太陽光発電と蓄電池を設置したご家庭の中には、「余った電気をさらに蓄電池へ貯めたい」「蓄電池を増設して効率よく電気を自家消費したい」と考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、FIT制度の認定を受けながら蓄電池を設置する場合は、増設に関する規制が適用されます。
そこで今回は、蓄電池の増設に関する申請手続きや注意点について詳しくご紹介します。電気料金の削減策を調べている方やFIT制度を活用しながら蓄電池を利用している方などは、参考にしてみてください。
目次
蓄電池の増設にはルールがある?
太陽光発電や蓄電池の運転開始後に蓄電池を増設する場合は、別途申請手続きを行わなければいけない場合もあります。そのため、蓄電池増設の検討に際しては、ルールを把握した上で準備を進めていきましょう。
それでは、蓄電池の増設に関するルールをわかりやすく紹介していきます。
FIT認定を受けている場合は増設の前に申請が必要
FIT認定を受けて太陽光発電もしくは「太陽光発電+蓄電池」を設置している場合は、変更認定申請の対象になります。
変更認定申請とは、「自家発電設備等」に該当する設備の改修や増設などを行う際に必要な手続きです。蓄電池は「自家発電設備等」に該当するので、増設工事前に申請しなくてはいけません。
申請は「再生可能エネルギー電子申請」のサイトから行えます。その際、蓄電池の情報や設置場所、区分計量について入力します。区分計量とは、蓄電池から供給された電気で売電できる状態かどうかを示したものです。
FIT制度の認定を受けていない場合は、増設に関する規制の対象外です。
卒FIT後は軽微な届出で済む
FIT制度の固定買取期間が終了したあとは、FIT制度関係の手続き不要、もしくは軽微な届出で蓄電池を増設できます。
卒FIT後(固定買取期間終了後のこと)の蓄電池増設時に必要な手続きは、事前変更届出です。固定買取期間終了後に必要な廃止届出を提出する前に蓄電池を増設する場合は、事前変更届出を提出します。
しかし、廃止届出の提出後に蓄電池を増設する場合は、FIT制度に関する規制の対象から外れます。そのため、届出の負担を減らしたい時は、卒FIT後および廃止届出提出後に増設の準備を進めるのがいいでしょう。
蓄電池を増設するメリット
蓄電池の増設に関するルールを把握した方の中には、「そもそも増設にかかる手間に対してメリットは大きいのか」と疑問を感じている方も多いのではないでしょうか。蓄電池を増設することで得られる主なメリットについてわかりやすく解説していきます。
自家消費量を増やせる
自家消費量を増やせるのは、蓄電池増設の大きなメリットといえます。太陽光発電を設置している場合では、発電した電気のうち余った分を蓄電池に貯められます。しかし蓄電容量を超えた場合は、その全てを貯めることができずムダになってしまうでしょう。
とくに卒FIT後に売電をやめた場合や、夏場などでは、発電量が蓄電容量を超えやすい状況になります。
そこで、蓄電池を増設すれば、これまで損失していた電気を貯められるようになります。さらに自家消費にまわせる電気も増え、結果的に電気料金をさらに削減できます。
そのため、太陽光発電で発電した電気を全て自家消費したい方や、時間帯別プランを利用して安い電気を積極的に貯めながら効率よく自家消費したい方にとって、蓄電池の増設はメリットといえます。
災害時でも長時間電気を使用し続けられる
蓄電池の増設は、災害対策という点で見ても有用な選択です。たとえば東日本大震災のような大規模災害が発生した場合、想定を超える被害を受けたり、1ヵ月以上の停電やガス・水道供給が停止したりといった事態に直面する可能性はゼロとはいえません。
太陽光パネルだけでなく蓄電池も増設しておけば、発電した電気をムダなく貯められますし、夜間や消費電力量の多い時間帯でも余裕をもって電気を使用できます。さらに、同時に使用できる家電や住宅設備を増やすことも可能になります。
特にIHクッキングヒーターやエコキュート、電子レンジなどの機器は、多くの電気を必要とします。
災害対策として家庭のインフラを強化したい場合は、蓄電池の増設を検討してみてはいかがでしょうか。
蓄電池増設時に注意すべき点
蓄電池増設のメリットや特徴を把握したあとは、注意点について確認しておきましょう。
太陽光発電側に設置した場合は買取価格が変わる
蓄電池をパワーコンディショナーより内側、かつ太陽光パネル側に設置し、さらに区分計量できない場合は、固定買取価格の単価が変わります。(区分計量:蓄電池で放電した電気で売電した際、売電量を計測できるどうか)
たとえば、2015年に太陽光発電と蓄電池を設置したとします。2023年に蓄電池を増設した際、区分計量できないと2023年度の固定買取価格が適用されます。
固定買取価格は毎年度下落方向で調整しています。つまり、太陽光発電・蓄電池どちらの固定買取価格も下落してしまうことになります。
- 太陽光発電の売電分は、増設工事の年度に合わせて固定買取価格を変更
- 蓄電池の売電分は、増設工事の年度に合わせた固定買取価格で買い取り
特に売電収入を伸ばしたい方や売電収入で家計負担を軽減させている方にとってはデメリットといえます。ただし、蓄電池に貯めた電気も固定買取価格で買い取ってもらえるため、状況によっては売電収入を伸ばせる可能性があるかもしれません。
FIT認定を受けて1年や2年以内に増設する場合は、固定買取価格の下落幅が小さい・ないため、売電収入を増やしやすい状況といえるでしょう。
蓄電池の増設を検討する場合は、販売施工業者と共に収支のシミュレーションを行った上で判断しましょう。
区分計量できる場合は、固定買取価格は変わらない
一方、蓄電池をパワーコンディショナーより内側、かつ太陽光パネル側に設置して、なおかつ区分計量できる場合は、固定買取価格の単価が変更されない可能性があります。
具体的には、まず増設分の蓄電池を区分計量できる状態にしておきます。また蓄電池からの放電分は、FIT制度を活用せずに売電します。
この場合、太陽光発電の売電分はこれまでと同じ固定買取価格で対応してもらえることになります。
- 太陽光発電の売電分は、これまでの固定買取価格で買い取り
- 蓄電池の売電分は、FIT制度を活用せず電力会社の設定価格で買い取り
蓄電池の売電のみFIT制度を活用しない場合は、固定買取価格より単価が安くなる傾向があります。しかし、太陽光発電の売電分を高い固定買取価格で買い取ってもらえている場合は、収入減少を抑えられます。
特に2013年や2014年などの高い固定買取価格で売電を行っている方は、単価の下落を抑えられるという点でメリットの多い設置方法といえるでしょう。
系統側に設置する場合は変更なし
増設予定の蓄電池をパワーコンディショナーより外側、系統側に近い場所へ設置した場合、固定買取価格の変更や規制を受けません。
系統側とは、電柱や電線などの送配電設備のことです。パワーコンディショナーの外側に蓄電池を設置すると、太陽光発電で発電した電気のうち余った電気を貯められません。
FIT認定を受けた太陽光発電で発電した電気を効率よく売電できない点が、系統側に蓄電池を増設するデメリットです。
蓄電池の増設費用
蓄電池の増設費用は、通常の設置と同じく本体価格と設置工事の2種類で構成されています。また設置費用は、蓄電容量や施工内容によって変わります。
蓄電容量4kWhといったコンパクトなタイプなら、増設費用は80万円前後です。10kWh以上の大容量タイプの場合は、100万円以上の費用がかかります。
増設を検討する際は、設置費用と家計負担のバランス、初期費用の回収期間について考えた上で判断するのが大切です。
蓄電池の増設時に何を選べばいい?
ここからは、蓄電池を増設する際にどのようなタイプを選べばいいのか、そのポイントを紹介していきます。
単機能型蓄電池
太陽光発電を先に設置している状態で、新たに家庭用蓄電池を導入する場合は、単機能型蓄電池を検討した方がいいこともあります。
単機能型蓄電池とは、蓄電ユニットとパワーコンディショナーで構成された設備のことです。太陽光発電と連携させる時は、蓄電池と太陽光発電のパワーコンディショナーを接続します。
主なメリットは、太陽光発電のパワーコンディショナーや関連機器を交換せずに蓄電池と連携でき、さらに比較的割安で導入できることです。コストを抑えながら増設したい時には、メリットの多い設備といえます。
一方、デメリットは、比較的代用でなおかつ重量が重い点です。また、太陽光発電と蓄電池のパワーコンディショナーをそれぞれ活用しなければいけないため、その分電力損失率が高くなるでしょう。
ハイブリッド型蓄電池
蓄電池の増設に合わせて太陽光パネルやパワーコンディショナー、既設の蓄電池を交換する時は、ハイブリッド型蓄電池がおすすめです。
ハイブリッド型蓄電池とは、1台のパワーコンディショナーで太陽光発電と蓄電池の制御、交流変換ができる蓄電システムのことです。
パワーコンディショナー1台で制御できるため、2台で制御するより効率よく交流変換や送電が行えます。これにより、電気料金削減効果や売電収入アップにつながることもあります。
ただし、単機能型蓄電池より割高なことが多く、コスト面を気にしている方や、なるべく割安な蓄電池を求めている方には向いていません。
この場合、自治体独自の補助金制度が実施されているか確認してみるのもいいでしょう。補助金制度を利用できれば、数10万円単位で初期費用を抑えることができます。
各メーカーの蓄電池と増設対応
蓄電池の増設を検討する際に悩むのが、どのメーカーの蓄電池を選べばいいのかわからないという点です。最後は、各メーカーの蓄電システムを確認していきましょう。
オムロン
オムロンでは、マルチ蓄電プラットフォーム KPBP-Aシリーズという蓄電ユニットを製造販売しています。マルチ蓄電プラットフォーム KPBP-Aシリーズは、ライフスタイルや太陽光発電の設置状況に合わせてカスタマイズできるのが特徴です。
同シリーズのマルチ蓄電パワーコンディショナーは、単機能型とハイブリッド型どちらにも対応します。また、全負荷用分電盤と接続させることで、停電時に住宅全体へ電力を供給することが可能です。
ニチコン
ニチコンの場合は、トライブリッド蓄電システムを販売しています。トライブリッド蓄電システムは、蓄電池と太陽光発電、V2Hおよび電気自動車の全てを連携できる新しいシステムです。
従来の蓄電システムは「太陽光発電+蓄電池」のみでした。トライブリッドなら、太陽光発電で発電した電気を蓄電池やV2H経由で電気自動車に供給できます。また、電気自動車と蓄電池間で電気を供給できるため、効率よく自家消費することも可能です。
さらにニチコンのトライブリッド蓄電システムは、1台のパワーコンディショナーで太陽光発電と蓄電池、V2Hの3ユニット間の制御もできます。コンパクトかつ効率よく電気自動車の電気も活用したい時は、特にメリットの多いシステムです。
パナソニック
パナソニックでは、住宅向けの創蓄連携システムS+という製品を販売しています。創蓄連携システムS+は、3.5kWhから12.6kWhまでさまざまな容量の蓄電池を選択でき、なおかつ停電時でも200V機器(IHクッキングヒーターなど)に電力を供給できます。
また電力切り替えユニットを取り付ければ全負荷型蓄電池として稼働できるため、全負荷型蓄電池を求めている方にも最適といえます。
他には、AIソーラチャージというAI機能を搭載しており、天気予報に合わせた発電や充放電が可能で、また気象情報と連動しながら停電に備えた自動充電をしてくれるのも特長です。
蓄電池の増設に関するルールが変わる?
2022年8月、経済産業省は蓄電池増設に対する規制緩和に向けて方針を切り替えました。
蓄電池の増設に関しては、前半で解説したように固定買取価格の変更といった規制がかけられています。しかし、太陽光発電の設置およびFITやFIP認定数が予測より増えていないことなどから、規制を緩和する方向で議論が交わされています。
なお2023年1月時点では、具体的な内容については未定です。
蓄電池の増設を行う時は申請手続きに気を付けよう!
FIT型太陽光発電を設置したのちに蓄電池を増設させる時は、変更認定申請手続きが必要です。また、卒FITしてから廃止届出を提出するまでに蓄電池を設置する場合は、事前変更届出という手続きを行います。
蓄電池の増設を検討する際は、手続きに関するノウハウも持っている販売施工業者へ相談することをおすすめします。
蓄電池の新規設置を考えている方や蓄電池の増設と太陽光発電の交換も行いたい方は、今回の記事を参考にしながらとくとくショップで増設・交換を検討してみてはいかがでしょうか。
とくとくショップでは、家庭用蓄電池の販売だけでなく自社施工による設置工事、設置に伴う手続きのサポート、設置後の点検サービスまで対応しています。
また、太陽光発電+蓄電池、エコキュート+蓄電池、トライブリッド蓄電システムなど、さまざまな商品を取り扱っていますので、ぜひお気軽にご相談ください。