これから太陽光発電、もしくは蓄電池を導入しようとしている方にとって、ハイブリッド蓄電池はひとつの選択肢でしょう。販売店や施工店から、「導入するならハイブリッド蓄電池がおすすめ」と提案された方もいると思います。
そこで当記事では、ハイブリッド蓄電池の基本からメリットやデメリット、さらにハイブリッド蓄電池を導入するべきかどうか迷っている方にアドバイスをしたいと思います。
ハイブリッド蓄電池の基礎知識
最初に、ハイブリッド蓄電池の基本をマスターしておきましょう。ハイブリッド蓄電池とは何か、他の蓄電池とは何が違うのかといった比較も含めて解説します。
ハイブリッド蓄電池とは
ハイブリッドとは「2つの」という意味の英単語です。ハイブリッド蓄電池は1台の機械ですが、内蔵されているパワーコンディショナーが「2つの」機能をこなします。
電流には直流と交流があることは多くの方がすでにご存じだと思いますが、そのうち家庭用のコンセントから流れてくるのは交流です。そして太陽光パネルで生み出される電力は、直流です。
太陽光発電システムでは太陽光パネルとパワーコンディショナーが組み合わせられます。太陽光パネルでは直流の電気が生み出され、それを家庭用で使用できるようにパワーコンディショナーが交流へと変換します。
太陽光発電と蓄電池を設置する場合、太陽光発電由来の電力は直流、そして家庭用電源から供給される電力は交流です。この2つの異なる電流を1台で制御するのが、ハイブリッド蓄電池です。
ハイブリッド蓄電池の基本構成
ハイブリッド蓄電池には、パワーコンディショナーとバッテリーが内蔵されています。そしてパワーコンディショナーは直流と交流両方の電流に対応していて、それぞれの「交通整理」をしています。
ハイブリッド蓄電池でない場合は、これらの装置を別々に設置する必要があります。それだと非効率ですし、後述しますが変換ロスなどの損失にもつながります。
ハイブリッド蓄電池は太陽光発電と蓄電池をセットで家庭に導入する場合、とても効率の良い機器であるということです。
なぜ、ハイブリッド蓄電池が推奨されているのか
販売店や施工店に提案を求めると、多くの場合においてハイブリッド蓄電池を勧められると思います。もちろん業者にとっての売り上げが多くなるので提案したくなる気持ちもあると思いますが、それ以外にもハイブリッド蓄電池にはメリットがあるからです。
詳しくはメリットの章で解説しますが、従来型の蓄電池だとパワーコンディショナーを2台設置する必要があり、とても非効率です。
これから太陽光発電と蓄電池を新規で導入するのであればハイブリッド蓄電池を選択するべきなのは明白で、それを踏まえて販売店や施工店が提案していると考えて問題ありません。
3種類ある蓄電池
当記事ではハイブリッド蓄電池について解説していますが、家庭用として導入できる蓄電池には主に3つの種類があります。その違いを知っておくために、3つの種類について簡単に紹介しておきたいと思います。
1. ハイブリッド蓄電池
直流と交流、両方の電流に対応している蓄電池です。太陽光発電用と家庭電源用のパワーコンディショナー、2台分の機能を兼用してくれる機能があることが最大の特徴です。
2. 単機能型蓄電池
いわゆる従来型の蓄電池です。家庭用の電源は交流電源なので、単機能型蓄電池は交流電源にのみ対応している蓄電池です。しかしながら、ここで知っていただきたいのは「交流で蓄電できるバッテリーは存在しない」という事実です。
これは意外に知られていないのですが、現在普及している蓄電池はすべて直流にしか対応していません。つまり、交流で供給される電力を直流に変換して蓄電し、電力使用時には逆に直流から交流に戻して供給する仕組みになっています。
これだけを見ているととても非効率なことをやっているように見えますが、交流で蓄電できるバッテリーが存在しないため、現在もすべての蓄電池が同様の仕組みになっています。
3. ドライブリッド蓄電池
ハイブリッドが「2つの」という意味であるのに対して、トライブリッドは「3つの」という意味です。太陽光発電と家庭用電源の2つに対応しているのがハイブリッドであるのに加えて、3つ目はEV(電気自動車)です。EVを導入している家庭では敷地内にEVの充電スタンドを設置することになりますが、その場合はトライブリッド蓄電池を設置することにより、太陽光発電と家庭用電源の両方からEVへの充電が可能になります。
太陽光発電による充電比率を高めれば、EVの燃料コストを削減することができるため経済的メリットが高く、さらに昨今叫ばれているSDGsやRE100といった環境目標や基準を満たせるとして注目を集めています。
ハイブリッド蓄電池のメリット
ハイブリッド蓄電池を選択することで考えられるメリットは、主に4つあります。
電力の変換効率が高くなる(変換ロスが減る)
直流から交流、もしくは交流から直流へと電流の変換を行うのがパワーコンディショナーの役割です。そのことについてはすでに述べたとおりですが、この電流の変換時には一定の変換ロスが発生します。
これは単機能型蓄電池でも同様で、家庭用電源からバッテリーへと送電をする際に電流の変換を行い、この際に1割程度の変換ロスが発生します。電気料金は100%分を支払っているのに、実際に使えるのは90%程度の電力ということになります。
これは逆に太陽光パネルで発生した直流の電気を交流に変換する際であっても同様で、やはり1割から2割程度の変換ロスが発生します。パワーコンディショナーの台数が多い、つまり直流や交流の変換をする回数が多くなるほど変換ロスによる損失が大きくなるため、これを抑えるには1台のパワーコンディショナーで両方をこなすことができるハイブリッド蓄電池が有利というわけです。
停電時に太陽光発電のメリットを最大化できる
これはよく知られたことかもしれませんが、太陽光発電と蓄電池を併用すると災害などで停電が発生した時に威力を発揮します。蓄電池がなくても太陽光発電があれば昼間の太陽が出ている時間帯は自立運転モードで電力が使えるとして注目を集めましたが、夜間や悪天候の日にはその威力を発揮することができません。
その点、蓄電池があれば昼間に電力を貯めておいて夜間に使うといったことも可能になります。これが太陽光発電+蓄電池の災害リスク対策として何度も注目されてきたわけですが、この場合の蓄電池をハイブリッド蓄電池にするとより多くの電力を使えるようになります。
その理由は、最大出力です。太陽光発電の自立運転モードには、上限があります。多くの太陽光パネルを設置して出力の高いパワーコンディショナーを組み合わせれば上限を引き上げることができますが、それだとコストも高くなってしまいます。一般的な太陽光発電システムでは上限が1,500W程度なので、これを超える家電を使うことはできません。
単機能型蓄電池についても同様で、家庭用の場合はおおむね1,500Wがひとつの目安になっています。
以下は、主な家電の消費電力目安です。
家電名 | 消費電力の目安 |
---|---|
電子レンジ | 1,300W |
オーブントースター | 1,300W |
ホットプレート | 1,300W |
電気ケトル | 800W |
食器洗浄機 | 1,200W |
洗濯機 | 700W |
掃除機 | 1,000W |
エアコン(冷房) | 1,500W |
ヘアドライヤー | 1,000W |
こたつ | 700W |
冷蔵庫 | 400W |
いかがでしょうか。パソコンやゲーム機、ビデオ関連などの機器は消費電力が少ないのであまり影響がないため、省きました。ここでは家電のなかでも電力消費量の多いものを集めたので、「こんなに高いのか」と思った方もいると思います。
1,500Wという上限のなかでこれらの家電を同時に使うとなると、かなり制約があることが分かります。
ハイブリッド蓄電池にはパワーコンディショナー2台分の能力があるため、太陽光発電からの電力を使いながら蓄電池に充電することができますし、必要に応じて太陽光発電と蓄電池の両方から電力を供給することもできます。しかもその合計出力はかなり高めで、4,000W以上を使えるものが大半です。出力が大きいものだと6,000Wを超えるものもあるため、これらの能力があれば上記の家電を同時に使える可能性が広がります。
併用導入するのであればハイブリッド蓄電池のほうが低コスト
太陽光発電と蓄電池をゼロの状態から導入するのであれば、ハイブリッド蓄電池のほうが相対的に低コストです。すでに太陽光発電を導入しているのであれば2台のパワーコンディショナーを併用するパターンが多くなると思いますが、すべてがこれからの場合は1台2役をこなしてくれるハイブリッド蓄電池のほうが低コストになります。
既存の太陽光発電がある場合は保証が更新される
すでに太陽光発電を導入しており、そこに後付けでハイブリッド蓄電池を設置する場合は、既存のパワーコンディショナーを交換する必要があります。この場合、すでにパワーコンディショナーの設置から10年以上が経過しているとメーカー保証が満了している可能性が高いでしょう。その状態で使い続けると故障発生時に自腹で修理をすることになりかねませんが、そこにハイブリッド蓄電池を導入すれば保証が更新され、新たに保証を受けることができます。
ハイブリッド蓄電池の保証期間はおおむね10年から15年なので、機器の更新とともに保証期間も更新されるのはメリットのひとつです。
ハイブリッド蓄電池のデメリット
メリットの次には、ハイブリッド蓄電池を導入することによって考えられるデメリットについても解説しましょう。考えられるデメリットは4つあります。
単機能型蓄電池よりもコストがかさむ
1台で2役をこなしてくれる機器だけに、ハイブリッド蓄電池は単機能型蓄電池よりも価格が高くなります。価格はおおむね20万円程度からですが、容量の大きなモデルになると50万円を超えることもあります。機器の購入代金は導入時や寿命到来時などめったにないことですし、そのコストを負担してでもメリットのほうが大きいのであれば問題はありませんが、「できるだけコストを抑えたい」というニーズがある場合は、単機能型蓄電池に劣る選択肢となります。
ただし、2台のパワーコンディショナーを設置することを考えると割安なので、一概に「高い」と言い切れない部分もあります。太陽光発電との兼ね合いでどんなプランにするかによって割高、割安の判断が分かれるため、販売店や施工店と入念に打ち合わせをして決めるのが良いでしょう。
太陽光発電を先行して導入している場合はパワーコンディショナーを交換する必要がある
すでに太陽光発電を導入している状況でハイブリッド蓄電を導入する場合は、パワーコンディショナーを交換する必要があります。なぜなら、新たに設置するハイブリッド蓄電池には直流用の変換機能があるため、そちらに集約する必要があるからです。直流の電気を流してさらに直流に変換する工程は不必要です。
そのため、太陽光発電システムに既存のパワーコンディショナーが設置されている場合は、無理にそのシステムを変更するとかえって高コストになることがあります。ちょうど既存のパワーコンディショナーが寿命を迎えて交換時期になっているのであればいい機会だと思いますが、そうでない場合は既存のパワーコンディショナーが交換時期を迎えるのを待つのもひとつの手だと思います。
太陽光発電の規格によっては連携できないことも
太陽光発電とハイブリッド蓄電池を同時に導入する場合は考える必要のないことですが、太陽光発電の規格とハイブリッド蓄電池の規格に互換性がないと、両者を連携できない可能性があります。
同じメーカーのものを揃えれば起きにくい問題ですが、後付けによってハイブリッド蓄電池を設置する場合は、販売店や施工店にしっかり確認するようにしましょう。
メーカー保証が受けられなくなる可能性がある
太陽光発電システムに対する保証は、「システム全体に対する保証」であることが一般的です。この「システム全体」というのは、太陽光パネルやそれを固定するための架台、そしてパワーコンディショナー、あとは各種ケーブル類などです。これら一式に対する保証なので、システムに何らかの変更があると保証の対象外になるケースが大半です。
先ほど、ハイブリッド蓄電池を導入するためには既存のパワーコンディショナーを交換する必要があると述べました。このことによって太陽光発電システムの構成が変わってしまうため、保証の対象外となる可能性大です。
保証の維持を優先するのであれば、既存のパワーコンディショナーが保証期間を満了するまで待つのが確実です。
まとめ
ハイブリッド蓄電池についての基本やメリット、デメリットについて解説しました。これから導入を検討している方にとってはとても重要な情報ばかりなので、検討時の参考にしてください。
コストが高くなることをデメリットに挙げましたが、長い目で見るとメリットのほうが大きいため、これから新たに太陽光発電と蓄電池を設置する方は特に、ハイブリッド蓄電池を検討することをおすすめします。
和上ホールディングスでは、蓄電池に関して豊富な販売実績と施工件数を誇っております。特に、太陽光発電と蓄電池をセットで購入することで、よりお得に設置できるため、蓄電池のご利用や導入をお考えの方は、お気軽にお問い合わせください。
和上ホールディングスでは、蓄電池との同時見積りも可能であり、相場を知り適正価格を見極めるためにもぜひご利用ください。
また、太陽光発電と蓄電池をセットで購入することで、よりお得に設置できるため、ぜひ検討していただくことをおすすめします。