太陽光パネルの発電量は、システムの運用者が最も注目する要素の一つです。
発電量を理解することで、エネルギーの最適な利用やパネルの適切なメンテナンス方法、さらには投資回収期間の予測につながります。しかし、発電量を正確に理解するためには、複数の要素を把握し、それらがどのように相互作用するのかを理解する必要があります。
この記事では、太陽光パネルの発電量について、基本的な計算方法から影響する要素まで詳しく解説します。
目次
太陽光パネルの発電量の基本を解説
太陽光パネルの発電量は、単一の要素だけではなく、多岐にわたる要素によって決定されます。太陽光パネルの発電量を決定する要素について詳しく解説します。
変換効率(発電効率)
太陽光パネルは、受け取った太陽エネルギーをどの程度効率良く電気に変換できるかを示す数値、エネルギー変換効率があります。この値が高いほど、高性能な太陽光パネルと言えます。高変換効率の太陽光パネルは、同一の条件下でより多くの電力を生み出します。
変換効率には、「モジュール変換効率」と「セル変換効率」の2種類が存在します。
モジュール変換効率
モジュール変換効率は、太陽光パネル全体の変換能力を示す値で、パネル性能の重要な指標です。この値は、1平方メートルあたりの太陽光パネルの変換能力を示し、以下の数式で求められます。
モジュール変換効率=(モジュール公称最大出力(W)×100)÷(モジュール面積(m2)×1000(W/m2))
セル変換効率
セル変換効率は、太陽電池パネルの最小単位、つまり一枚の太陽電池セルの変換効率を示す値です。セル変換効率は、電気抵抗の影響を受けにくいため、モジュール変換効率よりも高い数値を示すことが多いです。そのため、一部の業者はセル変換効率を強調し、製品の性能を良く見せようとすることがあるので注意が必要です。
セル変換効率は、以下の数式で求められます。
セル変換効率=出力電気エネルギー÷太陽光エネルギー×100
太陽光パネルの発電量は、これらの要素が複雑に絡み合うことで決まります。
パネル素材による変換効率の変化
太陽光パネルの素材には多種多様なものがあり、各素材によって変換効率が変動します。現在市場に流通している太陽光パネルの素材は主に「シリコン系」と「化合物系」に分類され、さらにシリコン系は「単結晶シリコン」「多結晶シリコン」「薄膜シリコン」の3種類に細分化されます。
単結晶シリコン
単結晶シリコンは、パネルの最小単位、「セル」が一つの結晶から成るタイプを指します。
他のシリコン系パネルと比べると、変換効率が高く、20%前後を誇ります。しかしこれは、製造コストも高いという欠点があることになります。
多結晶シリコン
多結晶シリコンは、小さなシリコン結晶を集めて作られます。単結晶シリコンの高コスト問題を解決するために開発された素材で、低コスト化は達成されています。ただし、その反面、変換効率は「15%前後」と単結晶シリコンに対して少し劣るものとなっています。
多結晶シリコン
小さなシリコン結晶を集めて作られるのが「多結晶シリコン」です。
単結晶シリコンのデメリットであるコストの高さを解消する目的で開発されました。低コスト化には成功しましたが、変換効率は15%前後と、単結晶シリコンに比べてやや低くなっています。
薄膜シリコン
薄膜シリコンは、その名前が示す通り薄く、軽量で折り曲げも可能な特性を持ちます。
これにより重量制限がある屋根や壁などにも取り付けが可能で、従来の太陽光パネルよりも設置の自由度が高い素材となっています。
製造に必要なシリコン量が少ないため、コストはとても低いのですが、変換効率は10%前後と一般的な住宅屋根への設置には適していません。
薄膜シリコンには、微結晶シリコンとアモルファスシリコンの2種類が存在します。
化合物系(CIS系)
CIS太陽電池とも言われる化合物系太陽電池は、「銅・インジウム・セレン」の3つの元素が化合した半導体を用いています。
シリコン系に比べて低コストで製造できることから、大量のモジュール設置が必要な産業用太陽光発電でよく採用されています。変換効率は15%前後で、多結晶シリコンとほぼ同等ですが、現在も効率の向上に向けた研究が進められています。
太陽光パネルの枚数
太陽光発電システムの発電量は、設置する太陽光パネルの枚数に直結するので、パネルの枚数が多くなるほど発電量も増大します。
その枚数に基づき、「kW」単位で表現されるシステム容量が決まります。10kW未満のシステム容量を持つものを「住宅用太陽光発電」、10kW以上を「産業用太陽光発電」と呼びます。
住宅用と産業用では、1kWhあたりの売電価格や、FIT(固定価格買取制度)の売電期間が異なります。
太陽光パネルの設置の方角と角度
太陽光パネルの発電効率は、設置方向や角度に大きく影響されます。
日本国内において、最も効率的な発電が可能な設置方角は「南向き」、そして最適な設置角度は「30度(南向きの場合)」です。
日射量(太陽光エネルギーの量)
日射量とは、一定の面積に入射する太陽光エネルギーの総量を指します。
日射量は地域によって異なるので、設置地点によって太陽光パネルの発電量も変化します。これは、太陽光発電システム設計や配置における重要なポイントになります。
日本の太陽光発電システムの発電量の考え方
続いて、日本における太陽光発電システムの発電量の計算とその考え方について解説します。
年間発電量の一般的な見積もり:1kWあたり約1000kWh
日本では、太陽光発電システムの年間発電量は一般的に、システム容量1kW当たり約1000kWhと見積もられます。ただしこれは、全国的な平均値に基づく概算であり、実際の発電量は地域や環境条件により異なります。
住宅用太陽光発電システム:3~5kWが主流
住宅用の太陽光発電システムは、システム容量が10kW未満であると規定されています。
理論上、システム容量9.9kWまでを屋根に設置することが可能ですが、屋根の面積(パネル設置可能面積)や予算などの制約から、実際の住宅用太陽光発電システムはシステム容量が3~5kWのものが一般的となっています。
太陽光発電システムの発電量の単位
太陽光発電システムの発電量を表す単位と専門用語について解説します。
kWとkWh:太陽光発電の基礎単位
太陽光発電でよく使われる基本的な単位は、kW(キロワット)とkWh(キロワットアワー)です。
kW(キロワット):瞬間的な発電力
kW(キロワット)は、太陽光パネルの瞬間的な発電能力(出力)を示します。
そして「kW(キロワット)×時間」で、実際の発電量を示す単位kWh(キロワットアワー)が導き出されます。
キロワットアワー(kWh):1時間当たりの発電量
kWh(キロワットアワー)は、「1時間あたりにどれだけのエネルギーを発電するか」を示します。例えば、「5kW」のシステムが1時間稼働すれば、「5kWh」のエネルギーが生成されます。
公称最大出力:パネル1枚あたりの発電量
公称最大出力は、太陽光パネル1枚あたりの発電能力を示す指標であり、特定の環境条件下での値を示します。この数値が高ければ、1枚あたりの発電量も多くなります。
条件としては、
JIS C 8918の基準:モジュール温度25度/分光分布AM1.5/放射照度1000W/m2
を採用します。公称最大出力は製品カタログなどに記載されていますが、以下の計算式でも出せます。
公称最大出力 = パネルの変換効率 x パネル1枚あたりの面積
日本で販売されている太陽光パネルの公称最大出力は、製造メーカーや製品種別により様々です。
システム容量:全体の発電能力
システム容量は、太陽光パネル1枚あたりの公称最大出力と設置枚数を乗じた値であり、太陽光発電システム全体の発電能力を示します。
例えば、公称最大出力が300Wのパネルを20枚設置した場合、
公称最大出力300W x 20枚 = 6kW
となり、そのシステムの容量は「6kW」となります。
太陽光発電の発電量の計算方法
ここでは、太陽光発電システムの発電量を計算する方法と、その要素について詳しく説明します。
発電量の計算方法
太陽光発電システムの1日または1年あたりの発電量は次の計算式を使って求められます。
1日の発電量 = 1日あたりの平均日射量(H)x システム容量(P)x 損失係数(K)
年間発電量(Ep) = 平均日射量(H)x システム容量(P)x 損失係数(K)x 365 ÷ 1
以下では、上記の計算式で用いる各要素について説明します。
年間発電量(Ep):1年間に生成すると予想される発電量(kWh)
平均日射量(H):設置面積に対する1日あたりの平均的な日射量
システム容量(P):設置した太陽光発電システムの総容量(kW)
損失係数(K):発電過程における損失(ロス)の度合いを表す係数で、日本では一般的に「0.85」という数値が使用されます。
この損失係数については、以下で詳しく解説します。
損失係数について
先ほど触れた損失係数(発電量を減少させる要因)について解説します。
気温(25度以上)
損失係数に関連する一つの要素は気温です。太陽光パネルの公称最大出力は、気温25度の環境下で計測されます。
したがって、気温が25度を超えると、1度ごとに発電量が約0.5%低下します。つまり、日射量が多い夏場など、高温の時期は損失係数が高まることになります。
パワーコンディショナー
パワーコンディショナーは、太陽光発電で生成した直流電力を、家庭内の電力系統と同期させるための交流電力に変換する装置です。
この直流から交流への変換プロセスにおいて、約5%のエネルギーロスが発生します。なお、ほとんどのメーカーのパワーコンディショナーは、変換効率が95%以上という高い数値を誇っています。
パネル受光面の汚れ
太陽光パネルの表面に汚れが付着すると、発電量の低下につながります。鳥の糞や落ち葉などが典型的な汚れですが、影ができることで発電量が減少します。
特に注意すべき点は、太陽光パネル上の部分的な汚れでも、そのパネルが接続されている回路全体に影響を及ぼし、全体の発電量を大幅に低下させる可能性があることです。
経年劣化
太陽光パネルの発電量は、経年劣化により10年間で2.7%、20年間で5.4%、30年間で8.1%低下するとされています。
メーカーの出力保証によれば、「10年間で公称最大出力の81%以上を保証(例:パナソニック)」など、経過年数にも関わらず一定の発電量を保証しています。ただし、上記の経年劣化の計算通りであれば、基本的に出力保証の対象となることは稀です。
さまざまな要素からなる太陽光パネルの発電量
太陽光パネルの発電量は、システム容量、日射量、そして損失係数の三つの要素から計算されます。
損失係数は、パネルの効率を影響する要因で、これには気温、パワーコンディショナの効率、パネル表面の汚れ、そして経年劣化などが含まれます。
これらの要素を把握し、適切に管理することで、太陽光発電の効率を最大化し、一定の発電量を維持することが可能となります。
ですがこれらの要素は常に一定ではなく、季節や環境、さらにはパネル自体の老朽化によって変動します。しかし、設置前にこれらの要素を考慮したシミュレーションを行うことで、発電量をほぼ正確に予測することが可能です。より精緻な見積もりやシミュレーションが必要な場合は、太陽光発電の販売・施工業者に相談するのも一手段。
太陽光の発電量を理解し、最適な利用を行うためには、これらの要素を定期的にチェックし、適切なメンテナンスを行うことが重要です。
太陽光発電のことでお困りのときは、創業30年、施工実績15,000件以上の経験豊富な弊社の「とくとくショップ」までお気軽にご相談・お問い合わせください。
太陽光発電の施工は専門性が高く、屋根工事と電気工事が連携しなければならず、経験によるノウハウが物を言います。また太陽光発電はアフターメンテナンスを必要とするため、「とくとくショップ」では、今後何十年もずっと付き合っていける会社を目指しています。