住宅やビルを建てる際には、建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律に定められている省エネ基準を満たさなければいけません。また、省エネ基準は時代に合わせて改正され、小規模事業者もエネルギー使用量に関する規制の対象に含まれつつあります。
そこで今回は、省エネ基準の詳細や改正内容、対策について詳しくご紹介します。省エネ基準に沿った事業運営を行いたい方や省エネ基準についてよくわからず不安を覚えている方などは、参考にしてみてください。
省エネ基準とは?
省エネ基準は、建築物省エネ法に定められている住宅と省エネの基準や規制、指標に関する内容を示したものです。まずは、省エネ基準の概要や特徴について確認していきましょう。
一般的に平成28年基準の建物に関する規制
建築物省エネ法の省エネ基準は、一般的に2016年(平成28年)基準の規制を指しています。主な内容は、住宅やビルといった建物の性能や省エネ性能に関する基準・規制を示したものです。住宅メーカーや工務店は、これに沿って設計や施工を行います。
建築物省エネ法は時代に合わせて改正されているため、省エネ基準の内容も適宜変更されています。具体的には、1980年に制定されたのち、1990年、2000年、2010年、そして2016年に改正されました。
省エネ基準に沿って建物を建てるための指標
住宅メーカーや工務店は、省エネ基準に沿って建物の設計や部材調達、加工、施工を行う必要があります。省エネ性能を満たしているかどうかを確認する際は、いくつかの指標を用いて判断していきます。
主な指標は、外皮性能と一次エネルギー消費量の2点です。
外皮性能は、建物の壁や屋根、天井、床、窓などに関する省エネ性能を指します。またその測定は、UA値とηAC値という2種類の数値で行います。
住宅内の熱が、壁や床、窓、天井などから外へ逃げていく度合を数値化したものをUA値と呼びます。UA値が小さければ小さいほど、熱を逃がしにくい住宅といえます。
一方、ηAC値は、窓や窓以外から入り込む日射量から、熱がどの程度住宅内に溜まりやすいかを示したものです。ηAC値も小さければ小さいほど、夏場に暑くなりにくい住宅になります。
指標以外に定められている規制
省エネ基準では、住宅性能に関する指標以外にもさまざまな内容が定められています。
たとえば、住宅性能を評価する基準の1つに「1次エネルギー消費量」というものがあります。これは、化石燃料や再生可能エネルギーなどの1次エネルギーと、1次エネルギーを加工したエネルギーの総消費量を指します。
省エネ基準で示されている1次エネルギー消費量と実際の消費量を比較して、基準値より少なかったり近づいていたりすれば、その住宅の省エネ性能が高いことを意味します。
また、工場を稼働させている事業者向けには、「工場等における電気の需要の平準化に資する措置に関する事業者の指針」という方針が示されています。同方針には、エネルギー使用の合理化や、特定の時間帯で電気以外のエネルギーを活用していくなどといった内容が含まれています。
省エネ基準の歴史
省エネ基準の特徴について把握したあとは、省エネ基準の変遷と改正によって何が変わっているのかを確認していきましょう。省エネ基準に沿って建物を建てる場合は、改正前後の情報を混同しないよう注意してください。
1980年に制定された
前段でも触れたように省エネ基準は、1980年に制定された省エネ法、通称昭和55年基準に含まれている規制や指針です。当初の内容は、石油ショックに伴うエネルギー危機に対応するために、石油や天然ガス・石炭の消費量を削減する方法や規制を定めたものでした。
近年は、気候変動や脱炭素化といった環境に配慮するための規制という方針なので、目的が大きく異なります。
また当初の省エネ基準は、工場やその他建築物の断熱性に関する規制で、なおかつ義務ではなく努力義務です。そのため、省エネ基準を満たした建物は普及しにくい傾向がありました。
平成25年の改正でより細かな規制が行われる
省エネ基準は1992年と1999年に強化され、断熱性能の基準強化や気密性能・住宅性能表示制度の創設といった変更も加えられました。
また2000年代に入ると、省エネ基準の目的が「化石燃料の使用量削減」から「地球温暖化や二酸化炭素排出量削減」といった環境重視へ変わります。
さらに旧省エネ基準には含まれていなかった再生可能エネルギーに関する利用促進策も進められ、脱炭素と住宅性能という2点を重視した内容になっています。
2025年までに省エネ基準に関する義務化が定められる
省エネ基準の改正は2022年4月に決まりました。2025年までにさまざまな項目の改正が行われるため、住宅メーカーや工務店、省エネ基準の規制に当てはまる事業者は、早めに内容を確認するのが大切です。
それでは、2022年4月に決まった主な改正内容について紹介していきます。
住宅性能表示基準の等級に6と7が追加
住宅性能表示制度とは、断熱性能や遮音性、構造耐力といった10項目に等級を設けた評価制度のことです。等級1が最も低く、5が最も高い性能を示します。
しかし、2022年10月に住宅性能表示制度に変更があり、さらに6と7という等級が追加されました。これにより等級基準はより厳しくなり、これまで以上に高品質な住宅の建築技術が求められます。
認定基準の強化
2022年10月より、省エネ基準に沿った認定住宅の基準が強化されました。
これまで認定長期優良住宅や認定低炭素住宅、性能向上認定住宅は、断熱等級4、一次省エネ等級5をベースにした住宅性能でした。しかし新たな基準からは、断熱等級5および一次省エネ等級6に引き上げられました。
事業者にとっては厳しい基準ですが、居住する側はより快適な住環境で過ごせるようになります。
2025年にはすべての住宅で省エネ基準が適合
2025年4月以降は、すべての新築住宅や非住宅で省エネ基準の適合義務が発生します。住宅メーカーや工務店にとっては、大きな変化といえるでしょう。
省エネ基準の適合義務は、省エネ基準に沿った家づくりをしなければいけないことを意味します。改正前の適合住宅は、新築住宅以外の新築建物で、なおかつ2,000㎡以上の大規模な建物と中規模のみに限られていました。
改正後は、建築の際に省エネ基準に適合しているかどうかの審査が行われたり、手続きを進めたりしなければいけません。
省エネ基準に沿った建物の種類
続いては、省エネ基準の認定住宅について1つずつ確認していきましょう。
ZEH住宅
ZEH住宅(ネットゼロエネルギーハウス)とは、年間の一次エネルギー消費量をゼロ以下にできる住宅のことです。ZEH住宅における一次エネルギー消費量とは、暖冷房設備や換気システム、給湯機、照明設備の4種類です。
自宅に太陽光発電や蓄電システムなどを設置し、電気を自家消費したり省エネ性能の高い住宅で無理せず節電を行ったりすることで、電力会社やガス会社から供給されているエネルギーの使用率を下げていきます。
なお、国の政策では、2025年度にZEH住宅の普及率50%という目標も掲げられています。
LCCM住宅
LCCM住宅(ライフサイクルカーボンマイナスハウス)は、住宅の建設時から居住時、廃棄の際に二酸化炭素の排出量を抑えられる省エネ住宅を指します。居住の際は、省エネ設備や太陽光発電などで二酸化炭素の排出量を削減していきます。
ZEH住宅は居住時の省エネに焦点があてられているのに対して、LCCM住宅は建設から廃棄までの環境対策も考えられているのが特徴です。
認定低炭素住宅
認定低炭素住宅は、省エネ性能を満たしていることはもちろん、二酸化炭素の排出対策がとられている住宅を指しています。
後述する認定長期優良住宅に近い基準ですが、構造部の低炭素対策や省エネルギー性の特化といった点で異なります。また、認定炭素住宅の方が認定ハードルが比較的低いという側面もあります。
認定長期優良住宅
認定長期優良住宅は、長期優良住宅認定制度の基準を満たし、なおかつ認定を受けた住宅を指しています。
基準項目は省エネ性能だけでなく、耐震性やバリア―フリー対策、居住環境、劣化対策、維持管理の容易性、維持保全計画など、多数の内容で構成されています。
つまり、長期的に快適な暮らしを実現できる家というのが、長期優良住宅の特徴です。
性能向上認定住宅
性能向上認定住宅は、太陽光発電や蓄電システムの他、エネルギー効率の高い設備を設置した住宅です。
具体的には、性能向上計画認定を受けた住宅が性能向上住宅としてみなされます。主な認定基準は、UA・ηACの基準値や、一次エネルギー消費性能がBEI0.9以下といった内容です。
また、主な省エネ基準は認定低炭素住宅と共通していますが、選択的項目不要といった違いもあります。選択的項目は、事業者側で選択可能な省エネ基準で、エネルギーマネジメントや節水対策など4つのジャンルに分かれています。
スマートハウス
スマートハウスは、住宅内の照明や調理設備・照明設備・給湯機器、家電製品といった各種設備をネットワークで連携させ、なおかつ制御機器で管理可能な住宅のことです。
スマートハウスを実現するには、HEMSという機器が必要です。HEMSは、住宅に設置されている各種設備をまとめて管理制御でき、モニタで使用状況などを確認できます。
なお、他の認定住宅と異なり厳密な定義がないため、省エネ性能や設備の種類に関しても自由度は高いといえます。
住宅メーカー以外の企業も省エネ基準を重視すべき
脱炭素化やカーボンニュートラルといった環境重視の経営を求められつつあることや省エネ法の改正などから、住宅メーカーや工務店以外の企業は、省エネ基準や脱炭素経営に力を入れていくことをおすすめします。
最後は、住宅メーカー以外も省エネ基準を重視すべき理由や対策について紹介していきます。
省エネ法の対象事業者に該当する可能性あり
省エネ法の規制対象事業者に該当する可能性がある場合は、早めに省エネ基準を確認しておくのも大切です。
規制対象の特定事業者とは、工場(事業場)と輸送業、機器製造事業等の3業種です。工場を稼働させる際、エネルギー消費量削減に関する行政からの指導や助言、立ち入り検査といったチェックも行われます。行政によるチェック内容は、年間のエネルギー消費量によって異なります。
輸送業の場合は、中期計画書の提出や省エネに関する努力義務規定、定期的な報告などが求められています。また荷主と輸送事業者では規制内容が異なる点に注意しましょう。
機器製造事業等に該当する場合は、事業におけるエネルギー使用率の削減目標なども定められています。
なお、省エネ基準に関する報告書は、経済産業局・事業の主務大臣へ毎年度7月末までに提出しなければいけません。
エネルギー使用量の削減には太陽光発電がおすすめ
住宅メーカーや工務店以外で省エネ法および省エネ基準の対象事業者としてみなされた場合は、エネルギー使用量の削減策として太陽光発電の導入をおすすめします。
省エネ法では、基本的に事業活動に伴うエネルギー使用量の削減目標が定められています。しかし、省エネ設備の導入や節電・節水といった活動だけでは限界もあります。
太陽光発電を導入すれば、通常どおりの生産活動で二酸化炭素排出量の削減を達成することが可能です。また、消費者に対して脱炭素経営をアピールできるため、企業のイメージアップと売上向上といったメリットにつながる可能性もあります。
省エネ基準は建物の環境性能に関する規制!
省エネ基準とは、建築物省エネ法の住宅や住宅以外の建物に関する省エネ規制のことです。また省エネ法の対象事業者に該当する場合は、エネルギー使用量の削減や国への定期的な報告といった義務も発生します。
省エネ法は時代に合わせて改正されているため、今後は対象事業者が拡大するかもしれません。
省エネ法に該当し対策を検討している方や、省エネ基準や脱炭素経営に関心を持っているものの何をすればいいのかわからないという方は、今回の記事を参考にしながら太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
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