太陽光発電投資を行っていると、日照時間やその他の事象から別の場所で太陽光発電を行いたいと考えることもあるかと思います。しかし、そもそも太陽光発電設備を移動できるのかわからないと検討できませんし、移設できたとしても費用がいくらかかるのか気になるところですよね。
そこで今回は、太陽光発電の移設は可能なのかという点について詳しくご紹介します。大規模な太陽光発電設備を移設したい方や、太陽光発電の移設について把握した上で事業をスタートしたい方などは、参考にしてみてください。
太陽光発電の移設は可能?
FIT認定を受けた太陽光発電設備の移設は、原則として認められていません。ただしやむを得ない事情の場合は、移設および移設に関する手続きを進めることができます。(移設:現在建てられている建物や設備を別の場所へ移動する作業)
特に住宅用太陽光発電を設置している一般家庭の場合は、引っ越しに伴い移設を検討する場合があるようです。
また、メガソーラーなど規模の大きな太陽光発電を運用している企業の中には、別の発電所を設置したり移設したりといった関係で、太陽光発電の移設を行っている企業も存在しています。
太陽光発電の移設事例
メガソーラーを所有している電力会社の中には、移設工事を行っている会社も存在します。2015年に中部電力では、愛知県知多郡武豊町・武豊火力発電所構内に設置されていた「メガソーラーたけとよ」の移設を行いました。
武豊火力発電所構内で、火力発電所5号機(石炭火力発電所)の開発が行われるものの、新たに設備を設置するための敷地はありませんでした。中部電力は、火力発電所5号機の開発を進めながらメガソーラーたけとよの稼働を継続するため、メガソーラーの移設を決めました。
2011年10月から稼働中のメガソーラーたけとよは、出力7.5MWと大規模な発電設備で、一般家庭約3700世帯分の発電量「1140万kWh」を1年間で生み出すことが可能です。
移設工事は2015年に始まり、2017年に移設完了および発電が再開されました。
移設先は三重県三重郡川越町の川越火力発電所で、名称が「メガソーラーかわごえ」へ変更されました。発電した電気の一部は、中部電力で自家消費されています。
メガソーラークラスの移設には、年単位の時間がかかります。ただ、設備一式移設できるので、メガソーラーを所有している企業にとっても検討の価値があります。
太陽光発電の移設で必要になる手続き
続いては、太陽光発電の移設を行う際に必要な手続きをわかりやすく紹介していきます。
変更認定申請の手続きが必要
FIT制度の承認を受けた事業者で、発電事業に大きな影響を与える変更を加える際は、事業計画認定の変更手続きが必要です。
中でもFIT認定済みの太陽光発電設備を移設する際は、事業計画認定の変更認定申請手続きによって、移設に関する情報を申請しなければいけません。
出力50kW未満の太陽光発電設備を所有している場合は、電子申請から手続きを進めることが可能です。一方、出力50kW以上の場合では、紙の書類を郵送して申請する必要があります。申請先は、管轄の経済産業局です。
変更認定申請の移設申請に必要な書類
太陽光発電の移設に関する変更認定申請を行う場合は、次の書類が必要です。
項目 | 注意点 |
---|---|
土地登記簿謄本 | 原本が必要 書類の取得は法務局で行うことが可能 取得方法は窓口、郵送、インターネットの3種類 |
土地の取得を証明する書類や賃貸借契約書などといった契約書類、所有者の同意書 | 権利者の証明書は申請書類として使用できない |
印鑑証明書 | 原本が必要 設備契約者の印鑑証明書 |
地番図 | 法務局などで取得可能 公図以外の図面でも提出可能 |
構造図 | 出力50kW未満の太陽光発電なら構造図の提出は不要 |
理由書 | 移設理由を説明した書類 |
移設を証明できる書類 | 写しでの提出可能 |
罹災証明などの書類 | 現在設置している場所で太陽光発電を運用できない理由を示した書類 |
移設に関しては必要書類が多いので、事前にリストアップしたのち、書類の種類や原本・写しに間違いがないよう慎重に準備しましょう。
太陽光発電を移設に関する流れ
ここからは、太陽光発電の移設に関する流れを1つずつ確認していきましょう。
太陽光発電の施工業者へ相談
太陽光発電の移設を決めたあとは、移設を含む各種施工に対応している業者へ電話やメールなどで相談しましょう。
担当者は、太陽光発電設備の設置状況などを細かくヒアリングしたのち、後日現地調査を実施します。見積もりの作成と提示は、一般的に現地調査を終えたあとに行われます。
現地調査での対応や見積もりに納得できれば契約手続きへ進み、太陽光発電設備の撤去と移動、移設先での組み立てに関するスケジュールなどを組んでもらう流れです。
現在設置している設備の解体と移設先の組み立て
移設工事の前半では、まず現在設置している太陽光パネルやパワコン、配線類、接続箱、ブレーカー、架台などが撤去されます。そして撤去された全ての部品や機器は、移設先へと運ばれます。
移設先では、太陽光発電設備の組み立てが始まります。木などが植えられていたり、設置に不向きな状態だったりしている場合は、先に造成工事を行ってもらいます。
造成工事後は、架台を固定するために重機で杭を打ち込んだのち、そこに架台の柱となるパーツを取り付けます。次にこの柱部分に、太陽光パネルの固定用部品を格子状に組み立てていきます。
架台の組み立て完了後は、太陽光パネルの設置と固定、配線類の接続やパワコンなどの周辺機器設置といった電気工事作業を進めてもらい完成です。
太陽光発電の移設費用
太陽光発電の移設工事にかかる費用は、設備規模や移設先までの配送距離、移設先の環境などによって変わります。
住宅用太陽光発電の場合は、1回の移設で20万~100万円程度が必要とされています。そのため、出力10kW以上の産業用太陽光発電やメガソーラークラスでは、より多くの移設費用が必要と言えます。
なお、前半で紹介したメガソーラーかわごえは、移設費用として数10億円かかっています。
太陽光発電の移設を検討する際のポイント
最後は、太陽光発電の移設を検討する際に押さえておくべきポイントや注意点を紹介します。
FIT制度の認定を受けている場合は原則移設が厳しい
FIT制度の認定を受けながら太陽光発電事業を行っている場合、移設工事は原則として認められません。スムーズに移設工事を進めたい時は、FIT制度の承認を受けずに太陽光発電事業を始める、もしくはFIT制度終了後に移設した方がいい場合もあります。
ただし、災害や地盤沈下、その他移設しなければ事業を継続できない場合は、移設後もFIT制度を活用できます。
経年劣化などが進んでいれば売却を検討してみる
太陽光発電設備の経年劣化が進んでいたり、維持管理費用の負担に悩んだりしている場合は、移設よりも売却を検討するのがおすすめです。
太陽光発電の売却は、セカンダリー市場と呼ばれる中古太陽光発電所が取引されている市場で行われます。特にメガソーラーを売却する場合は、億単位の売却額で査定してもらいやすいです。
移設することで日照時間の長い地域で発電を行える可能性はあるものの、さらに費用がかさみます。また移設費用の回収も必要になるため、収支のバランスを維持することが難しい選択といえます。
しかし売却であれば売却益を得られるので、コスト面の負担削減および資金調達という点でメリットがあります。
太陽光発電を手放すことも検討している時は、売却も視野に入れながら準備してみましょう。
太陽光発電の移設は可能だが慎重に検討しよう!
太陽光発電設備の移設工事は、専門業者へ依頼することで行ってもらえます。ただし、FIT制度の認定を受けている時は、移設を認めてもらえない可能性があります。また、移設工事には費用負担がかかるため、売却や別の方法を検討してみるのもおすすめです。
太陽光発電設備の維持管理費用に悩んでいる方や、太陽光発電の移設と撤去について考えている方は、売却を検討してみてはいかがでしょうか。
とくとくファームでは、中古太陽光発電所の売買仲介業務および関連業務のサポートを行っており、相談を受けた担当者は、現地調査などで太陽光発電所の状態を確認し、査定額や見積書を作成します。また、サポートスタッフが太陽光パネルなどの点検や除草作業を行うため、査定額アップも見込めます。
移設と異なり売却益を得られるのは、中古太陽光発電売買のメリットです。サイト内のかんたん査定では、最短30秒で簡易査定を進められますし、しっかり査定なら30項目へ回答するだけで正確な査定額を確認いただけます。
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