2050年のカーボンニュートラル達成目標へ向け、多くの企業が再生可能エネルギーの導入や省エネ設備への切り替えなどを行っています。中でも蓄電池業界は、世界市場で2兆円を超える成長性を見せていて、新製品の開発やリユースに関するサービスなどが続々と登場しています。
そこで今回は、蓄電池のリユースに関するサービスの詳細やメリット、課題、リユースを行っているサービスについて詳しくご紹介します。蓄電池の導入を検討している方やリユース品の蓄電池にメリットはあるのか気になっている方などは、参考にしてみてください。
目次
蓄電池のリユースとは?
蓄電池のリユースとは、使用済みの中古蓄電池を再利用することです。住宅や業務向けの定置用蓄電池市場は年々伸びていて、2022年に2兆円規模へ拡大しました。また、電気自動車向けの蓄電池需要も急激に拡大しています。
企業では、リユース蓄電池を普及させることで電気自動車のコストダウンを目指したり、急激な需要拡大に対応しようと考えています。そのため、近年リユース蓄電池に注目が集まっているのです。
リユース蓄電池を活用するメリット
リユース蓄電池を活用する主なメリットを3つ紹介していきます。
導入コストを抑えられる
リユース蓄電池の強みは、導入コストを抑えられることです。蓄電池の初期費用は、家庭用蓄電池でも80万円以上かかりますし、企業で導入されている産業用蓄電池なら数百万円が相場です。
量産体制の確立や技術開発によって少しずつ安くなってはきていますが、それでも気軽に導入できる設備とはいえません。
その点リユース蓄電池は新品の蓄電池より安価な傾向なので、導入コストを抑えながら自社の蓄電システムを構築できます。
廃棄量の低減につながる
リユース蓄電池が普及すれば、蓄電池の廃棄量削減につながります。持続可能な社会や環境汚染防止という点では、メリットが大きいといえます。
経済産業省の調査「第2回 蓄電池のサステナビリティに関する研究会事務局資料」によると、自動車などさまざまな製品に使用されている蓄電池の半数近くは、再利用されず廃棄処理されているとのことです。
また回収された蓄電池のうちの25%は、海外に輸出されています。
そのため、リユース蓄電池が国内で普及すれば、廃棄量の低減や海外に輸出されている製品の回収率向上につながります。
出典:経済産業省ウェブサイト
技術開発が進んでいて効率のいい蓄電池もある
リユース蓄電池の中には、効率アップした蓄電池もあります。蓄電容量や出力が改善されたタイプなら、低コストで高効率というメリットの多い製品といえます。
後半で詳しく紹介しますが、株式会社JERAとトヨタ自動車株式会社では、使用済み蓄電池を組み合わせたスイープ蓄電システムを開発しました。
スイープ蓄電池システムは従来の蓄電システムと異なり、さまざまな製品とダイレクトに接続でき、充放電の調整を柔軟に進めることができます。
このようにリユース蓄電池は、単に中古蓄電池ではなく、新技術と組み合わせた高性能なシステムへ変わりつつあります。
リユース蓄電池の課題
続いては、リユース蓄電池の現状と課題について1つずつ確認していきましょう。
半数が廃棄処理されていて無駄が多い
前段で紹介したように、使用済み蓄電池の半数は廃棄処理されているのが現状です。そのため、早急に蓄電池の回収に関するシステムを構築する必要があります。
リユース蓄電池を普及させるには、まず製品数を少しでも多く確保しなければいけません。そのためには、解体業者や蓄電池を使用している業者が、安易に廃棄や海外へ輸出しないよう対策を講じることも大切です。
劣化状態のチェックなど技術的課題が残されている
使用済み蓄電池を再利用するには、劣化や破損状態のチェック体制強化など、技術的課題を乗り越えなければいけません。具体的には、中古蓄電池の性能診断技術や高精度な診断システムの確立、スピーディな診断といった課題が残っています。
また単にリユース蓄電池を販売するだけでなく、用途に応じて蓄電池の種類を整理しなければ、買い手も判断しにくいでしょう。他にも、車載用蓄電池を太陽光発電などに用いられている定置用蓄電池に使用するなど別の用途に活用する際に、安全性や性能に問題がないかといった実証実験も必要です。
リユースやリサイクルの環境整備が必要
蓄電池のリユースやリサイクルの環境整備は大きな課題の1つです。リユース蓄電池というアイデアは近年考案された新しいもので、まだまだ発展途上です。
さらに蓄電池業界も比較的新しく、リユースやリサイクルに関するサービスも成長段階といえます。そのため、リユースに関する技術を提供しているサービスやリサイクル拠点などはまだ十分とはいえない状況です。
今後、中古蓄電池の回収やリユース品の販売を検討している企業は、まず技術基盤の確立と拠点の建設といった大規模な投資を行う必要があります。
一方、リユース蓄電池を導入したい場合は、2023年時点でリユース品を販売しているいくつかの企業から取り寄せる、または今後開発される可能性のある高性能なリユース品を待つのが現実的な選択肢です。
リユース蓄電池の事例
リユース蓄電池の強みや課題を把握したあとは、リユース事例について確認していきましょう。国内のさまざまな企業が、蓄電池の再利用やリユース蓄電池を活用した新製品の開発に力を入れています。
非常用電源、電気料金削減といった目的で蓄電池を検討している企業は、リユース蓄電池についても目を向けてみてはいかがでしょうか。
フォーアールエナジー
リチウムイオンバッテリーなどの製造販売を行っているフォーアールエナジーでは、4R事業というリユース蓄電池に関するサービスを展開しています。
4R事業では、まず使用済みのリチウムイオンバッテリーを回収し、性能や安全性・蓄電容量をチェックします。その後、再利用可能な蓄電池の電圧や蓄電容量などを変更し、バックアップ用電源やその他用途の蓄電池として再販売するという流れです。
フォーアールエナジーは、さまざまな企業と共同で実証実験を行っているのも特徴です。たとえば、セブンイレブンはリユース蓄電池40kWh15基、卒FIT型の再エネ電源を導入し、再生可能エネルギー100%の店舗を目指しています。
トヨタ
トヨタは、エネルギー関連企業のJERAと共同でリユース蓄電池を活用した新製品の開発を行っています。前半でも軽く触れた「スイープ蓄電システム」は、さまざまな蓄電容量・種類の中古蓄電池が組み込まれていて、充放電および直流・交流変換に対応しているのも強みです。
たとえば、太陽光パネルから発電された直流の電気をスイープ蓄電システムで充電したのち、交流電力の必要な施設へ供給することが可能です。
また、パワーコンディショナーの設置を省略できるため、コストダウンといったメリットの他、パワーコンディショナーの変換による損失を回避できます。
住友商事
住友商事は、自治体と共同で再生可能エネルギーに関する整備事業を行っています。
同事業の中には、リユース蓄電池を活用した電力貯蔵システムに関する事業も含まれています。具体的には、コストの高い電力貯蔵システムをリユース蓄電池というコストの安い製品で構築し、再生可能エネルギーの安定供給を目指しています。
また同社では、日産の電気自動車リーフに搭載されていた蓄電池を二次利用したリユース蓄電池事業も行っています。
伊藤忠商事
伊藤忠商事は、パートナー会社の工場にリユース蓄電池を設置し、定置用蓄電池として活用を始めました。
車載用蓄電池の蓄電容量は、80%以下で処分対象としてみなされます。そこで伊藤忠商事では、車載用より蓄電効率の低い環境下でも活用可能な定置用としてリユース品を活用し、脱炭素経営を進めている状況です。
富士電機
電機メーカーの富士電機は、住友商事と日本ベネックスの3社共同で新しいリユース蓄電システムの開発と実証実験を行っています。
富士電機のリユース蓄電池は、電気自動車に使用された中古蓄電池を新型蓄電池コンテナに搭載し、さらにVPP対応可能な技術を追加しました。
そのため新型蓄電池コンテナを購入した需要家は、余った電力をVPP技術とアグリゲータ(電力制御を行うサービス)を活用しながら売電を行うことが可能です。
またバックアップ電源としても使用可能なので、BCP対策としても役立ちます。
リユース蓄電池は環境負荷の低減につながる取り組み!
リユース蓄電池は、車載用蓄電池や電気自動車に組み込まれている蓄電池などを回収し、主に定置用蓄電池として活用している製品を指します。またリユース蓄電池の技術開発は、さまざまな企業で進んでいます。
リユース蓄電池はこれから技術開発が進む分野で、なおかつ企業向けの製品です。
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