脱炭素経営とは?取り組み方やメリットについて解説

脱炭素経営とは?取り組み方やメリットについて解説

気候変動などから世界的に脱炭素化へ向けた取り組みが始まっています。国内企業も脱炭素経営へ向けた取り組みを始める必要があるものの、具体的な取り組みや準備について分からない部分も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、脱炭素経営の意味や取り組み方、メリット・デメリットについて分かりやすくご紹介します。脱炭素経営を始めるために基礎から覚えたい方や脱炭素経営に関心を持っているけれどメリットがあるのか知りたい方は、参考にしてみてください。

脱炭素経営とは何?

脱炭素経営とは、企業の経営方針に脱炭素化を盛り込んだ考え方のことです。

昨今、気候変動などの問題から世界では、環境重視の生活や経営へシフトし始めています。脱炭素は、このような環境問題に対処するための施策で、個人だけでなく企業も脱炭素化へ向けた取り組みが求められています。

そこで近年、脱炭素経営という考え方・言葉が生まれました。また、2020年、当時の政権が、2050年までのカーボンニュートラル達成を宣言し、国主導で脱炭素へ向けたロードマップの作成を行っている状況です。カーボンニュートラルは、CO2排出量から吸収量を差し引いて、実質0の状態を指します。

なお、脱炭素経営としてみなされる取り組みは、再生可能エネルギーを活用した発電および自家消費、省エネ機器の導入、RE100などの環境問題に関する枠組みへの加盟などさまざまです。

脱炭素経営が重視される理由

そもそも環境問題に対して世界が目を向けるようになった主なきっかけは、1997年の京都議定書と2015年のパリ協定といった取り組みが関係しています。

大量生産大量消費、環境を重視しない企業活動は、気候変動など地球環境にとって大きな影響を与えると考えられ、以下のような目標が定められました。

  • 産業革命前の気温を基準として、世界の平均気温上昇を2℃、1.5以内に抑える
  • 温室効果ガスの排出量に関する報告書を5年ごとに提出

温室効果ガスとは、CO2(二酸化炭素)やフロンガスなど、地表から出る赤外線を吸収して、地球全体の気温を上昇させてしまう物質のことを指します。

国内においては2050年までのカーボンニュートラル達成という独自目標を掲げているため、自治体や企業、個人に対してさまざまな対策が求められています。

また、企業に対しては、脱炭素経営へシフトしやすいよう補助金制度などが立ち上げられています。

脱炭素経営へ向けた世界の取り組み状況

アメリカの場合は、2025年までに温室効果ガス排出量26~28%削減を掲げていて、世界の中でも比較的短期的な削減目標を設定しています。

一方、EUでは、1990年と比較して2030年の温室効果ガス排出量55%削減を目標にしていて、アメリカと目標設定値や達成年などが異なります。

ロシアと中国の場合は、2060年までに温室効果ガスの排出量実質0を掲げていて、アメリカやEUより長期的な目標です。

そして、TCFD、SBT、RE100といった脱炭素経営に関する枠組みへ加盟している企業数の上位3か国は、アメリカとイギリス、日本です。また、TCFDの加盟数に関しては、日本が1位です。

枠組み 概要
TCFD 企業の気候変動に関する取り組み状況を示した情報の開示に関する枠組み
SBT 科学的なアプローチによる環境問題への中長期的な取り組みを目指す枠組み
RE100 事業活動に必要な電力を100%再生可能エネルギーでまかなうことを目指す枠組み

このように脱炭素に関する目標は、日本だけでなく世界各国で設定されていることが分かります。脱炭素経営は、このような世界的な時流に沿った動きといえます。

脱炭素経営へシフトするメリット

ここからは、企業が脱炭素経営へシフトしていく主なメリットについて紹介します。

エネルギーの調達コストを抑えられる

事業活動に必要な電力の調達コストを抑えられるのが、脱炭素経営の大きなメリットです。

事業を継続していくためには、電力を確保する必要があります。しかし、日本は、火力発電に必要な化石燃料を輸入に頼っているため、為替相場の変動や国際情勢の変化などによるエネルギー価格高騰の影響を受けやすい状況です。

脱炭素経営へシフトした場合は、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーで作った電力を自家消費できるようになるため、エネルギーの調達コストを削減できます。

企業価値アップにつながる

脱炭素経営へのシフトは、企業価値アップにつながる可能性があります。昨今の企業経営では、サービス品質や製品の性能だけでなく、ESGという点も注目されています。

ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の略称です。脱炭素や多様性、人権などへの配慮や改善が、企業に求められつつあります。たとえば、脱炭素経営を発表し、活動を継続していけば、社会や企業からの評価が高まり、売上アップや新規取引先の確保など、企業の成長につながることも期待できます。

企業にとって脱炭素経営は、自社の事業活動に影響を与える重要な考え方です。

求職者に対してアピールでき人材確保につながる

脱炭素経営へシフトすることは、人材確保という点でもメリットのある方針です。

環境問題やSDGs、ESGなどといった情報は、テレビやSNS、インターネットニュースなどで何度も発信されています。そのため、学生の中には、環境や社会問題に取り組む企業へ就職したいと考える学生が出てきています。

企業は、早い段階で環境経営へシフトしておくことで、さまざまな問題を解決したいと考える熱意を持った学生を採用できる可能性があります。

脱炭素経営へシフトした場合のデメリット

次に、脱炭素経営へシフトした場合のデメリットについて紹介します。

脱炭素経営に必要な設備機器の初期費用負担

脱炭素経営へシフトするには、ただ宣言するだけでなく脱炭素につながる設備の導入や建物のリフォームなどを行う必要があります。

主な取り組みとしては、太陽光発電や風力発電といった再生可能エネルギー設備をはじめ、省エネ性能の高い暖房や冷房機器、Jクレジットの購入、ビルや工場のZEB化などが挙げられます。(Jクレジット:環境価値を購入できる制度、ZEB:年間のエネルギー消費量と生産量を差し引き、0となるビル)

脱炭素経営にはさまざまな費用負担がかかるため、予算を確保できるか確認した上で始めるのも重要です。

脱炭素経営への取り組みにリソースを割く必要がある

脱炭素経営へ向けた準備や取り組みには、リソースの確保という点でデメリットや注意点もあります。

たとえば、太陽光発電を導入するためには、社内で担当者を配置し、太陽光発電の販売店や施工業者との打ち合わせから見積もりの確認、施工内容の確認と上長からの承認など、1つのプロジェクトだけでも手続きや確認に手間がかかります。

脱炭素経営へシフトしたい場合は、担当者の配置と何人必要なのか、どのようなプロセスでプロジェクトの承認や確認を行うのか、丁寧に策定していく必要があります。

取引先との関係性に変化が生じる可能性

脱炭素経営へシフトした場合、取引関係にある企業との関係性に変化が生じる可能性もあります。

脱炭素経営で求められる内容には、社内の取り組みだけでなく取引先のCO2排出量や契約している電力会社の電源構成(火力発電や再生可能エネルギーの割合)、仕入れ先の省エネや脱炭素に関する状況なども含まれています。

たとえば、自社にとって重要な取引先が、生産工程やその他理由かCO2排出量を削減しにくい場合、これからも取引を継続するべきか難しい判断といえます。

このように脱炭素経営は、必ずしも自社にとってメリットばかりの取り組みではありません。

脱炭素経営へ取り組む場合は補助金制度を受けられる

国では、脱炭素経営へ取り組む企業を支援するため、さまざまな補助金制度を実施しています。

以下にいくつか補助金制度を紹介します。

制度名 概要
廃棄物処理×脱炭素化によるマルチベネフィット達成促進事業 廃棄物から燃料の製造、廃熱を活用した設備の導入にかかる費用を補助
再生可能エネルギー資源発掘・創生のための情報提供システム整備事業 再生可能エネルギーを活用した発電設備やエネルギー採掘に必要な情報分析にかかった費用を一部補助
浄化槽システムの脱炭素化推進事業 浄化槽システムの脱炭素化の省エネ化や再生可能エネルギー設備による浄化槽システムの稼働に伴う費用の補助

国の支援制度は、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギーの導入補助をはじめ、省エネ設備や建築物の省エネ・脱炭素化などにかかる設置・改修費用の補助、再生可能エネルギーの導入に必要な各種情報の取得など、多数実施されています。

これから脱炭素経営を始める企業は、環境省HPの脱炭素化事業一覧から自社に合った補助金や支援制度が実施されているか確認してみてはいかがでしょうか。

脱炭素経営へ向けた取り組みとは?

ここからは、脱炭素経営へシフトする際にどのような取り組みを行えばいいのか、主な取り組み方法について紹介します。

再エネを活用している電力会社へ切り替え

再生可能エネルギーを活用した発電事業を行っている電力会社への切り替えは、脱炭素経営の1つとして考えられています。

2016年に実施された電力自由化によってさまざまな企業が、電力の小売り事業へ参入しています。中には、太陽光発電や風力発電、水力発電を主な電源とした新電力もあるので、再生可能エネルギーを間接的に導入することが可能です。

脱炭素経営の方法として比較的簡単なので、まずは電力会社の見直しを図ってみるのが大切です。

省エネ設備の導入

固定費の多くを占める空調設備を中心に省エネ化を進めてみることは、脱炭素経営へシフトしているといえます。

たとえば、以下のような取り組みは、脱炭素化につながります。

  • 省エネタイプの空調設備を導入
  • 照明設備をLED化
  • 社用車を電気自動車へ切り替える
  • エコキュートなど効率のいい給湯器の導入

省エネ化は、温室効果ガスの排出量削減につながりますし、消費電力量の削減による電気料金負担の軽減といったメリットもあります。そのため、毎月の固定費に悩む企業にとっても取り組みやすい方法の1つです。

太陽光発電による自家消費

シンプルかつ脱炭素経営に大きく貢献するのが、太陽光発電設備の導入です。特に自家消費型太陽光発電は発電した電気を自社で消費できるため、CO2排出量を直接抑えられますし、電気料金を年間数10%削減することが可能です。

さらに太陽光発電は、停電時に非常用電源として活用できます。脱炭素経営の他、BCP対策について悩んでいる企業は、太陽光発電を導入してみてはいかがでしょうか。

脱炭素経営に関連した枠組みでアピールが大切

脱炭素経営を効率よくアピールするには、RE100やSBT、TCFD、RE Action、への加盟と脱炭素経営の宣言および情報発信が重要です。

特にSBTやRE Actionは中小企業向けの枠組みなので、事業規模にかかわらず加盟申請しやすいといえます。SBTは温室効果ガスの排出量削減、RE Actionは再生可能エネルギー由来の電力で事業活動を行うことを目標とした枠組みです。

RE100はいわゆる大手企業など、事業規模の大きな企業向けの枠組みです。TCFDは環境問題への取り組みに関する情報開示を目的とした枠組みで、中小企業も加盟・活動しやすいのが特長です。

脱炭素経営に関するアピールも行うことが、企業価値アップにつながりますし消費者からの評価につながります。

企業は脱炭素経営へシフトするのが大切!

今後の事業活動を考える上で企業は、脱炭素経営へシフトしていくことが大切です。環境問題へ取り組みながら経営を行うことは、取引先や株主、消費者からの評価につながりますし、商品やサービスの売上にも影響する可能性があります。

脱炭素経営に強い関心を持った方や脱炭素経営を今すぐ始めようと考えた方は、今回の記事も参考にしながら太陽光発電の導入を検討してみてはいかがでしょうか?

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