家庭用蓄電池は、太陽光発電設備と連携させることで、家計にかかる電気代を極限まで削減できることや、自然災害による停電時でも蓄電池からの電力供給が可能になるため、家庭の非常用電源として活躍できると注目されています。基本的には、太陽光発電など、自家発電設備と連携させることで、蓄電池が持つ能力を最大限生かすことができるようになるのですが、自家発電設備を導入していない家庭でも、深夜帯の電気代が格安になる料金プランを活用するなど、高い電気代削減効果を享受することも可能です。
このような理由もあり、ここ数年「家庭用蓄電池を導入しなければ損をします!」などと、かなり強引な手法で蓄電池の導入を迫ってくる訪問販売業者が増加していると言われています。家庭用蓄電池は太陽光発電の有無にかかわらず、上手に利用すれば日々の電気代削減効果を得ることができる設備なのは確かですし、万一の災害による停電のことを考えた場合、非常に心強い設備となってくれるはずです。しかし、日々の電気の使い方などは、ご家庭によってかなり異なりますし、家庭用蓄電池を導入すれば、全てのご家庭が電気代削減のメリットを得られるかというとそういう訳でもないのです。
したがって、家庭用蓄電池の導入で失敗しないためには、事前にどのような失敗事例やトラブル事例があるのかを押さえておかなければいけません。そこでこの記事では、家庭用蓄電池設置時のトラブル事例や失敗例とその対策をご紹介します。
蓄電池導入時の失敗・トラブル事例とは?
家庭用蓄電池は、家計の電気代削減や災害による停電対策に非常に有効な設備であることは間違いありません。しかし、蓄電池の導入前に「何のために蓄電池を導入するのか?」「本当に必要な設備なのか?」ということをしっかりと検討しておかなければ、導入後に後悔してしまう危険もあるのです。
ここでは、実際にあった蓄電池導入時の失敗例やトラブル事例とその対策をご紹介しておきますので、ぜひ頭に入れておきましょう。
ケース① 太陽光発電の発電量が減少してしまった…
蓄電池を導入した結果、太陽光発電設備の発電量が低下してしまった…というトラブルは意外と多いです。これは、近年人気になっているハイブリット型蓄電池を導入したご家庭で起きている話です。
近年販売されている蓄電池の中には、1台のパワーコンディショナで太陽光発電と蓄電池の制御が可能なハイブリット型が販売されており、太陽光発電のパワコンが故障したタイミングでハイブリッド型蓄電池の購入、設置を行う方が増えているのです。
こういったご家庭が増加する中、近年ではハイブリット型蓄電池導入後に太陽光発電の発電量が低下してしまった…といったトラブルが多くなっていると言われているのです。
トラブルの原因は?
このようなトラブルが発生してしまう原因は、「販売業者の蓄電池に対する知識の無さ」「販売業者の太陽光発電に対する知識の無さ」「販売業者の悪意」のどれかです。
太陽光発電は、いくつかの太陽光パネルを束ねて一つにつなぎ、それを1回路としてパワコンにつなぎます。しかし、パワコンは無限にその回路を制御できるわけでもなく、導入したパワコンによって対応できる回路の数は限界があるのです。つまり、今まで4回路まで対応できるパワコンを使用していたご家庭で、新しく導入したハイブリット型蓄電池のパワコンが3回路までしか対応できない…となってしまった場合、これまでつないでいた1回路をつぶすことになり、発電量が3/4に低下してしまう結果になるのです。
トラブル回避の対策は?
こういったトラブルを回避するためには、蓄電池と太陽光発電設備、両方に関する正しい知識を持った信頼できる業者から購入するという対策が一番です。例えば、蓄電池の現地調査を依頼した際、ハイブリット型蓄電池の提案を行ってきたのに、既存の太陽光発電設備の調査を行わない…なんて販売店は危険だと思った方が良いでしょう。
業者と打ち合わせする前には、蓄電池と太陽光発電に関して自分でも調べておき、販売業者がきちんと知識を持っているのか判断するようにしましょう。なお、単機能型蓄電池の場合は、こういったトラブルは当てはまりません。
ケース② 相場とかけ離れた高さで購入させられた…
住宅設備関係の失敗・トラブル事例の代表と言えば、やはり「相場とかけ離れた高額で購入してしまった…」というパターンです。ネットで少し検索してみれば、悪徳訪問販売業者の注意点などとして、販売手口などが紹介されていますし、現在ではこういったケースのトラブルは減っている…と考えている方も多いのではないでしょうか?
確かに、さまざまな場所で注意喚起がなされていますので、あまりに高額での契約失敗事例というのは減少傾向にあるのですが、全く無くなったかというとそうでもありません。家庭用蓄電池は、販売開始当初よりもかなり導入コストが安くなっていますし、インターネットなどを少し調べてみれば、現在の相場感もある程度掴むことは可能です。しかし、昨年からは蓄電池の導入を検討する理由が「卒FITを迎えるから…」という方が増えており、こういった方は少なくとも太陽光発電を導入して10年が経過した方々になるのです。つまり、相対的に年齢層が高めのお客様が増えており、ネットでいろいろな情報を調べてみるというスキルが低く、営業マンの言われるがままに契約してしまう…というケースがあるようです。
トラブルの原因は?
購入前に「比較検討をしていない…」というのが大きな原因と言えるでしょう。蓄電池は、決して安い住宅設備ではありませんし、さまざまな機種が存在しているため、1社だけの話を聞いてそのまま契約するという手法はオススメできません。もちろん、何社も話を聞くというのは多大な労力がかかってしまうのですが、最低でも2~3社程度の話を聞くようにすれば、相場とかけ離れた金額で購入する…というトラブルは防ぐことができるはずです。
トラブル回避の対策は?
蓄電池の導入を検討した場合には、まずインターネットを使って、最低限の蓄電池に関する知識を調べておきましょう。また、上でご紹介したように、1社だけの話で契約するのではなく、最低でも3社程度の提案を比較検討するというのが非常に大切です。訪問販売業者の中には、「地域限定の割引価格なので、この場で契約してほしい…」などと即決を促してくる場合もありますが、お客様ご自身が蓄電池の相場をつかめていない場合、絶対に即決するのはオススメできません。
もちろん、家庭用蓄電池は「安ければ良い話」というわけではなく、導入後のアフターフォロー体制などの比較も必要です。1社だけの話で決めてしまった場合、営業マンのトークで勘違いしてしまっている、ウソをつかれているといったケースを防ぐことができないのです。
ケース③ 深夜電力が活用できない…
家庭用蓄電池は、太陽光発電の余剰電力を溜めておき、それを夜間に利用することができるようになるため、大幅に電気代削減を実現できる設備として有名です。それでは、太陽光発電を導入していないご家庭であれば、蓄電池の電気代削減効果は得られないのでしょうか?実はそういう訳でもなく、電力会社が用意している夜間の電気代が格安になる料金プランを活用することで、電気代削減を目指すことも可能なのです。
そのため、最近では、太陽光発電設備を設置していないご家庭でも、家計にかかる電気代削減目的で家庭用蓄電池の導入に踏み切る方が増加しています。しかし、営業マンに「格安の夜間電力を活用すれば電気代削減ができる!」と聞いていたのに、実際に蓄電池を設置してみると、導入前とさほど電気代が変わらない…とトラブルになるケースも少なくないようです。
もちろん、万一の災害対策として蓄電池を導入し、その副次効果で「電気代削減ができればいいな…」程度の考えであれば問題ないのでしょうが、電気代削減を主目的として蓄電池を購入していた場合、導入にかけたコストを取り戻すことができず困ってしまう訳です。
トラブルの原因は?
これは、営業マンの説明不足や知識不足が大きな原因です。各電力会社が、深夜帯の電気代が格安になる料金プランを作っているのは確かで、この料金プランを活用することで、電気代削減を目指すことができるご家庭があるのも事実です。しかし、こういった深夜帯の料金が格安になる料金プランは、全てのご家庭が加入しているわけではなく、ガスも併用しているご家庭であれば、時間帯別に電気代の単価が変わる電力契約になっていないことの方が多いのです。つまり、深夜電力を利用して電気代削減を目指すのであれば、蓄電池導入に合わせて電力会社との契約も切り替えなければいけないのです。この事実を聞かずに蓄電池を活用していたのであれば、昼間と夜間の料金単価に格差が無いわけですので、一切電気代削減効果を享受することができません。
また、もともと共働きのご家庭でたいして電気代が高くない…昼間はほとんど電気を使わない…などと言ったご家庭であれば、削減できる電気代もたかが知れていますので、料金単価の格差で得られる電気代削減効果は大きなメリットとなり得ない可能性が高いです。
トラブル回避の対策は?
まずは、ご自身が加入している電気料金プランを確認しておくことが大切です。深夜電力を活用した電気代削減は、昼間と夜間の料金単価格差を活用するわけですので、深夜電力が安い料金プランに加入しておかなければ意味がありません。また、ご家庭のライフスタイルによっては、深夜電力を活用する手法では大した電気代削減効果を得られない…といったケースも少なくありませんので、導入を決める前にきちんと料金シミュレーションをしておくことが大切です。
深夜電力を活用して電気代削減を目指すのであれば、それなりの蓄電容量を持った機種を導入する必要がありますので、導入コストを取り戻すことができるのか?ということを判断基準にしましょう。
まとめ
今回は、家庭用蓄電池の導入を検討中の方のため、実際に導入する前におさえておきたい失敗・トラブル事例をご紹介してきました。家庭用蓄電池は、家計にかかる電気代の削減や万一の災害で停電が発生した時でも最低限の電力を確保できる非常用設備として年々その注目度が高くなっています。特に2019年以降は、太陽光発電の高額な売電価格を補償していた固定価格買取制度(FIT)が期間満了で終了してしまう住宅が出てくることもあり、その需要が一気に高まったように思えます。
こういった状況もあり、家庭用蓄電池業界に参入する販売店も急増しているのですが、消費者の方は少し注意が必要なのです。販売店が増えれば、価格競争になることもあり、蓄電池の導入にかかるコストが下がるなどのメリットもあるのですが、しっかりとした蓄電池の知識も持たず販売する業者が増えてしまい、正しい情報がどれなのか判断しずらい状況になってきているのです。実際に、弊社にお問い合わせいただくお客様の中には、完全に間違った知識を別の業者から説明されていた…なんてケースも珍しくなく、蓄電池の導入時には本当に慎重に情報の精査をしなければならない時代になっているのです。
間違った知識を信用して蓄電池の導入を行ってしまった場合、この記事でご紹介したような状況になってしまいかねませんので、少しでも不安があるようでしたら、ぜひ弊社までお問い合わせください。