太陽光発電の売電価格は、年々下落傾向で更新されています。産業用太陽光発電の売電価格も同様の傾向で、なおかつ売電方法に関する変更点もあり注意が必要です。
そこで今回は、産業用太陽光発電の売電価格と売電方法に関する注意点、今後の展望について詳しくご紹介します。産業用太陽光発電を始めるか悩んでいる方などは、参考にしてみてください。
産業用太陽光発電の売電価格推移
産業用太陽光発電とは、出力10kW以上の太陽光発電全般を指します。メガソーラーは、出力1MW以上の太陽光発電で、産業用太陽光発電の一種です。
産業用太陽光発電は、FIT制度の承認によって固定買取価格を適用してもらえます。しかし、FIT申請年で固定買取価格が変わるため、注意も必要です。
それでは、産業用太陽光発電の売電価格を確認していきます。
2021年度までの売電価格
FIT制度がスタートしたのは、2012年です。以降2013年、2014年と毎年売電価格は更新されています。固定買取期間に関しては、制度開始以降20年間から変更点などありません。
以下に産業用太陽光発電の売電価格(固定買取価格)を紹介します。
2012年度 | 1kWhにつき40円:固定買取期間20年間 |
2013年度 | 1kWhにつき36円:固定買取期間20年間 |
2014年度 | 1kWhにつき32円:固定買取期間20年間 |
2015年度 | “2015年4月1日~6月30日、1kWhにつき29円:固定買取期間20年間 2015年7月1日~、1kWhにつき27円:固定買取期間20年間” |
2016年度 | 1kWhにつき24円:固定買取期間20年間 |
2017年度 | 10kW以上2,000kW未満、1kWhにつき21円:固定買取期間20年間 2,000kW以上、入札制度により決定 |
2018年度 | 10kW以上2,000kW未満、1kWhにつき18円:固定買取期間20年間 2,000kW以上、入札制度により決定 |
2019年度 | 10kW以上500kW未満、1kWhにつき14円:固定買取期間20年間 500kW以上、入札制度により決定 |
2020年度 | 10kW以上50kW未満、1kWhにつき13円:固定買取期間20年間 50kW以上250kW未満、1kWhにつき12円:固定買取期間20年間 250kW以上、入札制度により決定 |
2021年度 | 10kW以上50kW未満、1kWhにつき12円:固定買取期間20年間 50kW以上250kW未満、1kWhにつき11円:固定買取期間20年間 250kW以上、入札制度により決定 |
制度発足当初は、1kWhにつき40円の高い単価で売電を始めることができました。その後は、数円ずつ下落していき半額以下で推移しています。
売電単価の設定方法は、2017年度より変更されているのも特徴的です。2017年以降は、出力によって売電単価が変わり、なおかつ一定の出力を持つ太陽光発電は入札制度で決定されています。
入札制度とは、上限価格の範囲内で任意の売電単価を提示し、落札されれば20年間固定価格で売電を行える制度のことです。
2022年度以降の売電価格
2022年度の売電価格は、10kW以上50kW未満で1kWhにつき11円、50kW以上1,000kW未満で1kWhにつき10円とさらに下落していきます。
出力1,000kW以上のメガソーラークラスは、FIP制度の対象です。また、50kW以上1,000kW未満の太陽光発電もFIP制度を選択できます。
FIP制度は、2022年4月よりスタート予定の新制度です。売電価格は、市場と連動した価格と独自に上乗せされたプレミアム価格を組み合わせたものです。また、電力需要の多い時間帯に売電か価格が上昇し、少ない時間帯に下落します。
産業用太陽光発電投資を始める方は、FIP制度についても適宜確認していくのが重要です。
固定買取期間終了後は太陽光発電で売電できなくなる?
産業用太陽光発電の売電価格を確認できたあとは、固定期間終了後の売電価格と状況についても確認してみます。
固定買取期間終了後は売電できないケースもあるため、出口戦略や売電以外の方法も検討してみると幅広く運用できます。
電力会社側で電力買取を行っていれば売電可能
固定買取期間終了後も電力会社が、再生可能エネルギーで発電した電気の買取サービスを実施していれば、引き続き売電収入を得られます。
2021年時点でいくつかの電力会社は、固定買取期間終了後の太陽光発電設備で発電された電気も買い取っています。たとえば東北電力のツナガルでんきでは、買取サービスの他、蓄電池のリースを含めたプラン、電気を一旦預かってもらい遠方の家族へ送ったり再度自身で利用したりできるプランなど、便利なプランを複数提供しているのが特長です。
2021年時点の市場価格
固定買取期間終了後の売電価格は、電力会社によって異なります。
以下に大手電力会社10社の主な電力買取プラン、売電価格を紹介します。
北海道電力 | 買取プラン:1kWhにつき8円 |
東北電力 | ツナガルでんき:1kWhにつき9円 |
東京電力 | 再エネ買取標準プラン:1kWhにつき8.5円 |
北陸電力 | あんしん年間定額プラン:需給電力および年間の余剰電力量から買取料金を一括払い(1年に1回) |
中部電力 | プレミアムプラン:1kWhにつき8円 |
関西電力 | プラン名なし:1kWhにつき8円 |
中国電力 | プラン名なし:1kWhにつき7.15円 |
四国電力 | プラン名なし:1kWhにつき7円 |
九州電力 | プラン名なし:1kWhにつき7円 |
沖縄電力 | プラン名なし:1kWhにつき7.7円 |
新電力会社の中には、太陽光発電の電力買取サービスを提供している会社もあります。たとえば、ENEOSの太陽光買取サービスでは、1kWhにつき8~11円の範囲で買い取ってもらえます。(設置地域で売電価格が変わる)
2021年時点では、住宅用太陽光発電向けの買取プランのみ提供されている状況です。なぜなら住宅用太陽光発電の固定買取期間は10年間で、産業用太陽光発電よりも先に終了してしまうためです。
そして、上記の住宅用太陽光発電向けのプランを見ても分かりますが、どのプランも1kWhにつき10円未満の売電価格です。四国電力と九州電力の売電価格は、7円と特に安く設定されています。
維持管理費用は、経済産業省「調達価格等算定委員会」の資料によると1kW5,000円です。出力10kWでは、年間5万円前後の維持管理費用を負担します。
売電価格7円の売電収入は、出力10kWで年間68,000円程度なので、維持管理費用を差し引いても年間20,000円弱の黒字化を見込めます。
今後売電価格7円を下回った場合は、より黒字化の難しい状況となる可能性があります。
買取を解除された場合は無償送電もしくは送電不可
電力の買取契約を解除されたり固定買取期間終了後に買取サービスの申込を忘れていたりした場合は、太陽光発電で発電した電気を送電できない場合もあります。
買取サービスへの申込を忘れている時は、電力会社と新たに契約すれば売電を再開できます。
一方、電力会社から買取契約を解除された時は、別の事業者と契約を結ぶか一般配電事業者への無償送電という方法を検討できます。
無償送電とは、電力会社へ無料で送電している状況のことです。
産業用太陽光発電は、固定買取期間終了後に電力会社と買取の契約を結んでいたとしても、さまざまな事情から契約を解除される可能性もあります。そのため、自家消費型太陽光発電も含めた長期運用計画を立てるのが重要です。
なお、売電できない場合の対策は、後半で詳しく紹介します。
固定買取期間でも売電できないケースがある
産業用太陽光発電は、固定買取期間中でも一時的に売電できないケースがあります。
電力の需要は、時間帯や季節などさまざまな状況によって異なります。そこで電力会社では、電力の需要を上回る発送電が行われる状況になった際、出力制御という方法で再生可能エネルギー関連設備の発電・売電を制限します。
そのため、固定買取期間中でも出力制御が実施されれば、解除されるまで売電できません。
これから産業用太陽光発電の設置や購入を検討している方は、出力制御に備えて蓄電池を併用してみるのも大切です。
産業用太陽光発電の売電ができない場合の対策
産業用太陽光発電は、30年・40年と売電し続けられるか分かりません。
ここからは産業用太陽光発電の売電ができない場合の対策について解説します。
自家消費型太陽光発電へ切り替える
産業用太陽光発電は、自家消費型太陽光発電へ切り替えることが可能です。
自家消費型太陽光発電とは、太陽光パネルで発電した電気を太陽光発電設備と接続されている建物へ電力供給可能な運用方式のことです。
たとえば、なおかつ自宅へ産業用太陽光発電の配線を引き込んでいる場合は、発電したすべての電気を自宅で消費可能です。また、電気代削減効果も期待できます。
自家消費型太陽光発電は、出力制御や固定買取価格下落、買取契約解除などの影響を受けずに稼働できます。
太陽光発電を売却
産業用太陽光発電の売電で採算が取れない時は、設備の売却も視野に入れてみるのがおすすめです。
自家消費型太陽光発電は、電気代削減効果を期待できる一方、維持管理費用を別の収入でまかなう必要があります。
産業用太陽光発電の売却は、維持管理費用の負担を0にできますし、売却益で次の投資に向けた準備を行うことが可能です。売却方法は、一般的に仲介業者を通して進めます。
個人間の売買は、思わぬトラブルに発展する可能性もあり、おすすめできません。
弊社とくとくファームは、中古太陽光発電所の物件情報掲載および売却サポート業務などを手掛けています。また、全国の太陽光発電所に対応しているので、他社で断られた物件に関してもぜひお気軽にご相談ください。
太陽光発電の撤去
産業用太陽光発電の設置場所を別の用途に用いたい時は、撤去を検討した方がいい場合もあります。
太陽光発電の撤去は、自身で行わず専門の解体業者へ依頼するのが大切です。自身で解体してしまうと、感電事故、パネル落下などによる事故といった危険性があります。
太陽光パネルの回収や各部品の解体は、一般的に太陽光発電の施工業者が担います。産業廃棄物の取り扱いおよび廃棄処分については、解体業者で対応します。また、最終的には中間処理業者が、各部品を処分していく流れです。
まずは施工業者へ相談を行い、その後施工業者経由もしくは別途解体業者を比較検討しながら解体撤去へ向けて準備を進めていきます。
FIP制度に該当する産業太陽光発電の売電価格はいくら?
FIP制度の売電価格は、2021年時点で未定です。(FIP制度:2022年4月スタート予定)
産業用太陽光発電の中でFIP制度に該当するのは、出力1,000kW以上のメガソーラーと50kW以上1,000kW未満の太陽光発電です。
メガソーラーの売電価格に関しては、2021年9月時点で確定していません。制度開始後に具体的な価格を確認できるようになります。
50kW以上1,000kW未満の太陽光発電は、FIP制度とFIT制度どちらか一方を選択することが可能です。
FIT制度を選択した場合は、以下の固定買取価格で売電します。(2022年度) 50kW以上250kW未満:1kWhにつき10円 250kW以上1,000kW未満:入札制度によって決定
FIP制度は、メガソーラーと同じく2021年9月時点で未定です。
産業用太陽光発電の売電価格は下落していて売電以外の運用方法も検討すべき
三魚用太陽光発電の売電価格は、年々下落しているため、後発組になればなるほど売電収入も減っていきます。
固定買取期間終了後の売電については、2021年時点で大手電力会社各種共に買取サービスを継続していく方針です。また、一部新電力も太陽光発電の電力買取サービスを実施しています。
しかし、産業用太陽光発電の固定買取期間終了は最短で2032年なので、10年後も買取契約を結べるか分かりません。
産業用太陽光発電の設置を検討している方は、設備の売却や自家消費型太陽光発電など売電以外の出口戦略を検討してみるのが大切です。
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