光熱費の削減になるとしてオール電化を導入した人の中から、「実際にやってみたものの電気代が高い」「後悔している」という意見が散見されます。これはいったい、どういうことなのでしょうか。光熱費の削減を目的としてオール電化を導入したのに思っていた通りになっていないのであれば、これから導入を検討している人にとっても不安材料になってしまうと思います。
そこで当記事ではオール電化を導入したものの電気代が高い、後悔しているという意見が出ている理由や背景を考察し、それに対する有効な対策について解説しています。
電気代の高騰が続いている昨今、オール電化に不安を抱いている方はぜひ最後までお読みください。
目次
オール電化を導入したものの後悔しているという意見の主な理由
オール電化を導入する際には、さまざまなメリットを交えて提案されたことと思います。しかし今、そのオール電化を導入したことを後悔している人がいるということは、思っていた通りにならなかった何らかの理由があるはずです。
そこで、オール電化を導入したものの後悔している人の意見をピックアップしてみましょう。
昼間の電気代が高い
おそらく後悔の理由として最も多いのが、「オール電化を導入したのに電気代が高い」というものです。光熱費が安くなるという経済的メリットを期待していたのに、いざやってみると電気代が高いじゃないか、というわけです。
電気代が高くなってしまっている理由はひとつではありませんが、その中でもオール電化がもつ構造的な理由を知っておく必要があります。それは、昼間と夜間の電気代に大きな格差がつけられていることです。
オール電化にすると電力会社との料金プランもオール電化専用のものになります。夜間の電気代を安くする代わりに昼間の電気代が割高になっていることがほとんどです。エコキュートは夜間に安い電力を使ってお湯を沸かすので、それを昼間にも使えば安く給湯ができるようになります。しかし、この仕組みを理解せずに昼間もどんどんお湯を使えば電気代が高い時間帯にお湯を沸かすことになるため、電気代が思っていたよりも高いといった事態になります。
しかし、昼間にも電力を使うことはあるので、それだと話が違うと思うかもしれませんが、そこには有効な対策があります。それについては、後述します。
メンテナンス費用が意外にかかる
オール電化も家電の一種なので、メンテナンスが必要です。そのことを導入時にあまりきちんと説明されていなかったことで、いざメンテナンス費用が発生すると「高い」と感じてしまうようです。
オール電化機器について日常的なメンテナンスは掃除をするくらいですが、機器には寿命があります。エコキュートやIHクッキングヒーターはいずれも交換すると数十万円の買い物になるので、これが「高い」と感じてしまうのは仕方ないかもしれません。
初期費用が高額になりがち
初期費用については施工会社や販売会社から説明や提案があるはずなので、これを「高い」と感じる人はそもそも導入しないかもしれませんが、見積もりの段階で思っていたよりも高いと感じるケースは多く見られます。
というのも、オール電化の導入には機器の代金と工事費が必要になるわけですが、この工事が意外に多岐にわたるため、高いと感じやすい部分です。
基礎工事だけでなく水道関連の工事や電気工事を伴うため、これが高いと感じる原因となります。しかしながらオール電化は太陽光発電と併用するなど効率を高めれば時間をかけて初期費用の元を取ることができるので、初期費用のように目先のお金だけで判断するのは早計だと思います。
さて、ここまではオール電化を導入したことに対する公開で「お金」に関するものでした。それ以外にもさまざま意見や指摘があるので、次項からはそれも見てみましょう。
IHクッキングヒーターは万能ではない
IHクッキングヒーターはとても便利でお手入れをしやすいなどのメリットがある一方で、できる調理には限界があります。最も多い意見が、「直火を使えない」ことです。炙りなどの調理はできないので、一部の調理には限界があります。
また、鍋やフライパンなどがIHクッキングヒーターに接していないと発熱しないので、中華鍋を使った調理にも不向きな部分があります。
お湯切れになると不便
生活のスタイルによっては、オール電化のエコキュートが適切ではないことがあります。最もマッチしていないのは、昼間に大量のお湯を使う場合です。
エコキュートは電気代が安い深夜の時間帯にお湯を沸かして、それを貯めておくことで昼間に需要に応えます。深夜に沸かしたお湯だけで生活ができているうちはお湯を沸かすコストを抑えることができるのですが、昼間に使うお湯の量が供給力を上回っている場合は、昼間にお湯切れが起きて再びお湯を沸かすことになります。
一度お湯が完全になくなると再びお湯を沸かすまで時間がかかりますし、割高な昼間の電力を使うため、お湯を沸かすコストも跳ね上がります。
オール電化にしたのに電気代が高くて後悔しているという方は、この可能性を疑ってみてください。
電磁波の影響に不安がある
オール電化のIHクッキングヒーターからは大量の電磁波が出ますが、それに対して健康への影響があるのではないかと懸念する声があります。実際に電磁波との因果関係を証明するような学説などはないのですが、電磁波が発せられると携帯電話の通話が切れてしまったりといった問題は実際にあるので、人体にも何か影響があるのではないかと考える人がいても不思議ではありません。
なぜオール電化で後悔することになってしまったのか
オール電化を導入した時にはバラ色の未来が見えていたはずですが、なぜ後悔することになってしまったのでしょうか。導入時の説明不足や理解不足もあると思いますが、導入時と事情が変わってしまったことによる後悔も少なくありません。
ここではオール電化を導入したのに光熱費が高い、後悔しているという意見の中から不可抗力といえるものについて解説します。
予想外の電気代高騰が直撃した
オール電化は、文字通り家庭内のすべてのエネルギーを電気に集約することです。そのことによって光熱費全体の削減効果が期待できるわけですが、電気代が想定を超える上昇をしてしまうと、この構図が崩れてしまいます。
どれだけ電気代が高騰しているのかは、グラフを見ても一目瞭然です。
出典:「1年半で約3,000円の値上がり!?電気代はなぜ上がっている?」(日本生命コラム)
電気代が予想を超えるような上昇をしていることは、多くの方がご存じかと思います。ロシアによるウクライナへの侵略戦争やインフレ、脱炭素シフトによる新規油田開発の縮小など原因は多岐にわたりますが、電気代が高騰する理由が当面なくなる見通しは立っておらず、今後も高騰は続くでしょう。
オール電化だけに依存していると、今後も電気代高騰の影響が直撃してしまうので、何らかの対策を講じる必要があります。
太陽光発電の買取価格が下落している
これは事前に告知されていることなので「知らなかった」というのは理解不足だと思いますが、太陽光発電と併用をしている場合の買取価格が年々下落しています。固定価格買取制度は一種の補助金のようなものですが、太陽光発電の機器価格が下がったことや、ある程度の普及が進んだことを受けて買取価格は年々低くなっています。
こちらを見ると、その下落ぶりが如実にお分かりいただけると思います。
当初は1kWhあたり48円だった買取価格が、2022年には17年になっています。ほぼ3分の1です。年々買取価格が下落していくことは理解していたとしても、こんなに急激な下落になるとは思っていなかったという人は、オール電化の電気代が高いと感じてしまうことでしょう。
エコキュートの良さが発揮されていない
先ほどエコキュートの使い方について昼間に大量のお湯を使用するとかえってコストが高くなることについて触れました。これは意外に理解が進んでいない部分で、エコキュートさえ導入すればお湯のコストが劇的に安くなると思い込んでいる人は多くいます。
しかし、エコキュートはオール電化の電機料金プランで深夜の安い電力を使うからこそ電気代の削減が可能になるものであり、この構図が崩れてしまうとかえって電気代が高くなるケースも少なくありません。
後悔しないオール電化のために必要な知識
すでにオール電化を導入した方、これからオール電化を導入する方、そのどちらも後悔はしたくないものです。予想外に電気代が高くなって後悔することのないよう、必要な3つの知識について解説します。
エコキュートを正しく使う
エコキュートを正しく利用することは、電気代の増減に直結します。深夜の電力を積極的に活用することを意識して、昼間に不必要なお湯を使い過ぎないようにしましょう。
毎日のように昼間に入浴をするような生活スタイルなのであれば、そもそもオール電化には不向きかもしれません。
太陽光発電と併用する
オール電化はそもそも、太陽光発電と併用することを前提にしています。オール電化の電機料金プランは昼間の電気代が高くなるように設定されていますが、これはその時間帯に太陽光発電からの電力供給を想定しているからです。昼間の電気代を高くしても太陽光発電でまかなうのであれば影響は少なく、太陽が出ていない夜間は安い電力を購入するのが、理想的な構図です。
そのため、オール電化の導入時には可能な限り太陽光発電との併用を検討したいところです。
生活スタイルをオール電化に合わせてみる
先ほどからエコキュートの正しい使い方について言及していますが、エコキュート以外の家電についてもできるだけ深夜に使用するようにすると電気代を安くすることができます。
洗濯や調理など、深夜にしても問題がないものであれば深夜の電力を使って済ませておくと、昼間の電力を使う量が減ります。つまり、電気代が削減され、オール電化の強みをいかすことができます。
オール電化のメリットを最大化する太陽光発電の自家消費モデル
オール電化は太陽光発電と併用することでメリットが最大化されると述べてきましたが、太陽光発電であれば何でも良いわけではありません。近年ではFIT(固定価格買取制度)が終了する時期を迎える人を中心に「卒FIT」の考え方が広がりつつあります。その答えとして自家消費モデルの太陽光発電が注目されています。
FITを前提としない仕組みなので持続性があり、半永久的に太陽光発電のメリットを享受できるので、ぜひこの仕組みを知ってオール電化の導入時には意識してください。
太陽光発電の自家消費モデルとは
太陽光発電の自家消費モデルとは、自宅で発電された電力を売電するのではなく、すべて自宅内で消費するモデルのことです。FITは固定価格による買取が保証された制度ですが、10年の時限的な措置です。10年が経過すると買取価格の保証がなくなり、一気に売電価格が下がってしまいます。
その一方で電気代は上昇し続けているので、それなら電力を安く売るよりも自宅ですべて消費したほうがオトクであるというのが、自家消費モデルのメリットです。
なぜオール電化のメリットが最大化されるのか
太陽光発電の自家消費モデルを導入すると、オール電化のメリットは最大化されます。自家消費モデルでは太陽光がない時間帯のために蓄電池を用いて電力を蓄えます。つまり電力会社から購入する電力量がさらに少なくなるので、昼間の高い電力を使用しても影響が少ないのです。
いかに電力会社からの購入分を減らすか、そこに着眼すると自家消費モデルが最強であることがお分かりいただけると思います。
災害や電気代の高騰にも強いモデル
自家消費モデルの太陽光発電は、災害や電気代の高騰にも強さを発揮します。理由は簡単で、蓄電池に余剰電力が蓄えることができるからです。
災害時に太陽光発電が活躍することはさまざまな被災地で証明済みですが、あくまでもそれは太陽光が十分にある昼間だけの話です。しかし蓄電池によって電力の自家消費モデルを確立すれば、夜間も自宅で発電した電力を使うことができます。
そしてもうひとつ、電気代がさらに高騰することがあっても自家消費モデルは電力会社からの購入分を極限まで減らすことができるため、電気代上昇による影響を最小限に抑えられます。
まとめ
オール電化を導入したものの期待通りにはならず、電気代が高いと後悔している人が意外に多くいる事実と、その理由、解決策について解説しました。今やオール電化は太陽光発電と併用してこそ真価を発揮するもので、しかも太陽光発電は自家消費モデルが理想であることを認識して、特にこれから導入を検討している方は参考にしてください。