空気電池は、近年開発の進む新しい蓄電池の1つです。究極の電池とも呼ばれていて、将来的に蓄電池へ取り入れられる可能性もあります。しかし、新しい仕組みなので特徴や仕組みがわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、空気電池の仕組みや特徴、メリット・デメリットについて詳しくご紹介します。蓄電池に関するさまざまな情報を収集している方や、次世代の蓄電池を知りたい方などは、参考にしてみてください。
目次
空気電池の仕組み
空気電池は、正極に酸素、負極に金属を使用した電池です。
酸素は空気中に存在しているので、空気を取り込めば電力供給できるのが特徴であり、究極の電池と呼ばれている理由でもあります。
また、正極に空気を取り込むためのカーボン層を用いるものの、一般的な電池と比較して重量を半分程度まで軽減できます。そのため、コンパクトな電池を設計することが可能です。
軽くて充電しやすいということは、エネルギー密度が高いということでもあり、計算上では、これまでの電池よりコンパクトかつ大容量の電池を製造できる可能性があります。
空気電池とボタン電池の違い
ボタン電池とは、文字どおりボタンのような形状の電池のことです。
ボタン電池に用いられている電池は、リチウム一次電池やアルカリボタン電池、空気亜鉛電池といったさまざまな種類に分かれています。
中でも空気亜鉛電池は、負極に亜鉛、正極に酸素を用いた電池です。つまり、冒頭で紹介した空気電池の一種であり、違いはありません。一般的には、補聴器などの電力の必要な小型機器に使用されています。
しかし商用化されている空気亜鉛電池は、一次電池(充電できない電池)なので、蓄電池として用いることはできません。
空気電池のメリット
空気電池は、耐久性やサイズ、パフォーマンスといった点で強みのある電池です。
空気電池の仕組みを把握したあとは、メリットや強みについて1つずつ確認していきましょう。
リチウムイオン電池の電解液と異なり不燃性の液体を使用
リチウムイオン電池と異なり、空気電池には不燃性(燃えない、極めて燃えにくい)の材料が用いられています。
電解液は不燃性のアルカリ水溶液なので、リチウムイオン電池より火事のリスクが低いといえます。
電解液とは、電流を流すための媒体としての機能を果たす溶液のことです。リチウムイオン電池に用いられている電解液は引火性のある液体で、引火点は40℃程度です。引火点40℃は危険物第四類(引火性液体)第二石油類に該当するため、保管量が1,000Lを超える場合は、危険物屋内貯蔵所で保管・管理しなければいけません。
一方、空気電池には危険物に該当する電解液が用いられていないので、保管方法に関する規制を受けることなく設置および使用ができます。
量産化の際に低価格で供給可能
空気電池は比較的安価な素材で製造できるため、実用化の際に大量供給しやすいといえます。
空気電池の負極に使用されている主な材料は、埋蔵量の多いアルミニウムや亜鉛、リチウムなどの金属で、いずれも安価です。このように、さまざまな種類で製造できるため、量産化の際に1種類の金属を調達できなくとも、他の金属を使って製造できます。
そのため、今後、空気電池が実用化された際は、比較的安価な価格帯で産業用蓄電池を導入することが可能になるでしょう。
小型軽量で製造可能
小型・軽量で製造できるのは、空気電池ならではの強みです。
冒頭でも紹介したように、空気電池の正極には金属ではなく酸素が用いられています。既存の電池より重量を軽減できますし、軽量化した分、負極に金属を充填しやすいといったメリットもあります。
空気電池を用いた小型の産業用蓄電池が開発されれば、設置スペースに悩んでいる企業も導入しやすいといえます。また小型軽量の蓄電池なら、設置後も状況に応じて簡単に移動することが可能です。
既存の蓄電池より大容量で製造できる可能性
空気電池が実用化されれば、既存の蓄電池より大容量の蓄電池を利用できるようになるかもしれません。
さまざまな製品に使用されているリチウムイオン電池は、蓄電容量に限界があります。一方、空気電池のエネルギー密度は、リチウムイオン電池より数倍も高く、なおかつ軽量です。
さらにパワー密度が高いので、瞬間的な放電量という点でも高い性能を維持できます。
大容量かつ高い放電量は、空気電池のメリットとなることでしょう。
空気電池のデメリット
続いては、空気電池の課題やデメリットについて1つずつ確認していきましょう。
電解液の耐久性という点で課題がある
空気電池を二次電池(蓄電池)として活用しようとすると、電解液が劣化するおそれがあります。これは大きな課題のひとつです。
空気電池で電力を供給するには、正極から常に空気中の酸素を取り込まなければいけません。また、酸素を取り込むため内部を密閉できず、外部からの不純物の混入などで電解液は劣化しやすい状況です。
電解液が劣化すると、電池としての機能も低下してしまいます。そのため、電解液の改善が、実用化に向けた大きなポイントといえます。
デンドライトの生成による安全性の課題
空気電池を二次電池として使用すると、デンドライトの生成が、安定的な充放電に影響を与えてしまうことも考えられます。
デンドライトとは、充放電を繰り返した際、金属の負極に枝のような結晶が付着し、充放電の効率低下、ショート、発火につながる現象のことです。
つまり、デンドライトが生成されてしまうと、発火による事故や短寿命といったデメリットにつながりますし、充放電のサイクルを伸ばせない状態になります。
なお、2019年には、同志社大学によってデンドライトの生成を抑えながら充放電を繰り返す実証実験を繰り返し、劣化の抑制を実現しつつあります。デンドライトの抑制技術がさらに進めば、どのような金属材料・電解液でも充放電を繰り返せる可能性があります。
空気電池の開発事例
ここからは、空気電池に関する開発事例について紹介していきます。
東レ
合成繊維などの開発を行っている東レは、2022年6月に空気電池用のイオン伝導ポリマー膜創出に成功しました。
空気電池には、セパレーターという正極と負極を隔離するフィルムが搭載されています。東レの開発したイオン伝導ポリマー膜をセパレーターとして活用すると、デンドライトの抑制や充放電に対応しやすくなります。
また、イオン伝導ポリマー膜を搭載した空気電池では、従来の空気電池より充放電サイクルが10倍以上改善したという報告もあります。
シャープ
2022年8月、シャープではフロー型亜鉛空気電池という、空気電池の仕組みを活用した大規模な蓄電池開発を始めました。
その構造は、空気電池の仕組みを活用した充電用のセルと充電した電気を貯める貯蔵部、放電用のセルに分かれています。貯蔵部が独立しているので、大容量の蓄電池を構築することも可能です。また安価な亜鉛を利用するため、コスト面でも優れています。
NIMS
ソフトバンクと物質・材料研究機構(NIMS)では、大容量のリチウム空気電池を開発しています。
2021年12月の実験では、1kgあたり500kWhクラスのリチウム空気電池で充放電を行いました。既存のリチウムイオン電池と比較して、2倍のエネルギー密度を維持しているのが特長です。
2023年1月には、物質・材料研究機構(NIMS)とソフトバンク株式会社、株式会社オハラの共同で、リチウム空気電池の劣化原因を突き止めました。充放電サイクルの主な劣化原因は、負極に用いられているリチウムの劣化が関係しています。そこでリチウムの劣化を防ぐための保護膜を加えることで、劣化しにくい空気電池の開発を進めています。
家庭用蓄電池の種類はリチウムイオン電池
2023年時点で主流とされている家庭用蓄電池は、主にリチウムイオン電池です。
リチウムイオン電池は、正極にリチウムを含ませた金属化合物、負極に黒鉛を使用した蓄電池です。リチウムイオンが正極と負極の間を動くことで、充電・放電します。
家庭用蓄電池の蓄電容量は、4kWhという小型のタイプから16.6kWhの中規模タイプまで幅広く揃っています。消防法の関係上、消防署への提出不要な蓄電容量は16.6kWhまでとされているため、家庭用蓄電池の容量は大きいものでも一般的に16.6kWhです。
初期費用は、蓄電容量や施工販売業者によって80万円前後の比較的安価なケースから200万円前後まで変動します。
寿命は10~15年なので、住宅用太陽光発電と同じく、比較的長寿命といえます。
空気電池は次世代の家庭用蓄電池として注目されている!
空気電池は、近年注目されている次世代型電池です。さまざまな企業が蓄電池として活用できないか研究開発を重ねていて、近い将来実用化される可能性も出ています。
蓄電池は、エネルギーの自給自足や災害対策に欠かせない住宅設備の1つです。
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