メガソーラーは1MWクラスの太陽光発電で、年間1,000万円台の売電収入を見込めます。しかし、利益率がいくらなのかよく分からないと感じている方もいるのではないでしょうか。メガソーラーを含む太陽光発電は、売電収入から初期費用と維持管理費用を差し引くことでおおよその利益率や利回りを確認できます。
そこで今回は、メガソーラーの利益率や採算性について詳しくご紹介します。個人でメガソーラーを運用できるか考えている方やメガソーラー事業を検討している事業者は、参考にしてみてください。
メガソーラーの利益率
メガソーラーに限らず太陽光発電の利益率は、発電効率と固定買取価格、維持費用によって変わります。特にメガソーラーの固定買取価格(売電単価)は、入札の結果によって変わります。
出力1MWのメガソーラーで固定買取価格10.75円/kWhの場合は、利益率60%程度で計算することが可能です。
- 出力1MW(1,000kW)
- メガソーラーの一般的な維持費用500万円と仮定
- 年間発電量130万kWhと仮定
固定買取価格10.75円/kWhは、2021年度第11回の入札で定められた上限価格です。
このように維持費用と売電収入から計算してみると、利益率の高さが目立ちます。
ただし、実際は初期費用が発生するため、利回りで計算した方が正確な利益と支出の割合を把握できます。なお、上記のケースでは利回り5%程度と比較的低めです。
メガソーラーの利益と費用
メガソーラーの大まかな利益率について確認したあとは、発電量や初期費用、維持費用について具体的に確認していきましょう。
年間の発電量は100万kWh以上
メガソーラーの発電量は、年間で100万kWh以上です。出力1MWで100~130万kWh程度、出力2MWで200万kWhといった発電量を見込めます。
発電量を決める要素は、主に以下の通りです。
- システム容量:太陽光パネルの枚数で大きく変わる
- 1日の平均日射量:太陽光がどれだけ降り注いでいるか(太陽の放射エネルギー量の平均)
- 損失係数:発電量を下げてしまう事象を係数として算出したもの
より具体的に年間発電量を計算したい場合は、上記の要素を用いた「システム容量×日射量×損失係数」で求めることが可能です。なお、損失係数については、0.85で計算されていることがほとんどです。
初期費用は1億円以上
メガソーラーの初期費用は、出力1MWにつき約1億円程度かかります。中古太陽光発電所は、設備状況や売主の方針によってばらつきがあり、新規設備より安く購入できる可能性があります。
メガソーラーを運営する上でネックとなるのが、この初期費用です。融資の難易度という点はもちろん、固定買取価格の下落傾向で初期費用回収に時間がかかってしまいます。
これからメガソーラーを導入する方は、初期費用回収期間を短縮するためにフルローンを避けた方がいい場合もあります。
年間の維持費用は600万円以上
メガソーラーの維持費用は、一般的に年間数100万円単位です。1MWの場合は、年間500万円もしくは600万円程度の維持費用が発生します。
メガソーラーの維持には、家庭用太陽光発電と異なりキュービクルの設置費用や害獣および防犯対策、雑草対策などさまざまな費用がかかります。
以下に維持に必要な対策を紹介します。
- メンテナンス
- 損害保険
- キュービクル
- 電気主任技術者(人件費)
- 柵の設置(害獣や侵入者対策)
- 防犯カメラ
- 遠隔監視装置
安いとはいえない金額ですが、それぞれの対策を怠ると故障や事故リスクを高めてしまいます。採算性も重要ですが、必要経費と捉えて維持管理費用の削減に着手しないよう気を付けてください。
メガソーラーの売電で採算が取れるようにするには
メガソーラーの利益率および利回りを高めたり維持したりするには、メガソーラーの運用や設置方法、資金調達などさまざまな点で工夫を重ねる必要があります。
それでは、メガソーラーの利益率および利回りを高めるもしくは維持につながる施策をご紹介していきます。
定期的なメンテナンスを欠かさない
メガソーラーの利益率を維持するには、売電収益を維持することも重要です。
メガソーラーをはじめ太陽光発電は、メンテナンスフリーではありません。そのため、設置から5年10年と経過していくと、徐々に発電効率が低下していきます。
太陽光発電におけるメンテナンスは、太陽光パネルや配線、周辺機器の劣化具合や稼働状況をチェックするなどして定期的に行うようにしましょう。
発電効率の高いパネルを導入
メガソーラーの利益率を高めるには、発電効率の高い太陽光パネルを購入するのも大切です。太陽光パネルの発電効率は、太陽電池に用いられている半導体素子の種類やメーカーによって変わります。
そのため、発電効率を確認せずに太陽光パネルを購入してしまうと、利益率の低下につながってしまいます。
発電効率の高い太陽光パネルは、以下記事にて紹介しているので参考にしてみてください。
反射板で光の吸収量をアップ
メガソーラーの周辺に反射板を設置することで、太陽光の吸収量をアップできます。
メガソーラークラスでは、設置場所やその他条件から吸収しきれない太陽光も膨大です。そのため、場合によっては発電効率低下の主な原因となっているかもしれません。
反射板は、近年太陽光発電関連機器のメーカーから発売されており、架台などに貼り付けることで発電量10~20%程度アップを見込めるようです。
夏場は太陽光パネルに散水
太陽光パネルの発電効率は熱によって変動するため、散水による対策も考えられます。
太陽光パネルは、パネル表面の温度上昇に伴って発電効率が低下していきます。具体的には、気温30度を超えたあたりから発電効率が低下しやすい傾向です。
太陽光パネルへの散水は、冷却効果を期待でき、発電効率の維持につながる可能性もあります。また、パネル表面の汚れを落とすことが可能です。
ただし、水道水を使用すると塩素などの成分で、散水後に白い跡が残る場合もあり注意が必要です。
初期費用を抑える
メガソーラーの利回りを高めるには、初期費用を抑えるもしくは自己負担額を増やすのが大切です。
メガソーラーの初期費用は、1MWで1億円程度です。
売電収入の軸となる固定買取価格は年々下落していて、1MWで年間1,400万円程度の収入です。
維持費用の負担と初期費用の返済を売電収入でまかなう場合、初期費用回収まで10年~15年程度はかかります。固定買取価格期間は20年間なので、利益を伸ばせる期間は残り10年~5年程度です。
初期費用を全て融資でカバーしたり高い初期費用で契約してしまったりすると、手元に残る売電収入が減ってしまいます。
そのため、初期費用をなるべく抑えられる販売店や施工業者へ相談もしくは、自己資金で初期費用の一部を負担し、少しでも融資額を抑えられるようにするのが大切です。
日射量の多い土地を確保
メガソーラーを設置する場合は、日射量の多い土地を確保しておくのが重要です。
メガソーラーの売電収入を決める要素の1つは、立地条件です。仮に売電単価で、日射量の低さを補えたとしても、FIT制度終了後の運用に大きな影響を与えます。
日射量に影響を与える要素は、以下の通りです。
- 晴れの日の日数
- 周囲の障害物(ビル、住宅、電柱、木や雑草)
- 日光に対する土地の角度
日射量の多い土地は、内陸の長野県や山梨県です。また、梅雨の時期がない北海道は、広い土地を確保しやすくメガソーラーに適した土地の1つです。
土地の選定や日射量に関しては、太陽光発電の販売店で調査してもらえますし、自身でも気象関係のサービスでデータを取得することが可能です。
FIP制度へ移行するため利益率が変わる可能性
メガソーラーを含む太陽光発電は、FIT制度が適用されています。しかし、国では新たにFIP制度という買取制度を構築しており、2022年4月から高圧の太陽光発電へ適用していく方針を示しています。
利益率が大きく変わる可能性もあるため、FIP制度についても理解しておくことが大切です。
FIP制度の概要
FIP制度(Feed-in Premium:フィードインプレミアム)とは、卸市場で売電を行った際にプレミアム価格を上乗せされる制度のことです。
欧米では導入されている制度で、再生可能エネルギー設備の導入促進を目的とした施策です。国内では、2020年6月に導入が決定し、2022年4月より実施予定となっています。
主な特徴は、市場価格で売電を行うことを前提、そしてプレミアム価格という新しい仕組みです。
FIP制度に申請した場合は、一般市場で定められる変動価格で売電を行うことになります。そのため、売電単価は市場の需要と供給バランスに応じて変わります。
たとえば、夕方の電力需要の多い時間帯は、市場の売電単価も上昇します。一方で、早朝など電力需要の少ない時間帯で売電単価は、下落していきます。
プレミアム価格は、市場価格から独自で算出した基準価格を差し引いた差額分を埋める補助収入です。メガソーラーのオーナーは、市場価格にプレミアム価格を上乗せた売電収入を得られます。
電力需要の多い時間帯に供給できるかがポイント
FIP制度で利益率を伸ばすには、電力需要の多い時間帯に電力供給できるかがポイントです。
FIT制度と異なりFIP制度は、固定買取価格ではありません。そのため、電力需要の多い時間帯になるべく売電量を増やすことができなければ、利益率を維持もしくは伸ばしにくい可能性もあります。
対策の1つとしては、蓄電池の導入が考えられます。
蓄電池と太陽光発電を組み合わせた場合、電力需要の少ない時間帯に電気を蓄えておき、電力需要の多い時間帯に売電することで、効率よく売電収入を得られます。
メガソーラー以上はFIP制度へ移行
FIP制度へ移行予定の再生可能エネルギーは、出力1MWのメガソーラーです。
つまり、FIT制度で売電を始めることができるメガソーラーは、2021年度に発電およびFIT申請を行った設備のみです。
【2022年4月以降】
- 出力1MW以上:FIP制度へ移行
- 出力50kW以上1MW未満:FIPとFITを選択できる
- 出力50kW未満:FIT制度
2021年下半期からメガソーラーの導入準備を進めている方は、FIP制度を前提とした事業計画を立てるのがおすすめです。
メガソーラーの注意点
メガソーラーの導入を検討している時は、利益率や利回りだけでなくリスクや注意点についても確認しておくのが重要です。
最後にメガソーラーの導入および運用に関する注意点を紹介します。
初期費用の負担が大きい
冒頭でも触れていますがメガソーラーの初期費用は、1MWにつき1億円程度かかります。
個人で導入するのは難しい金額で、個人向けの融資限度額を超えています。企業の中でも資金調達に余裕のある企業でなければ、リスクのある金額です。
億単位の資金調達が難しい状況であれば、出力10kW未満や出力数10kWなど初期費用100万円~1,000円台で設置可能な太陽光発電から検討するのも大切です。また、中古太陽光発電所は、新規設備よりも初期費用を抑えられる可能性がありますし、高い売電単価を期待できます。
維持管理費用も100万円台と一定の負担がかかる
メガソーラーは、初期費用だけでなく維持管理費用の負担も大きな設備です。
メガソーラーの初期費用を抑えるため、安く品質に問題のある太陽光パネルを設置したり防護柵の設置を怠ったりすると、修理交換コストが増えてしまいます。
メガソーラーの維持管理費用は、1MWでも500万円以上かかり、売電収入とのバランスを計算しておくのが基本です。
維持管理費用の負担が気になる時は、低圧の太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
災害時など突発的な事故による損害が大きい
メガソーラーの設備規模は、一般的な産業用太陽光発電よりも大きく、事故による損害額や影響などのリスクが大きい傾向です。
- 台風によるパネルの飛散もしくは外から飛んできた石の直撃による破損
- 地震などで基礎部分、架台や太陽光パネルの破損
- 津波や洪水で浸水
- 土砂災害に巻き込まれて設備全損
メガソーラーの太陽光パネルが万が一故障してしまうと、数1,000枚の修理もしくは交換費用がかかります。さらに修理中は発電停止するため、より損失が拡大しやすい状況です。
少しでも負担を抑えるには、災害リスクを確認した上で防災を進めたり損害保険へ加入したりといった対策が重要です。
発電低下で採算性に影響を与えるリスクもある
メガソーラーは、経年劣化の他、低品質な太陽光パネルや周辺機器選定、周辺の障害物や雑草などによる発電低下リスクもあり、注意が必要です。
他にも設置場所周辺に送電網がないため、追加で送電網の設置工事を行うとさらに初期費用負担を抱えてしまいます。
発電効率低下や初期費用増加など複数要因が重なることで、採算性に大きな影響を与えるリスクもあります。
メガソーラーは採算の取れる事業だが工夫やFIP制度の対策も重要
メガソーラーの利益率(売電収入÷維持管理費用)は、60%程度で計算できる場合もあります。しかし、初期費用を含めた利回りを計算してみると、5%とシビアな数値も見えてきます。
メガソーラーで利回りを伸ばすには、発電量や売電量アップにつながる対策や高効率の太陽光パネル購入、初期費用の一部自己負担など、売電収入と初期費用のバランスを整えるのが大切です。
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