エコキュートは、電気でお湯を沸かす給湯器として近年人気になっており、「エコな給湯」を文字って名づけられたように、非常に高い給湯コスト削減効果を持っている言われています。実際に、コロナ社が2001年にエコキュートの販売を開始してまだ20年足らずなのにも関わらず、既に総販売台数が500万台を超えるほどのヒット商品となっているのです。
このエコキュートの人気の上昇に伴って、最近ではエコキュートの販売を手掛ける業者が急増しています。皆さんもエコキュートの導入を検討した時には、まずインターネットを使っていろいろと調べてみる…という行動に出ると思うのですが、ネット検索をしてみればずらずらと販売店のホームページが表示されると思います。もちろん、「どこから購入するか?」といった選択肢が多い事が悪いわけではないのですが、選択肢が多すぎると一つに絞るのも苦労してしまいます。
たくさん表示されるエコキュートの販売サイトでは、とにかく「給湯器はエコキュートが一番なのだ!」といった感じにメリット面ばかりを全面に押し出して紹介しているサイトが多いです。もちろん、エコキュートを販売するためのサイトですから、エコキュートの良さを伝えるのは当たり前のことですが、最近では「とにかくエコキュートを売るため!」にといった感じで、エコキュートが持つデメリット面を無視しているようなサイトも多く登場しています。エコキュートに多くのメリットがあるのは確かですが、弱点やデメリットが全くないかというとそうでもないのです。したがって、家庭で使用する給湯システムとしてエコキュートの導入を検討した場合には、メリット面だけでなく「エコキュートの持つデメリット面」に関してもよく検討しなければいけません。
特に、もともとガス給湯器を利用していた方がエコキュートへの入れ替えを検討している場合、その使い勝手の違いからエコキュートの良さを生かしきれない…なんてことも考えられるのです。そこで今回は、多くのエコキュート販売サイトで無視されがちな、エコキュートのデメリットについてご紹介しておきます。
導入前におさえておきたいエコキュートの弱点
それでは、意図的とまでは言いませんが、多くのエコキュート販売サイトが無視しがちなエコキュートのデメリット面をご紹介していきましょう。
そもそもエコキュートのメリットは、「エコキュートを導入すれば給湯コストが下がる!」と言う点が最も注目されており、「光熱費が下がるならエコキュートにした方が良いか!」と考える方が多いのだと思います。他にも、給湯時のCO2排出量削減で環境に優しいということや、火を使わない給湯方式であることから火災リスクが低減できる、タンクにお湯を貯めるので非常用水を確保できる…などがメリットとして紹介されています。
これだけの情報を聞けば、誰でも家庭の給湯器はエコキュート一択なのではないか…と考えてしまいそうですが、実はそうではないのです。もちろん、とくとくショップでもエコキュートは非常に優れた給湯器としてオススメ出来ると考えて販売していますが、以下に紹介するようなデメリットも存在しており、日本全国どの家庭でもエコキュートが最適とは考えていないのです。エコキュートの導入を検討した場合には、メリットだけでなく、デメリット面も良く検討して導入を決めるようにしましょう。
デメリット① 導入コストの問題
上述したように、エコキュートのメリットは日々の給湯コスト削減が実現するという『ランニングコストの安さ』です。例えば、同じ電気でお湯を沸かす電気温水器などと比較すると、その給湯コストは約1/3程度にまで下げることができると言われています。しかし、エコキュートを導入する場合に忘れてはいけないのが、イニシャルコストは割高だということです。
例えば、日本国内で広く普及しているガス給湯器と比較してみた場合、小型化が進み壁掛け設置が可能なガス給湯器は、施工も容易で設置工事費用が安いです。しかし、エコキュートは、ヒートポンプユニットと貯湯タンクの設置が必要になることから、設置工事が大掛かりになりどうしても導入コストが高くなってしまうのです。さらに、貯湯タンクにお湯を貯めておくという貯湯式の給湯器となるため、タンクの重量は皆さんが想像しているよりもかなり重くなります。そのため、設置工事を進める場合、条件によってはエコキュートを設置するために基礎工事が必要になることもあり、ガス給湯器の設置工事費よりも2~3倍程度高くなることがあるのです。
もちろん、給湯機本体に関しても、ガス給湯器よりも複雑なシステムになっていることから、本体価格が割高になってしまします。つまり、エコキュートの導入は「イニシャルコストの差額をランニングコストの安さで取り戻すことができるのか?」ということを検討しておかなければいけないということです。一般的に、一人暮らしや高齢者の2人暮らしなど、普段の生活の中であまりお湯を使わないというライフスタイルのご家庭であれば、エコキュートの給湯コスト削減によるメリットが薄くなりますので、導入コストの差額分を取り戻すのが難しくなってしまいます。
エコキュートの導入は、中長期的な料金シミュレーションをしっかりと説明してくれる業者さんから購入するのがオススメです。
デメリット② お湯切れの可能性がある
ガス給湯器など、瞬間式の給湯器からエコキュートに入れ替えする方が注意しておきたいデメリットです。エコキュートは、貯湯式の給湯システムとなっていますので、今まで瞬間式の給湯器を使っていた方であれば、根本的な使い勝手が変わってしまうのです。
エコキュートは、一日に使用するお湯をまとめて沸かして貯湯タンクに貯めておくという仕様になっています。この特徴から、電力会社が用意している深夜帯の電気代が格安になる料金プランが活用でき、エコキュートの給湯コスト削減効果が得られるのです。しかし、「あらかじめタンクにお湯を貯めておく」ということは、貯められた以上のお湯を使い切ってしまうと「お湯切れを起こしお湯が使えなくなってしまう…」ということです。瞬間式であるガス給湯器であれば、必要な時に必要な分のお湯を作るシステムになっているため、「お湯切れの心配」などなくいくらでもお湯が使えます。しかし、エコキュートの場合は、そうはいかないのです。
もちろん、お湯切れが発生しても、再度沸き増しすればお湯が使えるようになるのですが、一度空になった状態からお湯を作るにはそれなりの時間がかかりますし、何より電気代が高い時間にお湯を沸かすことになり、エコキュートの給湯コスト削減効果までなくなってしまうのです。つまり、エコキュートを導入する場合には、ライフスタイルや家族構成から最適なタンクサイズのエコキュートを選ばなければいけないと考えておきましょう。
ちなみに、エコキュートメーカーのサイトなどに記載されている推奨タンクサイズは、基本的に家族構成から決められているので、注意が必要です。例えば、同じ家族構成でも、ご家族全員がスポーツをしていて、頻繁にシャワーを浴びるなど、お湯の使用量が多いと考えられる場合には、ワンランク上のタンクサイズを選んでおくなど、機種選びにも工夫がいると考えておきましょう。
デメリット③ 設置スペースの問題
これもガス給湯器と比較した場合のデメリットです。上述したように、ガス給湯器は壁掛けで設置できるように、本体自体の小型化が進んでいます。そのため、ガス給湯器を導入する場合には、「設置場所に困る…」などと言った事は基本的にありません。
しかし、エコキュートの場合は、貯湯タンクとヒートポンプの設置が必要で、設置するためにはそれなりに広いスペースが必要になるのです。最近では、薄型タイプやタンクとヒートポンプを一体化させた小型タイプが登場していますが、それでもガス給湯器の設置スペースとは比較にならないほど広いスペースが必要になると考えておきましょう。
エコキュートの導入を検討した場合には、「自宅に設置可能な場所があるか?」ということを販売店に調査してもらう必要があると考えておきましょう。
デメリット④ 騒音トラブルの可能性がある
エコキュートは、周囲が寝静まった深夜帯に稼働させるのが基本的な使い方となるため、エコキュートの稼働音で近隣住人と騒音トラブルになってしまうリスクがあります。実際に、エコキュートを導入したことにより、隣家とトラブルになり裁判沙汰になってしまった…という事例も存在しています。
こう聞くと、「エコキュートの稼働に大きな音が出るなら自分たちも困るのでは…」と考える方も多いのですが、エコキュートの稼働音自体はそこまで大きな音が出るわけではありません。エコキュートの稼働時に発する音量に関しては、『40db程度』と言われており、これは静かな住宅地の昼や図書館の音量程度で、普通は全く気にならない程度の音量なのです。しかし、エコキュートは稼働時に低周波音を発するということが問題となることがあるのです。通常、低周波音は人間に耳には聞こえないと言われているのですが、人によっては気になってしょうがない…という方が存在するのです。そのため、近隣住人に低周波音を気にする方がいれば、騒音トラブルになる可能性があると覚えておきましょう。
エコキュートの設置場所が、隣家とそこまで離すことができない…といった場合には、きちんと防音対策を施してくれるよう、設置業者に依頼するのがオススメです。
デメリット⑤ 入浴剤の使用制限がある
最後は、入浴剤についてです。毎日お風呂に入る時には、好みの入浴剤を入れるのが楽しみ…という方も多いことでしょう。しかし、エコキュートを給湯器として選択した場合、使用可能な入浴剤が制限されてしまうのです。
これは、入浴剤の成分によっては、エコキュート内部の詰りの原因となってしまう可能性があることから、多くのメーカーで特定の種類の入浴剤が使用禁止になっているのです。メーカーが禁止している入浴剤を使用してしまうと、本来の耐用年数よりもかなり早く買い替えが必要になると考えなければいけません。
使用可能な入浴剤に関しては、メーカーや機種によって異なりますので、「お風呂に入浴剤は欠かせない!」という方は、普段自分が利用している入浴剤が使用できる機種はどれかという視点も持って機種選びを進めるべきでしょう。一般的に、以下のようなタイプの入浴剤は使用不可と考えておきましょう。
- 炭酸ガスなどで発泡するタイプの入浴剤
- 生薬など、固形物を含む入浴剤
- 硫黄、酸、塩分、アルカリなどを含む入浴剤
- ミルク成分配合やとろみ系の入浴剤
まとめ
今回は、エコキュートの販売サイトなどで、無視されがちなエコキュートが持つデメリットについてご紹介してきました。エコキュートは、導入すればとにかく給湯コスト削減が実現できるなどと紹介されることもありますが、普段のライフスタイルで、あまりお湯を使わない…という方であれば、ランニングコストの安さによるメリットはほとんど得られないと考えた方が良いでしょう。それどころか、導入コストの差額分を取り戻すことも出来ず、中長期的に見ても損してしまう可能性があるのです。
エコキュートが、他の給湯器と比較してもさまざまなメリットを持っているということは確かですが、使い方を間違ってしまった場合には、本来得られるはずのメリットも享受できませんし、エコキュートの導入を後悔してしまうことにつながる可能性もあるのです。したがって、家庭の給湯器選びを進める時には、きちんとそれぞれのメリットだけでなく、デメリット面までしっかりと検討するようにしましょう。