太陽光発電を運用する際は、電気事業法の動向についてもチェックすることが大切です。2023年3月に改正された電気事業法では、太陽光発電の管理や手続きなどが変更されました。しかし、何が具体的に変わったのか、太陽光発電所有者への影響についてよくわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、電気事業法の改正内容や太陽光発電における義務規定、出口戦略について詳しくご紹介します。低圧太陽光発電を所有している方や太陽光発電の維持管理に悩んでいる方などは、参考にしてみてください。
電気事業法とは?
まずは、電気事業法の目的や概要、過去の改正について1つずつ確認していきましょう。
電気事業や工作物の保安管理について定めたもの
電気事業法は、1964年(昭和39年)に施行された法律で、電気事業の適切な運営や、電気を使用する者の保護に関する規制などが盛り込まれています。
以下に具体的な目的をまとめます。
- 電気事業(発電事業含む)の適正かつ合理的な運営
- 電気を使用する者の利益を保護
- 電気工作物(発電所や変電所など)の工事や維持、運用の規制による安全と環境保全
つまり、大手電力会社(一般送配電事業者)や新電力などの小売電気事業者、電気工事関連の企業に加えて、発電事業に携わる企業や個人も電気事業法の対象です。
過去3回改正されている
電気事業法は、過去に3回改正されています。
1回目の改正は2013年(平成25年)で、広域系統運用の拡大、小売や発電事業の全面自由化、送配電部門の分離といった内容が組み込まれています。広域系統運用の拡大では、全国の電力需給バランスを調整・維持できるよう、電力広域的運営推進機関が設置されました。
小売の自由化については、のちに実施される電力の小売自由化を指しています。また、発電事業の自由化によって、電力会社以外の企業も再生可能エネルギーや火力発電事業などに参入できるようになりました。
なお、送配電部門の分離とは、一般送配電事業者が小売電気事業・発電事業を担うことを禁止し、適正な競争関係を促す取り組みのことです。(一般送配電事業者:大手電力会社から分離した事業者)
2回目の改正は2014年(平成26年)に行われ、1回目の改正で盛り込まれた電力の小売全面自由化に関する実施時期などが定められました。電力の小売全面自由化は、2016年4月1日に実施されています。
3回目の改正は2015年(平成27年)に成立し、1回目の改正で決められた電気事業の小売料金の自由化と送配電部門の分離、ガス事業の小売り全面自由化、熱供給事業の料金規制撤廃といった内容です。
過去の改正では、小売電気事業を含めさまざまな規制撤廃や変更点が含まれているため、太陽光発電事業を行っている企業、一般消費者にも大きく関係しているといえます。
太陽光発電設備と電気事業法の義務
電気事業法において、太陽光発電設備には主に3種類の義務が課されています。太陽光パネルの出力およびパワーコンディショナの容量が50kW以上の設備を設置運用する場合は、電気事業法で定められている保安義務を守る必要があります。
以下に義務の種類と内容を紹介します。
義務の種類 | 内容 |
---|---|
電気主任技術者の選任 | ・国家資格の電気主任技術者は、電気設備の保安監督を担う ・太陽光発電所の維持管理を行う際に電気主任技術者を配置しなければいけない |
必要書類や報告に関する届出 | ・電気工作物の保安規定に関する書類の届出 ・電気主任技術者の選任関する届出 ・万が一事故が発生した際、報告を行う必要がある |
技術基準に沿った設備の維持管理 | ・電気主任技術者の専任や保安規定に沿った電気工作物の保守運用など |
なお、出力10kW以上50kW未満の低圧太陽光発電は一般用電気工作物に該当し、届出などが不要とされています。しかし、経済産業省令に沿った設備の維持管理、事故報告の義務など、50kW以上に課せられている義務が一部含まれています。
2023年3月20日に電気事業法が改正!
電気事業法の概要と過去の改正内容、太陽光発電事業との関係性について把握したあとは、2023年3月20日に改正された内容について確認していきましょう。
小規模事業用電気工作物の届出制度が変更
2023年3月20日に改正された電気事業法では、出力10kW以上50kW未満の太陽光発電と出力20kW未満の風力発電に関して、新たな義務が課されたり区分が変更されたりしています。
出力10kW以上50kW未満の太陽光発電と出力20kW未満の風力発電は、これまで一般用電気工作物に区分されていました。しかし、法改正後は、小規模事業用電気工作物という名称へ変わっています。
新たに課される義務は、技術基準適合義務と設置情報の届出、使用前自己確認の3種類です。
技術基準適合維持の義務が課される
出力10kW以上50kW未満の太陽光発電と出力20kW未満の風力発電は、技術基準適合維持の義務対象設備として扱われます。
これまで一般用電気工作物として区分されていたケースでも、経済産業省令に沿った設備の維持管理や技術基準の適合といった義務が含まれていました。
しかし、小規模事業用電気工作物という区分へ変わったあとは、既存の義務に加えて基礎情報の提出義務も必要になります。
設備情報などの基礎情報を届出
小規模事業用電気工作物を設置運用する場合は、設備情報などを示した基礎情報を管轄の産業保安監督部へ届け出なければいけません。産業保安監督部は、各地域に設置されている電気工作物を含む保安管理を行っている機関です。
基礎情報の届出に必要な内容を以下に紹介します。
設置者 | ・設置事業の事業者名 ・代表者の氏名 ・事業所の所在地 ・事業者の電話番号やメールアドレスといった連絡先 |
設備 | ・設置予定の電気工作物に関する名称 ・電気工作物の種類や設備規模に関する情報 ・電気工作物が設置されている場所、所在地 |
保安体制に関する情報 | ・保安管理を担当している者の氏名 ・点検頻度 |
これまでよりも具体的かつ詳細な設備情報と保安管理情報を届け出る点が、電気事業法改正の大きなポイントといえます。
法改正前にFIT型太陽光発電所を設置している場合は、基礎情報の届出は不要です。ただし、基礎情報に変更があった場合や、小規模事業用電気工作物としてみなされない状況へ変化した場合は、届け出る必要があります。
また、法改正前に非FIT型太陽光発電を設置運用している場合、施工から6か月以内なら基礎情報の届出が求められます。また、基礎情報に変更があった場合や、小規模事業用電気工作物としてみなされない状況へ変わった際にも、届け出なければいけません。
使用前自己確認の対象
小規模事業用工作物を運用する時は、使用前自己確認が必要です。
使用自己確認は、国の定めたルールに沿った安全確認作業を指します。これまで使用前自己確認の対象設備は、出力50kW以上の太陽光発電や出力20kW以上の風力発電でした。
しかし、2023年3月20日以降は、低圧太陽光発電を運用する際にも使用前自己確認および届出を行わなければ、設備を稼働できない状況へ変わっています。
なお、法改正前から運用している場合は、届出の対象外とされています。ただし、設備に変更点があれば、使用前自己確認に関する作業と届出が必要です。
太陽光発電のO&Mサービスや施工販売業者では、電気事業法の法改正に合わせて各種届出や使用前自己確認に関するサポートにも対応しています。そのため、太陽光発電を所有している企業は、負担を抑えながら事業を継続することが可能です。
電気事業法の改正で低圧太陽光発電はどうなる?
2023年の電気事業法の改正を確認した方の中には、「小規模な太陽光発電を導入しているが今後も運用すべきかわからない」という方も多いのではないでしょうか。
続いては、電気事業法の改正で出力10kW以上50kW未満の低圧太陽光発電を導入している方にとって、どのような影響があるのかわかりやすく紹介していきます。
維持管理の手間が増える
電気事業法の改正は、低圧太陽光発電を導入している個人や企業にとって、設備の維持管理やコストの増加といった問題が出てくる場合もあります。
太陽光発電の施工販売業者やO&M業者に使用前自己確認、設備の基礎情報作成と届出についてサポートしてもらえれば、運用の負担を軽減することが可能です。
しかし、サポートにかかるコストが増える可能性があり、低圧太陽光発電の収支に影響することもあります。また、すでに低圧太陽光発電を設置している場合でも、設備情報に変更点があれば変更情報の届出が求められます。
低圧太陽光発電の運用を検討している方やすでに設置している方は、電気事業法の改正に伴う維持管理負担やコストを確認しておきましょう。
FIT認定の有無にかかわらず準備が必要
低圧太陽光発電を導入する場合は、FIT認定の有無にかかわらず、電気事業法改正によって定められた内容を確認し、準備を進める必要があります。
使用前自己確認は、FIT認定に関係なく、小規模事業用電気工作物であれば確認および届出の対象です。すでに設置されている場合は届出不要ですが、設備の変更などがあった際には報告しなければいけません。
基礎情報も同様で、設備の変更時に再度届出を行う必要があります。
このように、書類作成や確認作業、書類提出の手間を負担に感じる場合は、運用方針について見直すのがおすすめです。
低圧太陽光発電の維持管理に悩むなら売却の選択も
太陽光発電を運用している方の中でも、一部の保安規定が免除されていた出力10kW以上50kW以上の低圧太陽光発電にメリットを感じていた方は、2023年の事業法改正で運用を継続すべきか悩むのではないでしょうか。
最後は、低圧太陽光発電の維持管理に悩む方へ向けて、売却という選択肢のメリットを詳しく紹介していきます。
維持管理コストを負担せずに済む
維持管理に関する手間や費用を負担せずに済むのは、稼働済み中古太陽光発電所を売却する大きなメリットです。
太陽光発電所の売買仲介サービスを利用すれば、中古太陽光発電所と土地を買い手へ売却できます。売却したあとの管理は、買い手側で対応します。そのため、土地や設備の管理、太陽光発電に関する手続きなどの負担もありません。
売却益を得られる
低圧太陽光発電所を売却した場合は、まとまった売却益を取得できます。
稼働済み中古太陽光発電所の売却額は、「年間の売電収入×10」前後の金額で算定されます。そのため、低圧太陽光発電でも100万円以上の金額で売却できる可能性があります。
特にFIT認定を受けている稼働済み中古太陽光発電所は、過去の高い固定買取価格で売電できるため、多くの企業や個人に需要のある設備です。
別事業のために資金調達したい方や撤去を検討している方は、低圧太陽光発電の売却についてシミュレーションしてみてはいかがでしょうか。
仲介業者に依頼することで手間を省略できる
前段でも触れていますが、稼働済み中古太陽光発電所の売買仲介サービスへ依頼すれば、売却に伴うさまざまな手間を省略できます。
売買仲介サービスでは、査定から売却額アップに向けたメンテナンスや洗浄、発電実績や契約に必要な書類の準備、買い手との交渉と契約、売却後の税務処理まで一括対応しています。
売り手の負担が抑えられるので、多忙な事業者や個人にとっても気軽に利用しやすいといえます。
電気事業法の改正は低圧太陽光発電も対象!
2023年3月20日に施行された電気事業法の改正では、出力10kW以上50kW未満の太陽光発電と、出力20kW以上の風力発電に関する新たな規制と義務化が含まれています。対象設備を運用している場合は、使用前自己確認と基礎情報の届出が必要です。
低圧太陽光発電の運用方針について悩んでいる方や、電気事業法の改正に伴い低圧太陽光発電を手放したい方は、今回の記事を参考にしながら売却を検討してみてはいかがでしょうか。
とくとくファームでは、未稼働の物件や稼働済み中古太陽光発電所の売買仲介サービスを提供しています。専任の担当者が、太陽光発電所の現地調査と査定を行い、売却額アップへ向けた対策についてご提案いたします。また、売却後にかかる税務処理にも無料で対応してくれます。
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