私や和上ホールディングスの地元である関西には関西空港、伊丹空港、そして神戸空港という3つの空港があります。そしてこれらの空港は関西エアポートという企業グループに再編、運営されています。
この3空港を運営する関西エアポートグループが2021年3月に、重大な発表をしたことをご存じでしょうか。その発表とは、「2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにする」というものです。
すでに国も同様の宣言をしており、日本は2050年に向けて脱炭素国家を目指して邁進中です。この宣言は決してお題目ではなく、国も本気です。そのためにさまざまな施策を打っており、企業の中にはこれに呼応して「2050年までに脱炭素」を打ち出すところが続出しています。そんな流れの中に打ち上げられた大きな花火が、関西エアポートの脱炭素宣言です。
この長期目標で、関西エアポートは3つの段階を踏んで脱炭素を実現するとしています。スコープ1(第1段階)では燃料の燃焼に伴う直接的な排出を削減し、スコープ2では電力の購入における間接的な排出の削減、そして最終段階であるスコープ3ではグリーンエネルギーの購入を含めて実質ゼロを達成する・・・というロードマップです。
これは、とても画期的なことです。何が画期的かというと、そもそも空港は飛行機が発着する場所であり、飛行機は燃料の大量消費を象徴する乗り物だからです。2020年のコロナ禍では世界中で人の動きが止まり、飛行機が飛ばなくなりました。この事実を受けて原油価格が史上初のマイナス価格をつけたということは、それだけ飛行機が石油を大量に消費しているということの証左です。もちろん飛行機だけが石油を大量に消費しているわけではありませんが、要因のひとつになっていることは間違いないでしょう。
そんなエネルギー消費の象徴でもある空港が脱炭素を打ち出したのですから、今や脱炭素社会への大きな流れは誰も止められるものではなく、空港など従来のエネルギー消費に深く関わっている事業者であっても環境への取り組みをしなければ生き残っていけないということなのでしょう。
しかも、この長期目標ではもうひとつ、これからの時代を象徴する重要な視点があります。それは、関西エアポートが脱炭素を実現するために間接的なCO2排出を削減することを盛り込んでいる点です。スコープ2とスコープ3がそれに該当します。関西エアポート傘下の3空港では今後、消費する電力が再生可能エネルギー由来のものでなければならなくなる時がきます。化石燃料を燃やして発電をしている事業者からの電力を買わないと、大口の需要家が言っているのです。これはまさにESG投資の流れであり、今後このように大口の需要家が同様の決定をすることによって「何で発電したのか」という電力の質が問われるようになっていくことでしょう。 私たち和上ホールディングスが提唱し、目指してきた社会を未来の話だと思っていた方は多いかもしれませんが、実はもう始まっているということですね。