中小企業投資促進税制は、自家消費型太陽光発電を導入している中小企業も対象の税制優遇制度で、2024年度まで延長されます。
そこで今回は、中小企業投資促進税制の内容や要件、対象設備といった点について詳しくご紹介します。自家消費型太陽光発電のコストが気になる方や、自家消費型太陽光発電を活用した事業を進めている方などは、参考にしてみてください。
中小企業投資促進税制とは何?
中小企業投資促進税制とは、中小企業の成長や投資促進のために導入された税制のことです。優遇措置の内容や、実施期間など詳しく説明します。
中小企業向けの税制優遇措置
中小企業投資促進税制は、前向きな投資や賃上げを促すことを目的とした中小企業に対する税制優遇措置です。
中小企業投資促進税制の実施期間内に新しい機器や装置を導入した際などに、設備導入にかかった取得費用の30%に相当する金額を特別償却、もしくは7%の税額控除ができます。
設備投資には、下記のような条件があります。
- 機械・装置:1台または1基の取得額が160万円以上
- 測定工具・検査工具:1台または1基の取得額が120万円以上
- ソフトウェア:1つの取得額が70万円以上/複数の合計取得額が70万円以上
- 車両:貨物の運送用車両の車両総重量3.5トン以上
- 内航船舶:取得額の75%
太陽光発電設備の導入については、自家消費型太陽光発電設備もしくは余剰売電型太陽光発電設備が対象となります。自家消費率の制限はありません。
実施期間は2024年まで延長決定
中小企業投資促進税制は、平成10年6月1日から令和5年3月31日までで終了する予定でした。しかし中小企業の成長の底上げのために、適用期限が2年間延長されることが決定し、令和7年3月31日までとなっています。
中小企業投資促進税制の対象事業者
中小企業投資促進税制を利用できるのは、対象となっている事業者のみです。対象となる事業者について説明します。
青色申告を受けている事業者
中小企業投資促進税制の対象事業者は、個人事業主や自営業者が利用する確定申告の方法の1つである「青色申告」を受けている事業者となっています。
個人事業主と中小企業は申請可能
青色申告を受けている中小企業などの中でも、下記の要件に当てはまる企業・個人が申請可能です。
- 資本金または出資金額が1億円以下の法人
- 資本または出資金がない法人のうち常時使用する従業員が1,000人以下の法人
- 個人事業主のうち常時使用する従業員が1,000人以下
- 中小企業協同組合・商工組合・商工組合連合会など
また上記要件に当てはまる場合でも、下記の法人は対象外となります。
- 発行済株式もしくは出資の総数または総額の2分の1以上を同一の大規模法人が所有している法人
- 発行済株式もしくは出資の総数または総額の3分の2以上を複数の大規模法人が所有している法人
引用:中小企業投資促進税制(中小企業者等が機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除)
中小企業経営強化税制の対象事業
中小企業投資促進税制とよく似た制度に、税制措置を受けることができる「中小企業経営強化税制」があります。中小企業経営強化税制は、中小企業の経営力向上を支援するために導入された税制です。
大企業に比べると中小企業は経営資源や競争力の面で制約があることから、経営環境改善のために政府が支援を行っています。
対象となる中小企業者や個人事業主は上記で記載した中小企業投資促進税制と同じで、指定期間は平成29年4月1日から令和7年3月31日までとなっています。
対象事業には太陽光発電も含まれている
中小企業等経営強化法では、認定を受けた経営力向上計画に基づく設備投資を対象に、即時償却もしくは税額控除を受けられます。下記が中小企業等経営強化法の対象設備です。
- 機械装置:160万円以上
- 工具:30万円以上
- 器具備品:30万円以上
- 建物付属設備:60万円以上
- ソフトウェア:70万円以上
太陽光発電の設備投資も上記の機械装置に該当し、対象事業に含まれています。
太陽光発電の場合は自家消費型であること
太陽光発電の設備投資は対象事業に含まれているものの、全ての太陽光発電が中小企業等経営強化法での税制優遇措置を受けられるわけではありません。対象となるのは、自家消費型太陽光発電と余剰売電型の太陽光発電設備の中でも50%以上を自家消費する設備です。
余剰売電型で自家消費が50%未満の場合や、全量売電型太陽光発電設備については対象外となっています。
中小企業経営強化税制は即時償却と税額控除いずれかを選択可能
中小企業経営強化税制で受けられる税制優遇措置は、即時償却か税額控除となっており、どちらかを選択することができます。自家消費型太陽光発電を導入し即時償却した場合と、税額控除した場合のメリットなどを説明します。
自家消費型太陽光発電の初期費用を一括計上可能
自家消費型太陽光発電の設備投資について、中小企業経営強化税制の即時償却を選択した場合には、初期費用を一括計上することができます。
即時償却は、企業などが太陽光発電の設備などを購入した際に、一括してその設備の価格を減価償却することです。
通常であれば太陽光発電設備を導入した場合、定められた法定年数にて減価償却を行いますが、中小企業経営強化税制にて即時償却を選択すると、一度に全額を償却することができます。
設備を購入した年度に全額を償却することで、課税所得を減らすことができ、現金フローの改善や事業の拡大に資金を活用することが可能になります。
自家消費型太陽光発電の初期費用に含まれる課税負担を控除
税額控除の選択した場合、法人は法人税について設備の取得価額の10%の税額控除が受けられます。個人事業主では、所得税が取得価額の10%の税額控除となります。
つまり、自家消費型太陽光発電を導入した際は、設備の取得価額である初期費用の10%の税額控除が受けられることになります。
税額控除は、初年度の即時償却と比べると小さく、すぐに節税効果を得ることはできませんが、支払う税金の総額は減らすことができます。
ちなみに控除額は最大で法人税額の20%となりますが、超過した場合には翌年に繰り越すことが可能です。
太陽光発電で中小企業経営強化税制を利用するにはA類型もしくはB類型を選択
中小企業経営強化税制には、下記のA類型〜D類型の4種類があります。
- 生産性向上設備(A類型):生産性が旧モデル比平均1%以上向上する設備
- 収益力強化設備(B類型):投資収益率が年平均5%以上の投資計画に係る設備
- デジタル化設備(C類型):可視化、遠隔操作、自動制御化のいずれかに該当する設備
- 経営資源集約化設備(D類型):修正ROA又は有形固定資産回転率が一定割合以上の投資計画に係る設備
太陽光発電で中小企業経営強化税制を利用する場合には、A類型もしくはB類型を選択することになります。
A類型とB類型の違い
A類型の生産性向上設備とは、生産効率・精度・エネルギー効率など、経営力や生産性の向上に対する指標が、旧モデルと比べた時に1%以上向上する設備のことを指します。1台もしくは1基の最低取得価格が160万円以上で、販売開始時期は10年以内と定められています。
また、A類型の場合には工業会などから証明書を取得する必要があります。
B類型の収益力強化設備は、経済産業大臣の確認を受けた投資計画に記載されている投資目的を達成するために必要な設備を指しています。また、年平均の投資利益率が5%以上になることが見込まれている設備でなければいけません。
太陽光発電設備の種類は機械装置に該当し、最低取得価額は160万円以上となっています。B類型は経済産業局から確認書を取得する必要があります。申請の手続きに関しては、B類型の方が手続きが多く、手間がかかるため、A類型で申請ができる場合には多くの場合でA類型が選ばれています。
A類型の手続き方法
A類型の手続きで申請者である中小企業や個人事業主が行う手順は以下になります。
- 工業会の証明書を取得する
- 計画申請を行い主務大臣の計画認定を受ける
- 太陽光発電設備を取得する
- 所轄の税務署に税務申告をする
工業会の証明書の取得に関しては、設備メーカーから工業会に申請するため、申請者が直接行うのはメーカーに取得を依頼することのみです。計画申請書などの書類作成や税務申告についても、各専門家に作成や作業を依頼することで、申請者は面倒な作業に時間を取られることなく申請できるでしょう。
B類型の手続き方法
B類型の手続きで申請者である中小企業や個人事業主が行う手順は以下になります。
- 投資計画案を作成する
- 公認会計士や税理士に投資計画案の確認依頼をし、事前確認書発行を受ける
- 所轄の経済産業局に確認書発行申請を行い、事前確認書発行を受ける
- 主務大臣に計画申請を行い、認定を受ける
- 太陽光発電設備の取得する
- 所轄の税務署に税務申告を行う
B類型で申請を行うには、投資収益率5%以上の投資計画の条件を達成できる計画である必要があります。投資計画案の確認を行い、事前確認書の発行を受ける必要があるなど、A類型と比較すると申請の作業が多く、手続きが複雑になっています。
そのため、A類型で申請が行えるのであればA類型を選択する方がよいでしょう。
A類型で定められている「設備が10年以内の販売開始」であることや、「生産性が旧モデル比平均1%以上向上する設備」であることが満たせていない場合には、B類型を選択する必要があります。
中小企業経営強化税制申請時の注意点
中小企業経営強化税制を申請するにあたり、注意しておくべき点について詳しく解説します。
申請に時間がかかるため早めに準備を進める
A類型およびB類型ともに中小企業経営強化税制の認定を受けるには、書類の作成や提出、メーカーや税理士などの専門家とのやり取りなど、多くの工程を踏む必要があります。
書類の手続きには1〜2ヶ月かかり、太陽光発電設備の導入にも1〜3ヶ月ほどは必要になることを考慮すると、問題なく認定を受けるためには早めに計画を立てて進めていくことが大切です。
また、令和7年3月31日は申請の期限ではなく、証明書の取得や計画認定、さらに太陽光発電設備の取得までの期限となっています。
税制優遇の活用を念頭に太陽光発電の導入を検討する場合には、期限から逆算して8ヶ月前ぐらいには検討を開始するのがよいでしょう。
設備取得後に認定を受けるには期限が生じる
通常、経営力向上計画の申請については太陽光発電設備の取得前となっていますが、設備の取得後に認定を受けることもできます。
令和3年8月以降、新型コロナウイルスの影響もあり、経営力向上計画の申請と工業会証明書の申請手続きを同時進行で行うことが可能となりました。
ただし、太陽光発電設備の取得後60日以内に経営力向上計画を申請して受理されることや、同1年度内に認定を受ける必要があります。
自家消費型太陽光発電の導入時は中小企業経営強化税制を活用してみるのがおすすめ!
中小企業経営強化税制などを活用することで、即時償却や10%の税額控除など、節税効果の高い税制優遇措置を受けることができます。自家消費型太陽光発電の導入を検討している場合には、中小企業経営強化税制などを活用してみるのがおすすめです。
即時償却を選択すれば、太陽光発電への投資額も早めに回収することができます。自家消費型太陽光発電を導入することで、値上がりが続く電気料金の節約にもなり、税制優遇も受けられます。
今回の記事を参考に自家消費型太陽光発電の設置と中小企業経営強化税制の申請を検討してみてはいかがでしょうか?
弊社和上ホールディングスでは、自家消費型太陽光発電の企画から設計図の作成、機器の調達や設置工事、設置後の保守運用まで一括でサポートしております。
さらに中小企業経営強化税制の申請に関するサポートを行っておりますので、同制度の申請手続きの方法などに悩んでいる方もスムーズにプロジェクトを進められます。
自家消費型太陽光発電で固定費削減や環境経営を始めたい方は、お電話やメールフォームからお気軽にご相談ください。