風力発電は、運用方法から見ると洋上風力と陸上風力の2種類にわけられます。また風車の形状や軸の方向でもさまざまな種類があり、それぞれ運用方法や導入場所によって向き不向きがあります。本記事では、風力発電の種類や特徴について詳しくご紹介します。風力発電事業に関心を持っている方などは、参考にしてみてください。
設置場所から見た風力発電の種類
風力発電の種類は、構造や風車の向き、設置場所によって異なります。まずは、設置場所から見た風力発電の種類についてわかりやすく解説していきます。
陸上風力発電
陸上風力発電は、地上に設置するタイプの風力発電所のことです。設備を支えるタワー(支柱)、ナセル、風をとらえるブレードで構成されています。風によって回転したブレードの回転力は、ナセルに内蔵されている増速機が調整し、発電に必要な回転数まで増幅される仕組みです。
陸上風力発電は海岸沿いなど風を受けやすい広い土地、一定以上の風速を見込める土地に設置されます。東北地方や北海道などは、陸上風力発電の設置数が多い傾向です。
洋上風力発電
洋上風力発電は、海上や湖上に設置されている風力発電所を指しています。海上は地上より面積の広い環境で、一定の風速を期待できるほか、風向きも安定しやすいです。また周辺に住宅地がないため、陸上に設置するよりも騒音などによる近隣トラブルのリスクも抑えられます。大型の風力発電機を設置しやすいのもメリットの一つです。
基本的な構造は陸上風力発電と変わりませんが、固定方法が異なります。固定方式は着床式と浮体式の2種類にわかれます。
着床式は、タワーを海底に埋め込んで固定させる方法です。一方浮体式は、浮体構造物(浮力のある構造物)と海底に設置された重りを接続し、水面に定着させる設置方式です。風力発電所は、浮体構造物の上に設置されます。
現在は技術的難易度の低さから、多くの洋上風力発電は着床式で設置されています。しかし水深約50mを超える場所では着床式での設置は難しいため、陸に近い海域が深い日本では浮体式も注目されています。
水平軸風力発電の種類
風力発電の種類を知る上で欠かせないポイントが、ブレード(風車)の向きと形状です。ブレードを支えている軸が地面に対して、平行であるものが水平軸、垂直であるものが垂直軸とされます。
水平軸風力発電には、プロペラ式、オランダ式、多翼式、セイルウィング式の4種類の形状があります。プロペラ式は、風の流れに対して垂直方向に力が作用する揚力型です。プロペラ式以外の水平軸風車は、風の流れを受け止めて一定の回転力を生み出す抗力型です。
それでは、4種類の水平軸風力発電について詳しく見ていきましょう。
プロペラ式
風力発電においてポピュラーなタイプが、プロペラ式です。一般的なプロペラ式は、みなさんも見たことがあるような羽が3枚あるもので、高速回転しやすい形状です。バランスの取れたタイプであるため、小型設備から大型発電所、陸上・洋上風力発電でも採用されています。
しかし、高速で回転する際に騒音が発生するため、音に関するトラブルを引き起こさないための対策も必要となります。また風向きの変化によって首振り運動(※)が必要となり、エネルギーの変換効率にロスが生じる課題もあります。
※首振り運動:正面から風を受け取るためにブレードの向きを回転、制御させる動き。
風力発電所における課題については、以下記事でも詳しく解説しています。気になる方は、ぜひ参考にしてみてください。
オランダ式
オランダ式は、木製の羽が4~6枚組み合わされているタイプです。羽は障子の格子に近い形状で、布が巻かれているのも大きな特徴です。
布を巻いた羽があることで船の帆のように風を受け止めやすく、回転力を得やすいといったメリットがあります。回転速度は低いものの高トルク(回転の際に生じる力が大きいこと)であるため、古くから脱穀や製粉に用いられたり風車小屋のポンプに活用されたり、さまざまな場面で運用されてきました。
多翼式
多翼式は、20枚前後の羽を軸に取り付けた風車で、揚水の動力源として活用されてきました。特にアメリカ中西部の牧場や農家などで活用されてきた歴史があり、現代でも海外で使用されています。
多翼式はその名の通り羽が多数取り付けられているため、回転速度は遅いです。しかしトルクは高く、大きな力を必要とする場面で役立ちます。回転数が少ないので、風力発電設備として活用することは難しいですが、小型の揚水動力源であれば使いやすく、修理も容易なため海外のボランティアなどで活用されています。
セイルウィング式
セイルウィング式(セイル型)は、6枚前後の羽を組み合わせたタイプです。それぞれの羽は三角形に近い形状で、布などを張って作ります。
回転速度は低いものの、弱い風でも回転力を得られるのがメリットのひとつです。一定のトルクがあるため、オランダ式などと同様に揚水用ポンプや脱穀・製粉といった場面で役立ちます。ただし風力発電用としては回転数などに課題があり、一般的な発電方式ではありません。
垂直軸風力発電の種類
垂直軸風力発電は、回転軸が地面に対して垂直に設置されたタイプの風車です。どの形状でも風向きに左右されず回転できるのが特徴で、風向きによるロスが少ないという意味で回転力も生みやすいです。
ただし回転速度などに課題があり、中規模~大型風力発電所で採用されているケースはそれほど多くありません。
ここからは、垂直軸風力発電の種類についてそれぞれ解説していきます。
揚力型
垂直軸の中で風の流れに対して垂直に力が作用する揚力型は、ダリウス式とジャイロミル式、直線翼式です。
多くの風力発電所は、水平軸のプロペラ式で稼働していますが、小型~中規模の風力発電の一部には、垂直軸のジャイロミル式やダリウス式が用いられているケースもあります。
ダリウス式
発明者の名前を採ったダリウス式は、2~3枚の細長い羽を軸に取り付けた形状です。横方向から見ると円形で、他の風車とは大きく異なる構造といえます。
風向きに関係なく回転できるため、羽の向きを調整する必要がありません。一度回り始めれば高い回転数を得られる構造となっていますが、トルクは小さく、自立で回転し始めることが難しい作りでもあります。施工難易度の高さや不安定な構造といったデメリットもあり、改善点の多い形状といえます。
ジャイロミル式
ジャイロミル式は、地面に対して垂直方向に羽が取り付けられたものです。
羽に弾性体(力を加えると変形するものの復元使用する力が働く素材)が使用することで、弱い風でも停止状態から回転しやすい構造になっています。高いトルクを保ちながら高速回転でき、風力発電に活用しやすい形状です。
現在実際に活用されているのは一部の小型風力発電で、今後の発展に注目です。
直線翼式
直線翼式は、地面から垂直に固定された回転軸の周囲に板状の細長い羽を取り付けたものです。構造がシンプルで軽量化しやすい点が特徴です。
騒音を抑えられるほか、風向きに関係なく回転可能なところが、直線翼式の主なメリットです。しかし停止状態から自力で回転することは難しいため、モーターなどで起動させなければいけない点がデメリットです。
抗力型
垂直軸の中でも風の流れと並行に力を受けて回転力に変換する主な抗力型は、サボニウス式とS型ロータ式、クロスフロー式、パドル式の4種類です。それでは、垂直軸の抗力型から4種類の風車について特徴や形状を紹介していきます。
サボニウス式
サボニウス式は、回転軸の周囲に半円筒形の羽を2枚取り付けた形状です。2枚の羽は重ならないように取り付けられているため、風を通せる構造になっています。
弱い風でも回転でき、静かなので、さまざまな場所に設置・運用できるのもメリットといえます。小型風力発電システムとして活用は可能なものの、エネルギー変換効率という点でプロペラ式に劣るのが主なデメリットです。
S型ロータ式
S型ロータ式は、回転軸の周囲に半円筒形の羽を搭載した風車で、上から見るとS字のような形状で取り付けられています。前段のサボニウス式に近い形状や配置で、風を受け止めながら回転力を生み出す構造です。
通常、風向きにかかわらず回転力を生み出せるのが特徴で、弱い風でも設置・運用しやすいといえます。ただし、羽の向きによっては風を受け流してしまう場合があるため、ロスが発生するケースもあります。
クロスフロー式
クロスフロー式は、回転軸の周囲に角度を付けながら羽を等間隔に複数枚取り付けたものです。羽の隙間に入り込む風が羽と軸を押し出し、回転力を生み出します。押し出されている羽の反対方向から風が排出される仕組みです。
構造上、どの風向きからも風を受け止められるため、風向きの調整などが不要です。さらに、高トルクという特性があり、停止状態から自力で回転させられます。回転速度が低いため、一般的には、エアコンの送風用ファンとして用いられています。
パドル式
パドル式は、回転軸から4本前後の軸を地面に対して平行に固定し、各軸の先端に半球形の羽(風杯)を設置させたものです。風見鶏の方角を示す4本の棒を想像するとわかりやすいです。
主に使用されているのは風速計で、他の垂直軸と同様に風向きに関係なく回転力を得られます。パドル式による風力発電事業は普及していません。
出典:「港湾における風力発電について」(国土交通省) (https://www.mlit.go.jp/common/000216101.pdf)
風向きから見た風力発電の種類
最後に、風向きから見た分類を解説します。
アップウィンド
アップウィンドは世界的に主流の方式で、風上側から流れてくる風を回転力および発電力へ変換させます。風力発電は、ロータ側(ブレードが設置されている側)を風上に向けたタイプです。
支柱(タワー)によって乱れる風の影響を受けにくくなっています。ただし、効率的に風を受けるためには、風向きをセンサーで検知し、状況に合わせてロータおよびブレードの向きも制御しなければなりません。
ダウンウィンド
ダウンウィンドは、風下側にロータ側を向けている状態で、背面から流れてくる風を回転力および電気へ変換する構造です。
風下に流れてくる風を受け取める際、ブレードに大きな荷重がかかるため、安全性や耐久性に関する技術的難易度の高い方式です。ロータやブレードが風を受けると、構造の関係から自然に風下側へ向きを変えるため、方位制御しやすいといったメリットもあります。
風力発電の種類と特徴を把握した上で事業を検討する必要がある
風力発電の種類は、設置場所から羽の形状、風向きといった点で細かくわけられています。中でもアップウィンドによるプロペラ式は、世界的に主流の風力発電です。
風力発電は将来性のある事業ですが、初期費用や設置場所、技術的難易度といった点で課題の多い側面もあります。今から再生可能エネルギー発電事業へ着手する場合は、さまざまなメーカーから展開されており、施工業者のノウハウも蓄積された太陽光発電がおすすめです。
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非FIT型太陽光発電は、FIT制度を活用していない太陽光発電を指し、固定買取価格や制度の影響を受けずに運用することが可能です。また、風力発電とは異なり、地上設置から屋根設置など、さまざまな場所に設置できます。
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