2022年、電力ひっ迫についてのニュースを耳にする機会がありました。私たち一般消費者にとってあまり実感のない言葉ではなかったでしょうか?しかし、最近では電力料金の高騰やウクライナ問題などでより電気について関心を持ち始めている人も多いと思います。今回は電力ひっ迫がなぜ起こるのかをわかりやすく解説していきます。
電力ひっ迫のなぜ?を調査
電力のひっ迫とは一体どのような状態なのでしょうか。ここでは、あまり聞き馴染みのない電力のひっ迫について詳しく解説します。
また、2022年には東京・東北電力管内で電力ひっ迫注意報または警報が発令されました。原因とともに詳しく見ていきましょう。
電力ひっ迫とは?
電力のひっ迫とは、電力の需要が供給量の上限に迫っている状態のことです。電力需要が急増して供給量が不足すると、電力を安定して供給することできないだけでなく、万一上限を超えた場合は、突然の大規模停電(ブラックアウト)が発生するリスクも高まります。
電力需要が供給量の上限を超える理由は、電力発電所の停止や季節外れの熱さなどの影響で、需給のバランスが崩れてしまうからです。
電気会社は、地域ごとの必要な電気供給予定量から、電気需要がピークに達したときの必要発電能力を計算して、電力量の余裕割合を示す「供給予備率」を設けています。
たとえば、電力の供給予備率が最低限必要な3%を下回った場合には、電力供給ひっ迫警報・注意報が発令されます。
分かりやすい例として、ある地域のピーク時に必要な発電能力を100とした場合、実際に供給できる発電能力が110であれば、供給予備率は10%です。
供給予備率が十分に確保されている場合、需要変動や発電所事故などがあっても、電力供給を安定的に維持できます。
2022年に起こった電力ひっ迫の原因
2022年に起こった電力ひっ迫は、2022年3月の東京管内「電力需給ひっ迫警報」と、2022年6月の東京管内「電力需給ひっ迫注意報」の2つです。
2022年3月21日、東京管内で「電力需給ひっ迫警報」が発令されました。原因には、「3月16日の福島沖地震による火力発電所の停止・出力低下」と「季節外れの寒波による電気需要の増大」が関係しています。
具体的には、福島沖地震により約647万kW分の火力発電が停止・出力低下し、変電設備の点検で250万kW分の連系線運用容量が低下しました。連系線運用量の低下は、他の地域から供給できる電力量が減ることを意味します。また、季節外れの寒波による暖房の需要増加も、電気がひっ迫する原因のひとつとなりました。これら2つの影響で電力需要ひっ迫警報が発令されています。
また2022年6月26日には、東京管内で「電力需給ひっ迫注意報」が発令されました。原因には、「異例の猛暑による電力需要の拡大」が関係しています。
2022年は平年よりも梅雨が短く、九州南部・東海・関東甲信では6月27日に梅雨明けとなりました。そして6月25日には群馬県伊勢崎市で、6月としては観測史上初めて40度を記録するなど、連日の危険な熱波が全国を襲っている状況でした。この影響により、冷房の使用が増えたことで電力需要が急増し、電力需給ひっ迫警報が発令されました。
2022年の電力ひっ迫は、地震による発電所の停止と予想外の気温による需要増加が主な原因です。
なぜ電力ひっ迫が起こる?3つの警報を紹介
電力需給がひっ迫すると、行政または一般送配電事業者から段階的に3つの警報が発令されます。
最初は「電力需給ひっ迫準備情報」、次に「電力需給ひっ迫注意報」、最後に「電力需給ひっ迫警報」の順番です。これらの警報は電力供給の余裕を示す「予備率」の数値に応じています。
予備率の数値もあわせて、3つの警報を詳しく見ていきましょう。
電力需給ひっ迫準備情報
電力需給ひっ迫準備情報とは、翌々日の電力供給のエリア予備率が5%を下回ると予想された場合に、北海道電力ネットワークや東京電力株式会社(TEPCO)などの一般送配電事業者から発信される注意喚起の情報です。
電力需給ひっ迫準備情報は、電力需給ひっ迫注意報や警報とは異なり、注意喚起の情報提供を行うもので、具体的な節電の要請などは含まれません。そのため、節電準備のお願いなどにとどまります。
前々日の18時程度を目処に発信される電力需給ひっ迫準備情報は、経済産業省のホームページなどで確認可能です。
電力需給ひっ迫注意報
電力需給ひっ迫注意報は、翌日の電力供給のエリア予備率が5%を下回ると予想された場合、前日の16時頃にエネルギー省から発令され、「電力需給ひっ迫準備情報」よりも深刻な状況です。
大規模停電(ブラックアウト)を未然に防ぐことを目的として、少しでも早く節電の必要性を呼びかけるために設けられました。
電力需給ひっ迫警報
電力需給ひっ迫警報とは、翌日の電力供給のエリア予備率が3%を下回ると予想された場合、前日の16時頃にエネルギー省から発令される警報です。
「電力需給ひっ迫準備注意報」よりも深刻な状態になった場合に発令され、注意報と同じく大規模停電(ブラックアウト)を防ぐことが目的です。
東日本大震災以降、電力需給がひっ迫したことを背景に導入された制度であり、2022年3月に初めて発令されました。
なぜ夕方に電力がひっ迫したのか?
2022年6月夕方に電力がひっ迫したことには、太陽光発電の発電量低下も影響しています。
太陽光発電の発電量が低下した理由は、「夕方の時間的問題」と「6月の季節的問題」です。
「夕方の時間的問題」
太陽光発電はパネルの真上に太陽が昇り、多くの日光が取り込める13時頃が発電のピークです。しかし、夕方の太陽は日が落ちてしまい、太陽光パネルに対して斜めに日光が入ります。太陽光パネルは斜めに射す日光を反射するため、発電量を保つことができません。また太陽光発電は熱に弱く、パネルの温度が上昇すると発電量が下がる性質を持っています。6月の猛暑で熱が冷めない夕方では、より発電量が下がりやすい状況でした。
「6月の季節的問題」
太陽光パネルの向きは春秋の太陽高度に合わせて設置されます。6月(夏)は、太陽光パネルの向きが適していないため、発電量を下げる原因となりました。
また学生や会社員が帰宅する夕方は、エアコンの利用や夕食の準備などがあり、電気需要が増えやすい時間帯です。太陽光発電の発電量低下もともない、夕方に電力がひっ迫する原因のひとつとなりました。
【私たちができること】電力ひっ迫への対策
政府や企業も省エネルギー対策を進めていますが、個人レベルの節電は電力ひっ迫時に大切です。実際、電力需給ひっ迫警報や注意報が発令されたときには、国からの節電要請に対応しなくてはいけません。
資源エネルギー庁のWebサイトでは、家庭でできる省エネ対策が解説されています。具体的にはエネルギー消費量が多いエアコン・冷蔵庫・照明器具などの節電情報が紹介されており、簡単に導入できる対策ばかりです。ここからは、エネルギー消費量が多いエアコン・冷蔵庫・照明器具の使い方を詳しく解説します。省エネ行動による節約効果を学んで、正しく家電製品を使用しましょう。
エアコンの使い方
エアコンは、電力消費の割合が高い家電製品のひとつです。1日の電力消費割合は、夏季で34.2%・冬季で32.7%を占めます。エアコンの使い方を変えることで、大きな節電が可能です。
- 空気を逃さないために、ドアや窓の開閉を減らす
- 扇風機を併用して空気を循環させる
- 冷房時は昼間でもカーテンを締める
- 冷房時はカーテンやすだれなどで日光を遮る
- 暖房時は厚手のカーテンや床まで届く長いカーテンを使用する
- 室外機の周りには物を置かない
- エアコンフィルターを清掃する
- エアコンの設定温度を調整する
エアコンの設定温度を調整することは節電で特に重要です。設定温度を1℃上げるだけで、約10%の電力削減が期待できます。無理を感じない程度に、適切な温度設定を心がけましょう。
冷蔵庫の使い方
冷蔵庫は、家庭で2番目に電力消費割合が高い家電製品といわれています。1日の電力消費割合は、夏季で17.8%・冬季で14.9%を占めます。
- 熱いものは冷ましてから入れる
- 庫内を適切な設定温度にする
- 食品を詰め込みすぎず、配置に注意する
- 頻繁に開け閉めしない
- 冷蔵庫内部をきれいに保つ
冷蔵庫の設定温度が必要以上に低くないか確認しましょう。冷蔵庫内の温度は2〜5℃、冷凍庫内の温度は-20〜-18度が適温です。初期設定のまま放置している家庭もありますが、設定温度を上げることで、電力消費を削減できます。冷蔵庫の温度は、冷蔵庫内部のコントロールパネルやダイヤルで変更可能です。冷蔵庫や冷凍庫の温度を必要以上に高めに設定して、食品が腐ったりしないように注意しましょう。
照明の使い方
照明は、家庭で3、4番目に電力消費割合が高い家電製品です。1日の電力消費割合は、夏季で9.6%・冬季で9.3%を占めます。
- 蛍光ランプや白熱電球からLEDライトに変更する
- 点灯時間を短くする
- 自動点灯・消灯できるライトを導入する
LEDライトは白熱電球や蛍光ランプと比べて寿命が非常に長く、約40,000時間までの耐久性があると言われています。これは白熱電球の約40倍、蛍光ランプの約4倍に相当します。
LEDライトは約1,000〜5,000円で白熱電球と比べて10倍以上の価格差がありますが、寿命が長く交換もほとんど必要ないため、トータルではLEDライトがお得だと言えるでしょう。自宅の照明はすべてLEDライトに変更することをおすすめします。
電力ひっ迫に関するまとめ
電力ひっ迫とは、電力の供給不足により需要が供給を上回る状態です。電力の供給が追いつかない場合、突然の大規模停電(ブラックアウト)が発生するリスクも高まります。
2022年に起こった電力ひっ迫の際は、地震による火力発電の停止や季節外れの気温などが影響していました。また、夕方に発電量がひっ迫したことについては、太陽光発電の発電量低下が原因のひとつでした。
電力需給がひっ迫すると、行政または一般送配電事業者から電力需給ひっ迫準備情報・電力需給ひっ迫注意情報・電力需給ひっ迫警報の3つが段階的に発令されます。
このような場合は、エアコン・冷蔵庫・照明器具などの消費電力を抑えることで節電要請への対応が可能です。また、日頃からの節電を心がければ、電気代の節約にもつながります。
電力ひっ迫時に備えて、自家消費できる太陽光発電の導入がおすすめです。とくとくショップでは、家庭用太陽光発電のご提案や手の届きやすい価格での販売をしています。ぜひこの機会に導入を検討してみてはいかがでしょうか?