太陽光発電システムにおける「パネルの劣化」には要注意!対策のポイントを解説します
太陽光発電システムのパネルの劣化には注意しなければなりません。なぜなら、太陽光発電システムの発電量が低下してしまうことがあるからです。そのため、定期的なパネルの点検をしなければなりません。
そこで今回は、太陽光発電システムにおけるパネルの劣化について対策のポイントについてご紹介いたします。
太陽光パネルの寿命は「10年」ではない?
ここでは太陽光パネルの寿命についてご紹介いたします。
太陽光パネルの法定耐用年数
太陽光パネル(ソーラーパネル)の法定耐用年数は、17年と定められています。
ここでの「太陽光パネルの法定耐用年数」とは、太陽光パネルを会社設備として考えた時に、17年で減価償却するように計算できることを意味します。
そのため、法定耐用年数(17年)=太陽光パネルの寿命、ということではありません。太陽光パネルの本来の寿命ではなく、金属でできた電気設備であるという点から算出されているもので、実際のパネルの寿命とは関係がありません。実際に太陽光発電システムを稼働させてみると17年以上発電を続けることがほとんどです。
太陽光パネルの一般的な寿命
一般的な太陽光パネルの寿命は、各パネルメーカーが提示している「期待寿命」を基準にしています。
パネルメーカーの算出しているデータを見てみると、期待寿命はおおよそ20~30年です。
あくまで期待寿命であり、現在稼働している太陽光発電所の中には30年以上発電している発電所もあります。
京セラの太陽光パネルを設置している千葉の佐倉ソーラーセンターは36年間、シャープのパネルを使っている奈良の壺坂寺にある太陽光発電は37年間発電を続けているという実績があります。
太陽光パネルの種類によって経年劣化に差が出やすくなる
年月と共に、その物自体の価値が減少していくことを「経年劣化」といいます。
太陽光パネルが経年劣化する原因は、パネルの破損や故障の他にも、パネルの汚染や内部の断線等があげられます
これらの原因の一部はメンテナンスによって防げますが、パネルそのものの経年劣化は予防できません。
また、パネルの種類によって経年劣化率は異なります。
以下からパネルの「種類」について詳しく解説します。あらかじめ経年劣化しづらい、頑丈なパネルを選んでおくのがお勧めです。
多結晶シリコン
多結晶シリコンは、パネルの中でも比較的低コストで導入しやすいパネルです。
多結晶シリコンの経年劣化率は5年で2.3~2.8%で、劣化による発電量は97.7~97.2%に低下します。
単結晶シリコン
他の太陽光パネルの素材に比べて発電効率が良いのが大きなメリットですが、多結晶シリコンよりもコストがかかる上に、劣化率は5年で3.2~3.9%、発電効率は5年で96.8~96.1%に低下します。
多結晶シリコンと比較すると劣化速度が早くなっています。
アモルファス
非常に低コストで太陽光パネルを製造できます。初期費用を抑え、短期間で利益を出したい方にはお勧めの素材です。
ただし、アモルファスは経年劣化率が5年で5.7%となっていて、他のパネルの種類と比べると寿命が短くなっています。さらに、結晶のような規則性を持たない分、他のパネルと比べて発電効果が劣ります。
ヘテロ接合
主にパナソニック製太陽光パネルで使われている素材です。パネルの劣化率は5年で2%と非常に少なく、発電効率は単結晶シリコンよりも優れています。まさに低劣化高発電高効率の太陽光パネルです。
ただし、コストが非常に高いため、初期費用を抑えて導入したい方には不向きです。コストを抑えたい方はアモルファスか単結晶シリコンを選択するといいでしょう。
反対に初期費用が高くても、発電効率を上げて発電量を確保したいという方には、ヘテロ接合の太陽光パネルを導入すると大きなメリットを感じられます。
CIS
銅(Cu)・インジウム(In)・セレン(Se)の3つの元素を主原料とする半導体系太陽光パネルです。それぞれの主原料の頭文字であるC、I、Sを組み合わせて呼ばれます。
パネルメーカーのソーラーフロンティアが発売している次世代パネルで、徐々に人気を集めています。
CISパネルは、最初の1~2年間は太陽光を浴びることで出力係数が上がる特性があるため、この期間は他の太陽光パネルと比較するとかなり良い発電効率を得られます。
また、劣化率は5年で1.5%と、5年間の劣化率だけで見れば、他のパネルに比べて一番劣化しにくいパネルとなっています。
経年劣化が近づくことによるデメリット
ここでは太陽光パネルの経年劣化についてご紹介いたします。
太陽光パネルの劣化
耐用年数が近づいた太陽光発電システムでは、太陽光パネルの劣化が顕著に発生します。具体的には、太陽光パネルの「ガラス表面」や「配線」部分に、以下のような劣化が発生しやすくなります。
- 配線の腐食
- 配線の断線
- 太陽光パネルの層間はく離
- 太陽光パネル表面の変色・汚れ・変形など
これらの太陽光パネルの劣化により、太陽光発電システムの発電量が低下しまう可能性があります。
発電量の低下
耐用年数が近づき、劣化が進行していく太陽光発電システムでは、発電量はある程度パネルの性能に依存するものの、低下する傾向にあります。
水産庁が2014年3月に発表したデータによると、耐用年数が近い太陽光発電パネルの劣化によって、年間0.25~0.5%の発電量が低下してしまうと考えられています。
【参考:漁港のエコ化方針(再生可能エネルギー導入編)巻末資料
太陽光パネルの劣化は、メンテナンスによってある程度予防できます。定期的な実施が必要です。
「モジュール出力保証=劣化しない」わけではない
太陽光発電システムを設置する際の保証に「モジュール出力保証」と呼ばれる保証項目があります。これは、太陽光パネルの出力性能を一定期間にわたり保証するもので、万が一出力性能が規定値よりも下回った場合は、メーカーが無償で太陽光パネルの修理・交換に応じるという内容です。
ただし、実際の劣化率から考えてみると、年間で0.5%発電量が低下したとしても、10年間で5%です。20年経過しても、規定値を下回ることはほとんどありません。モジュール出力保証は、基本的に機器の初期不良に対応しているもので、出力保証があれば劣化しないという証にはなりません。
寿命の長い太陽光パネルの選び方
ここでは太陽光パネルの選び方をご紹介いたします。
1.経年劣化の少ないパネルを選んで長く事業を続ける
工場の屋根等に設置を検討していれば土地代の必要がないため、同じ機器をできるだけ長期間稼働させ、多くの発電量を得る方が採算を取りやすいと考えられます。パネルの重さに耐えられる屋根であれば、耐用年数の長さで有利なパネルを選ぶことをお勧めします。また、ソーラーパネルの保証は長ければ長いほど効果的です。できるだけ、耐用年数の長さと保証期間で選んでいきましょう。
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2.適切なメンテナンスは売電収入を増やし、寿命も伸ばす
近年、太陽光発電システムの新設が増えるにあたって、ロボットによるパネル自動洗浄機や羊を使った除草まで、安価で効果の高いメンテナンスの開発が盛んに行われています。
中でも比較的安価に扱える遠隔監視システムはバリエーションが豊富で、異常の早期発見・早期対処に役立ちます。システムの耐用年数を延ばす効果も期待できます。
3.リサイクルできる機器を活用する
現在多く建設されている設備が寿命を迎え始める2030年前後には太陽光パネルのリサイクル方法が確立され、事業の撤退後にはリサイクルというルートが標準化されていることが期待されます。
環境省も、使用済みパネルのリサイクル技術やリユースに向けてのガイドラインを出しています。
また、パネル以外にも木製架台を使った設備等が注目を集めています。腐食加工を施した木製架台は、事業撤退後にはバイオマス発電の燃料にする等、産業廃棄物を減らせるメリットに加え、地元の間伐材を使うことによる地域貢献や環境貢献になることも注目されています。
4.信頼性の高い施工店を選ぶ
施工点は価格だけではなく、施工実績や企業沿革等の総合的な判断基準で選ぶことをお勧めします。施工店の倒産で前金数億円分の損害を出した事件もあり、安価なだけでは非常にリスクが高い施工店に依頼することになるかもしれません。
※ロハス電力(ロハスソーラー)が破綻、メガソーラーの建設を途中放棄し2億円損失の企業も
参考URL: http://standard-project.net/solar/news/archives/3592
さらに、太陽光発電システムは10年以上稼働し、施工店には点検やメンテナンス等も依頼することになります。目先の安さだけではなく、総合的な評価視点を持ち、よく吟味して選ぶようにして下さい。
まとめ:耐用年数や寿命の数字に頼らず、定期的にメンテナンスをしていこう
太陽光発電システムは故障しにくい性質のため、パネルの劣化や耐用年数、トラブル、保証、メンテナンスの必要性等の重要事項が今ひとつ浸透しきれていません。それだけに、故障やトラブルが起きると、予定外の費用がかかってしまう可能性があります。
これから太陽光発電システムの設置を検討される際にはしっかりとした知識を持ち、設置後のメンテナンス費用も含めて必要経費を考えておくことが大切です。
また、太陽光発電システムは1度導入すると、20年以上使うことになります。設置後のメンテナンスの必要性や耐用年数、ランニングコストについても正しい知識を身につけておきましょう。