学校へ太陽光発電導入のメリットやデメリットは?|導入事例もご紹介

学校へ太陽光発電導入のメリットやデメリットは?|導入事例もご紹介

SDGs推進の一環で日本での太陽光発電の普及は拡大しています。近年では、一般住宅やオフィスビルはもちろん、学校などの公共施設でも導入しているところが増加中です。

学校への太陽光発電の導入には、どんなメリットやデメリットがあるのでしょうか?実際の導入事例も交えてわかりやすく解説していきます。ぜひ参考にしてください。

【太陽光発電】公立小中学校の導入率は34.1%

【太陽光発電】公立小中学校の導入率は34.1%

学校は次世代を担う子ども達が学びや生活をする場であり、学校での体験が子ども達の成長にさまざまな影響を与えると考えられています。

太陽光発電を中心とするエコ改修は、学校施設が環境教育の実物大の教材となる事であり、そこでの学習や生活体験が子ども達の環境マインドの向上に大きく寄与するものと期待されています。

また学校は、全国各地に数多く設置されている最も身近な公共施設の一つであり、今回の施策で環境対策の実践の場となる事によって、地域における環境対策の推進にも貢献するとされています。

太陽光発電設備を導入している公立の小中学校は、文部科学省が2021年5月に公表した資料によると、全体の34.1%が導入していそうです。

学校への太陽光発電の導入ガイドブックがある

全国規模で実施されている学校への太陽光発電設備の導入を円滑に進めるためには、事前調査から設計、施工、維持管理までの一連の取り組みについて、学校設置者が必要とする情報をコンパクトにまとめたガイドブックが必要です。

そのため文部科学省では、国立教育政策研究所文教施設研究センターと共同で、学校施設の特性や実態を踏まえた「学校への太陽光発電導入ガイドブック」を作成しています。

学校が太陽光発電を導入するメリット

学校が太陽光発電を導入するメリット

学校が太陽光発電を導入するにあたって、どのようなメリットが考えられるでしょうか?

「学校への太陽光発電導入ガイドブック」を参考に大きく3つに分けて、そのメリットを解説していきます。

災害時の対策

1つ目のメリットは、災害時の対応です。太陽光発電は、大規模な地震などの被災により電力会社からの電力供給が停止した際、必要な設備を装備する事で非常用電力供給の場として活用することができます。

具体的には、防災機能付きパワーコンディショナーと、防災負荷専用の配線と蓄電池を組み合わせ、蓄電池に蓄えた電力を防災負荷として利用します。

被災時における太陽光発電の活用例としては、学校は避難所として解放される事も多く、その機能を果たすための電力の確保です。

照明やテレビ、外部との連絡用の無線、携帯電話、パソコン等、生徒や地域住民の安全を確保するための電力供給源として大きな役割を果たす事が可能になります。

温暖化対策(CO2削減)

2つ目のメリットは、地球温暖化対策のためのCO2削減効果です。学校の太陽光発電により生み出される再生可能エネルギーは、火力発電所からの電力に代わって消費され、各学校、地域の二酸化炭素炭素(CO2)削減に大きく貢献できます。

太陽光発電システム20kWを導入することで、学校1校あたりのCO2削減量および削減率は、以下のようになると報告されています。

削減量年間およそ10~13トン
削減率寒冷地およそ8~9%、温暖地およそ14~17%

このうち削減量に関しては、東京ドーム1個分の面積の森林によるCO2吸収効果に相当すると言われています。

もし全国すべての公立小中学校(約3万6千校)に太陽光発電システムを設置した場合、年間発電量はおよそ7億6千万kWhとなり、これは一般家庭およそ22万軒分の電気使用量に相当すると考えられています。

ちなみに、学校に太陽光発電を導入する事で得られる経済的なメリットは、1校あたりの年間電力需要を12〜27%程度節減でき、年間21〜26万円程度の電気代削減になるそうです。

これを公立の全小中学校に設置すると、年間約86億円もの電気代が削減される事になります。

生徒への環境教育

3つ目のメリットは、生徒への環境教育ができるという点です。太陽光発電は、地球温暖化の原因と言われている温室効果ガスであるCO2を排出しない再生可能エネルギーとして、地球温暖化対策に大きく貢献しています。

また、太陽光発電設備を学校へ導入する事で、児童生徒及び地域住民にとって省CO2、省エネルギーの効果や仕組みを体験できる環境学習の教材として役立てる事ができます。

例えば、横浜市立井土ヶ谷小学校の事例では、太陽電池モジュールなどの実物を観察、体験できる事で、上級生が下級生に発電の仕組み、原理を教えるなどの好循環につながっています。

また、実際に太陽光発電で発電した電気を充電式電池に貯め、家庭で活用するなど、再生可能エネルギーの利用の重要性を肌で感じる事のできる教育環境を生み出しています。

学校が太陽光発電を導入でのデメリット

学校が太陽光発電を導入でのデメリット

生徒や地域住民の方にとっては、学校に太陽光発電設備を導入することで多くのメリットを得ることができます。それでは、実際に太陽光発電設備を導入するにあたってのデメリットにはどんなものがあるでしょうか?

現在懸念されている事項について解説していきます。

導入費用

1つ目のデメリットは、太陽光発電設備の導入費用です。「学校への太陽光発電導入ガイドブック」によると、導入費用は太陽光パネルの設置規模にも左右されます。

太陽光発電で大きな電力を得るためには、太陽光パネルを設置するための広い面積が必要です。なぜなら、太陽光は単位面積あたりのエネルギー密度が小さいため、大電力を得るためには広い面積が必要だからです。

現状では、一般用電力設備に比べ太陽光発電設備の製造コストは高いので、太陽光発電で十分な電力を確保しようとすると、導入費用は高額なものとなってしまいます。

積雪・寒冷地域の設備メンテナンス

地域特性に合わせた対応策が必要となる事なのもデメリットのひとつです。例えば雪の多い地域では、積雪荷重に対応した太陽電池モジュールや架台の設計のほか、モジュールの上に積もった雪を自然に落雪させる仕組みも取り入れなければなりません。さらに雨水などが太陽光モジュールや他の部材の隙間に残っていると凍結の恐れがあるため、設計の段階で水抜き孔や、勾配を十分に取るなどの配慮なども課題です。

またメンテナンス時には、積雪、融雪の繰り返しによる破損変形や結合部の緩みがないかの確認をするなど、さまざまな問題に取り組む必要があります。

学校での太陽光発電導入に関する補助金

学校での太陽光発電導入に関する補助金

学校へ太陽光発電設備を導入する場合、設置面積も建物の広さに合わせて大規模なものになるため、高額な資金が必要です。そのため日本政府は、学校への太陽光発電設備の導入に対して、いくつかの補助制度を設けています。

今回はその代表的な補助金である「学校施設環境改善交付金」について紹介します。

学校施設環境改善交付金

資源エネルギー庁には、公立学校に太陽光発電設備を導入する際に利用できる補助金制度があり、「学校施設環境改善交付金」と名付けられています。

これは、太陽光発電設備等を設置するために必要な経費の一部を国庫補助し、地域の実情に応じた地球温暖化対策の推進や環境教育への活用を図るというものです。

対象は、地方公共団体(幼稚園、小学校、中学校、義務教育学校、中等教育学校、高等学校、特別支援学校 (幼稚部、小中学部、高等部)、共同調理場〕で、高等学校と中等教育学校(後期課程)は産業教育施設のみとなっています。

支援内容は太陽光発電、風力発電、太陽熱利用設備、蓄電池などの設備の導入で、交付金の金額は算定割合が1/2で補助されます。また、発電した電気の固定価格買取制度との併用も可能です。

詳細については、「学校施設環境改善交付金交付要綱」を確認してください。

(お問い合わせ)
「文部科学省大臣官房文教施設企画・防災部施設助成課技術係」
TEL:03-6734-2078
FAX:03-6734-3743

【太陽光発電】実際の学校での導入事例

【太陽光発電】実際の学校での導入事例

太陽光発電設備の実際の学校への導入事例について見ていきましょう。各地域の特色や直面している環境課題に合わせて工夫して取り組みが進められています。参考になる内容だと思いますので、是非確認してみてください。

東松山市の導入事例

埼玉県東松山市は、深刻化する地球温暖化の解決に向けて2012年に「東松山市環境まちづくり宣言」を制定し、小中学校施設への太陽光発電設備の設置を校舎の改築事業に合わせて行っています。

「太陽光発電設備の小中学校への導入効果」

1:太陽光発電に関する補助教材を市内全小中学校へ配布することにより、児童生徒への環境教育が図られています。

2:NGO指導により、市内小中学校の環境教育主任対象の研修会で手作りの太陽電池パネルを作成するなど、環境教育プログラムの普及・充実を図っています。

川越市の導入事例

埼玉県川越市では、平成8年度から1%節電運動をはじめ、昼休みの消灯など、さまざまな節電に取り組んでいます。平成10年には川越市環境基本計画を策定。新エネルギーを公共施設へ導入することを重点施策にしてきました。

また、太陽光発電設備については、小中学校は環 境教育上重要なため全校に設置する」との方針のもと、積極的な導入を推進しており、平成18年度に全校設置が完了しました。

「太陽光発電設備の小中学校への導入効果」

学校玄関に太陽光発電による発電量を表示するモニターを設置することにより、児童への環境教育が促進されています。

仙台市の導入事例

宮城県仙台市では、東日本大震災によりエネルギーの供給が途絶えた経験を踏まえて、市内の指定避難所となる小中学校198校に太陽光発電設備を導入しました。

長期間の停電が発生した場合でも、太陽光発電と蓄電池を組み合わせることで、天候や時間に左右されず、防災無線やテレビなどの情報通信機器、照明、コンセント等が使用できます。

太陽光発電設備と蓄電池は仮想発電所(VPP)で遠隔監視制御されており、太陽光発電の余剰電力の有効活用や蓄電池の長寿命化を実現する研究が進行中です。

学校でも太陽光発電を導入しよう!

学校でも太陽光発電を導入しよう!

今回は、太陽光発電設備の全国の公立小中学校への導入状況と、それがもたらすメリット、デメリットについて解説してきました。学校に太陽光発電設備を導入する事で生徒へ再生エネルギーによる発電を肌で感じてもらい、未来の脱炭素社会を担うための最適な環境教育になると期待されています。

また、地域社会の防災拠点の中心としての機能を高める事も可能となるため、学生のみではなく地域全体の安全性にも貢献しています。

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