2020年4月から規模が50kW未満の発電所、いわゆる低圧発電所について全量売電ができなくなるとの制度改定がありました。50kWの低圧発電所は個人投資家や小規模投資家にとって投資案件の主流となるボリュームゾーンですが、このゾーンの発電所で全量売電ができなくなるのは投資利回りに大きな影響を与えます。
なぜ、このような制度改定があったのでしょうか。そして、太陽光発電ビジネスはどうあるべきなのでしょうか。こうした点について解説と考察をしてきましょう。
低圧発電所の全量売電ができなくなる背景
低圧発電所は規模の小ささゆえに、発電所を設置するハードルが低いのがメリットです。場所の選択肢も多くありますし、予算の面を見ても投資家が参入しやすいなどのメリットがあります。そのため今後は地域の電源として位置づけられ、最終的には自家消費に利用するべきという考え方があります。
従来の制度では低圧発電所からの電力はFITによって固定価格での買い取りが電力会社に義務付けられていたため、買取価格が高ければ投資案件としての魅力が担保されます。しかし高い価格で買い取られた電力をそのままの価格で利用者に供給していたのでは電力会社が赤字になってしまいます。そこで再生可能エネルギー発電促進賦課金という名目の料金上乗せをすることで買取費用をまかなっていました。ちなみにこの賦課金はソーラーサーチャージと呼ばれることもあります。
一見すると環境事業を推進するための優良な制度に見えますが、太陽光発電事業をしている人の利益を国民の電気料金から負担するのはいかがなものか、というのが低圧発電所の全量売電見直しの背景です。
全量発電できなくなると、どうなる?
そのため、制度改訂以降の低圧太陽光発電所は一定比率での自家消費が義務づけられます。これまで50kWの規模であっても全量売電ができたので投資案件としての魅力があったのですが、それが薄まってしまうのは必至です。
しかもこの制度改訂には経過措置がないということで、このことも業界にインパクトを与えています。経過措置とは制度の激変を緩和するために「様子見」の期間を設けたり、段階的に制度を変えていくなどの措置ですが、この制度改訂においてはその経過措置が全くないため、いきなりヨーイドンです。
結論として言えるのは、すでに50kW未満の低圧発電所を野立てで設置することはできても、それを全量売電に活用することはできないということです。
注目を集める「中古発電所」
経過措置がないのですべての低圧発電所が全量売電をできないのかというと、そんなことはありません。あくまでも2021年以降に「新規で」事業認定された太陽光発電所が対象なので、それまでに稼働している発電所は対象外です。
これが何を意味するか、お分かりでしょうか。セカンダリー市場(稼働済みの発電所を売買する市場)で取引されている既存の太陽光発電所については全量売電が引き続き可能であり、FIT期間が続く限り従来の利回りを確保できるということです。
しかも、FIT期間が終了したあとも、全量売電のスキームそのものは残るので、買取価格が引き下げられたとしても全量売電できることに変わりはありません。
こうした流れを受けて、買取価格の高い中古発電所がすでに多くの投資家から注目を集めています。これなら高い利回りが期待できるうえに、全量売電の既得権をしっかり確保できるからです。2021年はセカンダリー市場元年だという声がありますが、特に低圧発電所の世界ではその流れが一層強まることになりそうです。