こんにちは、石橋です。
いよいよ5月もあとわずか、今にして思えば「トランプ」「米」がニュースを席巻した1ヶ月でした。他にも世間を騒がせた芸能ニュースなどもありましたが、くだらないので触れません。
さて、今回は私たち環境ビジネス業界に身を置く者としてとても興味深い話題を取り上げたいと思います。

ロイター通信が2025年5月25日に報じたニュースで、興味深いものがありました。何でも今年の夏は世界全体の太陽光発電による発電量が、原子力を上回る見通しだそうです。同ニュースでは「エネルギーミックスに転換点」と述べていますが、これは私も画期的なことだと思います。こんなに画期的なことなのに日本ではあまり注目されていないようにも感じるので、ここで補足しつつ何がすごいのかをお伝えしたいと思います。
夏になると北半球は日照量が多くなるため、太陽光発電による発電量も多くなります。世界の太陽光発電は大半(4分の3程度だったと思います)が北半球に設置されているため(そもそも南半球は陸地が少ない)、北半球で日照量が増えてくる時期は太陽光発電が盛り上がる時期でもあります。
しかしながら、世界全体を見ると太陽光発電は他の再生可能エネルギーと比べると発電量は少ないのが現状です。特に発電量が多いのが、水力です。その次に、風力。これらの電源と太陽光との大きな違いは、24時間発電できるかどうかです。太陽光発電は夜間に発電ができないため、水力や風力に及ばないというのがこれまでの常識でした。
しかし、そんな太陽光発電の普及が進むにつれて、ついに夏の日照量が多くなる時期には他の電源を追い抜き、ついには原子力を上回る時期が誕生したわけです。それだけ太陽光発電が猛追してきたということですね。ちなみに、太陽光発電はこの10年間に発電量が2倍以上に急増しており、世界全体でも電源としての存在感を高めてきました。かつてはコストこそ高いものの「地球にやさしい」「お財布にやさしい」という触れ込みでしかなかった太陽光発電ですが、今や世界の主要な電源として成長し、原子力発電を上回る存在になったということです。
ちなみに、2024年のデータでは世界の電源シェアは1位が石炭火力で2位が天然ガスです。これらは化石燃料なので使い勝手が良く、依然として高いシェアを保っていますが、その次の3位につけているのが太陽光発電です。生成AIや暗号資産のブロックチェーンなど、これまでになかった電力需要が高まるなか、3位の地位を占める太陽光発電なしでは現在の高度な情報社会を維持できないところまできています。
こうした状況のなか、世界の電力事業者は新しいあり方を模索しはじめています。これまでは化石燃料をいかに調達して、安全に発電にしようするかが最大の課題でしたが、これからは違います。3位にまで地位を高めている太陽光発電をいかに安定的に稼働させて、電力需要に応えるかという課題にシフトしてきています。
そのための現実的な方策として検討もしくはすでに導入されているのが・・・
①ソーラー・プラス・バッテリー
ソーラーつまり太陽光発電とバッテリー、つまり蓄電池を組み合わせて昼夜の需要を調整する仕組みです。昼間は過剰なほどの発電量が得られる太陽光発電ですが、夜間は発電ができなくなります。そのミスマッチを蓄電池で解決して電力の安定供給をするモデルです。これはどちらかというと大規模な発電施設というより僻地などの局地的な電力供給システムに適しています。
②化石燃料による発電との出力調整
今年の夏に太陽光発電の出力が過去最大となり原子力を上回る見通しであることを受けて、その分を原子力発電の出力抑制でバランスを取る考え方が検討されています。具体的には、昼間には太陽光発電にしっかり働いてもらい、原子力は出力を抑えます。そして夜間は太陽光発電に代わって原子力の出力を上げて、トータルで電力供給量を調整するというわけです。
これは原子力だけでなく、火力発電との出力調整も考えられます。
これらはいずれも、太陽光発電の発電量がここまで大きくならなければ検討すらされなかったことです。今や世界の電力事情は、「太陽光発電のある世界」に最適化されつつあります。
私が太陽光発電のビジネスを起業した当時は、環境意識の高い人や高い導入費用を使ってでも経済性にメリットを感じる人など、新しいものに対して敏感な人が主なお客さまでした。そこから数十年が経って太陽光発電はそれほど珍しくないものとなり、今では高度なIT社会を支える重要な電源にまで成長しました。
これからは太陽光発電の存在を無視した電源構成は考えられません。長らく太陽光発電に関わってきた者として、少し感慨深いものがあるニュースでした。