蓄電池の価格は今後上がる?下がる?メーカーの動向から分析

蓄電池の価格は今後上がる?下がる?メーカーの動向から分析

今回は、近年その需要がどんどん高くなっていると言われる家庭用蓄電池について、今後、家庭用蓄電池の導入にかかる費用が「上がっていくのか?」または「下がっていくのか?」という推移について考えてみたいと思います。

ここ数年、全国各地で頻発する自然災害のこともあり、万一の災害で大規模停電が発生した時の備えとして家庭用蓄電池への注目度が高くなっています。さらに2019年以降は、固定価格買取制度が終了してしまうご家庭が急増するため、今までのような売電収入が得られなくなり、太陽光発電で作った電気を売電するのではなく、自家消費に回した方が得になるのではないか?という考えからも、蓄電池の需要が急速に伸びているのです。

しかし、家庭用蓄電池は、まだまだ誰でも手軽に導入できるといったような安い設備ではなく、導入のためにそれなりのコストがかかってしまうということがネックとなっています。最近では、家庭用蓄電池の開発・販売に参入するメーカーも増加してきたため、徐々に蓄電池本体の価格が下がってきてはいるのですが、それでもそれなりの蓄電容量を持つ機種を導入しようと思えば、設置工事費用を含めて100万円以上かかるのが一般的です。

したがって、弊社に蓄電池の導入をご相談する方の中でも「メーカーも増えて今後もっと蓄電池は安くなるだろうから、もう少し待った方がいいのかな?」といった質問を受けることも少なくありません。確かに、近年の蓄電池の需要の高さから、メーカー側が大量生産に走って、現在よりも蓄電池の価格が下落するのではと予想するのは分かります。しかし、蓄電池を取り巻く状況はそんなに単純なものではないようです。

そこで今回は、蓄電池の価格下落を予想して、導入を躊躇している方のために、プロが考える導入のタイミングをご紹介します。

家庭用蓄電池の価格は今後下がるのか?

家庭用蓄電池の価格は今後下がるのか?

それでは、家庭用蓄電池の価格動向についてご紹介していきましょう。そもそも「家庭用蓄電池の価格が今後下落するのでは?」という予想をしている方が多いのは、太陽光発電設備の価格動向の記憶があるからではないでしょうか。

太陽光発電システムに関しても、販売開始当初は、非常に高額な設備だったのは皆さんも記憶に新しいのではないでしょうか。太陽光発電設備に関しては、再生可能エネルギーの普及を政府が目指していたため、固定価格買取制度などが整備され、一般住宅でも導入しやすい設備となったというのがここまで普及した理由なのでしょうが、そもそもの導入コストも大幅に下落したという側面もあるのです。例えば、「容量5kwの太陽光発電を導入する」と考えた場合、固定価格買取制度がスタートした2012年では約230万円の導入コストがかかっていたものが、2018年には約140万円で導入できるまで価格が下落しているのです。

こう考えると、家庭用蓄電池に関しても、需要がどんどん高くなり、普及が進めば「導入コストも安くなるのでは?」と考えてしまうのも理解できます。果たして、家庭用蓄電池の価格は、太陽光発電システム同様の価格推移をしていくものなのでしょうか?以下でもう少し詳しくみていきましょう。

家庭用蓄電池の価格はこれ以上下がらない!?

結論からご紹介しますが、多くのメーカーの予想では『今後、これ以上家庭用蓄電池の価格は下がらない』と言われています。非常に残念な話なのですが、これは、家庭用蓄電池業界だけではなく、他の業界の動向も関係しているからなのです。

現在、さまざまなメーカーが開発を進めている家庭用蓄電池ですが、この蓄電池の心臓部分にあたるのは『リチウムイオン電池』です。つい先日、リチウムイオン電池の父といわれる吉野彰氏がノーベル賞を受賞したことから一気にその知名度が上がったため、「最近になって登場した技術なのだ」と考える人もいるかもしれません。しかし、リチウムイオン電池の歴史は長く、実は非常に幅広い業界で利用されているものなのです。例えば、皆さんが肌身離さず持っている携帯電話にも利用されていますし、ポータブルPCや電気自動車などでもリチウムイオン電池が利用されています。

このリチウムイオン電池は、レアメタルと言われる「コバルト・リン酸鉄」などが原料となっており、そもそもの希少価値が高いうえに、さまざまな業界でリチウムイオン電池の需要の高まりから完全な需要過多に陥っていると言われているのです。それにより、現状、リチウムイオン電池の原料の価格が高騰し、家庭用蓄電池のメーカーも確保するのが難しいのが現状と言われているのです。

出典:富士経済「リチウムイオン二次電池世界市場を調査

上の画像は、総合マーケティングビジネスの株式会社富士経済が行った、リチウムイオン二次電池の世界市場を調査したデータです。これからも分かるように、現在リチウムイオン電池は、右肩上がりで需要が高まっており、その原材料はさまざまな業界で奪い合いになっているわけです。また、リチウムイオン蓄電池の1kWhあたりの価格がここ10年間で約半分にまで下がっています。蓄電池の開発技術が上がっていることや価格競争の高まりが右肩上がりの理由だと考えられます。

出典:経済産業省「統計表一覧」

つまり、リチウムイオン電池を作るために必要不可欠となる原材料が、今後価格が下落する見通しは一切なく、上がっていくことも考えられているのが現状なのです。リチウムイオン電池は、原材料が本体価格の30%程度を占めると言われていますので、ここが下がらない(最悪の場合上昇する)と予測されている現在では、現状の蓄電池の価格が下がる見通しは立たないという結論になるのです。

今後の家庭用蓄電池に関しては、現状の価格帯で推移すると予測されていますが、多くのメーカーがさらなる開発を進めています。したがって、現状と同じ価格であっても、蓄電容量やサイクル回数、AI機能との連携など、スペック自体が上がっていき、付加価値が強化される方向で動いていくのではないかと考えられます。

蓄電池の導入は待った方が良いのか?

蓄電池の導入は待った方が良いのか?

ここまでの説明で、家庭用蓄電池の価格については、今後大幅に下落していくことはないと予想できることが分かりました。しかし、数多くのメーカーが開発に参入しているため、蓄電池自体のスペックはまだまだ上昇していくと考えられます。こう聞くと、「しばらく待ってから蓄電池の導入をした方が良いのかな?」と考えてしまう人が多いかもしれませんね。

しかし、「お得に蓄電池の導入をしたい」と考える場合、安易に蓄電池の導入を先延ばしにするのはあまりオススメできません。なぜかと言うと、家庭用蓄電池は、災害対策や省エネ対策に非常に有効な設備と考えられているため、日本政府が普及推進に力を入れているからです。つまり、今のうちに家庭用蓄電池の導入を進めておけば、政府が整備している補助金制度を活用することができるというメリットがあるのです。

こういった省エネ関連の設備は、蓄電池以外にもさまざまなものがあり、設備ごとに補助金制度が作られるのが一般的です。例えば、太陽光発電でも、給湯システムのエコキュートなどでも、導入にかかるコストの一部を補助してくれる補助金は整備されていて、補助金を利用すればかなりお得に導入することができていたのです。

しかし、こういった補助金は、対象となる設備の普及を促すために作られているため、一定の普及率に到達すれば補助金制度自体が無くなってしまうのです。エコキュートなどでも同じですが、地方自治体が行う補助金はまだ残っている場所もあるのですが、日本政府が行っていた補助金はすでになくなっています。当然家庭用蓄電池も、いつまでも補助金制度が使えるわけではありませんので、導入を検討している方であれば、ある程度蓄電池の価格が底をついたと考えられるうえ、豊富な補助金を利用できる今がベストタイミングといえるかもしれません。

まとめ

まとめ

今回は、蓄電池の導入を検討している方が非常に気になる「今後蓄電池の価格動向はどうなるのか?」についてご紹介しました。この記事でご紹介したように、家庭用蓄電池業界で主流となっているリチウムイオン電池は、他の業界でも非常に高い需要があるため、原材料の奪い合いが発生しており、今後大幅に価格が下落することはないと予測されています。

消費者からすれば、非常に残念なことに思えますが、メーカーの開発はどんどん進んでいるため、同じ価格でも蓄電池の性能に関してはまだまだ上がっていくと予想できます。しかし、こういった技術的な進化は、いつまでたっても終わらないものですので、機能的な面で導入タイミングを計るのはあまり現実的ではないのではないかと思います。特に、家庭用蓄電池は、あと数年のうちに補助金制度が無くなってしまう可能性があるため、導入タイミングを計っているうちに「補助金がなくなってしまった」なんてことになりかねないのです。

家庭用蓄電池は、「いつ・どこで」発生するか誰も予測できない自然災害から家族を守ってくれる設備となりますので、豊富な補助金を活用できる可能性があるうちに導入しておくのがオススメです。

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