太陽光発電を導入していざ売電を始めようとしても、実はすぐにはできません。太陽光発電の売電には決められた申請や手続きが必要となります。しかし、多くの投資家はすぐに売電を始められると思っている方の方が多いでしょう。
今回は、太陽光発電の売電がなかなか始まらないという方へ向けて、原因と必要な申請などの解説をしていきます。
【太陽光発電】売電はすぐには始まらない
太陽光発電を導入することのメリットの1つとして、売電があります。この売電とは、太陽光発電機によって生み出した電力を買い取ってもらうという仕組みです。
生み出した電力は、自宅などにおいて自家消費することが多いですが、日当たり良好で発電量が多い場合には、余剰電力を買い取ってもらえるのです。しかし、この売電がすぐに始まらないということは、事前に把握しておく必要があるでしょう。
なぜすぐに始まらないのか、売電を始めるにあたって時間が必要な理由について、以下の3点に分けて解説していきます。
- 売電開始には申請が必要
- 認定されるまでに時間がかかる
- 認定に時間がかかる理由
売電開始には申請が必要
太陽光発電にて生み出した電力を売るためには、申請作業をしなければいけません。
電力を売るということは、例えば不要分をリサイクルショップに販売するような単純なことではありません。売電については、「固定価格買取制度(別名:FIT法)」と呼ばれる制度が適応されます。
そして、さまざまな申請手続きをおこなった上で、初めて売電が可能となります。その申請手続きの内容は、主に2種類が存在しています。
まず1つ目の事業計画認定申請は、経済産業省からFIT法を利用した設備を認定してもらうためにおこないます。そして、2つ目の系統連系申請は、一般送配電事業者が所有する設備へ、太陽光発電に必要な設備を接続するためにおこなうのです。
売電するためには、一般に使用されている電線を使用して送電する必要があります。
そのため太陽光発電を設置した地域を管轄する事業者により、受給のバランスや設備の状況をチェックしてもらわなければならないのです。
認定されるまでに時間がかかる
売電のために必要な申請については2種類あるとお伝えしましたが、それぞれの申請が認定されるまでには時間がかかります。
一般的に必要な期間としては、以下のとおりとなっております。
- 事業計画認定申請:1〜3ヵ月
- 系統連系申請:2週間〜数ヵ月
つまり、売電が可能となるまでに最短でも1ヵ月は必要ということになります。売電を急いでいる方の場合は、早めに申請手続きを進める必要があるでしょう。
しかし、申込みが集中している時期や、工事内容が大規模になる場合には認定までの期間がどうしても長くなってしまいます。さらに申請に必要な書類もそれぞれ複雑であり、万が一不備があった場合には、さらに期間が伸びてしまうことも十分に考えられます。
認定に時間がかかる理由
それでは、一体なぜそこまで申請認定までに時間がかかってしまうのでしょうか。
申込みが集中しているということは容易に考えられるケースですが、実際には多くの複雑な要因から、認定に必要な期間が長期化されているのです。まず1つ目の要因としては、事業計画認定の手続きが複雑であるということが挙げられます。
この認定は2020年に変更されたのですが、それまでは「設備認定」と呼ばれる内容でした。
それぞれの違いは、以下のとおりです。
- 設備認定:太陽光発電設備の安全性をチェックする。
- 事業計画認定:発電開始時期・発電量の見込み・長期運用の可否・20年後のシステム計画といった、太陽光発電を使用した事業展開をチェックする。
このように、これまでは安全性に対する基準を満たしていれば認定された内容でしたが、チェック項目が大幅に増えたことで、その分認定までの期間が伸びているのです。
チェック項目が増えた理由については、採算が見込めない地域への設備申請が相次いだことや、認定後に発電を開始しない事業者が多かったなど、政府が想定していた電力供給との乖離が大きくなったからです。
結果として、20年という長期間に及ぶ細かな計画の提出を求めるなど、チェック項目が増え、提出書類も複雑化してしまったことで、認定までに時間がかかるようになってしまったのです。
【太陽光発電】売電が始まらない人に必要な申請
売電開始に必要な申請については、2種類あると前述しました。それぞれ、「事業計画認定申請」と「系統連系申請」の2つです。ここからはその申請内容と認定までの期間について、より詳しく解説していきます。
事業計画認定申請
事業計画認定申請は、経済産業省からFIT法を利用するための設備認定に必要となります。設計から施工、運用、管理方法、撤去から処分まで、設備の導入から撤去までといったすべての工程をまとめて審査するといった内容です。
設備が条件を満たしていることはもちろん、ライフサイクルの設計を適切にしていることも求められます。さらに、太陽光発電を事業として審査しますので、長期計画についてもその確実性がチェックされるのです。
申請に必要な書類については、発電出力が10kW未満か10kW以上で変わります。
一般的に住宅用の設備においては、10kW未満のケースがほとんどとなりますので、以下に住宅用設備での申請書類の一例をまとめてみましょう。
- 登記事項証明書
- 接続契約書
- 構造図
- 配線図
- 委任状
- 印鑑登録証明書
設置する場所などによっても、必要書類は変わりますので一例にはなりますが、このように複数の書類を用意しなければいけません。
その後、経済産業省の電子申請サイトを経由して、申請を進めていくのです。申請を業者に委託することも可能ですが、その場合には依頼者宛に確認メールが届きます。このメールで承諾をすることで、ようやく審査が開始されるという流れになります。
認定されるまでの期間
一般的に、認定に必要な期間は1〜3ヵ月が目安と言われています。経済産業省からの発表としては、約3ヵ月とされていますので、実際はその程度の期間を目安として考えた方が良いでしょう。
しかし、場合によっては更に長期間必要になるケースがあるということも考慮しておきましょう。
系統連系申請
系統連系申請は、一般送電事業者が管理する設備に太陽光発電設備を接続するために必要な申請です。そのため、接続契約と呼ばれることもあります。この申請をおこなわなければ、売電することができません。
なぜなら、太陽光で発電した電力を売る時には、電線を使用して電気を送る必要があるからです。こちらは、太陽光発電設備を設置した地域を管理している電力会社へ申請します。
申請に必要な書類は、主に以下のとおりとなっています。
- 系統連系申請書
- 系統連系協議依頼表
- 単線結線図
- 付近図
- 構内図
- 主幹漏電ブレーカの仕様資料
- 認定証明書
- 保護機能に整定範囲及び整定値一覧表
これら書類は一例であり、申請をおこなう電力会社によって内容が変わってきます。送配電網を使用しなければ売電はおこなえないため、必ず申請する必要があるでしょう。
申請方法については、管轄している電力会社へオンラインまたは郵送のどちらかの方法で進めることができます。また、申請作業については、施工業者の代行が可能となっています。
慣れない作業となることが予想されますので、特別な事情がない限り、申請は代行業者に依頼することをおすすめします。
認定されるまでの期間
申請から認定までの期間の目安としては、2週間〜数ヵ月と言われています。住宅向けの設備であれば、多くの場合、1ヵ月程度で認定されるケースが多いですが、申請が集中しているタイミングなどでは、さらに長期間待つことも想定されます。
また、送電のための工事が大規模になる場合には、更に長期化する可能性もあります。
提出書類に不備によっても、認定までの期間は伸びていきますので、できる限り確実に揃えておきましょう。
【太陽光発電】基本的な売電開始までの流れ
ここまで解説してきたように、売電には複数の申請をおこなわなければいけません。
また、認定までに時間がかかることが多く、なかなか売電ができないというケースも珍しくないのです。そのため、事前に売電開始までの全体像と流れを把握しておく必要があるでしょう。
ここからは売電開始から逆算して、実施する内容と必要な期間を以下の工程に分けて解説していきます。
- 約2ヵ月:設置調査〜契約
- 約3ヵ月:各種申請の手続き
- 約1週間:太陽光発電の設置工事
- 確認と売電開始
1.【約2ヵ月】設置調査〜契約
太陽光発電設備の設置は、どこにでも対応しているわけではありません。例えば住宅の屋根に設置する場合は、太陽光が良く当たる方角や、屋根の形状なども重要となります。そのため設置予定の状況について、調査が必要となるのです。
この時におおよその発電規模の予測を立てることができますので、売電できる電力量からの収入も見えてくるでしょう。調査終了後に業者から提示された見積もりを確認した上で、納得できる内容であれば契約に進みます。
注意しなければいけないポイントは、自治体などが提示している補助金などが利用できるのであれば事前に申請しておくことです。設置業者の多くは、補助金申請の代行もしてくれます。補助金の使用可否については判断が難しい部分もありますので、代行を依頼することをおすすめします。
ここまでの作業で一般的に、約2ヵ月の期間を要するでしょう。
2.【約3ヵ月】各種申請の手続き
太陽光発電設備の設置契約が完了したタイミングで、上記で解説した以下の申請を進めましょう。
- 事業計画認定申請
- 系統連系申請
売電時の価格については認定後に決定されますが、申請自体は発電設備の導入前でも可能です。
申請するタイミングや、先方の状況によっては長期化することもあり得ますので、できる限り早めに申請を出したほうが良いでしょう。一般的に、申請から認定までの期間として3ヵ月程度を要することが多いようです。
3.【約1週間】太陽光発電の設置工事
いよいよ太陽光発電の設備を設置していきます。
工事に必要な期間は、多くの場合で1週間程度のケースが多いでしょう。しかし、設置する場所の状況やシステム内容によっては期間が前後する可能性もあります。
設置工事は屋外での作業になりますので、進行は天候にも左右されます。台風が多い時期などでは1週間以上かかることも考えられますので、工事のタイミングなども考慮した方がいいでしょう。
また、新築物件への設置の場合には、建設業者とも工事時期のやり取りも必要となります。
一般的には1週間が目安となる設置工事ですが、このように状況によっても大きく変化することもありますので、柔軟に対応しましょう。
4. 確認と売電開始
無事に設置工事が終了しましたら、設置業者と共に設備の動作確認をおこないます。
そこで異常が無ければ、ようやく発電を開始することができます。つまり、ここまでの工程を経て、ようやく売電のスタートラインに立ったということです。
確認して分かるとおり、スムーズにすべての作業が進行したと想定しても、約6ヵ月もの期間が経過することになります。もちろん、申請タイミングや書類の不備などによって、更に長期化する場合もあるでしょう。
このように、太陽光発電にて売電をするには余裕を持ったスケジュールを考えておき、万が一長期化しても問題無いような心構えが必要となるのです。
【太陽光発電】売電が始まらない人は手続きを確認しよう!
自宅に太陽光発電を設置するには、自治体からの補助金があったとしても高額な設備投資が必要となるでしょう。しかし設置後は自家発電が可能となるので、本来使用するはずだった電力代金との差額を考慮して、長期間で見ればトータルでは設備費用の回収が可能かもしれません。
一般的な平均として、設備投資額の回収に必要な期間としては、約19年であると言われています。それ以降は使用電力分の料金は純増と考えられますので、太陽光発電の導入は大きなメリットがあるでしょう。
そして、設備投資費用の回収期間をさらに短縮させるためには、売電は欠かせない要素となります。1日でも早く売電をスタートさせることができれば、費用回収の期間も短くなります。そのため、発電開始後になかなか売電が始まらないという方は、一度申請手続きについて確認することをおすすめします。
書類の不備など、何かしらの理由で申請が止まっている可能性も考えられます。
近年、電力費用が値上がりしている状況ですので、せっかく太陽光発電を設置したのであれば、一刻も早い売電を開始できるように進めていきましょう。