太陽光発電のしくみ
太陽光発電は太陽の光を電力に直接変換する、家計にも地球にも優しい再生可能エネルギーです。
では、どのようなシステムで光を電力に変えているのでしょうか?
本当にCO2や有害物質を出さないのでしょうか?
ここでは、太陽光発電のしくみについて詳しくご紹介します。
しくみと構成装置
太陽電池パネルは、光エネルギーを直接電力に変換します。
この電力は「直流電力」で、家庭の電化製品にそのままつなぐことはできません。
そこで、発電した電気を接続箱(下図1)でひとまとめにし、パワーコンディショナー(パワコン:下図2)で電化製品に利用できる「交流電力」に変換してから使います。
パワコンから出た電気は分電盤(下図3)から各家電へと送られたり、送電線を伝って電力会社に売電されたりします。
一方、太陽光発電の電力が足りない時は、電力会社から買った電気が分電盤へ送られ、同じように家電を動かします。
買電と売電は別々のメーター(下図4)で計測され、月々の電気代や売電収入が計算されます。
太陽光発電の原理
一般的な太陽電池は、n型とp型の半導体という板が貼り付いて二重になった形をしています。
太陽電池に光が当たると、マイナスの電荷をもった電子とプラスの電荷をもった正孔が発生します。
電子(-)はn型半導体へ、正孔(+)はp型半導体へ引き寄せられるので光起電力が発生し、二重の表裏にそれぞれ電極を付けると電流が流れます。
これは、電気を流すことによって光を発するLED(発光ダイオード)とまったく逆の反応になり、光励起と呼ばれます。
どんな屋根が太陽光発電に向いているか?
日本の屋根の形は大きく4つに分かれています。それぞれで太陽光発電の向き不向きがあります。
切妻(きりづま)屋根
形状が比較的シンプルなためパネル配置もしやすく、発電量を確保しやすいのも特長です。
傾斜が東西を向いていると南向きに比べて発電効率が落ちますが、両方の屋根に設置できますので、結果的に発電量は大きくなります。
寄棟(よせむね)屋根
一面の面積は切妻より小さくなりますが、北側以外の最大三面に設置することができます。
また、面が四方を向いているので必ず南向きに設置できることも大きなポイント。屋根の形に合わせて三角パネルなどで埋めると効果的です。
片流れ(かたながれ)屋根
南側に傾斜していれば最大限にパネル性能を引き出すことができますが、 北側だと設置が難しい場合があります。
東西方向は発電効率が少し落ちますが、面積が大きいことで十分カバーできます。
陸(りく・ろく)屋根
パネルを固定する架台が必要なので工事費が割高になりますが、屋根全体にパネルを載せることができ、またパネルの発電性能を最大限に引き出せる角度で設置できるのが魅力です。
発電量に影響する要素
同一のシステムであっても、設置条件や環境によって発電量は大きく異なります。
システムの発電量に影響する要素を理解し、少しでも多く発電できるようにしましょう。
日射量
日射量とは、太陽から放射されるエネルギー量のことです。
太陽光発電には当然ながらもっとも重要な要素。日射量が多くなれば発電量も増えます。
季節、天候、時間帯、地域、設置角度、方位等によって異なりますので、なるべく年間を通して日射量が多くなる条件を選択するようにします。
方位
年間を通して日射量の多い方角の屋根面を選択します。
最適なのはやはり南面。次が東面、僅差で西面となります。
西面よりも東面が若干向いている理由は、午後よりも午前中の方が温度が低いこと(熱による損失が少ない)、一般的に午後の方が雲が発生しやすいことです。 ただし地域によっても異なりますので、事前にご確認ください。
北面は通常、太陽光発電に向きません。
日射量が年間通して少ないこと、方角的に隣家へ反射光による被害を及ぼしやすく、トラブルになりやすいことがその理由です。
どうしても北側に設置したい場合は、綿密な調査検討とシミュレーションが必要になるでしょう。
傾斜角(設置角度)
季節と緯度により微妙に変わってきますが、年間の日射量が最大になるのは緯度より若干小さい値です。
計算上は札幌(北緯43度03分)なら43度、東京(北緯35度41分)なら35度、鹿児島(北緯31度33分)なら31度になります。
ただし、プラスマイナス10度程度なら数%しか発電量に差がありませんので、元々の屋根の角度や架台の影、風圧荷重、積雪の低減などを考慮して角度を調整します。
角度を浅くすれば設置できるパネルの面積が増えるので、その目的で最適角度を外す例も多くあります。
なお、パネル表面の雨による自浄にはある程度の角度が必要なため、最低でも10度の傾斜は確保することが必要です。
パネルメーカーによっては取付角度に規定があり、それ以外では保証対象にならない場合もあります。
影による損失
パネルの一部に影がかかると、そのパネルだけではなく、パネルを含む回路全体の出力が大きく低下してしまいます。
これは、影が電気抵抗となってシステム全体に悪影響を及ぼすためです。
このため、パネルは影がかからない場所への設置が必要です。
山や地形はもとより、家の周りの電柱や電線、アンテナ、樹木、隣家の家屋などにも注意してください。
影がどうしても避けられない場合は、その影が複数の回路にまたがらないように配置し、影の影響を最小限に抑えます。
例えば右図の場合、回路は縦につながっています。
縦の影なら、回路4は出力低下しますが他の回路には影響がありません。
これが横向きの影だと、1~4の回路すべてが出力低下してしまい、全体の発電効率は縦の影よりも悪くなるのです。
なお、これはシリコン系(単結晶・多結晶)パネルでの現象ですが、非シリコン系のCIS型パネルでは構造が異なり、単純に影の面積分の出力が落ちるだけになりますので、CIS型パネルは比較的影に強いと言えます。
温度上昇による損失
太陽光発電は太陽光が不可欠ですが、太陽熱は逆に阻害要因になります。
これは、太陽光発電の原理として温度が上がると出力が低下してしまうためで、低下の度合いは半導体の素材によって変わってきます。
逆に温度が下がると出力が上がりますので、積雪や日射量を考えなければ、温暖地より寒冷地の方が発電効率は良くなるのです。
なお、太陽光発電パネルの変換効率(カタログ値)は、気温25℃で計測するように決められています。
イメージ的に真夏の方がたくさん発電できるような気がしますが、真夏のパネル温度は70~80℃にもなり、パネル性能はカタログ値より10~20%も低下してしまいます。
そのため、一般的には太陽光発電は5月くらいの発電量がもっとも高いと言われています。
施工する場合は温度の影響を考え、熱を逃がすような工夫が重要です。
その他の損失
パネル表面の汚れによるもの、パワコンによるもの、配線・回路ロス、機器の特性によるものなどがあります。
パネル表面の汚れは、ある程度の角度があれば雨で流れていきますが、それでも粘性のほこりや黄砂、鳥のフンなど、落ちにくい汚れがついてしまうと発電効率の低下につながります。
定期的な清掃メンテナンス、事前の汚れ防止策を行えば常に最適な発電効率を得られます。
パワコンによる損失とは、直流電流から交流電流に変換する時の変換ロスです。
これは変換されるたびに生じますので、一度交流に変換された電気が蓄電池などでもう一度直流に変えられ、再度交流にされた場合は、ロスが三乗になります。
一般的にはパワコンのロスは5%程度とされますが、2.5%程度までロスをなくした機種や、接続箱とパワーコンディショナが一体型でロスがない太陽光発電システムも開発されています。