エコキュートのタンクは掃除できるの?できることと注意すべきことを解説

エコキュートのタンクは掃除できるの?できることと注意すべきことを解説

エコキュートは、暖房や給湯に関する光熱費を節約する手段として広く利用され、その便益は非常に高く評価されています。しかしながら、利便性に反して課題も存在します。それは、適切なメンテナンスを怠ることができないという点です。特に貯湯タンクの状態を適切に清潔に保つことは、エコキュートの長寿命運用を確保する上で重要です。なぜなら、このタンクのメンテナンス、つまり掃除が適切でないと、予期せぬトラブルが発生する可能性があるからです。

この記事では、エコキュートの貯湯タンクをメンテナンスする際に留意すべきポイントに焦点を当て、その重要性について解説します。タンク内部の水質や気候の影響も考慮しながら、効果的な掃除方法をご紹介します。また、プロのアドバイスや、定期的なメンテナンスの利点についても触れ、清潔で順調なエコキュートの運用を維持するための手助けとなる情報を、詳細にお伝えしてまいります。

エコキュートのお湯は飲めない?

エコキュートは主に給湯に使用されるシステムであり、そのお湯は飲用目的ではなく、家庭内での洗浄や暖房などに利用されることが一般的です。これにはいくつかの理由があります。

水質の安全性確保

飲用水としてのお湯は、水道水として提供される水質基準を満たす必要があります。しかし、エコキュートのタンク内部では、水温の上昇や停滞が発生しやすく、カルキが抜けてしまい飲用水の安全性を保つのが難しいことがあります。

タンク内部の状態

エコキュートのタンク内部は、お湯を保温するための環境であり、細菌や微生物の繁殖のリスクが存在します。飲用水としての基準を満たすためには、常に高い水質基準を保つ必要があり、タンク内部の管理が複雑化し難しくなります。

専用給湯口の欠如

一般的なエコキュートの設計では、お湯を供給するための専用の飲用給湯口が備わっていないことがあります。そのため、飲用水を提供するための適切な設備が不足していることがあります。

このような理由から、エコキュートのお湯は通常は家庭内の給湯や暖房に使用され、飲用水として提供することは避けられる傾向があります。飲用水を確保するためには、別途浄水器を設置したり、水道水を煮沸消毒するなどの方法が推奨されます。

その代わり、最新のエコキュートには「飲用可」となっている商品があります。飲用のお湯だけはタンクに貯めることなく、急速に水を沸かしてお湯をつくり蛇口から出すため、安全上も問題なく利用できるというわけです。ただし、これはリアルタイムでお湯を沸かしますので、時間帯によっては電気代が割高になります。

いずれにしてもエコキュートのお湯が飲めないことと、貯湯タンク内の清掃とは直接的には関係ありません。それではなぜ貯水タンクのメンテナンスが必要なのか、そしてどのようにして掃除するのかについて見ていきましょう。

貯湯タンクの仕組み

エコキュートの貯湯タンクについて考えると、多くの人々が四角くて背の高いボックスを思い浮かべるかもしれませんが、これは貯湯タンクユニットの外見に過ぎません。実際のところ、タンクユニット内部には円筒状のタンクが収められているのです。

貯湯タンクの底部には水道水が供給され、そこから貯湯タンクに水が注がれます。この水はタンク内部を通って同じく底部にある出口へ流れ、ヒートポンプに送られます。ヒートポンプで温められたお湯は、タンクの上部から供給され、その内部に貯められます。

しかし、冷たい水と温かいお湯が混ざってしまうのではないかと心配するかもしれません。確かに、お湯と水は混ざりますが、お湯は水よりも軽いため、タンクの上部にお湯が溜まり、水は下部に蓄積されるように工夫されています。若い世代の方々はあまり知らないかもしれませんが、以前はお風呂のお湯を温めるために、浴槽の上部に熱いお湯だけが溜まるため、入浴前にかき混ぜる必要がありました。その仕組みを基にして、エコキュートが開発されたのです。

タンクの上部にお湯が貯められるため、シャワーやお風呂の給湯はタンク上部から行われます。また、お風呂の追い焚きなども、タンク上部から取り出したお湯を熱交換器に送り、そこで浴槽のお湯を温める方式です。タンク内の温度が下がったお湯は、再びタンク下部に戻り、水として再利用されます。

貯湯タンクは物理的な構造を見れば、単なる円筒です。材料としては、錆びにくい「ステンレス」が採用されています。以前のエコキュートではタンクが錆びる問題がありましたが、最新の商品ではこれらの課題はほぼ解決されています。

タンク下には不純物が溜まりやすい

貯湯タンクがステンレスで、サビがほとんど出ないのなら、なぜメンテナンスが必要なのか疑問に思うかもしれません。しかも中には水とお湯しか入らないので、汚れが溜まることはないはずですよね?

しかし、実際には貯湯タンクはどんどん汚れが溜まってしまいます。もし水道水が完全にきれいな純水であるなら、タンク内に汚れは生じません。しかし、水道水にはさまざまな添加物やミネラルが含まれています。また、自然の水は純水とは異なり、ミネラルや微生物が豊富です。

私たちが使う水道水も川の水をベースにしていて、ミネラルや細菌が含まれています。このミネラルはタンク内で蓄積されやすい成分であり、さらに殺菌効果のために塩素も入っています。このように、水道水にはいろいろな成分が混ざっています。これらの成分はお湯になる過程で固まり、タンク内の底に汚れとして残ります。水道の蛇口から出る水には目に見えるような汚れはほとんどありませんが、たまった汚れが放置されると、タンク内で固まってしまうことがあります。

さらに、貯湯タンク内のお湯や水は外部の空気と触れ合うことがないので、ヘドロ(湯垢)が発生することはないと考えられてきました。しかし、実際には使い込んだエコキュートを調べてみると、湯垢がタンク内に固まっていることがあります。

どちらの場合も、汚れはタンクの底にたまりやすいのです。だからこそ、定期的に水抜きを行っておくことで、汚れが増えるのを防ぐことができます。逆に、水抜きを怠ると、無駄な汚れが次第にたまり続けることになります。これが、貯湯タンクのメンテナンスが必要な大きな理由です。

貯湯タンクのよくあるトラブル

貯湯タンクのメンテナンスを怠るとどんなことが起きるのか。タンクのよくあるトラブル例とその原因についてご紹介します。

浴槽に黒い粉のようなゴミが溜まる

エコキュートを長く使用していると、お風呂に入ろうとする際に浴槽に黒い粉のような汚れがたまるトラブルが発生することがあります。これは、配管の接続部などに使われているパッキンが劣化し、お湯に混ざってしまったものです。この劣化は、熱や水、湿気、化学物質、そしてエコキュートの使用年数などの影響を受けます。劣化したパッキンは水漏れや正常でない動作の原因となり、劣化の兆候としては黒い粉以外にも異音などが現れることがあります。

この状態になると、パッキンを交換する必要が出てきます。しかしながら、どのパッキンが劣化しているのか判断するのは難しく、他のパッキンも同じような現象が起きる可能性が高いため、単にパッキンを交換するだけでは解決しづらいことがあります。こうした場合、新しいエコキュートへの買い替えを考えることが重要です。

エコキュートを10年以上使用している場合、寿命が近づいていることがあります。そのため、新しいエコキュートへの買い替えを検討することをおすすめします。新しいエコキュートに買い替えることで、トラブルから解放され、効率的な温水供給を維持することができます。

お湯のニオイが臭い

本来ならお湯は何のニオイもするはずがないのですが、貯湯タンクのメンテナンスをしていないと、お湯が臭くなることがあります。例えば貯湯タンクのドレン配管が、生活排水の配管とつながっている場合、そこを通じて臭いがタンク内の水についてしまうことがあります。エコキュートにおいてお湯の匂いが臭くなるトラブルは、いくつかの理由によって引き起こされます。これについて以下で説明します。

お湯の匂いが臭くなる原因の一つは、エコキュート内部のお湯が一定の温度に保たれることで、細菌が繁殖しやすい環境となることです。これにより、お湯が腐敗し、不快な臭いが発生することがあります。また、長期間の使用によりエコキュート内部やパイプ内にはセダンメントと呼ばれるミネラルや微小な粒子が蓄積されます。これが時間の経過とともに腐敗し、臭いを放つことがあります。

さらに、エコキュート内部にあるアノード(陽極)の劣化もお湯の匂いに影響を与える要因です。アノードの劣化が進むと、お湯中に金属の成分が溶け出すことがあり、これが臭いを引き起こすことがあります。地域の水質や供給水の成分の変化もお湯の臭いに影響を及ぼすことがあります。特に硫黄や鉄分が含まれる場合、お湯が臭くなることがあります。

最後に、適切なメンテナンスが行われていない場合もお湯の臭いが発生する可能性があります。エコキュートの内部やパイプの清掃や点検が怠られると、異物や汚れがお湯に混ざり、臭いの原因となることがあります。これらの要因が組み合わさって、エコキュートのお湯が臭くなるトラブルが生じることがあります。水がもったいなくても一度、すべての水を排水し、空っぽにしてから再稼働させましょう。

浴槽やタオルが青く変色する

エコキュートを使用している際に、浴槽やタオルが青く変色する現象は、特定の条件が重なることで起こることがあります。この青変色の原因は、エコキュート内部の材料や配管に含まれる微量の銅が、お湯と反応して微細な銅イオンを水に溶かすことによるものです。この銅イオンが、水や湿った物質と接触することで青色の化合物を形成し、浴槽やタオルが変色することがあります。

また、水のpH値も青変色に影響を与えます。水が酸性である場合、銅の溶解が促進され、銅イオンの生成が増加する可能性があります。さらに、高温環境下では物質の反応が活発になるため、エコキュート内部の高温お湯が銅イオンの溶解や反応を促進する要因となることも考えられます。ただし、この青変色はごく微量の銅イオンが関与するため、健康への影響は通常はありません。

しばらくすると落ち着くと思いますので、それまではこまめに汚れをこすり落とすようにしましょう。放置すると取れなくなってしまうこともあります。

断水後にお湯が濁ってしまう

配管工事などで一時的に断水することがまれにありますが、断水解除後にそのままエコキュートを動かすと、シャワーのお湯などが白濁することがあります。一つ目の原因は、断水中に水道管内に蓄積されていた微細な粒子やミネラルが動き出し、再び水が通水される際にエコキュートのお湯に混ざることです。これによってお湯が濁ることがあります。

また、断水によって水道管内に空気が入り込むことも考えられます。この空気が再通水される際にエコキュート内部に入り込むことで、お湯の濁りを引き起こす可能性があります。さらに、水道管内の微細な汚れや錆が断水後に再び流れ出て、エコキュート内部に入ることで濁りが生じることもあります。エコキュート内部の循環ポンプが動作している場合にも、断水と再通水が行われると水が急速に循環し、内部の物質がかき混ぜられることがあります。また、水の流れが急激に変化する際にも、エコキュート内部の物質がかき混ぜられてお湯が濁ることがあります。すでに給水してしまった場合は、もったいないですがタンク内の水とお湯をすべて抜いてください。通常、時間の経過とともに濁りは解消されることが多いですが、対策としては断水中にエコキュートの「給水配管専用止水栓」を閉じておきましょう。断水が終わったら、洗面所などの蛇口から白濁が収まるまで流し続けてください。白濁がなくなったのを確認したら、「給水配管専用止水栓」を開けてエコキュートの使用を再開しましょう。

タンクの水抜きの方法

タンクのメンテナンスの基本は水抜きです。ただ水を抜くだけではなく、タンク下部に貯まった汚れを水と一緒に取り除くことを目的としています。メーカーによって多少水抜きの手順は変わりますが、一般的な手順についてご紹介します。具体的な操作手順は製品やメーカーによって異なる場合があるため、エコキュートの取扱説明書を必ず確認してください。

  1. 電源を切る
    エコキュートの電源を完全に切断します。電源を切ることで、安全に作業を行うことができます。
  2. 給湯停止
    エコキュートの給湯機能を停止します。これによって新しいお湯がタンクに供給されないようにします。
  3. 排水栓の開放
    エコキュートのタンクには排水栓(ドレン)が備わっています。通常、タンクの底部に位置しています。排水栓を手で緩めて、水が流れ出るようにします。
  4. 排水ホースの設置
    タンクから水が流れ出るようにするために、排水栓から出る水を受けるための容器やホースを設置します。これによって水が床などに流れないようにします。
  5. 排水栓を緩める
    排水栓をゆっくりと緩め、タンク内の水を徐々に排水します。急に緩めると水が勢いよく出ることがあるため、注意が必要です。
  6. 完全に排水
    タンク内の水が完全に排水されるまで待ちます。水がほとんど流れなくなったら、排水栓をしっかりと閉めます。
  7. 給湯再開
    排水作業が完了したら、給湯機能を再開し、新しいお湯がタンクに供給されるようにします。
  8. 電源を入れる
    最後に、エコキュートの電源を再び入れて動作させます。
  9. お湯が出ることを確認する

基本的な手順は次の通りです。最初に、漏電遮断器を切断し、それから給水を止めるために給水配管の専用止水栓を閉めます。逃し弁を開放する理由は、空気が入る余地を残すことで、タンク内の水を排水してもタンク内が真空状態にならないようにするためです。水を抜いたら、後は逆の手順で元に戻すだけです。この保守作業は年に2~3回行うことをお勧めします。冬季の水抜きは非常に手間がかかるため、冬以外の時期に水抜きを行うことをおすすめします。

タンクの掃除方法

エコキュートは、内部に手を入れることが難しい構造になっています。そのため、浴槽のようにブラシなどを使用して掃除することはできません。水抜きだけでもある程度の汚れは取り除けますが、タンク壁面のぬめりなどは水抜きだけでは完全には落とせません。

配管の場合、洗剤を使用して汚れを落とすことができますが、タンク内部は非常に広いため、洗剤の効果は限られます。素人が無理に汚れを落とそうとしても、エコキュートを損傷する可能性があります。タンクのメンテナンスとしては、水抜きのみを行うことをお勧めします。

汚れがひどい場合は業者に依頼

何度水抜きをしても汚れがまったく落ちないというような場合は、専門業者に依頼することをおすすめします。専門業者はエコキュートの内部構造やメンテナンス方法に豊富な知識と経験を持ち、適切な道具と洗剤を使って最適な清掃を行います。素人が手を入れることでダメージを与えるリスクを避けるためにも、専門業者のサービスを利用することが安全です。業者は効率的に作業を行い、エコキュートの長寿命化やトラブル予防に貢献します。清掃作業の際には、専門業者に依頼することで安心してエコキュートを維持することができます。ただし、タンク内部は視覚で確認できないため、実際の汚れの程度が分かりません。このため、詐欺的な営業を行う会社も存在します。特に訪問営業を行う業者の中には、そのような実態を持つものが多いです。信頼性のある業者は訪問営業を行わない傾向があり、清掃の依頼を慎重に検討する必要があります。

汚れの原因は貯湯タンクに限らず、ヒートポンプの配管などにも及びます。費用はかかるかもしれませんが、清掃を行うならば一度に全体をまとめて行うことをおすすめします。専門業者による汚れの除去は、安心感をもたらすかもしれませんが、それだけで満足せず、日々のメンテナンスの重要性を忘れないようにしましょう。適切なメンテナンスを行えば、エコキュートは長く正常に機能するでしょう。業者に依頼する際も無駄な出費にならないよう考慮し、業者による清掃後は定期的なメンテナンスをしっかりと続けてください。

まとめ

エコキュートは非常に実用的な装置ですが、長期間にわたってトラブルなく使用し続けるためには、適切なメンテナンスが欠かせないことを理解していただけるでしょう。理想的には、自動メンテナンス機能を備えたエコキュートが登場するかもしれませんが、現在の段階では手動メンテナンスが必要です。将来的には、自動メンテナンスを行うエコキュートも現れる可能性がありますが、今のところは年に2~3回の水抜きを適切に行うことが大切です。

貯湯タンク内部は完全に封じられた空間であり、ブラシなどでの汚れ落としはできません。個人ができる清掃方法は水抜きのみです。もし水抜きだけでは汚れが取り除けない場合は、専門の清掃業者に依頼することを検討してください。

貯湯タンクの清掃を行う業者は数多く存在しますが、訪問営業を行っている業者の中には詐欺的な悪質な業者もあります。タンク内部が視覚的に確認できないため、適当な言葉で高額な清掃料金を請求する業者がいます。清掃を依頼する際には、信頼性のある専門業者に依頼することをお勧めします。また、タンクの清掃を頼む際には、貯湯タンクだけでなく配管なども一緒に清掃してもらうことが重要です。

さらに、エコキュートを設置してから10年以上経過している場合、寿命が近づいている可能性があります。この場合、清掃よりも新しいエコキュートへの交換を検討することも視野に入れるべきかもしれません。無駄に感じるかもしれませんが、将来的に不具合が増える可能性があるため、買い替えを考慮することをおすすめします。

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