているのは嬉しい限りです。