ソーラーシェアリングの自家消費とは?メリットや補助金について紹介!

ソーラーシェアリングの自家消費とは?メリットや補助金について紹介!

一般的にソーラーシェアリングといえば、発電した電気を売電します。しかし、個人や企業の中には完全自家消費型のソーラーシェアリングを目指して設計・テストしているケースがあり、新たな活用方法として注目されています。

そこで今回は、ソーラーシェアリングにおける自家消費のメリットや成功事例、補助金制度について詳しくご紹介します。ソーラーシェアリングに関心を持っている方や売電以外で電気を活用したい農家の方は、参考にしてみてください。

ソーラーシェアリングについておさらい

ソーラーシェアリングとは、農地の上に特殊な架台を設置し、農業と太陽光発電を両立させた新しいシステムのことです。日本語では、営農型太陽光発電と呼ばれていて、2013年ごろから少しずつ広がっています。なお、ソーラーシェアリングは和製英語なので、海外ではAgri-Voltaicと呼ばれています。

ソーラーシェアリングの運用時は、一般的な太陽光発電システムと同じように発電した電気を電力会社へ売電することが可能です。さらにFIT制度の認定を受けられるため、固定化価格で10年間もしくは20年間売電し続けられます。

なお、一時転用期間は10年間です。10年を過ぎた場合は、更新手続きを行う必要があります。

ソーラーシェアリングで自家消費できる?

ソーラーシェアリングの基本を理解したあとは、自家消費できるかどうかについて確認していきます。自家消費とは、発電した電気を自宅や自社で消費する運用方式のことです。農業機械の電気料金負担に悩む方は、特に注目のポイントです。

自家消費型のシステムへ変更可能

ソーラーシェアリングは、売電型から自家消費型へ切り替えられます。発電した電気は、農業機械や農業用の照明設備などへ供給できます。また、農地の隣が自宅であれば、比較的容易に自宅で自家消費することも可能です。

自家消費型のソーラーシェアリングへ切り替えるには、全量自家消費用のパワーコンディショナを導入したり回路の切り替え工事などが必要です。各種工事や手続きについては、太陽光発電の施工業者で対応してもらえます。

発電した電気をどう活用するのか考える必要がある

ソーラーシェアリングで自家消費を行う場合は、どのように電気を活用するのか計画しておくのが大切です。

農業に関する設備の電気料金負担で悩んでいる場合は、電動刈払機のバッテリーやビニールハウスの暖房機器や計測機器、バッテリーを用いる農業機械に使用することで、電気料金の削減効果を期待できます。

農地の隣に自宅がある場合は、発電した電気を自宅へ送電することも可能です。あとは、自宅のコンセントから自家消費できますし、照明やエコキュートなどで使用できます。

ソーラーシェアリングで自家消費を行うメリット

続いては、ソーラーシェアリングで自家消費を行うメリットについて1つずつ確認していきます。

農業にかかる電気料金の負担軽減

太陽光発電でつくった電気を農業で使用できるのが、自家消費型ソーラーシェアリングの大きなメリットです。

農業で負担となる要素の1つは、農業機械のバッテリー充電やビニールハウス内で使用する暖房・冷房機器、計装機器の稼働に伴う電気料金の負担です。

ソーラーシェアリングは農地の上に太陽光パネルを設置するため、農業を継続しながら各種設備機器へ電力を供給できます。農業にかかる消費電力量と発電量のバランスによっては、年間の電気料金を数10%程度削減できる可能性があります。

さらに太陽光パネルの増設や交換、蓄電池の併用などといった方法で、電気料金の削減効果を伸ばすことが可能です。

企業価値アップにつながる

ソーラーシェアリングの自家消費は、企業価値アップにつながります。農業経営を行っている事業者は、SDGsやカーボンニュートラルなどといった目標や枠組みに沿った対策を施すのが大切です。

自家消費型のソーラーシェアリングは、再生エネルギーで発電した電気をさまざまな農業機械や設備に使用できるため、カーボンニュートラルに貢献しています。また、消費者や小売店などへ環境活動をアピールすることが可能です。

ソーラーシェアリングの自家消費は、販路の拡大や消費者の信頼性向上につながる設備でもあります。

FIT制度の要件を気にせず運用できる

自家消費型ソーラーシェアリングは、売電型と異なりFIT制度関連の規制や出力制御などといった影響を受けずに稼働し続けられるのが強みです。

FIT制度の認定を受けるには、さまざまな要件をクリアする必要があります。さらにFIT制度のルールは、不定期で変更されたり追加されたりします。そのため、常に新しい規制や変更点を把握した上で、対応しなければいけないのがネックです。

また、電力需給の調整に伴う出力制御によって、一時的に発電や売電をストップせざるを得ない場合があります。

一方、自家消費型ソーラーシェアリングでは、FIT制度の認定不要で稼働できます。売電を行わないため、電力会社からの出漁制御要請もありません。

このように国の制度や電力会社からの送電停止要請などといったリスクを負わずに済むのは、自家消費ならではのメリットといえます。

ソーラーシェアリングで自家消費を行うデメリット

ソーラーシェアリングで自家消費を行う際の主なデメリットは、状況によってコストがかさんでしまう可能性もある点です。

ソーラーシェアリングの設備と農業機械や関連設備の配線や充電環境が整っていないと、自家消費へ切り替えられません。そのため、状況によっては、自家消費のために追加工事を行う必要があります。

ソーラーシェアリングで発電した電気と自家消費のタイミングがずれると、効率よく活用できない可能性もあります。自家消費のタイミングについては、蓄電池の併用によって解決することが可能です。

蓄電池を取り付けておけば、消費電力量の少ない時間帯に電気を貯めておけます。また、消費電力の多い時間帯では、ソーラーシェアリングで発電した電気だけでなく、蓄電池で貯めた電気から自家消費できます。

自家消費型ソーラーシェアリングの事例

ここからは、自家消費型ソーラーシェアリングの事例を3つ紹介します。

茅ヶ崎でソーラーシェアリングの自家消費

農業経営を行っているスマートブルー株式会社では、神奈川県茅ケ崎市にスマートブルー茅ケ崎農場という完全自家消費型ソーラーシェアリングシステムを構築しました。

同農場では、ビニールハウス内で水耕栽培を行っています。ビニールハウスの天井には太陽光パネルが設置されていて、発電しながらハウス内で栽培を行える環境です。

ソーラーシェアリングで発電された電気は、ハウス内の汲み上げポンプや水耕栽培設備、ビニール開閉システムなどの電源として活用されています。さらに蓄電池が設置されているので、雨や曇りで発電量の少ない日でも24時間ソーラーシェアリングで稼働し続けています。

麦畑でソーラーシェアリング

もち麦やお米、野菜などを生産している株式会社トペコおばらでは、完全自家消費型のソーラーシェアリング設備を導入しました。

同企業では、水耕栽培ハウスに隣接している麦畑へソーラーシェアリングを設置後、発電した電気を全て水耕栽培設備へ供給する計画を立てています。年間の電気料金削減率は、25%の予想です。

自己託送でカフェへ電力供給

神奈川県小田原市で地方創生事業を行う合同会社小田原かなごてファームは、金次郎の里ソーラーシェアリングという自己託送を活用した自家消費型ソーラーシェアリングを設置しました。

自己託送とは既存の送配電ネットワークを活用して、遠隔地から送電を行えるシステムのことです。金次郎の里ソーラーシェアリングで発電された電気は、ソーラーシェアリングから約4kmの農家カフェ SIESTAへ送電されています。

さらにソーラーシェアリングを設置した農地では、さまざまな野菜を育てているのが特長です。

自家消費型ソーラーシェアリングに関する補助金はある?

国では、ソーラーシェアリングに関する補助金事業を実施しています。

「営農型太陽光発電のモデル的取組事業」という補助金制度は、ソーラーシェアリングを設置した農地で農業を行い、かつ農業の収益を確保できる状況であれば太陽光発電設備の導入にかかる費用を一部補助してもらえます。

補助金の上限は、設備費用に対して2分の1以内です。また、金額は定額なので、決められた金額を交付してもらえる仕組みです。

実施期間は単年度なので、年度ごとに募集が行われます。2022年度の募集期間や必要書類については、管轄の地方農政局へ確認する必要があります。

自家消費型ソーラーシェアリングで失敗しないためには?

ソーラーシェアリングには、さまざまなメリットがあります。しかし、リスクもあるので、計画的に準備を進めるのが大切です。最後は、自家消費型を含むソーラーシェアリングのリスクについて確認していきます。

作物の種類と太陽光パネルの設置間隔に注意

ソーラーシェアリングで注意すべきポイントは、作物の成長です。ソーラーシェアリングは、農地に柱を立てて、柱に固定用の部品と太陽光パネルを設置します。太陽光パネル同士に隙間がないと、ソーラーシェアリングの下にある作物へ日光を当てられません。

陽生植物や半陰生植物などの日光を必要とする作物を育てる場合は、太陽光パネル同士に隙間を空けておく必要があります。

  • 陽生植物は日光が必要
  • 半陰生植物は陽生植物ほどではないものの日光が必要

陽生植物は、稲や大豆、キャベツ、大根などが代表的です。ネギやレタス、じゃがいもなどは、半陰生植物に分類されます。

一方、日光をほとんど必要としない陰生植物を育てる場合は、太陽光パネルの隙間を狭めておく必要があります。きのこやにらなどが代表的です。

このようにソーラーシェアリングを設置する際は、太陽光パネルでどの程度日光を抑えるか遮光率を計算しておくのが大切です。

導入費用と回収期間を計算した上で計画する

ソーラーシェアリングの方が、一般的な太陽光発電より高めの設置費用です。

1kWあたりの金額では、住宅用太陽光発電などより2~4万円程度高い傾向です。出力50kWのソーラーシェアリングを設置する場合、野立て太陽光発電などより100万円以上高い点に気を付ける必要があります。

導入費用を正確に計算することはもちろん、自家消費による電気料金削減で浮いた資金をローンの返済や維持管理費へ充てられるか確認するのも、失敗を避ける上で重要なポイントです。

さらにソーラーシェアリングを行う上で必要な一時転用という点が、融資の審査に影響を与えると考えられています。農地の一時転用は、10年ごとに更新できなければその時点でソーラーシェアリング事業を終了しなくてはいけません。そのため、金融機関は、ソーラーシェアリングの融資を慎重に検討する可能性があります。

ソーラーシェアリングに関心を持っている時は、導入費用とローンの審査、一時転用の更新などといった点を考慮するのが重要です。

農業を行っている場合は自家消費型ソーラーシェアリングに注目!

自家消費型ソーラーシェアリングは、発電した電気を農業機械のバッテリーや水耕栽培設備などへ供給できます。また、自宅や店舗などへ送電できるので、建物内の電力購入量を抑えられます。

農業と太陽光発電を組みあわせたい方や農業で発生する電気料金負担を抑えたい方は、今回の記事を参考に自家消費型ソーラーシェアリングを検討・調べてみてはいかがでしょうか?

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