10年以上前から太陽光発電を設置している方の中には、急激な出力低下による影響を受けている方もいるのではないでしょうか。10年以上前に製造された太陽光パネルにはPID現象の対策が施されていないため、不具合や劣化リスクの高い状態です。また、蓄電池の接続にも影響を与える可能性があります。
そこで今回は、PID現象の仕組みや原因、対策や蓄電池への影響について詳しくご紹介します。自宅の太陽光発電で不具合が生じてきている方やPID現象が気になるもののよくわからない方などは、参考にしてみてください
目次
PID現象とは
まずは、PID現象の意味や問題点についてわかりやすく紹介していきます。
太陽光パネルの出力低下現象
PID現象(potential-induced degradation)は、太陽光パネルに搭載されている太陽電池の出力低下現象を指しています。特定の条件や状況で高電圧がかかった際、漏れ電流も発生してしまい太陽光パネルの出力低下につながります。
太陽光パネルは、経年劣化や故障、製造不良、施工不良といった問題で発電量の低下を招いてしまうことがあります。中でもPID現象は見た目で判断できないため、発見が遅れたり原因を突き止めるのに時間がかかったりしてしまうのも特徴です。
さらに原因が完全に解明されていないため、他の不具合より厄介な現象といえます。
主に大規模太陽光発電で発生している
PID現象が起きやすいのは、主にメガソーラーといった大規模な太陽光発電です。また1,500Vの高電圧を活用しているヨーロッパでは、高い頻度でPIDが発生しています。
高温多湿の環境で太陽光パネルに高電圧が加わると、PID現象が起きやすくなると考えられています。そのため1,000V以上クラスの太陽光発電設備を導入している企業は、PID現象の発生に注意する必要があります。
一方、住宅用太陽光発電のような小規模な太陽光発電システムでは、PID現象の発生率は高くありません。メガソーラーを導入する場合は、PID現象にも対応可能なO&M業者へ管理を依頼しましょう。
太陽電池の種類によって出力低下の動きが異なる
PID現象の発生や出力低下の動きは、太陽電池の種類によって異なります。特にPID現象が発生しやすい太陽電池は、多くのメーカーで採用している結晶シリコン系の太陽電池です。結晶シリコン系太陽電池とは、太陽電池にシリコン半導体基盤を用いたもので、発電効率が20%前後という高さを誇っています。
またp型とn型の太陽光パネルでは、出力低下にいたるまでの傾向も異なります。p型太陽光パネルでは部分的に出力低下が発生し、最終的に発電量ゼロもしくは極めて少ない状況へ変わります。一方、n型太陽光パネルは、最初から太陽電池全体で出力が低下していくことが多いようです。(p型太陽光パネル:p型シリコンをメインに用いた太陽光パネル、n型太陽光パネル:n型シリコンをメインに用いた太陽光パネル)
結晶シリコン系太陽光パネルを購入する場合は、施工販売業者へメーカーごとの特性やPID現象の発生しやすさについても確認してみることをオススメします。
PID現象の主な原因
太陽光パネルに高電圧がかかった際、太陽電池と太陽光パネルのフレームの間に漏れ電流(本来流れてはいけない電流)も発生します。すると、本来流れるべき回路へ電流が流れないため、出力および発電量の低下につながります。
また、漏れ電流が発生する主な原因は完全に解明されていないものの、可能性についていくつか仮説が立てられています。
簡単に説明すると、以下の条件が重なった場合に漏れ電流が発生してしまう確率が上がるようです。
- 太陽光パネルの反射防止膜に高電圧がかかる
- 結晶系シリコンの太陽電池を使用している
- 高温多湿での環境下で発電を行うなど
そこで大学などでは、PID現象を抑えるために、カバーガラスとセルの間にガラス層を追加するなど、構造部分から改善する方法を探っています。
PID現象の対策
PID現象の原因や特徴を把握したあとは、対策について確認していきましょう。
近年、PID現象に関する研究が進み、ある程度対策を施せることもわかっています。これからメガソーラーや中規模以上の太陽光発電を運用する方、すでに運用している方は、対策を押さえた上で管理していくといいでしょう。
太陽光パネルの負極をアース接続
近年、導き出された対策の1つは、太陽光パネルの負極をアース接続するというものです。
太陽光パネルの正極(+極)から負極(ー極)までの電位差が大きいと、その分漏れ電流の発生リスクが高まります。そこで、負極側にアース接続すると、漏れ電流のリスクをいくらか抑えることが可能になります。
アース接続は、製品の漏れ電流を地面(大地)へ流すための安全策です。洗濯機などにもアース接続が行われており、漏電による感電事故防止も期待できます。
PID現象に悩まされている時は、施工販売業者へアース接続について相談してみてはいかがでしょうか。
絶縁型のパワーコンディショナを設置
すべての太陽光発電設備でアース接続できない場合は、絶縁型のパワーコンディショナを設置してみるのもオススメです。(パワーコンディショナ:交流変換、電流の制御を行う装置)
非絶縁式のパワーコンディショナは、電力系統側(送配電側)でアース接続されているため、太陽光パネルのアース接続でPID対策を進められません。
一方、絶電型パワーコンディショナは、太陽光パネル側で漏れ電流が発生すると異常を検知してくれますし、アース接続によるPID現象防止効果も期待できます。
両面型太陽光パネルへ交換
両面型太陽光パネルなら、PID現象の発生を抑えられる可能性があります。前段でも解説したように、PID現象は太陽電池からパネルのフレーム部分へ電流が漏れてしまうことで発生すると考えられています。
両面型太陽光パネルは、片面型太陽光パネルと異なりフレームがありません。さらにガラスによって封止(密閉されている状態)されているタイプがあるので、漏れ電流の発生率を抑えやすい構造といえます。
両面型太陽光パネルを設置しやすいソーラーカーポートを検討している方は、両面型パネルについて調べてみるといいかもしれません。
PID現象の対策状況で蓄電池の接続可否が変わる?
PID現象の対策が不十分な太陽光パネルを導入している場合、蓄電池を接続・併用できないケースがあります。
特に10年以上前の古い太陽光パネルは、2023年時点で製造販売されているパネルと異なり、PID対策が施されていないことが多いようです。また、PID未対策の太陽光パネルと蓄電池を接続すると、蓄電池の動作に支障をきたす場合もあります。
家庭用蓄電池を導入している方、これから導入する方は、まず太陽光パネルの製造年を確認し、新しいパネルへの買い替えを検討してみましょう。
PID現象による被害を抑えるには蓄電池にも注目すべき
PID現象もしくは別の不具合で太陽光パネルを買い替えたり、出力低下に備えたりしている場合は、蓄電池の見直しもしくは新規購入についてもオススメです。
ここでは、PID現象の見直しで注目すべき家庭用蓄電池の選定方法やオススメの理由について紹介していきます。
PID対策済みなら蓄電池で余剰電力をいつでも貯めておける
前段で触れたようにPID対策済みの太陽光パネルは、家庭用蓄電池と問題なく接続できます。また、万が一PID現象で出力が数パーセント以上低下しても、蓄電池に電気を貯めておけば自家消費に必要な電気・売電収入を一定程度カバーすることが可能です。
また、家庭用蓄電池の機能は年々強化されていて、用途に応じた使い方を選択できます。
- 蓄電を優先させて自家消費率をアップさせるモード
- 太陽光発電からの蓄電量を抑える売電重視モード
- 常に満充電を目指す災害対策重視のモード
PID現象などによる出力低下で売電収入を減少させたくない時は、蓄電池で一定程度充電しておき、いざという時に蓄電池から売電を行えます。また自家消費で電気料金を削減したい時は、満充電重視の機能で出力低下発生時のリスクを抑制できます。
200V機器がある場合は仕様を確認する
200V機器を使用している場合は、200V対応の家庭用蓄電池から比較検討するのが大切です。家庭内で使用している家電製品や電子機器の多くは、100Vに対応しています。しかし、IHクッキングヒーターやエアコン、浴室用乾燥機など一部の住宅設備や家電製品は、200Vで稼働しています。
200V機器の消費電力を抑えたいという場合は、なるべく200V対応の蓄電池から検討するのが大切です。
とくとくショップでは200V機器対応の蓄電池も取り扱っているので、お気軽にご相談ください。
ライフスタイルに変化がある時は蓄電容量を見直す
ライフスタイルに変化が生じた場合は、蓄電容量を見直したり簡単に蓄電容量を切り替えられるタイプを検討したりするのがオススメです。
家庭用蓄電池は、4kWh台の小規模なものから7kWhや10kWhの比較的容量の大きなタイプまで揃っています。そのためお子さんが生まれた場合には、蓄電容量を増やすことも可能です。
反対に想定より蓄電池の使用頻度が低い場合は、蓄電容量を小さくして維持管理費用を抑えるという方法も選択できます。
たとえば、HUAWEIの家庭蓄電池は、あとからパズルのように蓄電ユニットを増設したり減らしたりできるため、ライフスタイルの変化に合わせて切り替えたい方にオススメです。
災害対策についても考えておく
家庭用蓄電池を検討する際は、災害による停電被害についても考えておく必要があります。家庭用蓄電池は、停電後でも充放電できるよう設計されています。しかし、停電時の機能は蓄電池によって異なるので、注意が必要です。
全負荷型とよばれるタイプは、停電時でも全部屋のコンセントや住宅設備へ電力を供給することが可能です。一方、特定負荷型は、施工前に電力を供給しておきたい部屋や設備を指定しておき、特定の場所のみへ電力を供給できます。
とにかく全部屋で照明を使用したい、あらゆるコンセントから電気を使用したい時は、全負荷型がオススメです。なるべく無駄な消費を抑えたい時は、特定負荷型を検討しましょう。
とくとくショップでは、お客様のご要望に合わせてさまざまな種類の蓄電池からライフスタイルに合った蓄電池をご提案いたします。
PID現象は出力低下を招く!早期にチェックすべき!
PID現象は、太陽電池から漏れ電流が発生することで出力低下を招く不具合の一種です。はっきりとした原因やメカニズムは解明されていないものの、メーカーではPID対策を進めているので、出力低下リスクが抑えられつつあります。
PIDなどの不具合による売電収入低下を避けたい方や電気料金の削減効果を維持したい方は、今回の記事を参考にしながら太陽光パネルの買い替えや家庭用蓄電池の導入を検討してみてはいかがでしょうか?
弊社とくとくショップでは、さまざまなメーカーの家庭用蓄電池を取り揃えております。また、製品保証だけでなく施工や火災保証も付帯しているので、万が一の破損や事故による損害をカバーできます。
さらに全国各地の設置に対応しているので、いつでもどこでもお気軽にご相談ください。