病院の節電方法やアイデアを解説!省エネの重要性についても

病院の節電方法やアイデアを解説!省エネの重要性についても

病院の運営で重要なポイントの1つは、非常時でも安定的に電力を供給することです。そのため電力消費量を抑えにくく、電気代負担に悩む場面も多いのではないでしょうか。また2022年から続く電気代高騰の影響もあり、早急にコスト削減策を検討している方も多いかと思います。

そこで今回は、病院の電力消費量が多い要因や省エネの重要性、節電方法について詳しくご紹介します。病院経営を継続していくために電気代負担を抑えたい方や病院の節電方法で省エネ効果の高い方法を知りたい方などは、参考にしてみてください。

病院の電気代相場は?

環境省から発表されている資料によると、病院の電気代は延べ床面積75,000㎡(500床以上の病院)で年間1億円程度とされています。1ヶ月になおすと電気代相場は、約833万円です。

また100床程度の病院の延べ床面積は10,000㎡以下なので、年間の電気代は2,000万円前後といえます。

出典:環境省ホームページ

一方、個人病院の延べ床面積は、比較的大きな建物でも231㎡です。歯科医院なら1ヶ月あたり電気代6万円程度、歯科以外の病院は高くて1ヶ月あたり10万円程度とされています。

病院内の電力消費量はなぜ多い?

医療機器の中には、ICUや急患の患者に必要な設備も数多く含まれています。中には24時間稼働させなければいけない機器もあるため、病院の消費電力量は多い傾向です。

事務所や工場、倉庫、商業施設の照明や空調、その他機器は、一般的に営業時間内のみ稼働させています。一方、病院の場合は24時間稼働させなければいけない機器もあり、他の業種より電気使用率が高い状況といえます。

病院内のエネルギー消費に関する特徴

続いては、病院内のエネルギー消費に関する主な特徴を1つずつ確認していきましょう。

空調や照明関係の電力消費量が多い

資源エネルギー庁が部門別の消費電力についてまとめた資料「節電アクション」によると、病院の中で使用されている設備のうち、空調と照明の消費電力比率が特に高い傾向にあることがわかります。

夏季のピーク時間帯(平日の9時~20時)の消費電力比率は、全消費電力量のうち空調が38%、照明は37%なので、両設備の節電対策によって電気代削減効果を伸ばすことが可能です。

なお夜間や早朝の消費電力量は、ピーク時間帯と比較して40%程度に収まっています。

出典:首相官邸ホームページ

病棟はエネルギーの消費量が常に多い傾向

病棟(入院患者を治療するための建物)は、他の医療施設より電力や水といったエネルギーの消費量が多い傾向にあります。

病棟では、患者さんの療養および体調管理のために24時間換気や空調、医療機器などが稼働しています。特に衛生設備や医療機器は、電気代の負担が増加したとしても停止させることはできません。

そのため、単純な節電や節水では対応しきれない領域です。省エネ機器の導入や可能な範囲で窓の開放による換気など、患者さんの負担にならないエネルギー使用方法の見直しが求められます。

事務管理部門は消費電力量の多い状況

病院の事務管理部門は消費電力が多く、節電方法を考えるべき部門といえます。事務管理部門は、建物全体の空調や水道、通信設備、給排水設備などの管理、環境衛生管理、警備や清掃、事務作業など多岐にわたる業務を行います。

また事務用機器やパソコンなどの設備に加え照明など、消費電力も多く、電気代負担のかかりやすい部門のひとつです。

外来では特に空調の使用時間が長い傾向

外来部門は、照明やパソコンだけでなく、空調の使用時間も長めです。外来部門には、外来患者さんの受付対応を行うための設備やカウンター、待合室、診察室や検査設備などが設けられています。

人の出入りが多いため、空調を継続的に稼働させる必要もあります。また各部屋の照明をつけておく必要がありますし、状況によっては検査設備を使用する場合もあります。

診療部門では医療機器の消費電力量が高い

診療部門の場合は、他の部門と異なり特に医療機器の消費電力量が高い傾向にあるといえます。

診療部門には、内科や外科、呼吸器科など部門ごとの診療および診察室や検査機器の集まる部屋、手術室などが含まれます。24時間医療機器を稼働させるケースは少ないものの、1つ1つの医療機器にかかる消費電力量が高い場合もありますし、夜間も稼働させなければいけないケースもあります。

さらに衛生上の理由から減菌用設備が稼働しているため、熱消費量も高いといえます。

病院内で省エネを行うべき理由

病院内で省エネ、特に節電を行うべき大きな理由は、固定費の負担を抑えるためです。

病院経営にかかわらず、固定費の負担は売上の下がった時期でも一定の比率でかかります。そのため、売上の変動が生じた場合に固定費が大きいと、経営に大きな影響を与えてしまいます。

エネルギー消費量の中で空調や照明、医療機器にかかる消費電力量が多いので、節電を行えば電気代負担を大幅に削減できる可能性があります。

固定費を見直したうえで電気代負担の比率が高い場合は、迅速に節電方法を模索していくことをおすすめします。

病院の節電方法

病院における節電の重要性を把握したあとは、具体的な方法について確認していきましょう。

病院内の節電方法は複数あるので、それぞれの対策を積み重ねれば大幅な電気代削減につながる可能性があります。

エネルギーマネジメントシステム(EMS)でエネルギーを自動制御

病院内にエネルギーマネジメントシステム(EMS)を導入すれば、電気の見える化を実現できます。

エネルギーマネジメントシステムとは、建物内のエネルギー使用状況を常時監視し、空調や照明など一部の設備を自動制御しながら省エネ化を目指すシステムのことです。

節電にあたり課題として浮かび上がるのが、各部門での電気の使用状況が分析できない、難しいといった点です。EMSがあれば、専用のモニターから各部門の時間帯別消費電力量、設備ごとの消費電力量などを簡単に把握できます。

あとは、データをもとに空調や照明の使い方を見直したり、省エネ機器へ交換したりすることで節電効果を伸ばすことが可能です。

LED照明を導入する

照明設備を最新のタイプに交換していない場合は、LED照明を検討してみるのがおすすめです。

病院内では多くの部門で照明を長時間使用しているため、消費電力量の多い状況といえます。また推奨照度を維持しなければ、患者さんにとっても負担がかかります。そのため、蛍光灯や既存の照明設備を安易に暗くしたり点灯数を抑えたりできません。

そこでLED照明に交換すれば、蛍光灯より少ない電力で明るさを維持できます。LEDの消費電力は蛍光灯の4分の1程度なので、大幅な節電効果を期待することが可能です。

使用していない事務用機器や調理機器のコンセントを抜いておく

事務用機器や看護師・医師の使用している調理機器、電気式ポット、冷蔵庫などは、消費電力の少ない設定へ変更したりコンセントを抜いたりしておくことも有効です。

空調や照明と比較して、これらの設備の消費電力比率は小さいといえます。しかし節電効果を伸ばすためには、小さな省エネ対策を積み重ねていくことが重要です。

そのため、パソコンやプリンター、調理機器、電気式ポットといった医療機器と直接関連のない機器類を使用する際は、節電意識を持つ必要があります。

空調の使い方を見直す

冒頭でも触れたように、空調は病院内の消費電力比率で30%を超えています。空調の使い方や管理方法を見直せば、大幅な電気代削減効果を期待できます。

以下に主な節電方法を紹介します。

方法 概要
温度設定 以下の推奨温度を基準に空調の設定温度を見直す
夏場は空調の温度28℃
冬場は空調の温度20℃
※ただし患者さんの体調管理が優先
残熱利用 業務時間の数10分前に空調を停止させても、空調の稼働時に流れていた冷たい空気もしくは暖かい空気を一定時間維持できるため、無理のない範囲で節電できる
フィルター清掃 2週間に1回など定期的に空調のフィルターを掃除機などで清掃することで、熱効率の低下を抑えられる
熱効率の低下を抑制できれば、消費電力量を数%削減もしくは増加を抑えられる
熱交換器のチェックや交換 室外機や室内機に搭載されている熱交換器の定期的な保守点検を専門業者へ依頼することで、故障や効率低下などによる消費電力量の増加といったトラブルを抑えられる
室外機の清掃や点検 室外機のファン周辺に物を置かないよう気を付けることで、放熱量の効率低下を抑制できる
また保守点検を定期的に依頼すれば、節電効果を伸ばせる
分散起動 50kW以上500kW未満の高圧電力契約を交わしている場合、空調の起動時間をずらすことでデマンドピークの更新を抑えられる
(実量制:「30分ごとの消費電力量=デマンド値」のうち、過去12ヶ月間の最大デマンド値を基準に基本料金が設定される)
外気導入量の見直し 空調に搭載されている換気機能から外気導入量を削減することで、節電効果を伸ばせる
さらに冷房使用時に室温より外気温の方が高ければ、外気導入量を削減しながら温度調整も可能
反対に暖房使用時に室温より外気温の方が低ければ、外気導入量を削減しながら温度調整も可能(外気導入量:外気を取り込む量)

空調の使い方を見直したり、清掃や保守点検などを意識したりすることで、消費電力量を数10%以上削減できる場合があります。また節電方法は複数あるので、他の設備より見直しやすい設備でもあります。

省エネの効果を測定および改善するための組織づくり

中長期的に節電効果を維持するためには、省エネ体制づくりを強化していく必要があります。

最初は、経営陣で節電方法に関する大きな方向性や組織づくりを行い、各部門の責任者を選出したり節電および省エネ委員会といった組織を継続的に運営したりしていきます。

その後は、節電効果や電気代削減額に関する目標設定を行い、1日や1週間ごとにエネルギー消費量を計測し、改善策を各部門で見つけていきます。

さらに、病院内で勤務する医療従事者へ向けて、節電意識を向上させるための情報発信や意識向上に関する呼びかけを継続していき、省エネ体制を整えていきましょう。

病院の節電を実行する際の注意点

病院の節電に取り組む場合は、省エネだけでなく医療環境の保全と医療機器導入に関する2点のバランスも崩さないよう注意が必要です。

空調や照明、医療機器の保守点検を維持していくことで、エネルギー効率の低下が期待できます。さらに医療機器を最新のタイプへ入れ替えれば、消費電力量を抑えながら効率よく機器を稼働させることが可能です。

しかし、必ずしも最新の医療機器の消費電力量が低いわけではないので、機器導入前に消費電力といったスペックを確認した上で検討することも大切です。

他には、節電効果の向上を意識するあまり、患者さんや医療従事者の過ごしやすさ、体調への影響をおろそかにしないよう気を付けるのも必須事項です。

病院内では、あくまで環境保全を優先させながら無理のない節電、省エネ体制の構築を進めていきましょう。

太陽光発電の導入で得られること

病院内で取り組める節電方法は、エネルギーの消費量を抑えることを前提とした対策です。しかし省エネには限界があるため、再生可能エネルギーの太陽光発電を導入してみるのもおすすめです。

最後は、病院へ太陽光発電を導入することで得られるメリットをわかりやすく紹介していきます。

無理な節電を行わずに電気代を削減可能

全量自家消費型太陽光発電を導入した場合、無理な節電を行わずとも電気代を大幅に削減できます。

全量自家消費型太陽光発電とは、太陽光発電で発電した電気をあらかじめ接続しておいた施設内で使用する運用方式のことです。さらに自社の敷地内に設置したり遠隔地から送配電網を活用して対象施設へ送電したりと、さまざまな場所で運用できるのが強みです。

太陽光発電設備の規模や消費電力量によって電気代の削減効果は変わるものの、年間10~40%程度削減することが可能です。

BCP対策として活用可能

全量自家消費型太陽光発電は、BCP対策としても役立ちます。

災害などで停電した場合でも、病院内の医療機器を継続的に稼働させなければ患者さんの生命にかかわります。ガソリン式など燃料の必要な発電設備は、大量の燃料を備蓄しておく必要があります。また燃料が枯渇してしまうと、発電を継続できません。

一方、全量自家消費型太陽光発電の場合、化石燃料不要で発電を継続できます。そのため、燃料の調達コストを抑えられます。さらに晴れの日が続けば、長期間の停電時でも電力を確保できます。

さらに産業用蓄電池を併用すれば、晴れの日に発電した電気を充電しておき、夜間や早朝、雨や雪の日に自家消費を継続することが可能です。

全量自家消費型太陽光発電と産業用蓄電池の併用は、長期間の停電に対応できますし、燃料調達コストの削減、燃料の備蓄スペース確保不要といったメリットにつながります。

病院の節電効果を高めるには太陽光発電導入も重要!

病院内のエネルギー消費量の中で、照明や空調が約70%を占めています。空調や照明を中心にさまざまな設備の使い方を見直したり定期的な保守点検を行ったりすれば、年間で最大数10%の消費電力量削減が期待できます。

さらに太陽光発電や蓄電池を導入した場合、無理な節電をしなくとも大幅な消費電力量の削減を実現することが可能です。

医療従事者の中で、省エネ体制に関する業務に関わっている方や病院経営を行っていて節電方法に悩んでいる方は、今回の記事を参考にしながら節電方法の見直しや全量自家消費型太陽光発電の導入を検討してみてはいかがでしょうか。

和上ホールディングスでは、創業から30年、太陽光発電のご提案や設計・施工・保守運用などのサポートを行っています。商業施設や倉庫、工場などの施工実績も多数あるので、病院内への全量自家消費型太陽光発電設置、自己託送型太陽光発電(遠隔地からの送電)といったケースにもご対応中です。

全量自家消費型太陽光発電の詳細について確認したい時や少しでも気になった方は、この機会にぜひご相談ください。お電話やメールよりご対応しております。

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