太陽光発電システムは決して安いものではなく、多くの場合は数百万円クラスの初期費用を要します。どうせなら安く導入したいと思うのは当然のことで、そのために太陽光パネルごとの最安値を知りたいとお考えだと思います。
しかし、安さばかり追求すると後々になってトラブルの原因になるのでは?と不安に思う方も多いのではないでしょうか。
そこで当記事では太陽光パネルのメーカー別最安値を紹介し、相場観を持っていただくのと同時に、安さを追求することで考えられるトラブルや注意点について解説します。
主要メーカー別、太陽光パネル最安値の目安
最初に、日本国内で多くの施工店が取り扱っている太陽光パネルメーカーの特徴と、1kWあたりの設置費用で最安値といえる相場について解説します。ただし、ここで紹介している最安値相場は2023年4月30日時点のものです。価格は日々変動しており、型落ちになったパネルは価格が下落する傾向があるため、あくまでも参考としてご覧ください。
パナソニック
総合家電メーカーとしても知られるパナソニックは、かつて存在していた三洋電機の「HIT」シリーズを引き継ぎ、技術力や開発力が高く評価されています。すでに自社生産からは撤退していますが、依然として品質や耐久性などの面で高いブランド価値は健在です。
パナソニックの太陽光パネルは、1kWあたり23万円前後が最安値の相場です。
長州産業(CIC)
知名度こそあまり高くはありませんが、太陽光発電業界では安定感のある太陽光パネルメーカーとして知られています。単結晶シリコンの太陽光パネルメーカーとしては唯一の純国産なので、国産パネルにこだわりたい人にとってはとても貴重な選択肢です。
長州産業の太陽光パネルは、1kWあたり20万円前後が最安値の相場です。他社と比べると安いことも、人気の理由です。
シャープ
太陽光発電の本格的な普及が始まった当時から業界を牽引してきた老舗メーカーです。開発歴がとても長く、すでに50年以上太陽光パネルを生産し続けていることが安定感につながっています。日本メーカーらしく、日本の家屋の形状にマッチしやすい太陽光パネルを取り揃えているところも優位性です。
シャープの太陽光パネルは、1kWあたり34万円前後が最安値の相場です。ここまで紹介した太陽光パネルメーカーと比較すると高く見えるかもしれませんが、変換効率の高さとデザイン性に優れているので、いわば高級ブランドです。
東芝
家電だけでなく重電といって産業分野での活躍も目立つ総合電機メーカーです。太陽光パネルの主力は、単結晶シリコンです。単結晶シリコンは発電効率が高く、また東芝の得意分野である高い耐久性が実現しているので、長期間にわたって高い発電性能を発揮します。
東芝の太陽光パネルは、1kWあたり26万円台が最安値の相場です。シャープと同様、安さを売りにしている太陽光パネルメーカーと比べると若干高いですが、これは変換効率の高さゆえのものです。
サンテック
太陽光パネルメーカーのなかでは中国勢の存在感が大きくなっていますが、サンテックはそんな中国勢のなかでも老舗といえる古参のメーカーです。世界的に高いシェアを誇りますが、やはりその最大の魅力は価格の安さでしょう。単結晶シリコンの太陽光パネルは比較的高いことが半ば常識になっていますが、それを低価格化したのはサンテックです。
そんなサンテックの太陽光パネルは、1kWあたり18万円前後が最安値の相場です。同業他社のほとんどが20万円もしくはそれ以上であることを考えると、やはりかなり安いといえます。
ソーラーフロンティア
ソーラーフロンティアは、エネルギー企業の大手である昭和シェルを親会社に持つ、国内の太陽光パネルメーカーです。化合物系の太陽電池であるCISを主に生産しており、価格の安さが最大の武器です。
CISは長期間にわたって性能を安定化させやすいため、長期間にわたって発電性能の目算が立ちやすいのも魅力です。
ソーラーフロンティアの太陽光パネルは、1kWあたり25万円台が最安値の相場です。
カナディアンソーラー
社名の通り、カナダ発の太陽光パネルメーカーです。カナダは環境への取り組みが先進的な環境先進国としても知られており、カナディアンソーラーはそんなカナダでの再生可能エネルギー開発に大きな役割を果たしています。
日本市場にも早くから参入しており、日本特有の設置事情も考慮した製品ラインナップです。変換効率が20%を超えている一方で価格が安いことからコストパフォーマンスに優れており、これから太陽光発電を導入する方にとっては有望な選択肢です。
カナディアンソーラーの太陽光パネルは、1kWあたり19万円台が最安値の相場です。20万円を切っているので、規模の大きな太陽光発電設備にも人気があります。
Qセルズ
Qセルズは、ドイツ生まれの太陽光パネルメーカーです。上記のカナダと同様、ドイツも環境先進国として知られており、ドイツ政府肝入りの企業でもあります。しかしながら2012年には経営破綻をしてしまい、その後は韓国のハンファグループが買収して現在に至ります。資本関係は韓国系企業となりましたが、依然としてQセルズの技術開発はドイツで行われており、その高いノウハウと開発力にも定評があります。
Qセルズの太陽光パネルは、1kWあたり19万円台が最安値の相場です。こちらも20万円を切っているので、規模の大きな太陽光発電にもおすすめです。
設置年別、太陽光パネル設置費用の最安値相場
太陽光パネルの設置費用は、年々下落する傾向にあります。それを示しているのが、経済産業省の「令和5年度以降の調達価格等に関する意見」というレポートです。そのレポートから、2019年~2024年の太陽光パネル設置費用における最安値の平均値を見てみましょう。
年度 | 最安値の平均値(1kWあたり) |
---|---|
2019年 | 30.5万円 |
2020年 | 29.2万円 |
2021年 | 27.5万円 |
2022年 | 26.7万円 |
2023年 | 25.9万円(想定値) |
2023年 | 25.5万円(想定値) |
いかがでしょうか。年々安くなっているので、太陽光パネルを設置しやすい環境は依然として続いていると考えてよいでしょう。
その一方で、急激に価格が下がっているわけではないので、「まだまだ安くなる」と様子見をするのも機会損失につながりかねない下落幅です。
安さを追求しすぎるとトラブルの原因になる?
ここまでは太陽光パネルを「いかに安く設置するか」というニーズにお応えするための解説でした。ここからは安さを追求することに対する注意喚起です。「安かろう悪かろう」ではありませんが、最安値ばかりを追求しすぎると思わぬトラブルの原因になるので、ここで解説する内容を十分に踏まえた上で価格検討をしていただきたいと思います。
見積もりに思わぬ落とし穴が潜んでいる可能性
太陽光発電を経済的メリットのために導入する人はとても多いので、どうしても安さには敏感になります。そこで比較しやすいのが、1kWあたりの単価です。同じ物差しで価格比較ができるので1kWあたりの単価だけを見て安い施工店に飛びついてしまいたくなりますが、ここに落とし穴が潜んでいます。
表示されている価格がとても安いと思ったものの、見積もりには小さな字で「●●条件の場合に適用」と記載されていて、特定の規模や条件などを満たさないとその価格ならないといった紛らわしい見積もりをする業者があります。
表面上の安さだけに飛びついてしまうと、こうしたトラブルの原因は他にもあります。
要望に合わない太陽光パネルを提案される
太陽光発電の施工店には、紐づいている太陽光パネルメーカーが必ずあります。ある施工店ではパナソニックとソーラーフロンティアが主力ある一方で、別の施工店では東芝とシャープが主力であるといった具合です。それぞれの施工店が代理店をしている関係上、こうしたビジネス上の偏りは必ずあります。
「激安」「最安値」を謳っている施工店から購入するのは問題ありませんが、その施工店が取り扱っている太陽光パネルメーカーが要望に合ったものであるかどうかが重要です。要望に合わないような太陽光パネルを提案された場合、たとえそれが最安値だったとしても太陽光発電の満足度は高くならないでしょう。
粗悪な工事で長持ちしない
安さを売りにしている住宅メーカーのなかには、粗悪な材料や工事で十分な品質を満たしていない家を建てているところがあります。まさに、「安かろう悪かろう」です。常識的に考えて安すぎる業者には必ず何か理由があるものですが、価格だけに目を奪われてしまうと、こうしたカラクリに気づけなくなってしまいます。
太陽光発電の関連材料が粗悪だと強度に問題が残りますし、長く使っていると早く劣化してすぐにメンテナンスが必要になってしまって、結局高い買い物になってしまうといった事例が後を絶ちません。
最安値を比較することは重要ですが、安さだけに目を奪われてしまうと肝心の中身への精査がおろそかになってしまいます。
十分なアフターサービスが受けられない
太陽光発電は購入して終了、取り付けて終了ではありません。長く使ってこそ真価を発揮するので、長期間にわたって性能が維持されることは何よりも重要です。最安値を謳っている業者に依頼をしたものの、アフターサービスはオプション料金が必要であると言われたら、どう思いますか?これもやはり、「安かろう悪かろう」です。
ひどい場合は経営基盤が脆弱で、太陽光発電を導入したものの数年後に業者が倒産してしまうといった事例もあります。業者そのものが存在しないとなるとアフターサービスを受けられる可能性は極めて低くなるため、これも重大なリスク要因です。
「最安値」と「トラブル回避」を両立するには
「最安値」ばかりを追い求めるとトラブルを招くリスクがあることを理解していただいた上で、それでは「最安値」と「トラブル回避」を両立する方法、業者選びについて解説したいと思います。最終的に重要なのはこの章なので、内容をしっかり押さえておいてください。
太陽光パネルの取り扱いメーカー数が多い
太陽光パネルのメーカーはたくさんあります。メーカーによって特徴や得手不得手が異なるので、1つの業者がたくさんのパネルメーカーを取り扱っているのが望ましいでしょう。それだけ顧客の要望に合った設計や提案をしやすいからです。
少なくとも3社、理想は5社以上です。
見積もりの内容が細部にわたっている
太陽光発電に限った話ではありませんが、見積もりは内容が細かいほど誠意ある対応といえます。すべてがひとまとめになっていて「一式」という見積もりになっていると、何にどれだけの費用が必要なのかが分かりません。
太陽光パネルの金額やパワーコンディショナー、施工に関する材料や工賃など、これらがすべて別々に記載されていたら、どこにどれだけのお金がかかっているのかが一目瞭然です。取捨選択もしやすいので、見積もりの内容が細部にわたっている業者は依頼しやすい業者といえます。
シミュレーションの結果に無理がない
これから太陽光パネルを設置しようとしている場所に、どのパネルを取り付けたらどれだけの発電をするのか、そして売電収入や光熱費の収支はどうなるのか、といったことは事前にシミュレーションできます。
このシミュレーションは施工店にとって腕の見せ所といえる部分なので、シミュレーションがいかに正確であるかは比較検討のポイントになります。このシミュレーションがどんぶり勘定だと、設置後に「こんなはずではなかった」となってしまいます。
そこで重視したいのが、シミュレーションの現実味です。明確な根拠があって、それに基づいた実現性のあるシミュレーションであれば、高い確率でそのシミュレーションに近い結果が得られるはずです。シミュレーションについて疑問がある場合はどんどん尋ねてみてください。それにきちんと答えられるかどうかも、ひとつの判断材料になります。
実績についての実数が公開されている
数字は嘘をつかない客観的なデータです。これまでの実績数やすでに導入した事例での発電量データなど、いかに正確な数字を出せるかにも施工店の実力が表れます。自信がある業者であればこうした数字を積極的に公開しているはずですし、その逆も然りです。
数字が公開されていないことに気づいたのであれば、そのことについても尋ねてみましょう。曖昧な返答だったり、数字が不正確だったりする場合は、「公開できるだけの数字がない」と判断して構いません。
まとめ
太陽光パネルの最安値はどれくらいの金額が目安になるのかという疑問にお答えしつつ、安さを追求するとトラブルのリスクが高くなることについても述べました。最終的に重要なのは、費用と効果のバランスです。満足のいく太陽光発電を始めるために施工店の選び方も解説しているので、これらを参考にしつつ太陽光発電を成功に導いてください。