非FIT型太陽光発電は、脱炭素経営にメリットの多い設備です。しかし、費用の関係で導入を悩んでいる方も多いかと思います。脱炭素関連の補助金制度の中には太陽光発電を対象にしたものもあるので、費用を抑えられる可能性があります。
そこで今回は、太陽光発電を中心に脱炭素補助金の概要について詳しくご紹介します。太陽光発電の導入費用を抑えたい方や、脱炭素補助金の種類が多すぎてよくわからない方などは参考にしてみてください。
脱炭素に関する補助金制度とは?
脱炭素に関する補助金制度とは、再生可能エネルギーや省エネ設備の導入・運用などに対して費用を支援してもらえる制度のことです。
日本政府は、2050年にカーボンニュートラル達成という目標を掲げ、環境に関するさまざまな支援策や政策を実行しています。また環境省や経済産業省、国土交通省などの省庁が、脱炭素政策に合わせて補助金制度を実施している状況です。
補助金制度の中には太陽光発電所の設置を対象にした制度もあるので、これから太陽光発電事業を始める企業は要チェックです。
なお、申請受付時期や予算、補助対象設備・金額については、制度によって異なります。そのため、早めに各補助金制度の内容や実施時期を確認しておくのが大切です。
太陽光発電に関する主な脱炭素補助金
脱炭素関連の補助金制度は複数あり、どれが太陽光発電向けなのかわからない方も多いかと思います。
国の脱炭素系補助金制度で太陽光発電に関係しているのは、主に以下4種類です。
- ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
- 新たな手法による再エネ導入・価格低減促進事業
- 再エネ主力化に向けた需要側の運転制御設備等導入促進事業
- 需要家主導による太陽光発電導入促進補助金
続いては、太陽光発電に関する脱炭素系補助金制度の内容についてわかりやすく紹介していきます。
ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業
環境省主導の「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」は、「民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業」という補助金事業の1つです。
自家消費型太陽光発電と蓄電池を自社の敷地内に導入したい方にとっては、メリットの多い補助金制度と言えます。
主な目的は、ストレージパリティの達成です。ストレージパリティは、太陽光発電を運用する際に蓄電池を導入した方が経済的メリットを得られる状態を指しています。
つまり、太陽光発電所および産業用蓄電池の両方の普及を促進するための補助金制度が、「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」です。
蓄電池に加えて自家消費型太陽光発電を導入する場合に補助金が支給されます。また、電気自動車とV2Hのセット導入においては、蓄電容量に対して「1/2×4万円」補助を受けられます。
以下に補助金額と主な要件を紹介します。
導入方式 | 補助金額 |
---|---|
自家消費型太陽光発電、産業用蓄電池を購入 | 出力1kWにつき4万円の補助金額を交付(設置場所は業務用施設、産業用施設、集合住宅に限る) |
オンサイトPPAもしくはリースで自家消費型太陽光発電、産業用蓄電池を導入 | 出力1kWにつき5万円の補助金を交付 戸建て住宅への設置は1kWにつき7万円 |
出典:環境省ホームページ
補助金額の上限は、補助対象経費の3分の1と定められています。補助対象経費は、各設備の導入費用を指しています。実施期間は、2025年度までの予定です。
ちなみにオンサイトPPAとは、PPA方式の太陽光発電所を自社の敷地内に設置する運用および導入方法のことです。
PPAモデルとは、PPA事業者所有の太陽光発電所を自社の所有している土地や建物の屋根に無償で設置するサービスのことです。設置後のメンテナンスや修理交換費用も負担してもらえるので、費用を抑えられるのがメリットです。
ただし太陽光発電で発電した電気は売電できないため、自家消費を検討している場合に適しています。また、自家消費した分の電気料金は、PPA事業者に支払う必要があります。電力会社よりは安いものの、ある程度の負担がかかります。
リース型は、リース業者に太陽光発電設備を自社の敷地内や建物の屋根に設置してもらい、一定期間借りながら運用していく方式です。主な費用負担は毎月のリース料金で、PPA型に似ています。
新たな手法による再エネ導入・価格低減促進事業
「新たな手法による再エネ導入・価格低減促進事業」は、「民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業」の一種で、ソーラーカーポートやソーラーシェアリング、水上設置型太陽光発電を検討している場合にメリットがあります。
この制度では、新しい手法を用いた太陽光発電所の導入を支援してもらえるのが大きな特徴です。実施期間は2025年度までの予定なので、2023年からでも申請を進められます。
以下に対象の設備と補助金額を紹介します。
対象の設備 | 補助金額 |
---|---|
ソーラーカーポート |
・計画策定や導入時にかかった費用を補助 ・計画策定に対しては4分の3(上限1,000万円) ・設備費用に対する補助金率は3分の1 |
・ソーラーシェリング ・ため池型太陽光発電 ・廃棄物処分場を活用した太陽光発電 |
・計画策定や導入時にかかった費用を補助 ・計画策定に対しては4分の3(上限1,000万円 ・設備費用に対する補助金率は2分の1 |
オフサイト型太陽光発電、かつ自営線を導入 |
・計画策定や導入時にかかった費用を補助 ・計画策定に対しては4分の3(上限1,000万円) ・設備費用に対する補助金率は3分の1もしくは2分の1 |
・地域の特性に応じた太陽光発電以外の自家消費型再エネ設備、工場の廃熱利用、再エネの熱利用など | 新しい再生可能エネルギーの導入手法に関する調査や検討を行い、その知見を公表、なおかつ横展開を図る場合に補助金を受けられる |
出典:環境省ホームページ
上記の中で補助対象の太陽光発電は、ソーラーカーポート、ソーラーシェリング、ため池型太陽光発電(水上設置型太陽光発電)、廃棄物処分場を活用した太陽光発電、オフサイト型太陽光発電です。
ソーラーカーポートは、カーポートの屋根部分に太陽光パネルを設置した発電設備を指しています。ソーラーシェアリングは、農地に特殊な架台を設置し、太陽光発電と農業を両立させる方式です。
このほか、ため池型太陽光発電は水面で行う太陽光発電で、オフサイト型太陽光発電は、自社の敷地から離れた場所に太陽光発電所を設置し、自営線を引いて自家消費する方式です。
オフサイト型太陽光発電以外の太陽光発電で補助金を交付してもらうには、経済産業省公開の調達価格等算定委員会(FIT制度や設備費用に関する資料)に記載されている資本費の平均値もしくは中央値のいずれか低い方を下回る必要があります。
再エネ主力化に向けた需要側の運転制御設備等導入促進事業
「再エネ主力化に向けた需要側の運転制御設備等導入促進事業」は、「民間企業等による再エネ主力化・レジリエンス強化促進事業」に含まれている補助金制度です。実施期間は2025年度までの予定です。
同補助金制度は、太陽光発電や風力発電といった発電量の不安定な再生可能エネルギーの普及に必要なデマンド・サイド・フレキシビリティ(DSF)の創出につながる設備の導入支援が目的です。(DSF:需要家側で自社設備の消費電力などをコントロールして収益を得る)
具体的には、主に遠隔地からの運転制御が可能なエネルギーマネジメント(エネルギーの管理制御システム)や二酸化炭素排出量削減を行える需要型設備の導入費用に対して、補助金が支払われます。
以下に補助金の内容を紹介します。
対象設備 | 補助金額 |
---|---|
オフサイト(遠隔地)から運転制御可能な需要家側の設備およびシステムの導入を支援 | 補助対象経費に対して2分の1の補助率 |
出力抑制制御をオフライン制御からオンライン制御に転換するための設備を導入した場合に補助金対象 | 設備費用に対して3分の1の補助率 |
スマート街路灯(通信ネットワークと連携したLED街路灯)、ソーラー街路灯に関する計画策定や設備費用が補助金対象 | 補助対象経費に対して4分の3、3分の1、4分の1の補助率で補助金を交付 |
出典:環境省ホームページ
需要家は、電気の使用者を指しています。太陽光発電と関連している項目は、2番目の出力抑制に関する補助金です。太陽光発電の導入後に、出力抑制のシステムをオンライン化させる際に補助金を交付してもらえる可能性があります。(出力抑制:電力供給量が多すぎる場合、電力会社から電力供給の一次停止に関する指示が行われる。)
需要家主導による太陽光発電導入促進補助金
「需要家主導による太陽光発電導入促進補助金」は、主にメガソーラーを導入したい企業にメリットがあります。
対象は小売電気事業者に電力を供給している発電事業者で、2MW以上のメガソーラー、蓄電池に対して補助金が交付されます。2023年度も申請を受け付けています。
補助金を受けるには、少なくとも以下の要件を満たす必要があります。
- 非FIT、非FIP型の太陽光発電を導入
- 太陽光発電の合計出力が2MW以上
- 太陽光発電の単価が1kWにつき23.6万円未満
- 電力供給に関する契約が8年以上、かつ一定量以上の電力供給
- 再エネ特措法の事業計画策定ガイドラインの遵守
要件を満たし、なおかつ審査に通過した場合は、補助対象経費に対して2分の1以内の補助金額を交付してもらえます。また、自治体連携型の太陽光発電事業では、補助率が3分の2以内に変わります。蓄電池の補助率は、3分の1以内です。
補助対象経費は、太陽光発電所の設計費用をはじめ太陽光パネルなどの設備費、土地造成費や施工費用、系統連系を含む接続費まで含まれています。
脱炭素関連の補助金を検討する際に注意すべきポイント
補助金制度を検討する際は、補助金の申請要件や補助金額・補助率の他にも確認すべきポイントがあります。
最後は、脱炭素関連の補助金事業を調べる際に注意すべきポイントを紹介していきます。
各補助金制度の実施・受付先を混同しないよう注意
脱炭素関連の補助金制度を調べる際は、申請および受付先をしっかり確認しましょう。
補助金制度の実施団体や管理している省庁は、各制度によって異なります。そのため、申請方法や対応している部署、実施期間なども違います。
申請を検討する際は、まず補助金制度の申請受付を行っている省庁や委託されている企業・団体を把握しておく必要があります。
補助金の申請期限に間に合うよう準備を進める
脱炭素にかぎった話ではありませんが、補助金を受けたい場合は申請期限に間に合うよう準備を進めましょう。
脱炭素関連の補助金制度は、それぞれ申請期限や予算に違いがあります。そのため、全て同じ申請期限と勘違いしてしまうと、既に終了してしまっていて申請できないといったケースも出てきます。
実施団体や省庁のHPには、補助金制度の申請書類に関するデーターや概要、申請期限が記載されています。準備を始める際は、早めに申請期限と流れを確認しておきましょう。
なお、弊社とくとくファーム0では、非FIT型太陽光発電の導入支援だけでなく、補助金制度の調査やサポートまで対応しています。気になる方は、ぜひお電話やWebフォームよりご相談ください。
脱炭素関連の補助金で太陽光発電の費用負担を軽減しよう!
脱炭素関連の補助金制度は複数実施されています。また、2025年度まで実施予定の補助金制度も多く、2023年からでも間に合うケースが多いと言えます。
脱炭素経営のために太陽光発電を検討している方や、太陽光発電の電力を事業に活かしたい方は、今回の記事を参考にしながら非FIT型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
多くの脱炭素系補助金制度は、非FIT型太陽光発電を前提にした内容です。
弊社とくとくファーム0では、太陽光発電用地の選定やご提案の他、非FIT型太陽光発電の設計・土地造成・施工、非FIT太陽光発電で発電された電力の調達など、さまざまな方向性で導入サポートを行っています。
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